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寝起きの悪いお嬢様
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第19回書き出し祭り への参加作品ですが残念ながら失格となった作品です。
そのままお蔵入りさせようかとも思いましたがせっかくなのでこちらに掲載します。
侍従のセバスチャンは前世の記憶がある転生者である。
男爵令嬢のアンジェリカ嬢も同じく転生者である。
二人の共通点はセバスチャンの主人、侯爵令嬢マリアンヌ様が絶対的推しであること。
そんな二人の楽しみは、セバスチャンの入れない学園の情報とアンジェリカ嬢の入れない公爵家でのマリアンヌ嬢の日常を交換すること。
そこにマリアンヌ嬢の婚約者王太子ロバート殿下も入ってきて三人のドタバタ推し活が始まる。
◆◆◆
「セバスチャン、お嬢様をなんとかして!」
さわやかな朝の空気を壊す声。声の主はお嬢様の侍女のキャサリン。
ベテラン侍女である彼女をしても寝起きのお嬢様は手に余る。キャサリンの後ろには同じく侍女のサラが立っている。サラのお仕着せが乱れている。ああ、お嬢様にやられたか。
私の名前はセバスチャン。ジェイド侯爵家に勤める従者である。
私の主人はジェイド侯爵様であるが、仕事は麗しのお嬢様マリアンヌ様のお世話である。
マリアンヌ様は容姿端麗、才学非凡で才色兼備なお嬢様であるが、一つだけ欠点がある。
寝起きが悪い。
そう、寝起きが悪いのである。
今朝もキャサリンとサラがお嬢様を起こしに向かったのだが早々にあきらめて私のところに来たのだ。
嫁入り前のうら若いお嬢様の寝室に入るのはためらわれるがこれは仕方ない。これは仕事だから仕方がないのである。
二人を従え、お嬢様の部屋に入るとまずは胸一杯に部屋の空気を吸い込む。ふむふむいつもながらかぐわしい。私が薫りを楽しんでいると後ろからキャサリンに背中をどつかれた。怖いので振り返らず静かにベッドに向かう。
広い部屋の中央にあるベッドは侯爵家としては地味だが品が良い。その上には高貴な令嬢らしからぬ、大の字になって寝ている物体がある。
私は二人に目くばせをすると、静かにベッドに乗る。ここで起こすとサラの二の舞だ。そろりそろりと嬢様のそばに寄る。そして声色を作りお嬢様の耳元でささやく。
「マリアンヌ、今日も麗しいね、そろそろ起きてくれないかな」
「ロバート様! ……!」
婚約者でありお嬢様の最愛の方であるロバート王太子殿下の名前を呼び飛び起きたお嬢様。きょろきょろと周りを見回して、私の顔を見るとその顔がみるみる険しくなる。
「セバスチャン、おまえ……」
「そろそろ起きてください、遅刻しますよ。今日の予定は学園での授業のあとに王太子殿下とお約束が……」
「こぉのぉ痴れ者がぁ~」
今日もお嬢様からきつい一発を頂きました。こればかりは他の者には任せられません。
いや、キャサリンさん、サラも残念なモノを見るような目で見ないでください。こうやって体を張って二人の代わりにお嬢様を起こしてるのですから。
天気も良く馬車は快調に学園に向かっている。私の腫れた頬を風がやさしく撫でていく。御者台には私とベテラン御者のジョンが、馬車と併走して女性護衛のジルが馬で走っている。
お嬢様とサラは馬車の中だ。中からはひそひそと話す声がするが、ときどきキャーというサラの黄色い声が聞こえるのはコイバナをしているのか。お嬢様はもちろんサラもジルにも恋人がいる。ジョン爺は長年連れ添った奥さんがいる。独り者は私だけ。
「なんで恋人出来ないのかなぁ」
独り言が聞こえたのかジョン爺が私の顔を見てつぶやく。
「顔はいいのだがなぁ」
