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第一章 第三幕 サバイバル
二十七話 一組
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一組、サバイバル生活初日。
一組はハンザル教官のクラスで、特に秀でた生徒はいないが、問題児もいないバランスの取れたクラス。
今までの退学者は一人。
親の都合でお金が用意出来なくなったから退学させてほしいとの事。
二年間が経ち、退学者が一人だけというのは逆に珍しい。
それを誇りにハンザル教官は、優秀な生徒ばかりだと常々自慢していた。
その中でもいつも元気でみんなのリーダー的存在なのがユメ。
魔法にも剣術にも長けていて、最もバランスのいい成長率なのが金髪おさげのユメだ。
ちょっとキツイ口調の時もあるが、それでもみんなはユメを頼りにしている。
このサバイバル生活でも例外ではなかった。
「ユメ! これ見て。私が創造した魔法よ」
「あら凄いわねキラリ。これを使ってこのサバイバル生活の役に立つかもしれないわ」
「本当?! やったぁ。ありがとうユメ」
キラリとはユメの大親友だ。
このクラスで一番ユメを頼りにしているのはキラリだろう。
この二人は同じ村の出で、幼い時から一緒に過ごしてきた。さまざまな苦労も知っている仲だ。
「おい、これここでいいのか?」
「ユメこっちも見てくれ」
ユメは男子からも人気で、常にクラスではユメの名前が飛び交っている。
このちょっと口の悪いのがジーザスで、ユメを呼んでいるのがコタロだ。
ジーザスはともかく、コタロはユメを自分の者にしたくて呼んでいるのだろう。
その思いに一組の誰もが気づいていた。
「コタロ、まだ諦めてなかったんだ」
「コタロもしつこいよな」
クラスの中では、キャンプを設営しながらそんな事を話している人たちもいた。
そして一組は優秀というのは口だけではなかった。
サバイバルという事で、他のクラスからの襲撃を恐れて、初日にしてその対策を練っていたのだった。
「ここに柵を立てれば牽制にもなるし、いいんじゃないかな」
「わかったよ、ユメ」
コタロはユメの瞳をしっかりと見つめ、離さなかった。
「ちょっとコタロ、ユメに見惚れるのもいいけどちゃんと仕事してよ」
そう言ったのはキラリだ。
ユメの手を握ったまま離さないコタロから解放してくれたのか。
そうじゃないのか……。
「なんだよキラリ、せっかくのユメの手が――」
「ふん! ユメはコタロなんか相手にしてないから」
「はぁ? お前には絶対わかんないよぉだ」
「ふん! 勝手にしたら? コタロなんてオオカミに食べられちゃえばいいんだよ。行こうユメ」
一組ではキラリとコタロのこういうやり取りはいつもの事だ。
なんでかはわからないが、二人とも顔を合わせると喧嘩を始める。
俺、ジーザスはいつもそんな二人を見ていて本当に疲れるよ。
まぁでも飽きないからいいんだけどよ。
俺は正直コタロの保護者みたいになってるからな。
「ほら、コタロも仕事すっぞ」
俺はコタロの手を引いてキャンプの設営を続けた。
料理の方は女子たちがやってくれている。
まぁ、これはどこのクラスも一緒だろう。
そういや五組……だったか。
あの人数でサバイバルとか大変そうだよな。
まぁ俺には関係ねぇけどよ。
「おいジーザス、手ぇ止めんなって」
「あぁ……悪ぃ」
そんなこんなで俺たち一組は上手くやっていた。
◇ ◇ ◇
「くふふ。やはり一組は安泰ですな」
ハンザル教官は、魔力晶を覗いて口元を吊り上げ、ニヤリと不気味な笑みを浮かべていた。
勝ち残る絶対の自信があったのだろう。
◇ ◇ ◇
一組はハンザル教官のクラスで、特に秀でた生徒はいないが、問題児もいないバランスの取れたクラス。
今までの退学者は一人。
親の都合でお金が用意出来なくなったから退学させてほしいとの事。
二年間が経ち、退学者が一人だけというのは逆に珍しい。
それを誇りにハンザル教官は、優秀な生徒ばかりだと常々自慢していた。
その中でもいつも元気でみんなのリーダー的存在なのがユメ。
魔法にも剣術にも長けていて、最もバランスのいい成長率なのが金髪おさげのユメだ。
ちょっとキツイ口調の時もあるが、それでもみんなはユメを頼りにしている。
このサバイバル生活でも例外ではなかった。
「ユメ! これ見て。私が創造した魔法よ」
「あら凄いわねキラリ。これを使ってこのサバイバル生活の役に立つかもしれないわ」
「本当?! やったぁ。ありがとうユメ」
キラリとはユメの大親友だ。
このクラスで一番ユメを頼りにしているのはキラリだろう。
この二人は同じ村の出で、幼い時から一緒に過ごしてきた。さまざまな苦労も知っている仲だ。
「おい、これここでいいのか?」
「ユメこっちも見てくれ」
ユメは男子からも人気で、常にクラスではユメの名前が飛び交っている。
このちょっと口の悪いのがジーザスで、ユメを呼んでいるのがコタロだ。
ジーザスはともかく、コタロはユメを自分の者にしたくて呼んでいるのだろう。
その思いに一組の誰もが気づいていた。
「コタロ、まだ諦めてなかったんだ」
「コタロもしつこいよな」
クラスの中では、キャンプを設営しながらそんな事を話している人たちもいた。
そして一組は優秀というのは口だけではなかった。
サバイバルという事で、他のクラスからの襲撃を恐れて、初日にしてその対策を練っていたのだった。
「ここに柵を立てれば牽制にもなるし、いいんじゃないかな」
「わかったよ、ユメ」
コタロはユメの瞳をしっかりと見つめ、離さなかった。
「ちょっとコタロ、ユメに見惚れるのもいいけどちゃんと仕事してよ」
そう言ったのはキラリだ。
ユメの手を握ったまま離さないコタロから解放してくれたのか。
そうじゃないのか……。
「なんだよキラリ、せっかくのユメの手が――」
「ふん! ユメはコタロなんか相手にしてないから」
「はぁ? お前には絶対わかんないよぉだ」
「ふん! 勝手にしたら? コタロなんてオオカミに食べられちゃえばいいんだよ。行こうユメ」
一組ではキラリとコタロのこういうやり取りはいつもの事だ。
なんでかはわからないが、二人とも顔を合わせると喧嘩を始める。
俺、ジーザスはいつもそんな二人を見ていて本当に疲れるよ。
まぁでも飽きないからいいんだけどよ。
俺は正直コタロの保護者みたいになってるからな。
「ほら、コタロも仕事すっぞ」
俺はコタロの手を引いてキャンプの設営を続けた。
料理の方は女子たちがやってくれている。
まぁ、これはどこのクラスも一緒だろう。
そういや五組……だったか。
あの人数でサバイバルとか大変そうだよな。
まぁ俺には関係ねぇけどよ。
「おいジーザス、手ぇ止めんなって」
「あぁ……悪ぃ」
そんなこんなで俺たち一組は上手くやっていた。
◇ ◇ ◇
「くふふ。やはり一組は安泰ですな」
ハンザル教官は、魔力晶を覗いて口元を吊り上げ、ニヤリと不気味な笑みを浮かべていた。
勝ち残る絶対の自信があったのだろう。
◇ ◇ ◇
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