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第一章 第二幕 魔法騎士学院
十八話 エデンチームvsサクラチーム
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「――始め!」
その合図と同時に前に出る。
イシャールとユミールは後方支援。
ニカは……どういう魔法を使うのかわからないけど、俺が二人を守らないと。
死んでも後ろへ通さないようにしないと。
相手は、サクラ……刀使いの近接型。
トンビ……瞬発力の高い短剣使い。
ククル……魔法攻撃兼補助役。
ルル……補助メインの近接も戦える万能型。
バランスはいいな。
まずはやっぱり魔法型からやらないと……かな。
俺は一目散にククルに向かって一斉発射を使った。
五属性の魔法を頭上に溜めると、一瞬にしてそれを発射しククルが詠唱を終える前に打ち取った。
「よし、一人」
すると俺の動きに合わせてニカが、戦場をぴょんぴょん飛び跳ねるようにして移動し、サクラの頭上に飛びあがった。
「ニカ!」
「……任せて」
するとニカは真下に素早く落下し、サクラの防具を切り裂いた。
「あっ……あたしの鎧が?!」
そこへニカが目に見えぬ速さで何度もサクラの鎧を切り裂き、いずれ肌に到達するとそのまま肉を何度も切り裂いた。
「ニカ、もういい」
アザール学院長の言葉を無視するようにニカはサクラを斬り続ける。
「――ニカ!」
アザール学院長は少し強めにニカの名前を叫ぶ。
するとサクラの体から噴き出す血しぶきを浴びながらニカは真顔で口を開いた。
「……わかった」
そして返り血を大量に浴びたニカは、真っ赤な体で静かにサクラから離れた。
俺は一瞬にしてニカという女の子に恐怖を抱いた。
間違いなく殺す気だった。
サクラとは初対面のはず。
なのになんでそこまで憎しみに溢れている?
いや、でもニカの表情は変わらなかった。
サクラの肉が短剣によって削がれて、えぐられて返り血を浴びようと。
表情一つ変えずに、まばたきもせずに一心不乱に斬りつけていた。
この子は……何かしらの病を抱えているのかもしれない。
じゃないとこんな事を出来るわけがない。
ゆらゆらとニカが動くと辺りは静まり返った。
先ほどまで、互いのチームを応援したりしていたクラスメイトも、誰一人として口を開かなかった。
「やりすぎだ……ニカ」
そのアザール学院長の言葉に、ニカは不思議な顔をして答えた。
「だって……殺さないと。自分が死なない為に」
この瞬間、この子に何かあったんだと理解した。
しかしそれ以上は誰も何も言わなかった。
そして――
「こ――降参よ……」
「あぁ……おいらも降参でいい」
サクラが血だらけでその場に倒れると、他のメンバーは尻もちをつき目を見開いた。
ニカを見る二人の目付きは、まるで化け物でも見るかのようだった。
「……勝者、エデンチーム!」
その瞬間、勝者が決まった。
そして退学者が決まった。
でも、納得いかなかった。
実力で勝ったわけじゃない。
この後アザール学院長が治癒を施したが、サクラの損傷は思ったより酷く、しばらく安静にしてなきゃいけないらしい。
ユミールも治癒術に加算したが、アザール学院長でも瞬時に治せなかったものを、治せるはずもなくサクラは医務室へ運ばれた。
そして――
「よし、今日の授業は終わりだ。ガロウチームとサクラチームは残念ながら退学だ。とっととこの学院から去れ」
アザール学院長は冷たく言い放つと、わかってはいたがサクラチームのルルが反抗した。
「そんな言い方……サクラはこんな事になったのに」
「サクラがこうなったのは俺の責任だ。でも退学を取り消す気はない。実際の戦場だったら負けた奴はもう死んでるんだ。わかってるのか? これは遊びじゃないんだ」
アザール学院長はそこまで言うと、ため息を吐き更に続けた。
「サクラは二、三日学院の医務室にて治療をする。それから退学だ。他の負けた奴らは今すぐ学院を去れ」
「せめてサクラが良くなるまでいてもいいですか?」
サクラチームのククルがそう言うと、アザール学院長は被り気味で口を開いた。
「――ダメだ」
「でも――」
「ダメだ。荷物をまとめろ。お前らは死んだんだ」
アザール学院長のその言葉を聞くと、負けたチームは荷物をまとめトボトボと学院を後にした。
ここは……俺が思ってるよりも厳しい所だった。
アザール学院長が言うように、負けたら死ぬ。当たり前だ。
これは訓練だけど訓練じゃないんだ。
負けた人は死んだも同然。
それ以降この学院に必要ない……って事か。
って事は、これからも負けたり死ぬような事があれば……退学。
俺は肝に銘じた。
そしてこれまでよりも気を引き締めて訓練に臨んだ。
「――ニカ。ちょっと来い」
アザール学院長から呼ばれた。
ニカは顔色変えずにアザール学院長の元へ向かう。
おそらく説教だろうな。
そして。
「他の者は解散だ」
なんだか後味が悪い。
俺はイシャールと共に宿舎に帰って行った。
