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第六章 泥沼のプリンセス
5. 絶望と破滅
しおりを挟む■ 6.5.1
「第三皇女殿下を回収した後、ヴィーイーから離脱。直接球状十二星団に向かうわ。先方との交渉はまとまりつつある。条件付きで訪問は許可されるでしょう。
「殿下を球状十二星団に無事送り届けたところでこの依頼は終了とします。何か質問は?」
大ありだ。勿論それは俺だけじゃ無いだろう。
「今の話じゃ、一番肝心なところが含まれていねえよ。ヴィーイーで第三皇女をどうやって回収する? まさかピアに接岸して絨毯敷いて手を引いて、という訳にはいくまい?」
ブラソンがすかさず突っ込んだ。もちろん俺も一番危険度の高いそこの部分が最も気になる。
「そこはまだ決まっていないのよ。その道のプロの知恵を貸して貰えないかしら?」
と、ミリはあっけらかんと抜かしやがった。
要するに、計画の概要だけは決まっているが、細部は何も詰まっていない、と。
そもそも「その道のプロ」というのは何だ。人を誘拐犯みたいに言いやがって。
好意的に取れば、ハフォン軍が勝手に決めるのではなく、こちらの都合も取り込んだ上でのより実践的な計画が立てられる、と考える事も出来るが。
「そもそも、どういうところに捕らえられているんだ? 画像は? 地形情報はあるか? 施設内部の情報は?」
「敵国なのよ。施設内部の情報など無いわ。地形情報については、数十年前に取得した三次元データがあるわ。
「捕らえられている施設は、いわゆる要人捕虜収容所の様なもので、普通の捕虜収容所よりましな施設である分、警備の数も多いわ。」
言葉で言われても今一つよく分からない。
「ミリ、データはないか? あればその辺りに投影するが。」
「無いわけではないのだけれど・・・」
珍しく歯切れの悪い喋り方をする。
ああ、成る程。
「ミリ。子供の頃から刷り込まれていて、実際に機械達とやり合った記録などもあったりして、機械知性体のことを今一つ信用できないというお前の心情は分からないでもない。だが、俺たち地球人は機械知性体と共存共栄している。知っていると思うが、最近地球は機械達とも同盟関係を結んだ。
「この船に限って言えば、レジーナもルナも俺の家族だ。実際、戸籍上で俺の家族として登録されている。ブラソンも、自分で作り出した機械知性体であるノバグと、親友が作り出したメイエラと共にいる。ニュクスとも、な。お前達銀河種族は良く俺たち地球人を規格外の野蛮人扱いするが、ブラソンまでが普通に機械知性体と共存しているこの船を見て、まだ機械知性体達を信用のおけない悪霊のような存在だと思うか?」
俺は、こちらを真っ直ぐに見返してくるミリの眼を見ながら言った。
勿論、ミリの中ではとっくに結論が出ていて、今纏っている変装の人格の設定として表面的に迷っている振りをしているだけかも知れない。
それにしても、これからしばらくは依頼人としてレジーナに乗って行動を共にするのだ。
いつまでもレジーナの声に過剰に反応し、ニュクスの姿を見て怯えてもらっては困る。
「そうね。慣れなくちゃいけないのよね。」
その反応に、何か違和感を感じる。
しかしその違和感が一体何なのか俺自身自覚する前にミリが行動に出た。
「レジーナ? 私のチップ信号は拾えるかしら?」
何というか。行動に出たら出たで、相変わらず大胆な行動をする奴だ。知っていたが。
多分、想像していたとおりに彼女の中ではもうすでに結論は出ていたのだろう。
「はい、ミリ。銀河標準規格準拠の信号を検知しています。」
「この船のネットワークにアクセスを許可してもらえるかしら?」
「乗客(パッセンジャー)権限であれば、すでに使用可能となっています。」
「その権限でデータをそちらに渡すには?」
「AARメニューを有効にして頂いて、トップメニューに表示される本船の顧客御意見窓口(カスタマーサービス)宛に送信ください。」
「ああ、これね。はい、送ったわ。」
ミリの言葉が終わるか終わらないかのうちに、ダイニングテーブル脇に等高線を伴った地形図のホロ画像が投影された。
立体的な地図の中央近くに大きな赤丸のマーカーが点滅している。
ホロ画像は回転しながら、マーカーに向けてズームアップする。数km四方までズームされたとおぼしきところでズームは止まり、ホロはそのまま回転する。
