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本編 ~ 第六章 ~

61話 汚染された水道工場 ~洪水からの脱出~

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ドンーードンーー


 いくら扉を叩いても引いても押しても開く気配などしない。
 それはそうだ。私達は今、天井から降って来た洪水のおかげで水中にいる。


「くそっ⋯⋯」


 プリンはいくら叩いても開かない扉を前に珍しく焦っているように見えた。


「私は機械ですよ! このままでは再起不能に⋯⋯」


 管理官の事をすっかり忘れていたが、管理官はロボットだ。これ以上この水中にいると動かなくなる可能性だってある。
 管理官の為にも自分達の為にもどうにかしてここを脱出しないと!

 そう思った私はある事に気が付いた。


「ねぇ! あの窓から脱出できないかな?」


 扉が付いている側の壁に小さな窓が付いている。天井近くの高い所に設置してある。


ドドドドドドーー


 プリンはその窓を見るなりアサルトライフルで、窓目掛けて乱射した。



ガシャンーー



 窓ガラスは勢いよく音を立てて割れた。


「よし⋯⋯」


 プリンは固い表情が和らぎ少し笑みを浮かべ私を見た。


「いいか、水量が増したら一気に外に出るぞ」


 どうやらプリンは天井から流れる水量を利用して、窓に到達したのと同時に脱出を試みるようだ。
 しかし窓枠は思ったよりも小さい。三人同時に脱出するのはどう見ても不可能だ。
 これは素早く一人ずつ流れるように外へ出ないと間に合わずに溺れ死ぬかもしれない⋯⋯。


「管理官が最初に出ろ。次はテンだ。俺は最後に行く」


 プリンはそう言うと私の後ろに付き水量が上がるのをじっと待っていた。


「わかった⋯⋯大丈夫だよね」
「あぁ、もうすぐだ」


 もう少しで水量は窓枠に近づく。私達は息を呑んでその時を待った。


「今だ! 管理官、行け!」
「あぁぁぁ⋯⋯押さないで下さい!」


 私は管理官の脱出を手伝おうと小さな窓に管理官を押し込んだ。
 それと同時にこの部屋に貯まっていた水が一気に窓から流れ出た。


ドスッーー


「よし、次はお前だ。行け!」


 私は水に流されるように窓にしがみつき、部屋の外へ体を叩きつけられた。


「プリン、早く!」


 私が外へ落ちるとすぐさまプリンのいる窓を見上げた。
 窓に捕まりながら体を外に出そうとしているプリンに、私は外から手を伸ばした。


「おい、どけ!」


 するとプリンは手を伸ばしている私にそう言って、私がその場から少し横にずれると勢いよく窓から転がり落ちた。


「ちょ、ちょっと。大丈夫?」
「あぁ。そんな事より早くこっから脱出するぞ」


 プリンは地面に叩きつけられた体を素早く起こし、私達に脱出を促した。


ウイーンーーガシャーー


「置いていかないで下さい!」


 私達は背後から迫りくる洪水を後ろ目で見ながら、全力で走って逃げた。


「はぁ⋯⋯はぁ⋯⋯」
「どこまで行くのですか!」


 私達は気が付くとある部屋に来ていた。そこは行き止まりの部屋。
 後ろを見るとどうやら洪水はこっちまで来ていないようだけど、見覚えがあるようなこの部屋⋯⋯。
 中央にでかくて丸いものがあって、周りに少しの段差とそれを囲うような鉄の柵。
 ここは間違いなくこの工場に入ってガラス越しに見たあの部屋だ。


「これはなんだ?」


 プリンが中央の丸い何かに近づくと薄くぼんやりとした光を発し始めた。


ブイーンーー


 そういう音と同時に。

 更に近づくと中は空洞になっていて、横長の椅子が設置してある。そして椅子の目の前にはモニターらしきものが。


「これは転移装置ですよ! 安易に近づかないで下さい!」


 そう管理官が言うとプリンは危険を察知したのか、今にもその椅子に座ろうとしていた腰を上げ、その装置から離れた。


「どっかに転送されんのか?」


 プリンがそう問うと管理官はウイーンと音を立てて動き始めた。


「見て下さい! ここに番号が付いています。正しい番号を押すと別の所へ転送されるのです。ここではないどこかへ⋯⋯やってみますか?」


 そう言うと管理官は番号を押そうとその装置に近づいた。


「待て! やめておこう。これ以上の危険はごめんだ。帰るぞ」


 装置に近づいた管理官を止めたのはプリンだ。
 確かにどこに転送されるのかもわからない状態で、適当な番号を入れて変な所に転送されても困るしね。

 プリンはその言葉と同時に、私達が最初にガラス越しで見ていた所のガラスを銃で撃ち壊し、この部屋の外への道を開いた。


「転送しないのですか? では帰りましょう。でもどこにですか? 私達に帰る場所などありませんよ!」


 管理官はジョークのつもりなのか、少し明るめの声でそう言った。


「とにかくどこに行くかは、ここを出てから考えよ?」


 私は管理官にそう言うと、この工場に入って来た入り口へ戻るべく歩き出した。
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