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1.ザマァされるはずのヒロインに転生してしまった
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「アクヤクレイジョウ、貴様との婚約を破棄する!」
「だぁ~~、だぁ~、だぁ……」
「貴様はナリスマシヒロインが気に食わぬからと言っていじめていたそうじゃないか」
「ウキャキャキャキャ」
「あまつさえ、先日は階段から突き落とそうとしたことは調べがついている」
「ばぁ~~、ぶぅ~~」
「ええい、うるさい、なんで神聖なる卒業式に赤子など連れてくるんだ」
壇上には金色の髪もまぶしい王子様と緑、青、茶の貴公子たちが、赤い髪のおとなし気な少女を護るように立っている。
それに相対しているのが黒髪の美少女。すらりとしたその躰に見合わぬ豊かな胸。黒髪は濡れ羽色というのだろう、腰まで伸びたその髪は光をすべて吸い込みそうな色だ。
「殿下、恐れながら申し上げます。そちらの赤子は本日卒業を迎えたコーリャクタイショウ・オサナナジミ様と私の友人であるホントーノヒロイン様の息子さんですわ。本日は卒業を祝うために特別に私が手配いたしましたの。これは陛下にもお認め頂いておりますわ」
いや、それ、おかしいだろう。私、ホントーノヒロインは心の中で突っ込む。
「しかし、がまんができず大声をだす赤子などこの場にふさわしくないだろう」
そう、ボンクーラ王子その通り。しかしあんたもこんな場で断罪とか婚約破棄とかおかしいの気がついてよね。
私、ホントーノヒロインは前世の記憶があるいわゆる転生者だ。断罪されていた公爵家令嬢のアクヤクレイジョウ様のお家、トッテモスゴイ公爵家の寄子のチホウニヨクアル男爵家に生まれた。
子供のころおてんばだった私は木登りしていて落ちて前世の記憶を知るっていうありがちなパターンで自分が転生者だとわかった。わかっても私が転生した先がどんな話なのかは全然分からない。主家のお嬢様であるアクヤクレイジョウ様とお会いした時にようやくこの人が悪役令嬢かぁって思った程度。
一方のアクヤクレイジョウ様は私と会ったときに記憶がずずずっっと頭に入り込んだ(後日語る)みたいでそれまでのマナーもダンスも勉強もできるけど周りにあたりがきついわがままお嬢様から周りに配慮してちょっとわがままかなに変わったらしいの。後で主家の使用人の皆様から大変感謝されたけど、それって私のせいじゃないよね、お嬢様の前世の記憶のおかげだよね。
私は前世チートでそこそこ何でもできるようになったけど、それを隠して平々凡々な田舎令嬢を装ってたの。だって学園に行って王子様とゆかいな仲間たちとあんなことやこんなことがあってお嬢様と対立したくないじゃない。
だけどお嬢様が余計なことをしてくれた。自分が王都の学園に行く時に私と幼馴染を連れて行きたいって。それも従者じゃなくて学友として。もちろん抵抗しましたよ。でも主家のそれも国内筆頭の公爵家の御意向、逆らえないよね。泣く泣く私は幼馴染と一緒に王都の学園に入学したの。
学園は面白かったわ。でも、なぜか王子さまとゆかいな仲間と会う機会が多かったり、お嬢様には専任の護衛が居るのに幼馴染を護衛としてそばに置いたり。鈍い私でもわかったの。アクヤクレイジョウ様はオサナナジミが好き。そして邪魔な私を王子様とゆかいな仲間に押し付けて自分は幼馴染と交流を深める。そうはいかせるものですか。
