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5、ロイ様はただの推し?

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ロイ様が家に来て、1週間が経った。やっぱり、帰る方法は見つからなかった。

「ロイくん、このまま1ヶ月くらいは家にいたら?」
「いいんですか?」
「もちろんよ!ロイくんはどこかの息子と違ってカッコいいし手伝いもしてくれるしね」
「そんなことないですよ」

母さんはすっかりロイの虜だ。

「まぁ、ゆっくりしていって」
「すまないな」
「ロイがいると家の雰囲気明るくなるし!俺もロイといて楽しいし」
「そうか?」

ロイ様はほっとしたように息をついた。あぁ、横顔が美しい。

「?なにか顔についてるか?」
「へ?!いや、その…かっこいいなぁと」

俯きながら答えるとロイ様が距離を詰めてくる。
いい匂いがする。同じ石鹸を使っているはずなのに、どうしてこんなに違うんだ。

「玲…」
「ろ、ロイ?」
「少し話してもいいだろうか」
「うん…」
「俺には好きな人がいたと言ったこと覚えてるか?」
「うん、覚えてるよ」

ゲームの世界のヒロイン。少し地味目な髪色だが目がパッチリしていて、鼻は小さくて、可愛い顔だ。
おまけに性格もいいときた。

「その子は…正義感も強くて、本当にいい子なんだ」
「そう、なんだ」
「それで、その子は他の男からも好かれているんだ」
「モテモテだね」

しかも、その男たちが王子様とかなんだから、すごいよなぁ。

「だから、俺は帰ったらその子に告白をしようと思ってる」
「そうなの?!じゃあ、早く帰らないとね」
「応援してくれるのか?」
「もちろん!だって、俺たちもう友達でしょ?」
「あぁ!ありがとう」

ぎゅっと抱きしめられる。なんだか、すごくドキドキして顔が赤くなっていくのが分かる。
ロイ様といると、なんだか凄く幸せな気分になる。

しかし、何故か心が痛む。ロイ様が告白しても、ゲーム通りにいけばきっと結ばれない。でも、今はゲーム通りになってない。

だから、もしかしたら…ロイ様はヒロインとくっついてしまうかもしれない。
そう思うと凄く悲しい。推しの幸せを願うことがオタクである俺にとっての使命なのに。

「今日も、一緒に寝よう」
「う、うん!」

今は、ロイ様を独占してもいいよね?…






「はぁ」
「どうした?最近ずっとため息ついてんな」
「うん…実は胸が苦しいというか、なんというか」
「え?大丈夫?」
「なんか、友達が好きな人の話するとすごい悲しいというか苦しいというか」
「ハハ、恋してるじゃん」
「へ?恋?」

恋?こい?コイ?鯉?……ロイ様に恋してるの?!

「こ、こ、こ、恋?!」
「うん、嫉妬してるんでしょ?」
「え?!嫉妬?!」

し、し、嫉妬って?え?!恋?!

思考が追いつかない。

「で、でもその人は男だし!」
「別に性別は関係ないよ」
「え!でも…」
「じゃあ、その人と一緒にいるとどんな気持ち?」
「え?…な、なんかすっごく幸せ」
「じゃあ、好きだね」
「え?!え?!好き?!」
「おめでとー」

ロイ様が好き…なの?俺はしばらく考え込んだ。

好き…ロイ様のことが。いや、でもまだ会って数週間しか経ってないよ?まぁ、ゲームで見てたとはいえ、ロイ様からしたら初対面の男だし…


「好き…」
「誰が?」
「うわっ!び、ビックリしたぁ」
「誰が好きなの?」
「え!いや、別になんでもないよ!」

俺はそっぽを向く。ロイ様のことを好きなのかもしれない。

(片思い、くらいならいいよね?)

俺はこの恋を胸の奥にしまっておくことにした。



家に帰ってからも、ロイ様を見ると胸の高鳴りが止まない。
一緒のベットに入った時は心臓が鳴っていて、ロイ様にも聞こえるんじゃないかと思ってしまった。

「ロイ…」
「ん?どうかしたのか?」
「あのさ、そっち寄ってもいい?」
「…」

ロイ様とくっつきたくて変なこと言ってるかもしれない、ダメに決まってるよね…あー!余計なことするんじゃなかった!

「あぁ、おいで」
「うぐっ…」
「?」

俺は少し、躊躇ったが欲に負けてしまいロイ様の胸元へと近寄る。
ロイ様は嫌がることもなかった。

「おやすみ…」
「あぁ、おやすみ」

その日、俺はロイ様への恋心を確信した。




次の日、目が覚めるとロイ様が目の前にいた。朝から刺激が強すぎて、俺は鼻血が出そうだった。

俺は起き上がって、ふわぁとあくびをする。

「ん…ユリン…」
「…そりゃそうだよね」

戻ったら、告白する。ロイ様はそう言った。こんな風に誰かから想われるのに少し憧れる。
ユリン…きっと俺がヒロインだったら確実にロイ様を選ぶだろう。

「あーあ…どうして、ロイ様を選ばなかったのかなぁ」

と、不思議に感じていた。そして、不意にゲームのパッケージが目についた。
すると、表紙からロイ様が消えていた。

「え…これって」
「ん…」

すると、ロイが目を覚ましたのか起き上がって目を擦っている。
パッケージに目を戻すと、やっぱりロイ様は消えている。

「これって何か関係があるのかな?…」
「玲?行かないのか?」
「あ、今行くね」

なんだか、とても不安になってきた…






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