[本編完結]彼氏がハーレムで困ってます

はな

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14、邪魔

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「西山?なんで…」
「俺たちもたまたま来てたんだよね」
「慎二~!あっち空いてるよ」
「あ、うん」

亮が戻ってきて、不思議な顔をした。

「ごめんね…」
「いいよ、雪のせいじゃないし」

亮は俺の頭を撫でてくれる。優しくて、涙が出てしまいそうだ。
昼ごはんも食べ終わって、また魚を見た。

「雪、イルカのショーだって見に行こ!」
「うん!」

最前列だったので,イルカが飛ぶたびに水が飛んでくる。
俺も亮もビチョビチョになりながらも、凄く楽しんでいた。

「亮、ビチョビチョじゃん」
「雪もシャツ透けてる」

2人で笑いながら、水族館を出る。

「えへへ、楽しかった」
「そう?良かった」

俺たちはそのまま、夕飯を食べて行った。



結局、慎二とは会わずに俺と亮は電車で戻り、俺は亮を家に呼んでいた。

「雪の部屋って綺麗だよね」
「え?そうかな?」
「うん、急に来たのに綺麗でビックリしちゃった。俺の部屋とか凄い汚いし」
「フフ、なんか分かるかも」

亮は俺の部屋を新鮮そうに眺めている。

(そんなに綺麗かな?)

「雪」
「ん?」
「西山と付き合ってて幸せ?」

亮はいつものヘラヘラした顔じゃなくて、真剣な顔だった。

「うん…幸せだよ」
「本当?西山はさ、ずっと女の子といるし、デートだって邪魔されてんだよね?」
「…うん」
「そんな奴といて幸せなの?」

亮は俺の核心をついてくる。亮は俺を抱きしめてくれる。
いつも、亮が慰めてくれる。亮のハグは優しい。あったかい。安心する。

「亮…」
「西山なんかより良い人たくさんいると思うよ。俺は雪に幸せになって欲しい」
「…ありがとう。でも、慎二が好きなんだ」

俺に幸せになって欲しいなんて言ってくれる亮は優しすぎる。

「俺の相談相手になってくれる?」
「っ!もちろん!いくらでも相談受けるし、いつでも相談してよ!雪は溜めすぎちゃダメだよ!」

俺はその言葉に涙が出る。

「亮っ!ありがとう」
「フフ、雪が甘えるなんて珍しいね」

俺が亮に抱きつくと、亮は驚いた表情を見せると一気に俺を撫でてくれる。

しばらくして、俺は泣き止み急に恥ずかしくなった。
時計を見るともう10時だ。送ろうとすると、母に止められた。

「今日は、もう遅いし泊まってく?」
「え?いいんですか?!」
「うん、親御さんに許可してもらったらね」

亮は無事に許可をもらい、家に泊まることになった。
お風呂はもちろん別々。俺の服が入らないので、父さんの服を貸してあげた。

「ごめん、加齢臭するかも」
「雪~!父さんそんなこと言われたら悲しいぞ」
「亮さんは、こんな平凡な兄とどうして友達に?」

妹よ…失礼すぎないか?

「うーん…雪は優しいし、可愛いし、一緒にいて心地いいんだよね。だから、友達になりたいなって」 

(そんな風に思ってたんだ、知らなかった)

亮は布団がないということで俺のベットで寝ることになった。

「狭いかも、ごめん」
「全然大丈夫」

俺は布団をめくって亮を呼ぶ。亮が入ってくると、一気にあったかくなる。むしろ、暑いくらい。

「…雪、起きてる?」
「うん…」
「俺ね、はじめて友達の家に泊まったんだ」
「え?友達たくさんいるのに?」

亮はフフと笑うとこちらを向いた。

「上辺だけの友達なんだよ。今まで、一回も泊まったことも泊めたこともないんだ」
「じゃあ、俺がはじめてなんだ?えへへ、なんか嬉しいな。俺、今度泊まりに行っていい?」
「うん!もちろんだよ、雪が泊まりにくるなんて夢みたいだ…」

亮はニコッと笑う。俺はその顔面の破壊力に夜なのに眩しく思えてしまう。
昨日まで、泣いていたのが嘘のように今日は楽しい。

「亮、もっとくっつかなきゃ落ちちゃう」
「え?!あ、うん…」

俺がぎゅっとすると、亮はいつも通りぶつぶつ呟いた。
今日は、なんだかもう疲れてしまった。

「おやすみ…」
「…うん、おやすみ」

俺の瞼が降りてくる。




亮視点

「雪…」
「んっ…しんじ」

寝言だって分かっている。だが、寝ていても雪はあいつを求めている。
雪はあいつに苦しめられている。なのに、どうして…

「絶対に雪は渡さない」

雪の額にキスをする。くすぐったそうにする雪が可愛らしくて、俺の下は今にもはち切れそうだ。

「…りょう」
「っ!」

今、微かに聞こえた自分の名前。
初めて雪に自分の全てを晒したくなった。全てを預けたくなった。

「愛してるよ」


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