[本編完結]彼氏がハーレムで困ってます

はな

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35、幸せ

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俺は慎二にちゃんと断った。

すると、次の日、黒板に俺と亮がキスしてる写真が貼られていた。

「これ…お前らマジだったんだな」
「正直、引くわ」
「佐藤ってゲイぽかったもんな」
「七瀬君のこと私、好きだったのに」
「佐藤が無理矢理、七瀬を付き合わせたらしいよ」
「最低じゃん」

一枚の写真から色んな噂が広がっていった。

「…佐藤君」
「な、何?…」
「七瀬君と別れてあげて!あんたが無理矢理やってるの知ってるんだからね!」
「あ、はい」

俺はとりあえず、返事をして女の子から離れる。

「…亮」
「亮くん!あっち行こうよ!」
「七瀬、ほら行こうぜ」
「え、ちょ…」

何故だか、皆んなが俺と亮を遠ざける。亮はちゃんと抵抗してくれるけど、俺は諦めて席に着いた。

「…」
「雪」
「……何」
「あーあ、…みんなからあんなこと言われて可哀想」
「別に、慎二には関係ないじゃん」

俺は本を取り出して読む。すると、慎二はつまんなそうに席に戻った。

(亮なら、ちゃんと戻ってくるし…)

と言いながら少しだけ、不安だった。

「亮、お昼…」
「お昼は私たちと食べるからごめんね」
「そうなんだよね、だから1人で食べてくれる?」
「何勝手に決めてんだよ?雪、行こう」

皆んなを押し退けて俺の手を取ってくれる亮に泣きそうになってしまう。

「フフ、泣かないで」
「ごめん…」

俺は教室の真ん中で亮に抱きついてしまった。すると、誰かが亮を引っ張った。

「あ!ちょっと!」
「おい、七瀬!大丈夫かよ?」
「亮くん、佐藤君に構わなくていいんだよ?」

俺は誰かに突き飛ばされる。亮は心配したように、手を差し伸べようとしたが、誰かがそれを止めた。

「ダメだよ!ちゃんと嫌だって言わなきゃ!」
「は?何言って…」
「おい佐藤!お前さ、七瀬に謝れよ!」

「土下座」という言葉がして、皆んなから一斉に色々言われる。

(どうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしようどうしよう)

「おい、佐藤!早くしろよ」
「違う!俺から雪に告白したんだ!」
「え…」

亮がクラスメイトの手を払って俺の事を優しく抱きしめた。

「…亮」
「行こう」

俺は手を引っ張られて、廊下に出ようとする。でも、皆んなが止めようとした。

「…おい、七瀬。無理しないんでいいんだ。ちゃんと言ってくれよ」
「は?」
「私たちクラスメイトじゃん!佐藤君が七瀬君をこの写真で脅したんだよね?」

(そんな風に広まったんだ…まぁ、元々俺はクラスメイトとそんなに仲良くなかったし当たり前だよね)

亮は俺の手をぎゅっと握った。

「どけ」

俺の手を引っ張って、廊下に出る。そして、屋上まで行った。

「雪、おいで」 
「っ!亮!」 
「ごめんね」
「亮のせいじゃないもん!…カッコよかったよ」

亮にちゅっとキスをすると、キスが返ってくる。
俺は教室に戻りたくなくて体調不良ということで早退することにした。
戻ったら慎二がいるし、皆んなから色々言われるし…

「じゃあ、荷物とってくるね」
「うん…ありがとう」

亮が荷物を取りに行ってくれて、俺は保健室に向かった。
なんとか、早退できるみたいだ。

「雪!」
「あ、ごめんね」
「ううん、全然大丈夫!」
「皆んなから何か言われた?」
「あー…うん、まぁ」

何だか言いにくそうな顔をした。まぁ、どうせ俺と別れろとかなんとか言ってるのだろう。

(慎二には気をつけなくちゃな)

俺は1人で学校から帰った。家には誰もいない。

「多分、早退のこと伝わってるよね?」

俺は部屋に戻りベットに転がった。

「…亮」

俺は昔から何かと虐められる。性格が弱々しいとか、目が気に入らないとか、色々理由はある。

俺は今まで『熟年夫婦』なんて呼ばれていたから祝福されると思っていた。
けど、実際はそんなことなかった。

すると、メッセージが届く。正直、今は携帯とか見たくないけど亮からだったら大変なので一応見る。

見ると慎二からだった。なんか変なものが送られてきてる。
案の定、クラスラインでの俺への悪口の写真だった。

(クラスラインあったんだ?…)

『雪、言われてるよ~』

俺は既読無視して、電源をオフにした。

「もう全部、嫌」

俺は幸せになってはいけないのだろうか?少しでも、幸せになったらそれの倍以上の不幸が迫る。

小学校の頃を思い出してみる。

『…佐藤君、大丈夫?』
『ふぇ?』
『怪我してるね、絆創膏あげるよ』
『あ、ありがとう…』

慎二が妙に輝いて見えたんだ。それから、ずっと好きで好きでたまらなかった。

そのまま俺は瞼を閉じた。

(もう、どうでもいいや)
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