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第一章 第二幕 魔法騎士学院

九話 一番遅い奴は退学だ!

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 ――ガラガラ。

 教室に入って来たのはアザール学院長だ。


「学院長って入学式でキツイ事言ってたよね」
「なんか厳しそうだよな」
「えー、じゃあハズレって事ぉ?」


 教室内はざわめいていた。
 すると――


 ――バン!


 アザール学院長が教団を叩いた。


「静かにしろ。お前ら遊びに来てるのか?」


 思った通り、ちょっと怖い人だった。
 これから三年間、この人に教わるのか。

 なんか気が重いな。



 アザール学院長の一言で静かになった教室内に声が響く。


「じゃ、授業始めるぞ。さっそくだが――お前ら外に出ろ」


 え、いきなり?

 アザール学院長は顔つきを変えずに、早くしろと言わんばかりに俺たちを睨みつけた。


「おら、早くしろ。やる気あんのかお前ら? 庭園に来るのが一番遅かった奴は退学な」


 そう言い残すと、アザール学院長は魔法陣を描き瞬時に消えてしまった。


「いう、アレありかよ?」


 クラスの一人が窓から庭園を覗く。
 俺もみんなも釣られて庭園を覗くと、クラスの一人がアザール学院長とほぼ同じくらいに転移魔法で庭園に着いていた。

 それを見たクラスのみんなは、慌てて机にぶつかりながらも教室を後にした。


「私たちも行きましょう?」


 そう声かけたのはユミールだ。


「う、うん」


 俺たちはダッシュで階段を駆け下りながらも、俺は口を開いた。


「一番遅い人が退学って本当かな?」


 ふとそう聞いてみる。


「わからないけど……学院長は本気の顔をしていました」
「……そっか」
「ええ。私たちも急ぎましょう」
「そうだな」


 ユミールの答えが妙に信憑性があり、俺は更に駆け足で庭園に向かった。

 そして――


「はぁっ……はぁっ……」


 出るのが遅かった俺たちは、もうほとんどの人が庭園に着いた後に到着した。
 そして一番最後に来たのは――


「お前、退学な」


 周りがざわざわしている。
 それもそうだろう。

 その一番最後に来たのは足に包帯を巻いて松葉杖をついた男性だった。

 これはさすがに可哀そうだろう。

 そう思ったのもつかの間、クラスの一人が口を開いた。


「学院長! それは酷いです。彼は足が悪いんですよ」


 それに続いて次々と口を開く。


「そうですよ。あんまりです」
「退学はないよねぇ」


 するとアザール学院長は目付きを変え、ざわつく俺たちに言い放った。


「じゃあ……お前らの誰かが変わるか?」


 その言葉に反応する生徒はいなかった。
 さっきまでざわついていたみんなは嘘のように静まり、松葉杖の彼の俯く顔が見えた。


「ふん。その度胸もないのに可哀そうだの酷いだの騒ぐな。お前、身支度をしろ」
「……はい」


 松葉杖の彼にそう言うと彼は小さな声で返事をし、涙を流しながら校門を後にした。
 その後ろ姿はなんとも言えない寂しさを漂わせていた。

 この出来事があってか、クラスのみんなは真剣に授業に取り組んだ。



「じゃあまずお前らの実力を見せてもらう。一人ずつ前に出ろ」


 名差しはしない。
 俺たちから名乗り出るのを待っているようだ。


「では僕が」


 そう言って一番に名乗り出たのは、一番最初に庭園に転送魔法を使って移動した彼だ。


「お前はイシャールだな。よし、やれ」
「僕の得意な魔法は時を操る魔法です」


 アザール学院長は、イシャールの目の前に立った。


「え? 学院長が相手ですか?」
「なんだ、不服か?」
「いえ……そんな事は」


 まさかのアザール学院長が相手をするようだ。
 俺たちの時も……かな?
 だったら相当手ごわいだろうな。

 イシャールは少し表情を崩すも、覚悟を決めたように詠唱を始めた。


「彼の者を無の時空へ還したまえ――タイム!」
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