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本編 ~ 第七章 ~
64話 ブリットン警察署 ~仲良し兄妹~
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「邪魔するぞ~」
雑に叩かれた扉のほうを見ると、ドンと音を立てて勢いよく開いた。
大柄で髭面で口には葉巻を加えている。デスアーマーを着ているみたいだけど⋯⋯。
何も建物の中で着なくていいのに、と思いながらその大柄の男の後ろに隠れている小さな女の子に目をやった。
「おめぇらが新入りか~? 俺はドルタ。んで、このチビがマールな」
「チビって言うなぁ!! これでもハタチ越えてるんだからねっ!」
話を聞くとどうやらこの人達は兄弟のようだ。
顔は似ていないが、とても仲が良さそうな兄弟で、警察署のみんなの中心的存在みたいだ。
言わばムードメーカーってやつだね。
私は軽く自己紹介をすると、プリンは食いぎみに話始めた。
「俺達はここに住む気はない。助けてもらったのは感謝するが、数日でここを出るつもりだ」
プリンはやっぱりその気なんだね。
クリスティもドルタもマールもみんないい人だと思うんだけどな。
「そうか⋯⋯わかった。じゃあ、施設の事は説明する必要ねぇな~」
「なんだぁ、残念! 遊び相手が増えたと思ったのにぃ!」
マールは残念そうに頬を膨らませて、背を向けて去って行った。
「っま、わかんねぇ事あったら俺に聞きな。案内とかしてやるからよ」
マールに続きドルタもそう言うと、腕組みしていた片手を上げて、背を向けると同時に手の甲をこちらに向けてバイバイの合図なのか、左右に手を揺らし部屋を去って行った。
「ねぇ、本当にここから出てくの?」
私はいなくなった二人を確認すると、プリンの顔を覗きそう言った。
なんだかプリンは難しい顔をしている。
プリンなりに敵か味方か見極めているのだと思う。
私は、少なくてもここには敵はいないと思うけどな。
私のそういう思いも儚くプリンの意思は硬いようだ。
「ここに長くいるつもりもねぇ。俺はこの世界でのんびり暮らしてる暇はねぇんだ」
プリンはそう言いながら少し悲しそうな表情を見せた。
そっか⋯⋯プリンは確かこの世界にはバグを探しに来たんだけ。
不意にこの世界に入っちゃった私とは違うんだ。
私も早く大輔を探さなくちゃいけないし、やっぱりここに長居するわけにはいかないよね。
「そうだよね。私も早く大輔に会いたいな⋯⋯」
私は偽りの笑顔を作り、プリンに笑いかけた。
その笑顔は、誰がどう見ても愛想笑いだとわかるくらいに、変な顔をしていたと思う⋯⋯。
「お互い、長居する意味はねぇ。明日にでもさっさとここを出るぞ」
こうして私達は、この世界でするべき事を再確認し深い眠りについた。
「おい、起きろテン。早いとこ出るぞ」
「ん⋯⋯んっ⋯⋯」
決して朝が強くない私は、私を揺するその声でしぶしぶ目を覚ました。
ボロいとは言え、まともなベッドで眠りについたのはいつぶりだろうか。
少なくてもこの世界に来てからは、寝袋か薄い布団の上でしか寝ていない為、現実世界以来の安眠だった。
この安眠を捨てるのは勿体ないが、これも決めた事だから仕方ない。
「さっさと準備しろ。連中が来る前に出るぞ」
そう言うとプリンはゴソゴソと動きだし、荷物をまとめ出した。
「⋯⋯うん」
私は眠い目を擦り、ベッドからダルい体を起こし、床に放り投げてあるホルスターを腰に付け、枕元に置いたピストルをホルスターに入れた。
まとめる荷物もあまりない為、すぐにでも出る準備は出来ている。
何があるかわからない為、身に付けている防具類は一切外していない。
すぐに戦闘に入れる為だ。
だからすぐ手に取れるように、枕元にピストルを置いていた。
ここでは何事もなかったが、いつ何時油断はするな、とのプリンからの助言だ。
私達は部屋の物を片付け、出る準備をすると誰も起きていないであろう早朝に、警察署を後にした。
「おう、行くのか?」
誰にも見つからない内にここを出ようとしたのだが、ドルタには見つかってしまったらしい。
デスアーマーを来て、ドスドスと音を立てながら近寄って来た。
「あ、うん。助けてくれてありがとう。私達は行く」
「そうか⋯⋯こりゃマールが泣くな。ワッハッハ⋯⋯またな」
私は笑顔でドルタに挨拶をして外へ歩んだ。
横にいるプリンを見ると、珍しく真顔で愛想の一つもなく、ドルタを一目見るとすぐに背を向け、私の後に続いた。
プシューードンーーガチャンーー
警察署の扉を開くと眩しい陽光が私達を襲う。
「待っていましたよ。遅いではないですか!」
そこにいたのは管理官だ。ここに入る前に少し遅く来た管理官は中に入る事が出来ずに、私達が来るまでずっとここで待っていたという。
そんなに日にちは経っていないが、よくこんな所で待ってたよね。
私は驚いた顔で管理官を見つめると、管理官は私達を案内するかのように歩き出した。
「何をボーッとしているのです? 早く行きますよ! 遅いと置いて行きますよ!」
置いて行かれた事を怒っているのか、そんな言い方をして私に背を向けた。