学園に到着すると、お嬢様は私のほうを見もせずジルとサラを従えさっさと中に入ってしまう。まだ怒ってるのかな?ジョンが馬に水をやりにいくとしばらく暇だ。
私はロータリーの横のベンチがある休憩場所に向かう。顔見知りの従者仲間に挨拶をしながら奥に向かうと目的の人物を見つけた。
背中合わせで座り合い言葉を言う。
「うみ」
「やま」
ややたって彼女、ラピスラズリ男爵家令嬢のアンジェリカ嬢が言う。
「この合言葉、必要ですか?」
必要だ、いや、要らないか。
一度座ったベンチを立ち私は彼女の横に座る。彼女はこの学園の生徒でお嬢様と同じく二年生。周りに人眼があるとはいえさすがに貴族の令嬢と二人きりというのはまずいので彼女は平民の服を着ている。
栗色の髪に茶色い目。少しそばかすのあるどちらかというと平民によくいる地味な女の子。
なのだが、ひたいに一本ピンク色のほつれ毛が出ている。
「地毛が一本出てるぞ」
「あああ、あとで直します、ありがとうございます。それで、今週の分はこちらです」
彼女が差し出した封筒には数十枚の紙にびっしりと文字が書いてある。
私はそれに目を通す。
そこには、昨日までのお嬢様の学園での行動が書いてあった。
「さすがお嬢様、下級生への心配りがすばらしい」
「そうなんですよ、心折れそうになった彼女の肩を優しく抱きしめるその姿はまるで聖女、いや、女神様でした。その場にいた女子はみな代わって欲しいと思ってたはずですよ、汚い男子はその場にいませんでしたからご安心を。あのときほどスマホのないこの世界を恨んだことはありませんわ」
早口で話す彼女はそのシーンを思い出したのか目が潤み頬を赤く染めている。彼女は同性愛というわけではなく、ただ単にお嬢様が好きすぎるだけ。私と同類だ。
読み終わり懐にそれをしまった私は彼女に封筒と小さい袋を渡す。封筒には屋敷でのマリアンヌ様の尊いエピソードが、小さい袋の中には銀貨が何枚か入っている。
「ありがとうございます。マリアンヌ様のまわりには特に変わりがなかったのですが、」
「どうした?」
「1年生のタラゴン男爵令嬢が第二王子殿下に接近しています」
「あぁ、あの、ピンクの髪の元平民の。この間、私たちの目の前でわざと転んだ令嬢か」
「そうなんですよ。あの時の怖い目は……」
アンジェリカ嬢が思い出したのか震えている。
『ニセヒロイン』
彼女がぶつけられたセリフはタラゴン男爵令嬢が転生者であることを伺わせる。
「でも、不思議なんですよ。私と生まれ育った辺りは同じはずなのに見た覚えがないです」
「ふむ、それにタラゴン男爵家は調べているがなにも出てこなくて逆におかしい」
アンジェリカは心配そうに言う。
「私が物語と違う行動したから、新しいヒロインが生まれたのでしょうか?」
アンジェリカ嬢と私は同じ世界、日本、から転生した転生者だ。
そして今いる世界は前世で夢中になった異世界物小説の世界だ。
お嬢様、マリアンヌ様はいわゆる悪役令嬢。愛するロバート様がヒロインのアンジェリカ嬢に奪われ、病んでしまい、魔王の甘言に乗り世界を滅ぼそうとしてしまう。それを真実の愛で結ばれた王太子ロバート様と聖女の力に目覚めたアンジェリカ嬢、そして私を含めた協力者たちにより成敗されるべたな話だ。
前世の私もアンジェリカ嬢も、ヒロインよりもマリアンヌ様が推し。物語の王太子は浮気者だしヒロインは掠奪愛だし、どう見てもマリアンヌ様悪くないし。
なので、せっかくこの世界に生まれ変わったのだからマリアンヌ様を助けて幸せになってもらい、ついでに私たちは平穏に暮らしたいと思っている。
だって、魔王復活で街は壊され何人もの人が死んでるんだよ。ページ1枚で終わらせられていたけどさ。
そろそろ移動しようかと思ったときだった。
「おもしろそうな話をしているな、私も混ぜてもらえるかな」
