[本編完結]彼氏がハーレムで困ってます

はな

文字の大きさ
上 下
11 / 51

10、独占欲(亮視点)

しおりを挟む
雪と会ったのは高校一年生の時。俺はいつものように上辺だけの友達と一緒に帰っていた。

「あれ?佐藤?」
「ん?あ、本当だ!何してんだろ」
「誰?」

友達が知り合いを見つけた。そいつはなんだか、小さくて平凡な奴だった。

「うちのクラスの佐藤。あいつ友達いないんだよな」
「中学の頃は慎二と仲良かったんだけどな」
「クラス離れたしな、佐藤といえば慎二だったのに」

俺は微塵も興味ない話に作り笑いを向ける。ちらっとさっきの奴を見ると、猫を抱っこして笑顔になっているのが見えた。

平凡だと思ってた顔が一気に可愛く見えた。童顔でまだ、中学一年生に見える。

(は?いや、可愛くないだろ…何考えてんだ俺)

それから、妙に佐藤が気になって廊下とかですれ違うと必ず見てしまうし、帰りの方向が一緒だから、たまに会うとドキドキしてしまう。

(俺…佐藤のこと好きなのかな?マジか)



「あ、あの!…」

ある日、俺が帰っていると誰かから声をかけられた。
俺が振り返ると、いつも見ていた佐藤がいた。

「え、俺?」

こくこくと頷く。それが可愛くてついついニヤけてしまいそうだ。

「これ」
「え?あ、俺のハンカチ」
「落としたから、はい」
「ありがとう」
「フフ、間に合って良かった」

そう言ってニコッと笑う。その顔を遠くから見ても可愛かったのに至近距離でくらって今すぐにでも叫びたい。

「あ、慎二!えっと、それじゃ」
「あっ!」

佐藤は誰かの名前を呼ぶと走ってしまった。

(もっと、話したかったな…)


一年の頃はただ見てるだけだった。でも2年になって同じクラスになった。

(佐藤…可愛いな)

みんなの前で緊張しながら自己紹介してるのが可愛すぎる。

だが、友達にも聞いていた西山慎二が邪魔だ。
佐藤はあいつが女の子といるといつも悲しそうな顔をした。

だが、ある日チャンスがきた。朝、佐藤が電柱からこそこそ何かを覗いている。

「あれ?佐藤」
「え?」

驚いて振り向く佐藤が可愛すぎる。この時点で俺はもう心臓ドキドキしまくっていた。

「佐藤の家ってこっちだったんだ」

わざと知らなかったフリをする。俺はそのまま一緒に登校した。
佐藤は最初、気まずそうな顔をした。だが、話し始めると結構笑ってくれる。

その顔が可愛すぎて、欲望を抑えきれずに「もっと、笑ったほうがいい」とか言ってしまった。

「あー、可愛すぎる…どうしよう、今日死ねるかも。好きだ~」

俺はつい、本音が漏れてしまった。しまったと思うともう佐藤はいなかった。

(逃げられたか…)



俺たちは仲良くなった。俺は仲良くなることで佐藤の嫌なところを見つけて失恋しようとしたが上手く行かなかった。

どんどん好きになってしまう。いつの間にか名前で呼び合う仲になり、放課後に遊ぶ仲になり、さらには俺はついにあの西山慎二よりも雪と仲が良くなったと思う。

雪が体育で倒れた時、俺はあの西山慎二と居合わせることになった。

「…お前、雪と付き合ってるんだろ?」
「そうだけど?」
「随分悲しませてるみたいだな。俺が取っちゃうかもね」
「やってみろよ、雪は俺にしか振り向かないけどね」
「自信があるみたいだな?油断してると足元掬われるぞ」