その間、お互いに何も話す事はなく部屋の前に着くと一言。
「じゃ……」
それだけ言うとお互いに背を向けた。
その合図と同時に前に出る。
イシャールとユミールは後方支援。
ニカは……どういう魔法を使うのかわからないけど、俺が二人を守らないと。
死んでも後ろへ通さないようにしないと。
相手は、サクラ……刀使いの近接型。
トンビ……瞬発力の高い短剣使い。
ククル……魔法攻撃兼補助役。
ルル……補助メインの近接も戦える万能型。
バランスはいいな。
まずはやっぱり魔法型からやらないと……かな。
俺は一目散にククルに向かって一斉発射を使った。
五属性の魔法を頭上に溜めると、一瞬にしてそれを発射しククルが詠唱を終える前に打ち取った。
「よし、一人」
すると俺の動きに合わせてニカが、戦場をぴょんぴょん飛び跳ねるようにして移動し、サクラの頭上に飛びあがった。
「ニカ!」
「……任せて」
するとニカは真下に素早く落下し、サクラの防具を切り裂いた。
「あっ……あたしの鎧が?!」
そこへニカが目に見えぬ速さで何度もサクラの鎧を切り裂き、いずれ肌に到達するとそのまま肉を何度も切り裂いた。
「ニカ、もういい」
アザール学院長の言葉を無視するようにニカはサクラを斬り続ける。
「――ニカ!」
アザール学院長は少し強めにニカの名前を叫ぶ。
するとサクラの体から噴き出す血しぶきを浴びながらニカは真顔で口を開いた。
「……わかった」
そして返り血を大量に浴びたニカは、真っ赤な体で静かにサクラから離れた。
俺は一瞬にしてニカという女の子に恐怖を抱いた。
間違いなく殺す気だった。
サクラとは初対面のはず。
なのになんでそこまで憎しみに溢れている?
いや、でもニカの表情は変わらなかった。
サクラの肉が短剣によって削がれて、えぐられて返り血を浴びようと。
表情一つ変えずに、まばたきもせずに一心不乱に斬りつけていた。
この子は……何かしらの病を抱えているのかもしれない。
じゃないとこんな事を出来るわけがない。
ゆらゆらとニカが動くと辺りは静まり返った。
先ほどまで、互いのチームを応援したりしていたクラスメイトも、誰一人として口を開かなかった。
「やりすぎだ……ニカ」
そのアザール学院長の言葉に、ニカは不思議な顔をして答えた。
「だって……殺さないと。自分が死なない為に」
この瞬間、この子に何かあったんだと理解した。
しかしそれ以上は誰も何も言わなかった。
そして――
「こ――降参よ……」
「あぁ……おいらも降参でいい」
サクラが血だらけでその場に倒れると、他のメンバーは尻もちをつき目を見開いた。
ニカを見る二人の目付きは、まるで化け物でも見るかのようだった。
「……勝者、エデンチーム!」
その瞬間、勝者が決まった。
そして退学者が決まった。
でも、納得いかなかった。
実力で勝ったわけじゃない。
この後アザール学院長が治癒を施したが、サクラの損傷は思ったより酷く、しばらく安静にしてなきゃいけないらしい。
ユミールも治癒術に加算したが、アザール学院長でも瞬時に治せなかったものを、治せるはずもなくサクラは医務室へ運ばれた。
そして――
「よし、今日の授業は終わりだ。ガロウチームとサクラチームは残念ながら退学だ。とっととこの学院から去れ」
アザール学院長は冷たく言い放つと、わかってはいたがサクラチームのルルが反抗した。
「そんな言い方……サクラはこんな事になったのに」
「サクラがこうなったのは俺の責任だ。でも退学を取り消す気はない。実際の戦場だったら負けた奴はもう死んでるんだ。わかってるのか? これは遊びじゃないんだ」
アザール学院長はそこまで言うと、ため息を吐き更に続けた。
「サクラは二、三日学院の医務室にて治療をする。それから退学だ。他の負けた奴らは今すぐ学院を去れ」
「せめてサクラが良くなるまでいてもいいですか?」
サクラチームのククルがそう言うと、アザール学院長は被り気味で口を開いた。
「――ダメだ」
「でも――」
「ダメだ。荷物をまとめろ。お前らは死んだんだ」
アザール学院長のその言葉を聞くと、負けたチームは荷物をまとめトボトボと学院を後にした。
ここは……俺が思ってるよりも厳しい所だった。
アザール学院長が言うように、負けたら死ぬ。当たり前だ。
これは訓練だけど訓練じゃないんだ。
負けた人は死んだも同然。
それ以降この学院に必要ない……って事か。
って事は、これからも負けたり死ぬような事があれば……退学。
俺は肝に銘じた。
そしてこれまでよりも気を引き締めて訓練に臨んだ。
「――ニカ。ちょっと来い」
アザール学院長から呼ばれた。
ニカは顔色変えずにアザール学院長の元へ向かう。
おそらく説教だろうな。
そして。
「他の者は解散だ」
なんだか後味が悪い。
俺はイシャールと共に宿舎に帰って行った。
その間、お互いに何も話す事はなく部屋の前に着くと一言。
「じゃ……」
それだけ言うとお互いに背を向けた。
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