見たところ、多少の地形の高低はあるが基本的に開けた土地のようだった。
「近くの軍事施設は?」
アデールがらしい質問を飛ばす。
「隣に百人程度の兵士が常駐する駐屯地があるわ。他は大体百kmほど離れたところに対空武装を伴った貨物用中心の小規模の地上港がある程度ね。大規模襲撃からの防衛は、環状軌道ステーションと、ステーション駐留艦隊に完全に任せた状態ね。」
ステーション駐留艦隊とは言うが、その構成は艦だけではない。移動砲台や戦闘機など色々な戦闘機械を含む。
ステーション軌道から地上にに向けて艦砲射撃は憚られるだろうが、艦載機やステーション駐留機を出撃させることは出来る。数万kmの高度から大気圏内まで、十分とかからず到達するだろう。
だが、そこに十分な隙間がある。
「降下兵は二十人程度か。地上で呼応する兵士は何人いる?」
「こっちも二十人、一小隊よ。」
合計四十人程度か。
タイミングは合わせられるが、脚が無いな。
「ヴィーイーから数光時程度の距離にホールアウト、到着タイミングを合わせてヴィーイー大気圏内に向けて降下用ポッドをホールショットで射出、降下部隊の展開から少し遅らせてホールショットで当該施設脇の駐屯地を砲撃、混乱に乗じて地上部隊が蜂起し目標の身柄を確保、そこに降下兵を投入して目標の安全を確保。レジーナ自体も現場周辺空域にホールアウトし、目標と部隊を回収。駐留軍が展開を終える前にレジーナはホールドライヴで星系外へ脱出。そんなところか?」
アデールがざっと大枠の作戦内容を提案してくる。俺が考えていたのとよく似ている。
「幾つか問題があるが、まあいい。細かい所は降下部隊の面子と顔をつきあわせて摺り合わせた方が良い。それまで内容を吟味する時間も取れる。
「で、その降下部隊の方だが? 今から迎えに行くのだろう?」
続けてアデールが話題を変えてくる。
そう、俺たちは今、その降下部隊二十人の兵士を確保するために移動中なのだ。まずはそっちを考えなくてはならない。
「ローダフシャン星系だと言ったな。どこに行けば良い? どれかの惑星に降りるのか?」
先程のミリの口振りでは、この兵士達を確保するのはそれほど困難を伴わない風だったが。
「ローダフシャン星系の外縁部には外縁部、ジャンプ可能域の内側に二十ほどの防衛用ステーションを持っている。そのうちのステーション#15に向かってちょうだい。データは今送るわ。」
ミリの言葉が終わるとすぐに、ヴィーイーの地形図が消え、星系のモデル図が表示された。
画像が星系中心部からズームアウトし、星系全体が表示される。さらにズームアウトすると、星系外に黄色い点が幾つも存在しているのが見えるようになった。
星系外の黄色いマーカーのうち一つが赤く変わり、点滅した。
「防衛用ステーション#15は、星系中心部から四光日程離れているわ。三光時程の近傍にジャンプステーションがあり、ここに小規模な駐留艦隊が居る。隣の防衛用ステーションとは一光日ほど離れている。この船なら人知れずステーションに接岸して兵士達を回収し、誰かが気づくよりも前に星系から離脱できる。因みに、ローダフシャン星系での勢力争いはほぼ大勢が決まっていて、新政府側に属する星系と見なしてもらって良い。」
ミリが状況を説明すると同時に星系のモデル図に補助線と距離が表示される。
三光時に駐留艦隊か。時間的余裕は十分にありそうだ。
「成る程。で、そのステーション#15に居る一小隊は旧政府側の兵士、というわけか。ほかに駐留兵は? 交戦の危険性は?」
「交戦の危険性はないわ。そのステーションに駐留しているのは、その陸戦隊の他には十人程度。ステーション#15はすでにその陸戦隊が確保している。これは確認が取れている情報よ。」
「ローダフシャン星系内部にも駐留艦隊は居るだろう。ステーションに立ち寄るか、周辺を遊弋する艦隊と接触する危険性があるだろう?」
心配性と笑われるかも知れないが、しかしレジーナは貨物船でしかないのだ。
見つかればホールドライヴで逃げてしまえばいいとは言え、敵に接触しないに越したことはない。
軍艦と撃ち合いになった場合、こちらの負けは一瞬で確定する。
「付近に他の船が居る可能性は無いわ。このステーション#15とその駐留部隊は見捨てられた部隊なのよ。そこにわざわざ駐留艦隊を送り込んだりはしない。」
つまり、孤立無援の星系外縁部に放置され、食料などの物資不足で死ぬまでそのままという事か?
