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一話
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あの夢を見たのは、これで9回目だった。
いつも同じ夢。午後が暇になり有給を消化しろと言われいつもより早く自宅に帰ると妻が知らない男と交わっていた。
調べたら子供も自分の子ではなかった。
なによりきつかったのは、妻が自分の知らない女になったかのようにまったく変わってしまっていたこと。付き合い始めたころは浮気や不倫を嫌う真面目な女で相手を思いやる人だったのだが。
◆◆◆
「で、これで最後か?」
心配した従弟が引越しの手伝いをしてくれている。俺は仕事も変え中学生の頃まで住んでいた町に帰ることになった。そこには祖父母が住んでいた家が残っていて、先ごろ亡くなった伯父が引き継いでいたがいろいろあり俺が引き継ぐことになった。
「あぁ、ありがとう。それで最後だよ」
従弟は伯父の一人っ子でアメリカに住んでいる。伯父が亡くなり伯母を連れてアメリカに戻ることになっている。
「本当に大丈夫か?」
「まぁ大丈夫だよ、それより伯母さんにもよろしく伝えてくれ」
伯母は伯父の看病のため都会に引っ越していた。なのでこちらの家はほぼ空っぽだった。
◆◆◆
荷物を少し片づけたところで散歩をした。もう十年以上は離れていた街なのだが歩いてみるといろいろ思い出す。祖父母の家の周りはすぐに分かった。
街の北に山がありその麓に神社がある。
「挨拶代わりにお参りするか」
誰に言うでもなく独り言を言い鳥居をくぐる。
巫女さんが境内を掃除していた。長くきれいな黒髪を後ろで束ねている。彼女が掃除するのに邪魔にならないように避けて本殿の前でおじぎをする。
「ご無沙汰しています。これからよろしくお願いします」
『おぉ、ひさしぶりじゃな』
空耳か、誰かの声に迎えられた気がした。
戻ろうとしたら巫女さんがこちらをじっと見ている。
「青木君、かな?」
声を掛けてきた彼女は小中学生の時の同級生で初恋の人で元カノだった。
「あかね、か。久しぶりだね」
あ、ちょっと居心地が悪い。彼女とは中学の時に付き合っていた。そしてお互い初めての人だ。高校から地元を離れたので離れ離れになりその後自然消滅したのだが。
「遊びに来たの、かな?」
「いや、またこちらに戻ってきた。こちらで仕事も探した。独り者だから気楽で……」
あかねがいきなり抱き着いてきた。
「なんで何も言わないでいなくなったのよぅ」
俺は何も言わずに抱きしめかえした。けれどいいのか?
◆◆◆
あかねが日を置かずうちに来るようになった。そして何となくそう言う関係になり、年を越し春になったら結婚することになった。
「あたしと別れてから何人と付き合ったか、白状しろ!」
子供の頃は物静かだったあかねにきつく追及される。
「二人、いや三人。でもみんな浮気されて別れた」
「本当かなぁ?」
「なんか俺と寝るとき他の男の名前で呼ばれるようになって、それが浮気相手の名前で、いつもそうなんだよね。本人は俺の名前を呼んでるつもりらしいんだ。変だよね」
あかねは黙って聞いている。
「それになぜか妻の浮気していたところをみてしまった夢を何度も見てね。だから参っちゃってこっちに来た」
「あぁ、白蛇様を裏切ったからね、罰が当たったんだ」
裏切るってなんだ?
「白蛇様を裏切るって?」
「あなたは覚えてないの?」
そう言うとちょっと拗ねたように頭を俺の胸に埋める。
「初めての時に言ったよね、私は白蛇様に守られているって」
あかねの言葉に嘘はなさそうだ、そんな気がした。そしてもうあかねから逃げられない、それもわかった。
「初めだから、白蛇様に誓って私を大事にするって」
少し涙目であかねは続けた。
「それに高校は別々になってもちゃんと迎えに来るって」
やばいすっかり忘れてる。
白蛇様の愛子なあかねをぞんざいに扱った報いが来たのか。ようやく俺の不幸に合点がいった。
◆◆◆
俺とあかねが付き合いだした切っ掛けは俺からの告白だったはずだが、その前から気になっていたらしい。
「小学生の時にガキ大将が神社の裏で蛇に石を投げていたでしょ、覚えてる?」
「そんなことあったかなぁ」
「あったの。そしたらあなたが、『蛇は神様の使いだから石投げたらだめだ』って言って、それでもガキ大将が辞めなかったから立ち向かったの」
なんとなく覚えているような。たしかに神社の裏でガキ大将に殴られて泣いた覚えがある。
「おかげで白蛇様は無事に子供を連れてお山に戻れたの」
「でね、そのときに私見てて、それから気になって、そう思っていたらあなたから告白されて……うれしかったわぁ」
知らなかった。そんな前から俺の事気にしていてくれたんだ。それなのに俺は……。
「そんな顔しないの。でも、これからは、わかってでしょ」
「はい……」
◆◆◆
あれから何年だろう。俺はあかねの尻の下だがそれなりに仲良くやっている。
それまでの不幸は何だったのかと言うくらい幸せだ。
「また女に見とれてる」
「いや、ちょっと見ただけだろう」
「パパ浮気者?」
幼い娘がなんでそんな言葉を知っているんだ。
