上 下
62 / 121
本編 ~ 第五章 ~

54話 烈火の中のオートマン ~絶望~

しおりを挟む
「やめて!」


 私は銃を向けている男を睨みながら管理官に覆いかぶさった。本当は怖いけどもうダメだと思った管理官が無事だったのに、これ以上殺させない。


「ほほう⋯⋯ねぇちゃん、どいたほうが身のためだぜ? 俺はねぇちゃんごと撃つ事だって出来る。そんな使い物にならねぇロボットかばったっていい事ないぜ?」


 男は撃つ気満々らしい。でもここでどいたらダメな気がする。管理官は大切な家族だしこのまま男の好きなようにはさせない!


「どく気はねぇみてぇだな。フン⋯⋯ねぇちゃんの根性に免じて殺さないでおいてやる」
「あんた達の目的はなに?」


 銃口を下げた男に私がそう問うと、男は鼻で笑いながら無茶な事を言ってきた。


「俺達の望みはただ一つ。仲間を殺した代償を払ってもらう。何かわかるか? 供給だ」


 男は声高々にそう言った。


「供給って⋯⋯こんな世界で供給なんて無理だよ」


 ここの菜園だってもうほとんど荒らされて修復不可能なくらいになってるのに、どうやって供給しろって言うの?


「いいか、もう一度だけチャンスをやる。供給をしろ。食料を俺達に定期的に持ってくるんだ。俺は気が長いほうじゃない。答えを間違うな」


 そう言うと男の仲間達がタンクを持ち菜園の各所に移動した。


「な、なにする気?」
「いいか、答えろ」
「だから供給は無理だって! あんた達に与える食料なんてこれっぽっちもないし」


 私がそう言うと男は銃口を私に向けた。


「それがねぇちゃんの答えだな。よし⋯⋯」


バンーー


 男は口元を片方だけひきつらせ私を見た。
 そして私に向けていた銃口を天井に向けて発砲した。


「え⋯⋯?」
「ねぇちゃんは答えを間違った。悪いな」


 そう言って男は建物の外へ歩いて行ってしまった。

 私はこれから何が起こるのか考えるのに少しの時間がかかった。
 建物の外を見ると男の仲間達が持っていたタンクから何かの液体を菜園中にばらまいている。


「ちょっと! 何する気よ?」


 私がどうあがこうが時すでに遅かった。

 男が私に背を向け菜園の外に足を運んだ瞬間、仲間達がマッチに火を付けそれを地面に落とした。
 こいつらこの菜園を燃やす気だ。
 そう気づいた私は管理官を連れ出そうと部屋に戻り、菜園の外に運んだ。


「管理官⋯⋯しっかりして! この菜園はもうダメだから⋯⋯」
「私は⋯⋯ここに置いていって下さい⋯⋯」
「ダメ!」


 そんな事できるわけない。
 せっかく生きてるってわかったのに、こんな炎に包まれた場所に置いてなんかいけない。


「フン⋯⋯」


 いち早く菜園の外に脱出していた男は私達を見て鼻で笑った。


パンパンパンーー


「なんだ⋯⋯?」


 その銃声が聞こえた瞬間、側にいた男の仲間の一人が倒れた。
 私は何が起こったのかと当たりを見渡していると、その銃声が側面から聞こえたものだと判明した。


「おい、何があった?」


 側面から現れたのはプリンだった。


「プリン⋯⋯」


 また絶妙なタイミングで助けにきたプリンを見て私は涙がこぼれた。

 プリンは私と管理官を守るように目の前に背を向けて立ち、男達に向かってアサルトを乱射した。


ドドドドドーーピュゥンーードドドドドドドドーーピュゥン


「⋯⋯どこにいても探し出すからな!」


 男は捨て台詞を吐き慌てて仲間と一緒に逃げて行った。


「おいテン、何があった?」
「あいつらが⋯⋯ロボット達を殺して⋯⋯この菜園を⋯⋯」


 私がそうプリンに言うと、プリンはすぐにここを離れようと荷物をまとめ、泣きべそをかいて座っている私の腕を掴み立たせた。


「管理官も⋯⋯」


 管理官は動くのがキツそうだけど、何とかゆっくりだけど動けるようだ。


「あぁ⋯⋯」


 後ろを向くと天まで届きそうなほど勢いよく燃え盛っている。
 建物は崩れ落ち、かつての菜園は⋯⋯私達が苦労して施設を増やし強化した立派な菜園の姿はもうない。



 こうして私とプリンと管理官は当てもなく、この弱肉強食な世界を放浪する事になるのだったーー
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

AIRIS

フューク
SF
AIが禁止され、代わりに魔法という技術が開発された2084年 天才的な青年により人間と変わらない見た目を持ち、思考し、行動するロボットが作られた その名はアイリス 法を破った青年と完璧なAIアイリスは何処へ向かっていくのか

【完結】勇者学園の異端児は強者ムーブをかましたい

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、pixivにも投稿中。 ※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。 ※アルファポリスでは『オスカーの帰郷編』まで公開し、完結表記にしています。

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

異世界坊主の成り上がり

峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
山歩き中の似非坊主が気が付いたら異世界に居た、放っておいても生き残る程度の生存能力の山男、どうやら坊主扱いで布教せよということらしい、そんなこと言うと坊主は皆死んだら異世界か?名前だけで和尚(おしょう)にされた山男の明日はどっちだ? 矢鱈と生物学的に細かいゴブリンの生態がウリです? 本編の方は無事完結したので、後はひたすら番外で肉付けしています。 タイトル変えてみました、 旧題異世界坊主のハーレム話 旧旧題ようこそ異世界 迷い混んだのは坊主でした 「坊主が死んだら異世界でした 仏の威光は異世界でも通用しますか? それはそうとして、ゴブリンの生態が色々エグいのですが…」 迷子な坊主のサバイバル生活 異世界で念仏は使えますか?「旧題・異世界坊主」 ヒロイン其の2のエリスのイメージが有る程度固まったので画像にしてみました、灯に関しては未だしっくり来ていないので・・未公開 因みに、新作も一応準備済みです、良かったら見てやって下さい。 少女は石と旅に出る https://kakuyomu.jp/works/1177354054893967766 SF風味なファンタジー、一応この異世界坊主とパラレル的にリンクします 少女は其れでも生き足掻く https://kakuyomu.jp/works/1177354054893670055 中世ヨーロッパファンタジー、独立してます

処理中です...