そもそも、そんな見捨てられるような部隊を拾っても、ヴィーイーで使い物になるのかが心配だ。
逆に、使える部隊ならば、なぜこんな所に放置されているのか疑問だ。その気になればやすやすと旧政府側勢力に接収されてしまうことは、考えなくても分かりそうなものだが。
「少し小細工をしたのよ。情報軍にネットワーク部隊が居るのは、ブラソンは知っているでしょう?」
旧政府側勢力と分類されたその陸戦小隊は、本来他の任地に向かわされ、多分その任地で過酷な任務を与えられて摺り潰されるか、人知れず始末されるか、そのような末路を辿る筈だったらしい。
情報軍のネットワーク部隊が、即戦力として使い物にならないため太陽系外縁部に放置される予定の、新兵ばかりで出来た部隊とデータをすり替えたとの事だった。
しかし、そんなベテラン部隊を摺り潰すなどと、勿体ないことを。
「FMBCの存在はね、まだ一般には開示されていないのよ。だから新政府も大々的にFMBC植え付けの作業をすることはまだ出来ない。でもそのかわり彼らはより効率よくFMBCを生成するナノボットを混ぜた食品を導入したわ。
「事情を知っている者達は、新政府が調達した食料を口にしないようにしている。でも、事情を知っている人の数は多くない。大部分の市民は、知らずに新しい食料を口にしている。」
つまりその部隊は、新政府側支配地域に取り残され、事情を知った上で新政府側の提供する食料を拒否した、という訳なのだろう。
事情がばれていることを苦々しく思いつつ、かといって自国軍を意味もなく虐殺する訳にも行かず、過酷な任務で摺り潰す事で問題を解決することにした、という事か。
しかし、新政府が強化されたナノボットを含む食料を導入したということは。
「そう。分かっている。最終的には事情を知って新食料を口にしない者以外の全てが新政府側に変わる。市民を含めてね。
「かといって、今FMBCの存在を一般に開示するわけには行かない。大パニックになって、瞬時に国が滅亡するわ。」
基本的にたった二種類しか食事がないハフォンで、意識的に避けようとするのでなければ、新政府が導入した食料を避けることは不可能だろう。
その食品に、バイオチップを生成するナノマシンを政府が意図して混入していることが、宗教的にバイオチップを受け入れられない国民に知られたとしたら。
しかもそのバイオチップは、仇敵としているフィコンレイドに依って思想を操作されるものであると知られたら。
勿論新政府はすぐに倒れるだろう。だが、それだけでは終わらない。
誰がすでにバイオチップを持っているのか。誰が思想や思考を操作されているのか。隣人や友人、果ては家族まで、周りの誰も信用できなくなり強い疑心暗鬼に陥り、社会の中の人間関係が根本的なところから崩壊する。すなわち、社会が崩壊する。
さらに、自分自身の脳内にそのチップが有るのかどうか分からない。今自分が考えていることが、本当に自分が考えたことなのか、忌むべきチップによって思考操作された結果なのかが分からなくなる。
自分が分からなくなり、自分が信じられなくなって、最後には自我が崩壊し、発狂するだろう。
ミリが言った、「瞬時に国が滅亡する」というのは、そう言うことだろう。
だから、チップの存在を、そしてチップを生成する食品の存在を公表することが出来ない。
しかし公表しなければ、国民は毎日の食事の中でナノボットを摂取し続ける。政府が提供した食事を、疑うことなく。
つまり、そう遠くないうちに一部を除いてハフォン人全員がFMBCを知らず知らずのうちに導入されてしまい、新政府側の狂信的支持者に変わるという事だ。
ミリが言った『分かっている』とは、旧政府勢力として皇女を擁し、どれほど抵抗を続けたところでもう先は見えていることは理解している、という意味だ。
それでも皇女を逃し、僅かに残った旧政府陣営の人間で何とかハフォンを立て直そうとあがき続ける。
なにも知らずにナノボットを摂取し、思想と思考をコントロールされた国民の数が日一日と増え、敵側に回っていくのを見ながら。
分かっていながらそれを止めることも叶わず。
親族や友人に次々とFMBCが生成し、思想と思考が書き換えられるのを知りつつ眺めていることしか出来ず。
絶望的状況という言葉でさえ生温い、破滅に向かって真っ直ぐに突き進んでいくこの救いようのない事態の中で、それでも何とか国を支えて立て直そうと努力を続けるこの女を、素直にすごい奴だと思った。
他国のこととは言え、自覚することも出来ず逃げることさえ出来ず、絶望と言う名の泥沼の中にずぶずぶと沈み込んでいき、ごく近い将来に破滅という名の巨大な顎に噛み砕かれる運命に向けて真っ直ぐ突き進む、ハフォンという哀れな国の先を案ずる重苦しい空気がダイニングルームに座る俺達を包んでいた。
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