「そう浮気者なの。ちゃんと叱らないとね~」
「ね~」
これはまた今夜は大変そうだ♥。
いつも同じ夢。午後が暇になり有給を消化しろと言われいつもより早く自宅に帰ると妻が知らない男と交わっていた。
調べたら子供も自分の子ではなかった。
なによりきつかったのは、妻が自分の知らない女になったかのようにまったく変わってしまっていたこと。付き合い始めたころは浮気や不倫を嫌う真面目な女で相手を思いやる人だったのだが。
◆◆◆
「で、これで最後か?」
心配した従弟が引越しの手伝いをしてくれている。俺は仕事も変え中学生の頃まで住んでいた町に帰ることになった。そこには祖父母が住んでいた家が残っていて、先ごろ亡くなった伯父が引き継いでいたがいろいろあり俺が引き継ぐことになった。
「あぁ、ありがとう。それで最後だよ」
従弟は伯父の一人っ子でアメリカに住んでいる。伯父が亡くなり伯母を連れてアメリカに戻ることになっている。
「本当に大丈夫か?」
「まぁ大丈夫だよ、それより伯母さんにもよろしく伝えてくれ」
伯母は伯父の看病のため都会に引っ越していた。なのでこちらの家はほぼ空っぽだった。
◆◆◆
荷物を少し片づけたところで散歩をした。もう十年以上は離れていた街なのだが歩いてみるといろいろ思い出す。祖父母の家の周りはすぐに分かった。
街の北に山がありその麓に神社がある。
「挨拶代わりにお参りするか」
誰に言うでもなく独り言を言い鳥居をくぐる。
巫女さんが境内を掃除していた。長くきれいな黒髪を後ろで束ねている。彼女が掃除するのに邪魔にならないように避けて本殿の前でおじぎをする。
「ご無沙汰しています。これからよろしくお願いします」
『おぉ、ひさしぶりじゃな』
空耳か、誰かの声に迎えられた気がした。
戻ろうとしたら巫女さんがこちらをじっと見ている。
「青木君、かな?」
声を掛けてきた彼女は小中学生の時の同級生で初恋の人で元カノだった。
「あかね、か。久しぶりだね」
あ、ちょっと居心地が悪い。彼女とは中学の時に付き合っていた。そしてお互い初めての人だ。高校から地元を離れたので離れ離れになりその後自然消滅したのだが。
「遊びに来たの、かな?」
「いや、またこちらに戻ってきた。こちらで仕事も探した。独り者だから気楽で……」
あかねがいきなり抱き着いてきた。
「なんで何も言わないでいなくなったのよぅ」
俺は何も言わずに抱きしめかえした。けれどいいのか?
◆◆◆
あかねが日を置かずうちに来るようになった。そして何となくそう言う関係になり、年を越し春になったら結婚することになった。
「あたしと別れてから何人と付き合ったか、白状しろ!」
子供の頃は物静かだったあかねにきつく追及される。
「二人、いや三人。でもみんな浮気されて別れた」
「本当かなぁ?」
「なんか俺と寝るとき他の男の名前で呼ばれるようになって、それが浮気相手の名前で、いつもそうなんだよね。本人は俺の名前を呼んでるつもりらしいんだ。変だよね」
あかねは黙って聞いている。
「それになぜか妻の浮気していたところをみてしまった夢を何度も見てね。だから参っちゃってこっちに来た」
「あぁ、白蛇様を裏切ったからね、罰が当たったんだ」
裏切るってなんだ?
「白蛇様を裏切るって?」
「あなたは覚えてないの?」
そう言うとちょっと拗ねたように頭を俺の胸に埋める。
「初めての時に言ったよね、私は白蛇様に守られているって」
あかねの言葉に嘘はなさそうだ、そんな気がした。そしてもうあかねから逃げられない、それもわかった。
「初めだから、白蛇様に誓って私を大事にするって」
少し涙目であかねは続けた。
「それに高校は別々になってもちゃんと迎えに来るって」
やばいすっかり忘れてる。
白蛇様の愛子なあかねをぞんざいに扱った報いが来たのか。ようやく俺の不幸に合点がいった。
◆◆◆
俺とあかねが付き合いだした切っ掛けは俺からの告白だったはずだが、その前から気になっていたらしい。
「小学生の時にガキ大将が神社の裏で蛇に石を投げていたでしょ、覚えてる?」
「そんなことあったかなぁ」
「あったの。そしたらあなたが、『蛇は神様の使いだから石投げたらだめだ』って言って、それでもガキ大将が辞めなかったから立ち向かったの」
なんとなく覚えているような。たしかに神社の裏でガキ大将に殴られて泣いた覚えがある。
「おかげで白蛇様は無事に子供を連れてお山に戻れたの」
「でね、そのときに私見てて、それから気になって、そう思っていたらあなたから告白されて……うれしかったわぁ」
知らなかった。そんな前から俺の事気にしていてくれたんだ。それなのに俺は……。
「そんな顔しないの。でも、これからは、わかってでしょ」
「はい……」
◆◆◆
あれから何年だろう。俺はあかねの尻の下だがそれなりに仲良くやっている。
それまでの不幸は何だったのかと言うくらい幸せだ。
「また女に見とれてる」
「いや、ちょっと見ただけだろう」
「パパ浮気者?」
幼い娘がなんでそんな言葉を知っているんだ。
「そう浮気者なの。ちゃんと叱らないとね~」
「ね~」
これはまた今夜は大変そうだ♥。
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