後ろから声をかけられ二人は飛び上がりそうになった。
おそるおそる振り返るとそこには次期国王であるロバート殿下がいらした。
「それを見せてもらえるかな?」
私もアンジェリカ嬢も立ち上がってこくこくと人形のようにうなづき、紙を護衛に渡そうとした。
ロバート殿下はそれを横からひったくりベンチに腰掛け黙々と読み始めた。
どのくらいたっただろう。アンジェリカ嬢は授業があるし私も仕事がある。じりじりとしていると王太子殿下が紙を丸めて手をたたきながら言った。
「けしからんな、我が婚約者のマリアンヌをこんなに事細かく調べるとは」
「あっあの、」
「直答など不敬だぞ」
護衛が叱咤する。
「まぁよい、直答を許す。お前ら、今までもこのようなものをやり取りしていたのか」
「はっ、はい」
二人で声を合わせて答える。
「いつからだい?」
「あっ、あの、お嬢様が入学されたころからお嬢様が心配で、アンジェリカ様にお願いして様子を見ていただきまして」
「ジェイド侯爵令嬢は皆のあこがれの方なので、セバスチャンさんが心配するのもわかるので協力させてもらっています。昨日も、ジェイド侯爵令嬢が、失敗した下級生の令嬢をフォローされていて、不敬だと震えている彼女の方を優しく抱きしめて耳元でなにかおっしゃって、失敗した彼女を慰めていたのだと思われますが、それがとても尊くて、周りの女生徒は皆……」
「なるほど、それはわかる。マリアンヌは女子にも人気があるのだな。しかし、女子とはいえ肩を抱くのはちょっと妬ましいが、それをいうと心が狭い婚約者だと言われそうだしな、悩ましいところだ……」
あー、揃ったらイケナイ三人が揃っちゃいましたか? いや、自覚ぐらいしてますよ、私も。
護衛の方、お疲れ様です。
結局、王太子殿下公認となり、報告書は二部作ることになった。
とはいえ学生であるアンジェリカが嬢が一人でそれをつくるのは無理があるので、専門の侍女を探してくれるそうだ。これが後で問題になるのだが、この時はだれもそこまで思い至らなかった。
そのままお蔵入りさせようかとも思いましたがせっかくなのでこちらに掲載します。
侍従のセバスチャンは前世の記憶がある転生者である。
男爵令嬢のアンジェリカ嬢も同じく転生者である。
二人の共通点はセバスチャンの主人、侯爵令嬢マリアンヌ様が絶対的推しであること。
そんな二人の楽しみは、セバスチャンの入れない学園の情報とアンジェリカ嬢の入れない公爵家でのマリアンヌ嬢の日常を交換すること。
そこにマリアンヌ嬢の婚約者王太子ロバート殿下も入ってきて三人のドタバタ推し活が始まる。
◆◆◆
「セバスチャン、お嬢様をなんとかして!」
さわやかな朝の空気を壊す声。声の主はお嬢様の侍女のキャサリン。
ベテラン侍女である彼女をしても寝起きのお嬢様は手に余る。キャサリンの後ろには同じく侍女のサラが立っている。サラのお仕着せが乱れている。ああ、お嬢様にやられたか。
私の名前はセバスチャン。ジェイド侯爵家に勤める従者である。
私の主人はジェイド侯爵様であるが、仕事は麗しのお嬢様マリアンヌ様のお世話である。
マリアンヌ様は容姿端麗、才学非凡で才色兼備なお嬢様であるが、一つだけ欠点がある。
寝起きが悪い。
そう、寝起きが悪いのである。
今朝もキャサリンとサラがお嬢様を起こしに向かったのだが早々にあきらめて私のところに来たのだ。
嫁入り前のうら若いお嬢様の寝室に入るのはためらわれるがこれは仕方ない。これは仕事だから仕方がないのである。
二人を従え、お嬢様の部屋に入るとまずは胸一杯に部屋の空気を吸い込む。ふむふむいつもながらかぐわしい。私が薫りを楽しんでいると後ろからキャサリンに背中をどつかれた。怖いので振り返らず静かにベッドに向かう。
