9 / 40
第一章 第二幕 魔法騎士学院
九話 一番遅い奴は退学だ!
しおりを挟む
――ガラガラ。
教室に入って来たのはアザール学院長だ。
「学院長って入学式でキツイ事言ってたよね」
「なんか厳しそうだよな」
「えー、じゃあハズレって事ぉ?」
教室内はざわめいていた。
すると――
――バン!
アザール学院長が教団を叩いた。
「静かにしろ。お前ら遊びに来てるのか?」
思った通り、ちょっと怖い人だった。
これから三年間、この人に教わるのか。
なんか気が重いな。
アザール学院長の一言で静かになった教室内に声が響く。
「じゃ、授業始めるぞ。さっそくだが――お前ら外に出ろ」
え、いきなり?
アザール学院長は顔つきを変えずに、早くしろと言わんばかりに俺たちを睨みつけた。
「おら、早くしろ。やる気あんのかお前ら? 庭園に来るのが一番遅かった奴は退学な」
そう言い残すと、アザール学院長は魔法陣を描き瞬時に消えてしまった。
「いう、アレありかよ?」
クラスの一人が窓から庭園を覗く。
俺もみんなも釣られて庭園を覗くと、クラスの一人がアザール学院長とほぼ同じくらいに転移魔法で庭園に着いていた。
それを見たクラスのみんなは、慌てて机にぶつかりながらも教室を後にした。
「私たちも行きましょう?」
そう声かけたのはユミールだ。
「う、うん」
俺たちはダッシュで階段を駆け下りながらも、俺は口を開いた。
「一番遅い人が退学って本当かな?」
ふとそう聞いてみる。
「わからないけど……学院長は本気の顔をしていました」
「……そっか」
「ええ。私たちも急ぎましょう」
「そうだな」
ユミールの答えが妙に信憑性があり、俺は更に駆け足で庭園に向かった。
そして――
「はぁっ……はぁっ……」
出るのが遅かった俺たちは、もうほとんどの人が庭園に着いた後に到着した。
そして一番最後に来たのは――
「お前、退学な」
周りがざわざわしている。
それもそうだろう。
その一番最後に来たのは足に包帯を巻いて松葉杖をついた男性だった。
これはさすがに可哀そうだろう。
そう思ったのもつかの間、クラスの一人が口を開いた。
「学院長! それは酷いです。彼は足が悪いんですよ」
それに続いて次々と口を開く。
「そうですよ。あんまりです」
「退学はないよねぇ」
するとアザール学院長は目付きを変え、ざわつく俺たちに言い放った。
「じゃあ……お前らの誰かが変わるか?」
その言葉に反応する生徒はいなかった。
さっきまでざわついていたみんなは嘘のように静まり、松葉杖の彼の俯く顔が見えた。
「ふん。その度胸もないのに可哀そうだの酷いだの騒ぐな。お前、身支度をしろ」
「……はい」
松葉杖の彼にそう言うと彼は小さな声で返事をし、涙を流しながら校門を後にした。
その後ろ姿はなんとも言えない寂しさを漂わせていた。
この出来事があってか、クラスのみんなは真剣に授業に取り組んだ。
「じゃあまずお前らの実力を見せてもらう。一人ずつ前に出ろ」
名差しはしない。
俺たちから名乗り出るのを待っているようだ。
「では僕が」
そう言って一番に名乗り出たのは、一番最初に庭園に転送魔法を使って移動した彼だ。
「お前はイシャールだな。よし、やれ」
「僕の得意な魔法は時を操る魔法です」
アザール学院長は、イシャールの目の前に立った。
「え? 学院長が相手ですか?」
「なんだ、不服か?」
「いえ……そんな事は」
まさかのアザール学院長が相手をするようだ。
俺たちの時も……かな?
だったら相当手ごわいだろうな。
イシャールは少し表情を崩すも、覚悟を決めたように詠唱を始めた。
「彼の者を無の時空へ還したまえ――タイム!」
教室に入って来たのはアザール学院長だ。
「学院長って入学式でキツイ事言ってたよね」
「なんか厳しそうだよな」
「えー、じゃあハズレって事ぉ?」
教室内はざわめいていた。
すると――
――バン!
アザール学院長が教団を叩いた。
「静かにしろ。お前ら遊びに来てるのか?」
思った通り、ちょっと怖い人だった。
これから三年間、この人に教わるのか。
なんか気が重いな。
アザール学院長の一言で静かになった教室内に声が響く。
「じゃ、授業始めるぞ。さっそくだが――お前ら外に出ろ」
え、いきなり?
