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8、お泊まり

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ピーンポーンとインターホンを鳴らす。すると、すぐにドアが開いた。

「雪!何でここに?」
「忘れ物…しちゃって」
「そんなの、明日でいいでしょ?何忘れたの?」
「えっと…家の鍵、多分手を洗ったときにポケットから出したから」

申し訳なさそうに俺は答える。慎二は仕方なさそうに部屋に入れてくれる。

「あ!あった…良かった」
「良かったね。じゃあ帰ったら?」
「え~?早いよ、せっかく恋人が戻ってきたんだよ?イチャイチャしようよ~」
「早く帰れって…」

(なんか怒ってる?そんなに帰って欲しいのかな?)

すると、慎二の携帯が鳴った。だが、慎二は相手を見ると電話に出ようとしないで俺を帰らそうとする。

「電話なってるよ?出なくていいの?」
「雪が帰ったら出るよ」
 
なんだか怪しくて俺は慎二に探偵のような目を向ける。

「今、出ていいよ?」
「いや、だから」
「なんで俺がいると出れないの?慎二が電話に出たら帰るから」
「…分かったよ」

慎二は携帯を手に取り電話に出た。

「もしもし?」
『お、慎二~!今から家行っていい?』
「何?急に」
『お泊まり会しよって梨沙が言ってるからさ』

会話が聞こえる。相手は中村さんだろうか?うちのクラスのムードメーカー。元気で明るい優しい子だ。

だが、俺はその会話の内容に顔を顰めた。

「ごめん、今日は無理」
『えー!もう途中まで来てるからお願い!』
「……ごめん」

慎二は俺の方を見て断る。俺は、罪悪感が湧いてくる。

(でも…男女でお泊まり会なんて、ダメだよ。しかも、もう遅い時間だし)

『慎二、ほんとうにだめ?』
「ちょっと待て」

慎二はまたしても俺の方を向いてお願いするような顔をした。

「分かった…別にいいよ」
「雪、ありがとう…もしもし?来れば?許可でたし」
『本当?!行く行く!』

電話を切ると慎二は俺の方に向かってきた。

「ありがとう、雪!それじゃあね」
「うん、ばいばい」

ドアが閉まった。俺は耐えきれずに涙が溢れた。

(やっぱり、俺じゃダメ?…)

「認めたくない…認めたら、ダメだ!頑張れ雪!」

頬を叩いて気合いを入れる。ポジティブに考えよう。
慎二はもしかしたら俺がお泊まりするのが恥ずかしいとか?俺と一晩寝るのすら恥ずかしいヘタレとかなのかも!

「でも、俺のこと1番って言ってたし…それに、大好きって言って…くれたもんね!
今日のお泊まりも別にやましくない!」

(もう、考えるのやめよ…辛くなってきた)

「お泊まり……ダメダメ!羨ましくないもんね!」

上を向いて無理矢理、涙を止める。

「俺は偉い!頑張ってる!」




翌日

慎二と中村さん達が楽しそうに話してる。昨日のお泊まりの話だろうか?

(ダメ!昨日のは俺が許可したんだし…考えちゃダメ!)

「ゆーき!おはよう」
「亮……おはよ」
「元気ないね?昨日、楽しくなかった?」
「ううん!すっごく楽しかった!パンケーキ美味しかった」
「本当?なら、いいけど」

心配させてる、どうしよう…

「慎二とちょっとね…だから亮のせいじゃないよ」
「西山か……雪、おいで」
「え?」

亮が手を広げる。そして、俺にぎゅってしてくれた。

「辛い時は俺に言ってね?雪は溜めすぎる所あるもから」
「っ~!りょう!」
「え?な、泣いてるの?」
「ありがとう…亮がいてくれて本当に良かった」

亮は俺を優しく撫でてくれる。ずっとこうしていたい。
でも、流石に周りの目が気になってきた。

「亮…ありがとう、もういいよ」
「本当?大丈夫?」
「うん、亮のおかげでもう大丈夫!」

そうは言ったものの、慎二の家に戻ってからの出来事と亮と別れた時点でもう遅い時間だったのに、さらに慎二の家に行って寝る時間が遅くなって寝不足気味である。

(なんだか、疲れた)

だが生憎、今日は体育がある。しかもバスケ。俺が苦手な球技だ。

「雪!一緒に行こう」
「うん」

慎二とはいつも、学校ではなかなか話せない。
同じクラスだけど、慎二は男からも人気があって近づけないのだ。

「慎二と同じチームだといいな…」
「……」

俺は少しだけ期待したが結果は見事に分かれて敵として戦うことになった。
しかも亮ともだ。

俺のチームには俺と仲良い人が1人もいない。
見事にぼっちの完成だ。

「はぁ…」

試合開始、亮も慎二も運動神経いいからバンバン点を取る。

俺はどこに動けばいいかわからずに迷子になる。
そして、仕方なく端っこに立っていると、隣のコートから飛んできたボールが顔面にクリーンヒットしてしまった。

「いったぁ…鼻血出てる?」
「「雪!」」

血が無理なのと寝不足が相まって俺の意識は飛んでいってしまった。





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