広い部屋の中央にあるベッドは侯爵家としては地味だが品が良い。その上には高貴な令嬢らしからぬ、大の字になって寝ている物体がある。
私は二人に目くばせをすると、静かにベッドに乗る。ここで起こすとサラの二の舞だ。そろりそろりと嬢様のそばに寄る。そして声色を作りお嬢様の耳元でささやく。
「マリアンヌ、今日も麗しいね、そろそろ起きてくれないかな」
「ロバート様! ……!」
婚約者でありお嬢様の最愛の方であるロバート王太子殿下の名前を呼び飛び起きたお嬢様。きょろきょろと周りを見回して、私の顔を見るとその顔がみるみる険しくなる。
「セバスチャン、おまえ……」
「そろそろ起きてください、遅刻しますよ。今日の予定は学園での授業のあとに王太子殿下とお約束が……」
「こぉのぉ痴れ者がぁ~」
今日もお嬢様からきつい一発を頂きました。こればかりは他の者には任せられません。
いや、キャサリンさん、サラも残念なモノを見るような目で見ないでください。こうやって体を張って二人の代わりにお嬢様を起こしてるのですから。
天気も良く馬車は快調に学園に向かっている。私の腫れた頬を風がやさしく撫でていく。御者台には私とベテラン御者のジョンが、馬車と併走して女性護衛のジルが馬で走っている。
お嬢様とサラは馬車の中だ。中からはひそひそと話す声がするが、ときどきキャーというサラの黄色い声が聞こえるのはコイバナをしているのか。お嬢様はもちろんサラもジルにも恋人がいる。ジョン爺は長年連れ添った奥さんがいる。独り者は私だけ。
「なんで恋人出来ないのかなぁ」
独り言が聞こえたのかジョン爺が私の顔を見てつぶやく。
「顔はいいのだがなぁ」
学園に到着すると、お嬢様は私のほうを見もせずジルとサラを従えさっさと中に入ってしまう。まだ怒ってるのかな?ジョンが馬に水をやりにいくとしばらく暇だ。
私はロータリーの横のベンチがある休憩場所に向かう。顔見知りの従者仲間に挨拶をしながら奥に向かうと目的の人物を見つけた。
背中合わせで座り合い言葉を言う。
「うみ」
「やま」
ややたって彼女、ラピスラズリ男爵家令嬢のアンジェリカ嬢が言う。
「この合言葉、必要ですか?」
必要だ、いや、要らないか。
一度座ったベンチを立ち私は彼女の横に座る。彼女はこの学園の生徒でお嬢様と同じく二年生。周りに人眼があるとはいえさすがに貴族の令嬢と二人きりというのはまずいので彼女は平民の服を着ている。
栗色の髪に茶色い目。少しそばかすのあるどちらかというと平民によくいる地味な女の子。
なのだが、ひたいに一本ピンク色のほつれ毛が出ている。
「地毛が一本出てるぞ」
「あああ、あとで直します、ありがとうございます。それで、今週の分はこちらです」
彼女が差し出した封筒には数十枚の紙にびっしりと文字が書いてある。
私はそれに目を通す。
そこには、昨日までのお嬢様の学園での行動が書いてあった。
「さすがお嬢様、下級生への心配りがすばらしい」
「そうなんですよ、心折れそうになった彼女の肩を優しく抱きしめるその姿はまるで聖女、いや、女神様でした。その場にいた女子はみな代わって欲しいと思ってたはずですよ、汚い男子はその場にいませんでしたからご安心を。あのときほどスマホのないこの世界を恨んだことはありませんわ」
早口で話す彼女はそのシーンを思い出したのか目が潤み頬を赤く染めている。彼女は同性愛というわけではなく、ただ単にお嬢様が好きすぎるだけ。私と同類だ。
読み終わり懐にそれをしまった私は彼女に封筒と小さい袋を渡す。封筒には屋敷でのマリアンヌ様の尊いエピソードが、小さい袋の中には銀貨が何枚か入っている。
「ありがとうございます。マリアンヌ様のまわりには特に変わりがなかったのですが、」
「どうした?」
「1年生のタラゴン男爵令嬢が第二王子殿下に接近しています」
