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16、夏休み
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「えー、まぁ明日から夏休みですがね。遊びすぎず、勉強もしっかりとやり、充実した夏休みにしてくださいね。私からは以上です」
校長の長い話は全国共通なのだろうか。俺はいつもは眠くなるが、今日は慎二と帰る約束があるのでワクワクした気持ちでいっぱいだった。
「雪、帰ろっか」
「あ、ちょっと待って」
慎二と帰ろうと準備をする途中、亮が友達と帰ろうとしていた。
「亮!」
「あれ?雪、どうかした?」
「これ、忘れていったよ」
「あ!ハンカチ…ごめんね、ありがと」
「うん!じゃあね」
手を振ると亮も返してくれる。思わず微笑むと、慎二が後ろから抱きしめてきた。
「ん?どうしたの?」
「別に…早く行こ」
慎二に手を引かれて、歩き出す。
(慎二が甘えるって珍しい…)
「あ!慎二~」
「な、中村…」
こっそり、2人で帰る作戦だったのに…もう見つかっちゃった。
「慎二……帰ろ?」
「立花…」
「慎二くんは私たちと帰りたくないのですか?」
「……雪、一緒に帰ってもいい?」
「別に…いいけど」
(どうせ、前みたいになるんだ…今日は寄り道して行こっかな)
歩き出すと、どんどん女の子が増えていく。
俺はみんなの後ろを歩いていった。
「あ…じゃあね」
俺は勇気を出して言ってみるが、みんなの会話にかき消された。
慎二は俺を見ることもなく、気にすることもなく、歩いて行った。
慎二の背中が見えなくなるまで手を振ってみたがやっぱり気づいてくれなかった。
「にゃー」
「クロ~!きてくれたんだね」
この猫はクロ。俺が本を読むときによく来てくれる。
「今日はね、夏目漱石だよ。『吾輩は猫である』クロのもこういう喋り方なのかな?」
「にゃん」
膝の上にいるクロは、「何言ってんだ」みたいな顔をしながら毛繕いをしはじめた。
しばらく、黙々と読んでいると誰かが来たようだ。
「雪」
「え?あ、亮」
「見かけたから来ちゃった。西山と帰るんじゃなかったの?」
俺はズキンと心が痛んだ。
(本当はそのつもりだったのにな…)
「慎二は…女の子と帰っちゃったから、寄り道」
「西山あいつ…雪にこんな顔させるなんて許せん。ってその猫は?」
「この子はいつもここにいるみたい。多分、野良猫かな?」
「雪を初めて見た時もいたよね」
亮は俺の隣に座る。
「初めて見たのって学校じゃなくて?」
「うん、友達と帰ってるときに雪がその猫を撫でてるの見たんだ」
「そ、そうだったんだ!知らなかったな…」
「雪の笑った顔すごい可愛かった」
いつもいつも、可愛いって言う。亮には俺が見えているのだろうか?
「可愛いかな?俺って平凡だよ?」
「雪は可愛いよ。俺も平凡な奴だなとか思ってたけど、笑ったらすごく可愛い」
「え~?何それ、フフ…恥ずかしいね」
すると、膝に乗ってる猫が俺の手をペロペロ舐めてくる。
「ん?どうしたの?」
「にゃー」
「可愛いね」
すると、カシャという音がした。見ると、亮がカメラを俺に向けていた。
「ち、ちょっと!何撮ってんの?」
「可愛すぎて、撮らなきゃ一生後悔すると思って」
「消してよね?」
「絶対嫌だ!消したら、俺死ぬよ?」
「そんなわけないでしょ…消して」
あまりにも抵抗するので俺は諦めたが、それが亮のアレに使われるとは思いもしなかったのである。
「あれ?健斗くん?」
「え?もしかして、雪兄?」
「久しぶり!大きくなったね、何センチ?」
「えっと…この間180いったくらい」
健斗くんに見下ろされて俺は少し泣きそうだ。あんなに小さくて、あんなに可愛かったのに…
「雪兄、今空いてる?」
「え?うん、空いてるけど」
「本当?じゃあさ家に来てよ」
実はこの間行ったばかりと言うこともできずに、着いて行った。
「お、お邪魔します」
「ただいまー」
「あら?雪ちゃんじゃない!」
「おばさん、久しぶり」
おばさんは、俺の肌をすりすりしてくる。
「相変わらず、肌もちもちのつるつるね~」
「あ、ありがとう」
「雪兄、行こう」
手を引かれて、健斗くんの部屋に連れてかれる。慎二とおばさんが料理してる間はここでよく健斗と遊んでいたことを思い出した。
「雪兄、空いたかった」
「俺もだよ」
「頭…撫でて」
「フフ、相変わらずだね」
頭を優しく撫でてあげると、健斗くんはすごく喜んだ。
(健斗くんの後ろに尻尾が見える…)
そしていつの間にか、健斗くんは俺の膝に頭を乗せている。
「甘えん坊さんは直ってないみたいだね」
「雪兄限定だけどね…ずっと甘えたかったのに、あのクソ兄貴が邪魔ばっかしてくるから」
「コラコラ、クソとか言っちゃダメだよ?」
「うん!雪兄もっと俺を叱って?」
(あれ?なんか変な方向に行ってない?)