アザール学院長は顔つきを変えずに、早くしろと言わんばかりに俺たちを睨みつけた。
「おら、早くしろ。やる気あんのかお前ら? 庭園に来るのが一番遅かった奴は退学な」
そう言い残すと、アザール学院長は魔法陣を描き瞬時に消えてしまった。
「いう、アレありかよ?」
クラスの一人が窓から庭園を覗く。
俺もみんなも釣られて庭園を覗くと、クラスの一人がアザール学院長とほぼ同じくらいに転移魔法で庭園に着いていた。
それを見たクラスのみんなは、慌てて机にぶつかりながらも教室を後にした。
「私たちも行きましょう?」
そう声かけたのはユミールだ。
「う、うん」
俺たちはダッシュで階段を駆け下りながらも、俺は口を開いた。
「一番遅い人が退学って本当かな?」
ふとそう聞いてみる。
「わからないけど……学院長は本気の顔をしていました」
「……そっか」
「ええ。私たちも急ぎましょう」
「そうだな」
ユミールの答えが妙に信憑性があり、俺は更に駆け足で庭園に向かった。
そして――
「はぁっ……はぁっ……」
出るのが遅かった俺たちは、もうほとんどの人が庭園に着いた後に到着した。
そして一番最後に来たのは――
「お前、退学な」
周りがざわざわしている。
それもそうだろう。
その一番最後に来たのは足に包帯を巻いて松葉杖をついた男性だった。
これはさすがに可哀そうだろう。
そう思ったのもつかの間、クラスの一人が口を開いた。
「学院長! それは酷いです。彼は足が悪いんですよ」
それに続いて次々と口を開く。
「そうですよ。あんまりです」
「退学はないよねぇ」
するとアザール学院長は目付きを変え、ざわつく俺たちに言い放った。
「じゃあ……お前らの誰かが変わるか?」
その言葉に反応する生徒はいなかった。
さっきまでざわついていたみんなは嘘のように静まり、松葉杖の彼の俯く顔が見えた。
「ふん。その度胸もないのに可哀そうだの酷いだの騒ぐな。お前、身支度をしろ」
「……はい」
松葉杖の彼にそう言うと彼は小さな声で返事をし、涙を流しながら校門を後にした。
その後ろ姿はなんとも言えない寂しさを漂わせていた。
この出来事があってか、クラスのみんなは真剣に授業に取り組んだ。
「じゃあまずお前らの実力を見せてもらう。一人ずつ前に出ろ」
名差しはしない。
俺たちから名乗り出るのを待っているようだ。
「では僕が」
そう言って一番に名乗り出たのは、一番最初に庭園に転送魔法を使って移動した彼だ。
「お前はイシャールだな。よし、やれ」
「僕の得意な魔法は時を操る魔法です」
アザール学院長は、イシャールの目の前に立った。
「え? 学院長が相手ですか?」
「なんだ、不服か?」
「いえ……そんな事は」
まさかのアザール学院長が相手をするようだ。
俺たちの時も……かな?
だったら相当手ごわいだろうな。
イシャールは少し表情を崩すも、覚悟を決めたように詠唱を始めた。
「彼の者を無の時空へ還したまえ――タイム!」
0
お気に入りに追加
43
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
スキルスティール〜悪い奴から根こそぎ奪って何が悪い!能無しと追放されるも実はチート持ちだった!
KeyBow
ファンタジー
日常のありふれた生活が一変!古本屋で何気に手に取り開けた本のタイトルは【猿でも分かるスキルスティール取得法】
変な本だと感じつい見てしまう。そこにはこう有った。
【アホが見ーる馬のけーつ♪
スキルスティールをやるから魔王を倒してこい!まお頑張れや 】
はっ!?と思うとお城の中に。城の誰かに召喚されたが、無能者として暗殺者をけしかけられたりする。
出会った猫耳ツインズがぺったんこだけど可愛すぎるんですが!エルフの美女が恋人に?何故かヒューマンの恋人ができません!
行き当たりばったりで異世界ライフを満喫していく。自重って何?という物語。
悪人からは遠慮なくスキルをいただきまーーーす!ざまぁっす!
一癖も二癖もある仲間と歩む珍道中!