私の身代わりに王子とゆかいな仲間たちを誘惑する人を探していたらあっちから飛び込んできた。普段私にあたりがきついくせに王子とゆかいな仲間たちがいる前では私が彼女をいじめているように見せかける。演技派ヒロインの名前はナリスマシヒロイン。元平民で母親は王都の娼館の売れっ娘。見初めた男爵と母が結婚したのでそのまま養子になった娘。一見清楚でおとなしそうに見えて、男たちを手玉に取るのが上手。なので私も罪悪感なしにヒロインの役を押し付けた。
あとは何とかお嬢様と幼馴染を引き離す方法を考えないと。いろいろ考えたけど前世を含め恋愛偏差値は最低ランクの私には何も考えつかない。なので、長期の休みに領地に戻った時に逆夜這いを仕掛けてみた。やさしい熊のようで朴念仁に見えた彼も男でした。私が誰のものか彼がどう思っているか身体中に「わからせ」られました。わからされたつぎは、うん、無事に授かりました。それを理由に学園は退学。幼馴染、いや、夫も学園には月に数日だけ登校してあとは私と一緒に領地で過ごす日々。物語の中の学園なんてそんな感じでゆるいよねー。
一方、アクヤクレイジョウ様はナリスマシヒロインとの攻防が始まってしまい、私達に関わる暇がなかったようです。それはそれは激しい攻防だったようですが、そこは公爵家令嬢、王宮内外に様々な伝手がありますから相手に悟られないようにどんどん締め付けていったそうです。
久しぶりでアクヤクレイジョウ様から連絡があったのは夫が卒業の見込みが付いたころ。夫の卒業式には二人そろって出席してほしいとのお願いという名の命令。主家のお嬢様の要望には逆らえませんって。
久しぶりの王都、アクヤクレイジョウ様はすこしやつれたかな。それでも笑顔がまぶしい。勝ったのね、卒業パーティが楽しみだわ。
こうして私たちはここにいるのだけど、お嬢様どう始末をつけるのかしら?
「そこまでだ!ボンクーラ、それからそこにいる4人も話がある、おいこいつらを連れていけ」
あー、王様登場。なんか早くない?まきがはいってるのかな?まぁせっかくの卒業式だから思い出づくりしたい人たちもいるよね。うん、王様偉い。いや王様は偉い人だけど。
「騒がせてすまなかった。このままパーティをつづけてくれ。トッテモスゴイ公爵には改めて謝罪に伺う」
音楽が始まり一組、また一組とホールの中央に出て踊り始める。
「あなたたちも踊りに行ったら? そ、それとも、オサナナジミ様、わたしと踊りますか?」
「光栄ではありますが、妻と子供が心配なのでそばについていたいと思います」
「でっ、では、うちの侍女がその子を預かりますからお二人で踊っていらしたら」
さすがにそこまで言われて断るのもね。なので二人で王宮での最初で最後のダンスを楽しんだ、はずだった。だって地方の弱小貴族が王宮に来るなんてないはず。そう思ってたころもありました。
ちなみに王子と愉快な仲間たちは地方に幽閉。ナリスマシヒロインは行方不明。アクヤクレイジョウ様は何番目かの王位継承権をすっ飛ばして王太子になり十年後に即位された。
更に数年後、王都はお祝いで湧いていた。長らく独身を貫いてきたアクヤクレイジョウ陛下がようやく王配を迎えられる。しかもそのお腹にはお子様が宿っていらっしゃる。こんなにめでたいことはないだろう。順番が違うってそんなことは気にしない。
私はあのあと王位を継ぐことになったアクヤクレイジョウ様たっての願いで女官として王宮に勤め今では女王専属の女官として働いている。夫も役人として王宮内で働いている。私達には息子ばかリ4人の子供がいる。長男で夫の卒業式の女王様に面倒を見ていただいたゾクヘンノヒーローが王配になったのだ。私は男の子ばかりいる母親が言いたいセリフNo.1をここぞとばかり言ってみる。
「私、男の子ばかりだったから娘が欲しかったのよね。よろしくお願いしますわ、アクヤクレイジョウ様」
女王様は笑顔を見せているけれど頬はぴくぴく動いている。二人しての茶番を見ながら夫はなにやら息子に言っている。