校長の長い話は全国共通なのだろうか。俺はいつもは眠くなるが、今日は慎二と帰る約束があるのでワクワクした気持ちでいっぱいだった。
「雪、帰ろっか」
「あ、ちょっと待って」
慎二と帰ろうと準備をする途中、亮が友達と帰ろうとしていた。
「亮!」
「あれ?雪、どうかした?」
「これ、忘れていったよ」
「あ!ハンカチ…ごめんね、ありがと」
「うん!じゃあね」
手を振ると亮も返してくれる。思わず微笑むと、慎二が後ろから抱きしめてきた。
「ん?どうしたの?」
「別に…早く行こ」
慎二に手を引かれて、歩き出す。
(慎二が甘えるって珍しい…)
「あ!慎二~」
「な、中村…」
こっそり、2人で帰る作戦だったのに…もう見つかっちゃった。
「慎二……帰ろ?」
「立花…」
「慎二くんは私たちと帰りたくないのですか?」
「……雪、一緒に帰ってもいい?」
「別に…いいけど」
(どうせ、前みたいになるんだ…今日は寄り道して行こっかな)
歩き出すと、どんどん女の子が増えていく。
俺はみんなの後ろを歩いていった。
「あ…じゃあね」
俺は勇気を出して言ってみるが、みんなの会話にかき消された。
慎二は俺を見ることもなく、気にすることもなく、歩いて行った。
慎二の背中が見えなくなるまで手を振ってみたがやっぱり気づいてくれなかった。
「にゃー」
「クロ~!きてくれたんだね」
この猫はクロ。俺が本を読むときによく来てくれる。
「今日はね、夏目漱石だよ。『吾輩は猫である』クロのもこういう喋り方なのかな?」
「にゃん」
膝の上にいるクロは、「何言ってんだ」みたいな顔をしながら毛繕いをしはじめた。
しばらく、黙々と読んでいると誰かが来たようだ。
「雪」
「え?あ、亮」
「見かけたから来ちゃった。西山と帰るんじゃなかったの?」
俺はズキンと心が痛んだ。
(本当はそのつもりだったのにな…)
「慎二は…女の子と帰っちゃったから、寄り道」
「西山あいつ…雪にこんな顔させるなんて許せん。ってその猫は?」
「この子はいつもここにいるみたい。多分、野良猫かな?」
「雪を初めて見た時もいたよね」
亮は俺の隣に座る。
「初めて見たのって学校じゃなくて?」
「うん、友達と帰ってるときに雪がその猫を撫でてるの見たんだ」
「そ、そうだったんだ!知らなかったな…」
「雪の笑った顔すごい可愛かった」
いつもいつも、可愛いって言う。亮には俺が見えているのだろうか?
「可愛いかな?俺って平凡だよ?」
「雪は可愛いよ。俺も平凡な奴だなとか思ってたけど、笑ったらすごく可愛い」
「え~?何それ、フフ…恥ずかしいね」
すると、膝に乗ってる猫が俺の手をペロペロ舐めてくる。
「ん?どうしたの?」
「にゃー」
「可愛いね」
すると、カシャという音がした。見ると、亮がカメラを俺に向けていた。
「ち、ちょっと!何撮ってんの?」
「可愛すぎて、撮らなきゃ一生後悔すると思って」
「消してよね?」
「絶対嫌だ!消したら、俺死ぬよ?」
「そんなわけないでしょ…消して」
あまりにも抵抗するので俺は諦めたが、それが亮のアレに使われるとは思いもしなかったのである。
「あれ?健斗くん?」
「え?もしかして、雪兄?」
「久しぶり!大きくなったね、何センチ?」
「えっと…この間180いったくらい」
健斗くんに見下ろされて俺は少し泣きそうだ。あんなに小さくて、あんなに可愛かったのに…
「雪兄、今空いてる?」
「え?うん、空いてるけど」
「本当?じゃあさ家に来てよ」
実はこの間行ったばかりと言うこともできずに、着いて行った。
「お、お邪魔します」
「ただいまー」
「あら?雪ちゃんじゃない!」
「おばさん、久しぶり」
おばさんは、俺の肌をすりすりしてくる。
「相変わらず、肌もちもちのつるつるね~」
「あ、ありがとう」
「雪兄、行こう」
手を引かれて、健斗くんの部屋に連れてかれる。慎二とおばさんが料理してる間はここでよく健斗と遊んでいたことを思い出した。
「雪兄、空いたかった」
「俺もだよ」
「頭…撫でて」
「フフ、相変わらずだね」
頭を優しく撫でてあげると、健斗くんはすごく喜んだ。
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そしていつの間にか、健斗くんは俺の膝に頭を乗せている。
「甘えん坊さんは直ってないみたいだね」
「雪兄限定だけどね…ずっと甘えたかったのに、あのクソ兄貴が邪魔ばっかしてくるから」
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(あれ?なんか変な方向に行ってない?)
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