性奴隷を飼ったのに
お小遣い月3万
ファンタジー
10年前に俺は日本から異世界に転移して来た。
異世界に転移して来たばかりの頃、辿り着いた冒険者ギルドで勇者認定されて、魔王を討伐したら家族の元に帰れるのかな、っと思って必死になって魔王を討伐したけど、日本には帰れなかった。
異世界に来てから10年の月日が流れてしまった。俺は魔王討伐の報酬として特別公爵になっていた。ちなみに領地も貰っている。
自分の領地では奴隷は禁止していた。
奴隷を売買している商人がいるというタレコミがあって、俺は出向いた。
そして1人の奴隷少女と出会った。
彼女は、お風呂にも入れられていなくて、道路に落ちている軍手のように汚かった。
彼女は幼いエルフだった。
それに魔力が使えないように処理されていた。
そんな彼女を故郷に帰すためにエルフの村へ連れて行った。
でもエルフの村は魔力が使えない少女を引き取ってくれなかった。それどころか魔力が無いエルフは処分する掟になっているらしい。
俺の所有物であるなら彼女は処分しない、と村長が言うから俺はエルフの女の子を飼うことになった。
孤児になった魔力も無いエルフの女の子。年齢は14歳。
エルフの女の子を見捨てるなんて出来なかった。だから、この世界で彼女が生きていけるように育成することに決めた。
※エルフの少女以外にもヒロインは登場する予定でございます。
※帰る場所を無くした女の子が、美しくて強い女性に成長する物語です。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
金貨1,000万枚貯まったので勇者辞めてハーレム作ってスローライフ送ります!!
夕凪五月雨影法師
ファンタジー
AIイラストあり! 追放された世界最強の勇者が、ハーレムの女の子たちと自由気ままなスローライフを送る、ちょっとエッチでハートフルな異世界ラブコメディ!!
国内最強の勇者パーティを率いる勇者ユーリが、突然の引退を宣言した。
幼い頃に神託を受けて勇者に選ばれて以来、寝る間も惜しんで人々を助け続けてきたユーリ。
彼はもう限界だったのだ。
「これからは好きな時に寝て、好きな時に食べて、好きな時に好きな子とエッチしてやる!! ハーレム作ってやるーーーー!!」
そんな発言に愛想を尽かし、パーティメンバーは彼の元から去っていくが……。
その引退の裏には、世界をも巻き込む大規模な陰謀が隠されていた。
その陰謀によって、ユーリは勇者引退を余儀なくされ、全てを失った……。
かのように思われた。
「はい、じゃあ僕もう勇者じゃないから、こっからは好きにやらせて貰うね」
勇者としての条約や規約に縛られていた彼は、力をセーブしたまま活動を強いられていたのだ。
本来の力を取り戻した彼は、その強大な魔力と、金貨1,000万枚にものを言わせ、好き勝手に人々を救い、気ままに高難度ダンジョンを攻略し、そして自身をざまぁした巨大な陰謀に立ち向かっていく!!
基本的には、金持ちで最強の勇者が、ハーレムの女の子たちとまったりするだけのスローライフコメディです。
異世界版の光源氏のようなストーリーです!
……やっぱりちょっと違います笑
また、AIイラストは初心者ですので、あくまでも小説のおまけ程度に考えていただければ……(震え声)
バイトで冒険者始めたら最強だったっていう話
紅赤
ファンタジー
ここは、地球とはまた別の世界――
田舎町の実家で働きもせずニートをしていたタロー。
暢気に暮らしていたタローであったが、ある日両親から家を追い出されてしまう。
仕方なく。本当に仕方なく、当てもなく歩を進めて辿り着いたのは冒険者の集う街<タイタン>
「冒険者って何の仕事だ?」とよくわからないまま、彼はバイトで冒険者を始めることに。
最初は田舎者だと他の冒険者にバカにされるが、気にせずテキトーに依頼を受けるタロー。
しかし、その依頼は難度Aの高ランククエストであることが判明。
ギルドマスターのドラムスは急いで救出チームを編成し、タローを助けに向かおうと――
――する前に、タローは何事もなく帰ってくるのであった。
しかもその姿は、
血まみれ。
右手には討伐したモンスターの首。
左手にはモンスターのドロップアイテム。
そしてスルメをかじりながら、背中にお爺さんを担いでいた。
「いや、情報量多すぎだろぉがあ゛ぁ!!」
ドラムスの叫びが響く中で、タローの意外な才能が発揮された瞬間だった。
タローの冒険者としての摩訶不思議な人生はこうして幕を開けたのである。
――これは、バイトで冒険者を始めたら最強だった。という話――
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる