[本編完結]彼氏がハーレムで困ってます

はな

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5、優先順位

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「ごめん、ちょっと帰るね」
「え?もう帰るの?」
「うん、ちょっとね」

慎二は急いで帰る準備をする。

「……もしかして立花さん?」
「別に…違う」
「違うなら、まだ帰らなくていいでしょ!」
「用事ができたから…」
「何の用事?」

グイッと慎二に詰め寄ると、なんだか言いにくそうにして、ポリポリと頭をかいた。

「……ごめん、立花が今から会いたいって」
「どうしても?また明日パンケーキ食べにいくんでしょ?」

俺はさりげなく慎二のそでを掴む。

「そうだけど…会いに行かないと」
「嫌…まだ、一緒にいたい」

そう言うと慎二は困ったように笑った。

「また今度来るよ」
「今度っていつ?どうせ予定がいっぱい詰まっているんでしょ?だから、今日がいいの!」
「無理だって…しょうがないだろ」

なんだか面倒くさそうに言った。いつもこうだ。なんだか俺が我儘を言ってるみたいに扱われる。

(我儘でもいいから…)
 
「雪、優先順位っていうものがあるんだ。今日は立花を優先しないといけない」
「どうして?いつも一緒にいるのに!」
「立花、あいつ寂しがり屋なんだよ。誰かそばにいないとすぐに泣くし」
「慎二は立花さんの恋人でもないじゃん!それなのに…俺だって寂しいよ」
 
自分でも言っててダメだって分かってる。
慎二を困らせてる。

「慎二は俺のことなんか好きじゃないんだ…」
「そんなことない!どうして分かってくれないんだよ?」

(そんなの、俺のセリフだよ…)

「慎二こそ、分かってくれないじゃん!」
「雪は最近、我儘が多いよ…そんなんだと、俺嫌いになるよ?」
「っ……俺、我慢してるもん!デート邪魔されても、怪我したのに助けてくれなくても!女の子には優しいのに俺には優しくなくても」
「は?なんだよそれ…それで我慢してるって?いつも文句言ってきて、怒ってきて、嫉妬してるじゃんか、結局」

俺と慎二はどんどんヒートアップしていく。

「だって!恋人が女の子とイチャイチャしてるのみたら…そうなるよ」
「イチャイチャなんかしてない」
「してる!この間のデートも距離が近かった!」

そう言うと、慎二はもう諦めたかのように少し笑った。

「それは、ごめんね。でも雪が1番好き。これだけは本当」
「あ、慎二!待って…」

おでこにキスをして、慎二は立花さんの所に向かっていた。

「…1番」

分かってる。1番なわけがないことなんて。
1番だったら俺が引き留めたら分かってくれるし、帰りも一緒に帰ってくれる。デートも2人きりになれる。

「俺って馬鹿だなぁ…あんなの嘘に決まってる」

(でも…もし、本当だったら)

その時は、きっとこれまでの事も今日のことも多分、全部許せるだろう。





次の日

俺は慎二には昨日のことについて聞かなかった。
聞いたら、俺は多分死んじゃう。

「雪!おはよう」
「おはよう」
「ねぇねぇ!今日、部活ないんだ!だからさ、放課後遊ぼ!」

それを聞いて俺は凄く嬉しかった。もちろん、即答でOK。

「慎二以外の人と放課後遊ぶの初めてかも!」
「そうなんだ?じゃあ、今日は俺に任せて!雪を絶対楽しませるから!」
「うん!」

俺はもうウキウキだ!今日はどうせ慎二は立花さんとパンケーキだし…ってそうだ!

(まさか、会わない…よね?)

「雪は甘いものが好きだからなぁ…パンケーキとか?」
「ダメ!」
「え?」
「あ、違う!えっと…ごめん違う事考えてた!だから、うん!気にしないで!パンケーキね!俺、大好き!」
「本当?良かった!じゃあ、俺のオススメの店連れて行ってあげるよ」
「うん!」

初めての放課後に友達と遊ぶんだ!我儘言ってたら嫌われちゃうよね…でも

(まさか…ね?)

ここで、フラグが立っていた事に俺は気づかなかったのだった。









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