上 下
48 / 121
本編 ~ 第五章 ~

40話 機械的な出会い ~安定の生活~■挿絵あり■

しおりを挟む
「あれじゃない? 菜園!」


発見 グリーンヒルズ菜園 EXP100





 やっと着いた。
 どうやらここは無事みたい。
 見た限りだとロボットも健在で荒らされている様子もない。


「ね、ここは大丈夫みたいだね?」


 私がそう言うと珍しくプリンは優しい笑顔で頷いた。
 最近まであんな事が立て続けに起こったんだ。
 何も起こっていないこの平和な菜園を見て、私達は久々に笑顔になれた気がした。


「何も起こってないからって警戒を緩めんなよ。まずはここを調べるぞ」


 プリンはそう言うと、菜園の中に入っていった。

 菜園の周りは少しボロいけど白い柵で囲まれていて、水道ポンプもあるし、畑も作物もある。
 外に作物を育てられる畑が少しと、その横に少し大きな建物があり、その中には室内で育てられるような沢山の植木鉢が机の上に並んでいた。
 建物はビニールで囲まれている為、作物も育ちやすい環境になっている。
 まぁ、この辺はゲームとあまり変わってないな。

 この菜園では6体のロボットが管理していて、その内の2体が管理官ロボットになっている。
 白いロボットがグリーン管理官、そして黒いロボットが副監理官、この2体は室内の管理をする為に、主に建物の中にいる。

 あとのグレーのロボット4体は外の畑を管理していて、水やりや収穫などして作物を育てて、街に供給ラインを繋いで育てた作物を売りさばいているロボットもいる⋯⋯はずなんだけど。
 こんな世界でもう供給ラインなんて繋ぐ必要ないよね? そこら辺はどうなっているのかわからないけど、とにかく私も中に入ってみることにする。

 ここなら防衛もしやすいし、外周の柵を強化してもっと高い防壁を作って、敵を近づけないようにする事だって出来る。



 いち早く菜園の中に入っていったプリンの後を追い、私も菜園の中を探索することにする。

 まずは外周から。ここら辺は巨大化した虫やら壊れたロボットが襲ってくるから、まずはそれを退治しないと。
 と、そんなことを考えているとやっぱり巨大化した虫のお出まし。

 薄っぺらい羽をバタつかせ、小さい胴体を空中に浮かせ牽制している。
 クラハという生物だ。

 私は来る途中で拾った鉄パイプを構えた。
 なぜ銃じゃないのかは、単純に弾が無駄だから。
 こんな世界では弾は貴重。弾を餌に取引をするほどだから。

 私はこの世界にきて沢山の敵に出会った。
 だからもう虫くらいじゃ驚かない。
 プリンにも沢山助けてもらったけど、もう助けてもらわなくても、一人でも生きていけるように強くならなくちゃいけない。

 私はあの蛇女の事件から少しは成長した⋯⋯はず。
 いつまでもプリンに助けてもらってちゃ、またいつあんな事になるかもわからない。

 だから私は⋯⋯自分一人でも戦う!


「はぁ!!」


 私は数匹いた巨大化した虫を鉄パイプで次々と殴っていき、あっという間に倒した。
 一匹ずつ、慎重に。攻撃を食らってRAD中毒になりたくないからね。
 そしてプリンが建物の中を調べているうちに、建物の裏側に回って敵がいないか確認することにした。





「ようこそ! グリーンヒルズ菜園へ!」


 うわ! びっくりした。どうやら管理ロボットが話しかけてきたらしい。
 っていうか、遅いし。
 さっきから私達、すごい探索してたのに今更話しかけてくる? 普通⋯⋯。
 まじで心臓止まるかと思ったわ。


「あんたが管理官ロボットだったよね?」


 私は冷静さを取り戻し、ロボットにそう尋ねた。


「えぇ! いかにも! 私がこのグリーンヒルズ菜園の管理官のグリーン管理官です! 以後、お見知りおきを!」


 そうだった。
 このロボット、妙に礼儀正しくてテンションが高いんだった。
 こんなロボットと一緒に過ごすのか⋯⋯。


「どうしたのですか? 大丈夫ですか? このレモネードを飲めば元気がでますよ! おひとつどうぞ!」
「え、遠慮しとく」
「そうですか⋯⋯それは残念です」


 まぁ、このロボットの相手は後でいいや。とりあえず探索を再開しよう。


「あのさ、今探索するからまたあとで⋯⋯」
「はい! わかりました! では用事がある時は話しかけてくださいね!」


 ふぅ。とりあえず建物の裏側に回って⋯⋯と、思ったら建物の中からプリンが出てきた。


「おう、そっちはどうだ?」
「どうだって、見てわかるでしょ? ロボットと話してたの」
「探索もしないでか?」


 仕方ないでしょ。ロボットからいきなり話しかけられたんだから。
 まぁでも探索の手間が省けたからいいか。
 プリンが裏側も見てくれたみたいだし、周りにも敵はいないみたいだし。

 これからようやく安心した生活が送れるんだね。


「よし、探索終わったし、とりあえずロボットに事情を話に行くか」


 確かに。
 話さなきゃいけないよね。
 いくらロボットっていってもこれから一緒に暮らすんだし。

 私はプリンと一緒に管理官ロボットの元へ向かった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

NPCが俺の嫁~リアルに連れ帰る為に攻略す~

ゆる弥
SF
親友に誘われたVRMMOゲーム現天獄《げんてんごく》というゲームの中で俺は運命の人を見つける。 それは現地人(NPC)だった。 その子にいい所を見せるべく活躍し、そして最終目標はゲームクリアの報酬による願い事をなんでも一つ叶えてくれるというもの。 「人が作ったVR空間のNPCと結婚なんて出来るわけねーだろ!?」 「誰が不可能だと決めたんだ!? 俺はネムさんと結婚すると決めた!」 こんなヤバいやつの話。

AIRIS

フューク
SF
AIが禁止され、代わりに魔法という技術が開発された2084年 天才的な青年により人間と変わらない見た目を持ち、思考し、行動するロボットが作られた その名はアイリス 法を破った青年と完璧なAIアイリスは何処へ向かっていくのか

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

異世界坊主の成り上がり

峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
山歩き中の似非坊主が気が付いたら異世界に居た、放っておいても生き残る程度の生存能力の山男、どうやら坊主扱いで布教せよということらしい、そんなこと言うと坊主は皆死んだら異世界か?名前だけで和尚(おしょう)にされた山男の明日はどっちだ? 矢鱈と生物学的に細かいゴブリンの生態がウリです? 本編の方は無事完結したので、後はひたすら番外で肉付けしています。 タイトル変えてみました、 旧題異世界坊主のハーレム話 旧旧題ようこそ異世界 迷い混んだのは坊主でした 「坊主が死んだら異世界でした 仏の威光は異世界でも通用しますか? それはそうとして、ゴブリンの生態が色々エグいのですが…」 迷子な坊主のサバイバル生活 異世界で念仏は使えますか?「旧題・異世界坊主」 ヒロイン其の2のエリスのイメージが有る程度固まったので画像にしてみました、灯に関しては未だしっくり来ていないので・・未公開 因みに、新作も一応準備済みです、良かったら見てやって下さい。 少女は石と旅に出る https://kakuyomu.jp/works/1177354054893967766 SF風味なファンタジー、一応この異世界坊主とパラレル的にリンクします 少女は其れでも生き足掻く https://kakuyomu.jp/works/1177354054893670055 中世ヨーロッパファンタジー、独立してます

処理中です...