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子どもの頃、私がシーソーで浮いた試しがない。ぴょん、と地面を蹴って相手を浮かせ、楽しんでもらうものだだった。その時に男子に言われた「マイコってデブなんだね!」が忘れられず、今でも私に呪いをかけている。
高二の夏。私は友達に連れられて夏祭りに来ている所で、慣れない下駄に苦戦中だ。
「人やばくね! 祭りってカンジ~」
隣を歩くギャルのミユウは今日も相変わらず元気にはしゃいでいる。私はミユウほど表には出ないけど、夏祭りの雰囲気を堪能していた。
賑やかな祭囃子と心臓に響く太鼓。祭りを彩る無数の提灯。むせかえるような夜の空気に喧騒感と焼きそばの匂い。どの要素も祭りにはかかせないものだ。
ミユウは屋店に目移りしながら何を食べようか迷っているようだ。長い爪で顎の周りを擦りながら困り顔。派手な顔にゴージャスな花柄を散りばめた浴衣がとても似合っている。かと言えば私はなるべく下腹が目立たない地味なものを選んだ。本当は私服で参加したかったけど、ミユウが浴衣がいい! と聞かなかったので渋々合わせた。ミユウはそんな私の気も知らず、虹色の綿あめを買っていた。嬉しそうに「見てみて!」という彼女。私はそんな純粋な気持ちに嫉妬し続けている。
ミユウは普段制服のスカートを校則にギリ引っかからないくらいに短くして、メイクもバッチリ決めて、思ったことはちゃんと口に出して。だけどポジティブでいい所を見つけるのが上手い。私みたいに卑屈で華やかさもないのとは全く違う。なのにどうして一緒にいるんだろう。浴衣も似合ってないし、公開処刑じゃん。
思わず立ち止まると、ミユウは不思議そうにこちらを振り返った。
「どしたん?」
「今日、本当は浴衣着たくなかった」
ミユウは大きな目を更に見開く。
「そう? むっちゃ似合ってるけどね」
私は鼻で笑った。
「ミユウみたいに細くて可愛ければ様になるけど、私みたいなデブ見苦しいだけだよ」
ミユウは首を傾げる。
「ミユウはいいよね、可愛くて性格も良くてさ。私とつるんでるのも引き立て役にしたいからじゃないの」
思ってもいないことが口から溢れ出す。ミユウの方を見られない。
「……え? 自分がいいと思えばそれで良くね?」
ミユウはあっけらかんと言った。
「人と比べっから苦しくなるんじゃん? あーしだって自分の嫌なとこくらいあっけど、それも可愛いポイントだからさ。そんくらいのスタンスでいいんよ、結局」
ミユウは私が言ったことに腹も立てず、そう言って綿あめをむしって食べだした。
頭上に花火が打ち上がる。花火の破裂音と大衆の歓声とともに、私の濁った気持ちがけされたようだった。
高二の夏。私は友達に連れられて夏祭りに来ている所で、慣れない下駄に苦戦中だ。
「人やばくね! 祭りってカンジ~」
隣を歩くギャルのミユウは今日も相変わらず元気にはしゃいでいる。私はミユウほど表には出ないけど、夏祭りの雰囲気を堪能していた。
賑やかな祭囃子と心臓に響く太鼓。祭りを彩る無数の提灯。むせかえるような夜の空気に喧騒感と焼きそばの匂い。どの要素も祭りにはかかせないものだ。
ミユウは屋店に目移りしながら何を食べようか迷っているようだ。長い爪で顎の周りを擦りながら困り顔。派手な顔にゴージャスな花柄を散りばめた浴衣がとても似合っている。かと言えば私はなるべく下腹が目立たない地味なものを選んだ。本当は私服で参加したかったけど、ミユウが浴衣がいい! と聞かなかったので渋々合わせた。ミユウはそんな私の気も知らず、虹色の綿あめを買っていた。嬉しそうに「見てみて!」という彼女。私はそんな純粋な気持ちに嫉妬し続けている。
ミユウは普段制服のスカートを校則にギリ引っかからないくらいに短くして、メイクもバッチリ決めて、思ったことはちゃんと口に出して。だけどポジティブでいい所を見つけるのが上手い。私みたいに卑屈で華やかさもないのとは全く違う。なのにどうして一緒にいるんだろう。浴衣も似合ってないし、公開処刑じゃん。
思わず立ち止まると、ミユウは不思議そうにこちらを振り返った。
「どしたん?」
「今日、本当は浴衣着たくなかった」
ミユウは大きな目を更に見開く。
「そう? むっちゃ似合ってるけどね」
私は鼻で笑った。
「ミユウみたいに細くて可愛ければ様になるけど、私みたいなデブ見苦しいだけだよ」
ミユウは首を傾げる。
「ミユウはいいよね、可愛くて性格も良くてさ。私とつるんでるのも引き立て役にしたいからじゃないの」
思ってもいないことが口から溢れ出す。ミユウの方を見られない。
「……え? 自分がいいと思えばそれで良くね?」
ミユウはあっけらかんと言った。
「人と比べっから苦しくなるんじゃん? あーしだって自分の嫌なとこくらいあっけど、それも可愛いポイントだからさ。そんくらいのスタンスでいいんよ、結局」
ミユウは私が言ったことに腹も立てず、そう言って綿あめをむしって食べだした。
頭上に花火が打ち上がる。花火の破裂音と大衆の歓声とともに、私の濁った気持ちがけされたようだった。
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