こうして私達の放浪旅は再び歩みを進めたーー
雑に叩かれた扉のほうを見ると、ドンと音を立てて勢いよく開いた。
大柄で髭面で口には葉巻を加えている。デスアーマーを着ているみたいだけど⋯⋯。
何も建物の中で着なくていいのに、と思いながらその大柄の男の後ろに隠れている小さな女の子に目をやった。
「おめぇらが新入りか~? 俺はドルタ。んで、このチビがマールな」
「チビって言うなぁ!! これでもハタチ越えてるんだからねっ!」
話を聞くとどうやらこの人達は兄弟のようだ。
顔は似ていないが、とても仲が良さそうな兄弟で、警察署のみんなの中心的存在みたいだ。
言わばムードメーカーってやつだね。
私は軽く自己紹介をすると、プリンは食いぎみに話始めた。
「俺達はここに住む気はない。助けてもらったのは感謝するが、数日でここを出るつもりだ」
プリンはやっぱりその気なんだね。
クリスティもドルタもマールもみんないい人だと思うんだけどな。
「そうか⋯⋯わかった。じゃあ、施設の事は説明する必要ねぇな~」
「なんだぁ、残念! 遊び相手が増えたと思ったのにぃ!」
マールは残念そうに頬を膨らませて、背を向けて去って行った。
「っま、わかんねぇ事あったら俺に聞きな。案内とかしてやるからよ」
マールに続きドルタもそう言うと、腕組みしていた片手を上げて、背を向けると同時に手の甲をこちらに向けてバイバイの合図なのか、左右に手を揺らし部屋を去って行った。
「ねぇ、本当にここから出てくの?」
私はいなくなった二人を確認すると、プリンの顔を覗きそう言った。
なんだかプリンは難しい顔をしている。
プリンなりに敵か味方か見極めているのだと思う。
私は、少なくてもここには敵はいないと思うけどな。
私のそういう思いも儚くプリンの意思は硬いようだ。
「ここに長くいるつもりもねぇ。俺はこの世界でのんびり暮らしてる暇はねぇんだ」
プリンはそう言いながら少し悲しそうな表情を見せた。
そっか⋯⋯プリンは確かこの世界にはバグを探しに来たんだけ。
不意にこの世界に入っちゃった私とは違うんだ。
私も早く大輔を探さなくちゃいけないし、やっぱりここに長居するわけにはいかないよね。
「そうだよね。私も早く大輔に会いたいな⋯⋯」
私は偽りの笑顔を作り、プリンに笑いかけた。
その笑顔は、誰がどう見ても愛想笑いだとわかるくらいに、変な顔をしていたと思う⋯⋯。
「お互い、長居する意味はねぇ。明日にでもさっさとここを出るぞ」
こうして私達は、この世界でするべき事を再確認し深い眠りについた。
「おい、起きろテン。早いとこ出るぞ」
「ん⋯⋯んっ⋯⋯」
決して朝が強くない私は、私を揺するその声でしぶしぶ目を覚ました。
ボロいとは言え、まともなベッドで眠りについたのはいつぶりだろうか。
少なくてもこの世界に来てからは、寝袋か薄い布団の上でしか寝ていない為、現実世界以来の安眠だった。
この安眠を捨てるのは勿体ないが、これも決めた事だから仕方ない。
「さっさと準備しろ。連中が来る前に出るぞ」
そう言うとプリンはゴソゴソと動きだし、荷物をまとめ出した。
「⋯⋯うん」
私は眠い目を擦り、ベッドからダルい体を起こし、床に放り投げてあるホルスターを腰に付け、枕元に置いたピストルをホルスターに入れた。
まとめる荷物もあまりない為、すぐにでも出る準備は出来ている。
何があるかわからない為、身に付けている防具類は一切外していない。
すぐに戦闘に入れる為だ。
だからすぐ手に取れるように、枕元にピストルを置いていた。
ここでは何事もなかったが、いつ何時油断はするな、とのプリンからの助言だ。
私達は部屋の物を片付け、出る準備をすると誰も起きていないであろう早朝に、警察署を後にした。
「おう、行くのか?」
誰にも見つからない内にここを出ようとしたのだが、ドルタには見つかってしまったらしい。
デスアーマーを来て、ドスドスと音を立てながら近寄って来た。
「あ、うん。助けてくれてありがとう。私達は行く」
「そうか⋯⋯こりゃマールが泣くな。ワッハッハ⋯⋯またな」
私は笑顔でドルタに挨拶をして外へ歩んだ。
横にいるプリンを見ると、珍しく真顔で愛想の一つもなく、ドルタを一目見るとすぐに背を向け、私の後に続いた。
プシューードンーーガチャンーー
警察署の扉を開くと眩しい陽光が私達を襲う。
「待っていましたよ。遅いではないですか!」
そこにいたのは管理官だ。ここに入る前に少し遅く来た管理官は中に入る事が出来ずに、私達が来るまでずっとここで待っていたという。
そんなに日にちは経っていないが、よくこんな所で待ってたよね。
私は驚いた顔で管理官を見つめると、管理官は私達を案内するかのように歩き出した。
「何をボーッとしているのです? 早く行きますよ! 遅いと置いて行きますよ!」
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こうして私達の放浪旅は再び歩みを進めたーー
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