「「なにかしら?」」
「「なっ、なんでもありません!」」
今日も王宮は平和です。
「だぁ~~、だぁ~、だぁ……」
「貴様はナリスマシヒロインが気に食わぬからと言っていじめていたそうじゃないか」
「ウキャキャキャキャ」
「あまつさえ、先日は階段から突き落とそうとしたことは調べがついている」
「ばぁ~~、ぶぅ~~」
「ええい、うるさい、なんで神聖なる卒業式に赤子など連れてくるんだ」
壇上には金色の髪もまぶしい王子様と緑、青、茶の貴公子たちが、赤い髪のおとなし気な少女を護るように立っている。
それに相対しているのが黒髪の美少女。すらりとしたその躰に見合わぬ豊かな胸。黒髪は濡れ羽色というのだろう、腰まで伸びたその髪は光をすべて吸い込みそうな色だ。
「殿下、恐れながら申し上げます。そちらの赤子は本日卒業を迎えたコーリャクタイショウ・オサナナジミ様と私の友人であるホントーノヒロイン様の息子さんですわ。本日は卒業を祝うために特別に私が手配いたしましたの。これは陛下にもお認め頂いておりますわ」
いや、それ、おかしいだろう。私、ホントーノヒロインは心の中で突っ込む。
「しかし、がまんができず大声をだす赤子などこの場にふさわしくないだろう」
そう、ボンクーラ王子その通り。しかしあんたもこんな場で断罪とか婚約破棄とかおかしいの気がついてよね。
私、ホントーノヒロインは前世の記憶があるいわゆる転生者だ。断罪されていた公爵家令嬢のアクヤクレイジョウ様のお家、トッテモスゴイ公爵家の寄子のチホウニヨクアル男爵家に生まれた。
子供のころおてんばだった私は木登りしていて落ちて前世の記憶を知るっていうありがちなパターンで自分が転生者だとわかった。わかっても私が転生した先がどんな話なのかは全然分からない。主家のお嬢様であるアクヤクレイジョウ様とお会いした時にようやくこの人が悪役令嬢かぁって思った程度。
一方のアクヤクレイジョウ様は私と会ったときに記憶がずずずっっと頭に入り込んだ(後日語る)みたいでそれまでのマナーもダンスも勉強もできるけど周りにあたりがきついわがままお嬢様から周りに配慮してちょっとわがままかなに変わったらしいの。後で主家の使用人の皆様から大変感謝されたけど、それって私のせいじゃないよね、お嬢様の前世の記憶のおかげだよね。
私は前世チートでそこそこ何でもできるようになったけど、それを隠して平々凡々な田舎令嬢を装ってたの。だって学園に行って王子様とゆかいな仲間たちとあんなことやこんなことがあってお嬢様と対立したくないじゃない。
だけどお嬢様が余計なことをしてくれた。自分が王都の学園に行く時に私と幼馴染を連れて行きたいって。それも従者じゃなくて学友として。もちろん抵抗しましたよ。でも主家のそれも国内筆頭の公爵家の御意向、逆らえないよね。泣く泣く私は幼馴染と一緒に王都の学園に入学したの。
学園は面白かったわ。でも、なぜか王子さまとゆかいな仲間と会う機会が多かったり、お嬢様には専任の護衛が居るのに幼馴染を護衛としてそばに置いたり。鈍い私でもわかったの。アクヤクレイジョウ様はオサナナジミが好き。そして邪魔な私を王子様とゆかいな仲間に押し付けて自分は幼馴染と交流を深める。そうはいかせるものですか。
私の身代わりに王子とゆかいな仲間たちを誘惑する人を探していたらあっちから飛び込んできた。普段私にあたりがきついくせに王子とゆかいな仲間たちがいる前では私が彼女をいじめているように見せかける。演技派ヒロインの名前はナリスマシヒロイン。元平民で母親は王都の娼館の売れっ娘。見初めた男爵と母が結婚したのでそのまま養子になった娘。一見清楚でおとなしそうに見えて、男たちを手玉に取るのが上手。なので私も罪悪感なしにヒロインの役を押し付けた。
