ホストの彼氏ってどうなんですかね?

ささみ

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「肇!また、女の子にストーカーされてたでしょ」
「え?そうなの?」
「あやうく刺される所だった!もうちょっと気を張ってって言ったじゃん」
「えー?ごめんね」
「むぅ…いっぱいぎゅーして」
「もちろん、おいで」

(好き…)

彼と付き合って3年。すっかり慣れたことだ。
俺は大学生で彼はホスト。



出会いはカフェだった。

俺のバイト先のカフェの常連さん。いつも、ブラックコーヒーを頼んでいる。

「ブラックコーヒーお願いします」
「は、はい」

初めて会った時にすごく綺麗な人だと思った。でも、その人がホストやっているとは思ってもいなかった。

それから、水曜日に彼が来ることを知った。

「肇さん」
「あ、来た」
「えへへ!呼ばれてないけど来ました」
「フフ、なにそれ」
「あれ?なんか、疲れてません?」

彼の目の下にはうっすらと、隈が見えていて疲れたような表情を浮かべている。

「実は、仕事でちょっとね…」
「何かあったんですか?」
「俺、ホストやってるんだけど」
「え?!」

その一言に俺は驚いて、椅子から転げ落ちた。

「大丈夫?」
「あ、はい!そ、それで?」
「女の子にストーカーされたり、絡まれたりしてちょっと疲れててさ…」
「そうなんですか。じゃあ、今日はゆっくりした方がいいですね」
「うん、だからここに来て君に会いに来たんだよ」
「へ?…」

肇さんが俺の髪の毛を耳にかける。その動作は見惚れてしまう程美しくて誰にも真似できないような、そんな雰囲気。

「…っ」
「君のことが好きなんだ、付き合ってくれないかな?」
「…は、はい」
「本当?やった」

ニコッと笑う彼に俺は顔を赤らめた。それから、俺は受験して入りたかった大学に入ることができたのも束の間。

大学が遠い。俺は大学の近くに家を借りることにした。

「え?俺、そこの近くに住んでる」
「ほ、本当?!」
「うん、良かったら家くる?」
「でも、迷惑じゃない?」
「はるちゃんなら、家事もできるしね」
「じゃあ、いい?」
「もちろん」

そんな成り行きで同棲することになった。彼は夜に仕事に行って朝に帰ってくることが多い。

1週間でお休みの日は水曜日だけ。

「はるちゃん」
「あ、肇!」
「行こう」
「うん!」

水曜日は大学にお迎えに来てもらって、家でまったりしている。

「はるちゃん」
「ん?」
「大好きだよ…」
「えへへ!俺も」

肇にキスをして、イチャイチャしてると肇の首にキスマークがついていた。

「また、キスマークついてる…」
「え、嘘!どこ?」
「ここ…」
「ご、ごめんね!いつだろう?最近したのって…あ、あのデブ」
「…」

分かっている、お仕事で有利になるためにはそうやってお客さんにサービスしなきゃいけない。

「ごめんね、はるちゃん」
「……俺もつける」
「え?あ」

俺は肇の首に唇をつけて吸ってみる。

「あ、あれ?うまくつかない…」
「フフ、くすぐったいよ」
「つかない…」

やっとできたと思っても、すぐに消えてしまった。

「…」
「はるちゃん」
「いいよ。仕方ないもんね!でも、許すには条件があります!」
「な、何?」
「いっぱいキスしてくれないと、俺は許しません!」
「そんなことでいいの?」

ドヤ顔言う俺に肇はキスをしてきた。
なんだか、手慣れている。

「んっ♡んぅ♡…んちゅ♡ん…♡」
「はるちゃん、可愛い」
「嬉しい…もっと言ってほしい」
「可愛い、好き…愛してる」
「えへへ」
「か、可愛い~~」

俺はしばらく、肇とキスをしていた。そんな時に、玄関のチャイムが鳴った。

「あれ?宅配かな?」
「俺が行くよ」
「うん」

そう言って肇が玄関を開けた途端に、ドサッという音がした。

「肇♡会いに来たよ」
「…な、なんで」
「えへへ!私たち恋人なんだから当たり前でしょ!」

俺が急いで見に行くと、女の人が肇の上に乗っている。

「肇は私だけのものなんだから、ホストなんてやめてよね」
「肇!」
「はるちゃん!」

俺は急いで女の人を突き放して、肇を起き上がらせる。

「ちょっと!何すんのよ!邪魔!」
「…これ以上、変なことしてきたら警察呼びますからね」
「は?私たち恋人同士なんだけど!」
「早く帰ってください!本当に呼びますよ!」
「チッ…肇、逃げられたと思わないでね」

そう言って、なんとか出て行った。

「はるちゃん、ごめんね」
「ううん、大丈夫だった?」
「ごめん…俺が守るはずなのに」
「大丈夫!怪我もしてないし!」
「本当にごめん…」

肇はたまにものすごくネガティブになる。何かあるとすぐに謝って、泣きそうな顔をして自分を罵る。

「ごめんなさい…ごめん」
「大丈夫だよ。肇のせいじゃない」
「はるちゃん…ごめんなさい、俺なんて…なんの価値もないのに」
「そんなことないよ。肇のおかげでここに住めて大学も行けるし肇といると幸せ」
「俺なんかと別れてしまえばいいのに」

俺は肇を抱きしめて、優しく頭を撫でてあげる。

「そんなこと言わないで。俺は肇のことが大好きだから別れたくないなぁ」
「…本当?」
「本当だよ。大好き」
「でも…俺なんか」
「俺なんかは禁止って前に言ったのになぁ」
「あ!ごめんなさい…」

俺は謝る肇のおでこにキスをした。

「大丈夫、怒ってないよ。いつもみたいにいっぱいキスしよ」
「…うん」

そう言って、俺は肇とキスする。どんどん、積極的になっていく肇。

「んぅ♡…」
「またネガティブになってたよね!ごめん!」
「あ、戻った?良かったぁ」
「面倒くさくない?」
「ううん、可愛いなぁって」
「可愛いのは、はるちゃんだけどね」

そう言ってまた口付けをしたのだった。



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