俺が言うと西山は笑った。

「残念、雪は多分お前のところに行くはずがないんだ。所詮、負け犬の遠吠えだな」
「…さぁ、分かんないぜ。案外、雪は俺に懐いてるんだな」
「雪は俺のだ」

西山は急に低い声で俺に言った。俺はこの声を雪に聞かせてやりたい。

「じゃあ、起きたら聞こうぜ。どっちがそばにいて欲しいか」
「別にいいけど、お前泣くなよ?」

西山を睨みつける。西山も俺を睨みつけた。

「「雪は絶対に俺を選ぶ」」



ここに負けられない男共の戦いがあったのを佐藤雪は知らないのであったーー





しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

告白ゲーム

茉莉花 香乃
BL
自転車にまたがり校門を抜け帰路に着く。最初の交差点で止まった時、教室の自分の机にぶら下がる空の弁当箱のイメージが頭に浮かぶ。「やばい。明日、弁当作ってもらえない」自転車を反転して、もう一度教室をめざす。教室の中には五人の男子がいた。入り辛い。扉の前で中を窺っていると、何やら悪巧みをしているのを聞いてしまった 他サイトにも公開しています

代わりでいいから

氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。 不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。 ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。 他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。

いとしの生徒会長さま

もりひろ
BL
大好きな親友と楽しい高校生活を送るため、急きょアメリカから帰国した俺だけど、編入した学園は、とんでもなく変わっていた……! しかも、生徒会長になれとか言われるし。冗談じゃねえっつの!

もしかして俺の人生って詰んでるかもしれない

バナナ男さん
BL
唯一の仇名が《 根暗の根本君 》である地味男である< 根本 源 >には、まるで王子様の様なキラキラ幼馴染< 空野 翔 >がいる。 ある日、そんな幼馴染と仲良くなりたいカースト上位女子に呼び出され、金魚のフンと言われてしまい、改めて自分の立ち位置というモノを冷静に考えたが……あれ?なんか俺達っておかしくない?? イケメンヤンデレ男子✕地味な平凡男子のちょっとした日常の一コマ話です。

【完結】I adore you

ひつじのめい
BL
幼馴染みの蒼はルックスはモテる要素しかないのに、性格まで良くて羨ましく思いながらも夏樹は蒼の事を1番の友達だと思っていた。 そんな時、夏樹に彼女が出来た事が引き金となり2人の関係に変化が訪れる。 ※小説家になろうさんでも公開しているものを修正しています。

たまにはゆっくり、歩きませんか?

隠岐 旅雨
BL
大手IT企業でシステムエンジニアとして働く榊(さかき)は、一時的に都内本社から埼玉県にある支社のプロジェクトへの応援増員として参加することになった。その最初の通勤の電車の中で、つり革につかまって半分眠った状態のままの男子高校生が倒れ込んでくるのを何とか支え抱きとめる。 よく見ると高校生は自分の出身高校の後輩であることがわかり、また翌日の同時刻にもたまたま同じ電車で遭遇したことから、日々の通勤通学をともにすることになる。 世間話をともにするくらいの仲ではあったが、徐々に互いの距離は縮まっていき、週末には映画を観に行く約束をする。が……

夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト

春音優月
BL
真面目でおとなしい性格の藤村歩夢は、武士と呼ばれているクラスメイトの大谷虎太郎に密かに片想いしている。 クラスではほとんど会話も交わさないのに、なぜか毎晩歩夢の夢に出てくる虎太郎。しかも夢の中での虎太郎は、歩夢を守る騎士で恋人だった。 夢では溺愛騎士、現実ではただのクラスメイト。夢と現実が交錯する片想いの行方は――。 2024.02.23〜02.27 イラスト:かもねさま

泣き虫な俺と泣かせたいお前

ことわ子
BL
大学生の八次直生(やつぎすなお)と伊場凛乃介(いばりんのすけ)は幼馴染で腐れ縁。 アパートも隣同士で同じ大学に通っている。 直生にはある秘密があり、嫌々ながらも凛乃介を頼る日々を送っていた。 そんなある日、直生は凛乃介のある現場に遭遇する。

処理中です...