あとは何とかお嬢様と幼馴染を引き離す方法を考えないと。いろいろ考えたけど前世を含め恋愛偏差値は最低ランクの私には何も考えつかない。なので、長期の休みに領地に戻った時に逆夜這いを仕掛けてみた。やさしい熊のようで朴念仁に見えた彼も男でした。私が誰のものか彼がどう思っているか身体中に「わからせ」られました。わからされたつぎは、うん、無事に授かりました。それを理由に学園は退学。幼馴染、いや、夫も学園には月に数日だけ登校してあとは私と一緒に領地で過ごす日々。物語の中の学園なんてそんな感じでゆるいよねー。
一方、アクヤクレイジョウ様はナリスマシヒロインとの攻防が始まってしまい、私達に関わる暇がなかったようです。それはそれは激しい攻防だったようですが、そこは公爵家令嬢、王宮内外に様々な伝手がありますから相手に悟られないようにどんどん締め付けていったそうです。
久しぶりでアクヤクレイジョウ様から連絡があったのは夫が卒業の見込みが付いたころ。夫の卒業式には二人そろって出席してほしいとのお願いという名の命令。主家のお嬢様の要望には逆らえませんって。
久しぶりの王都、アクヤクレイジョウ様はすこしやつれたかな。それでも笑顔がまぶしい。勝ったのね、卒業パーティが楽しみだわ。
こうして私たちはここにいるのだけど、お嬢様どう始末をつけるのかしら?
「そこまでだ!ボンクーラ、それからそこにいる4人も話がある、おいこいつらを連れていけ」
あー、王様登場。なんか早くない?まきがはいってるのかな?まぁせっかくの卒業式だから思い出づくりしたい人たちもいるよね。うん、王様偉い。いや王様は偉い人だけど。
「騒がせてすまなかった。このままパーティをつづけてくれ。トッテモスゴイ公爵には改めて謝罪に伺う」
音楽が始まり一組、また一組とホールの中央に出て踊り始める。
「あなたたちも踊りに行ったら? そ、それとも、オサナナジミ様、わたしと踊りますか?」
「光栄ではありますが、妻と子供が心配なのでそばについていたいと思います」
「でっ、では、うちの侍女がその子を預かりますからお二人で踊っていらしたら」
さすがにそこまで言われて断るのもね。なので二人で王宮での最初で最後のダンスを楽しんだ、はずだった。だって地方の弱小貴族が王宮に来るなんてないはず。そう思ってたころもありました。
ちなみに王子と愉快な仲間たちは地方に幽閉。ナリスマシヒロインは行方不明。アクヤクレイジョウ様は何番目かの王位継承権をすっ飛ばして王太子になり十年後に即位された。
更に数年後、王都はお祝いで湧いていた。長らく独身を貫いてきたアクヤクレイジョウ陛下がようやく王配を迎えられる。しかもそのお腹にはお子様が宿っていらっしゃる。こんなにめでたいことはないだろう。順番が違うってそんなことは気にしない。
私はあのあと王位を継ぐことになったアクヤクレイジョウ様たっての願いで女官として王宮に勤め今では女王専属の女官として働いている。夫も役人として王宮内で働いている。私達には息子ばかリ4人の子供がいる。長男で夫の卒業式の女王様に面倒を見ていただいたゾクヘンノヒーローが王配になったのだ。私は男の子ばかりいる母親が言いたいセリフNo.1をここぞとばかり言ってみる。
「私、男の子ばかりだったから娘が欲しかったのよね。よろしくお願いしますわ、アクヤクレイジョウ様」
女王様は笑顔を見せているけれど頬はぴくぴく動いている。二人しての茶番を見ながら夫はなにやら息子に言っている。
「「なにかしら?」」
「「なっ、なんでもありません!」」
今日も王宮は平和です。
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