「あぁ、あの、ピンクの髪の元平民の。この間、私たちの目の前でわざと転んだ令嬢か」
「そうなんですよ。あの時の怖い目は……」
アンジェリカ嬢が思い出したのか震えている。
『ニセヒロイン』
彼女がぶつけられたセリフはタラゴン男爵令嬢が転生者であることを伺わせる。
「でも、不思議なんですよ。私と生まれ育った辺りは同じはずなのに見た覚えがないです」
「ふむ、それにタラゴン男爵家は調べているがなにも出てこなくて逆におかしい」
アンジェリカは心配そうに言う。
「私が物語と違う行動したから、新しいヒロインが生まれたのでしょうか?」
アンジェリカ嬢と私は同じ世界、日本、から転生した転生者だ。
そして今いる世界は前世で夢中になった異世界物小説の世界だ。
お嬢様、マリアンヌ様はいわゆる悪役令嬢。愛するロバート様がヒロインのアンジェリカ嬢に奪われ、病んでしまい、魔王の甘言に乗り世界を滅ぼそうとしてしまう。それを真実の愛で結ばれた王太子ロバート様と聖女の力に目覚めたアンジェリカ嬢、そして私を含めた協力者たちにより成敗されるべたな話だ。
前世の私もアンジェリカ嬢も、ヒロインよりもマリアンヌ様が推し。物語の王太子は浮気者だしヒロインは掠奪愛だし、どう見てもマリアンヌ様悪くないし。
なので、せっかくこの世界に生まれ変わったのだからマリアンヌ様を助けて幸せになってもらい、ついでに私たちは平穏に暮らしたいと思っている。
だって、魔王復活で街は壊され何人もの人が死んでるんだよ。ページ1枚で終わらせられていたけどさ。
そろそろ移動しようかと思ったときだった。
「おもしろそうな話をしているな、私も混ぜてもらえるかな」
後ろから声をかけられ二人は飛び上がりそうになった。
おそるおそる振り返るとそこには次期国王であるロバート殿下がいらした。
「それを見せてもらえるかな?」
私もアンジェリカ嬢も立ち上がってこくこくと人形のようにうなづき、紙を護衛に渡そうとした。
ロバート殿下はそれを横からひったくりベンチに腰掛け黙々と読み始めた。
どのくらいたっただろう。アンジェリカ嬢は授業があるし私も仕事がある。じりじりとしていると王太子殿下が紙を丸めて手をたたきながら言った。
「けしからんな、我が婚約者のマリアンヌをこんなに事細かく調べるとは」
「あっあの、」
「直答など不敬だぞ」
護衛が叱咤する。
「まぁよい、直答を許す。お前ら、今までもこのようなものをやり取りしていたのか」
「はっ、はい」
二人で声を合わせて答える。
「いつからだい?」
「あっ、あの、お嬢様が入学されたころからお嬢様が心配で、アンジェリカ様にお願いして様子を見ていただきまして」
「ジェイド侯爵令嬢は皆のあこがれの方なので、セバスチャンさんが心配するのもわかるので協力させてもらっています。昨日も、ジェイド侯爵令嬢が、失敗した下級生の令嬢をフォローされていて、不敬だと震えている彼女の方を優しく抱きしめて耳元でなにかおっしゃって、失敗した彼女を慰めていたのだと思われますが、それがとても尊くて、周りの女生徒は皆……」
「なるほど、それはわかる。マリアンヌは女子にも人気があるのだな。しかし、女子とはいえ肩を抱くのはちょっと妬ましいが、それをいうと心が狭い婚約者だと言われそうだしな、悩ましいところだ……」
あー、揃ったらイケナイ三人が揃っちゃいましたか? いや、自覚ぐらいしてますよ、私も。
護衛の方、お疲れ様です。
結局、王太子殿下公認となり、報告書は二部作ることになった。
とはいえ学生であるアンジェリカが嬢が一人でそれをつくるのは無理があるので、専門の侍女を探してくれるそうだ。これが後で問題になるのだが、この時はだれもそこまで思い至らなかった。
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