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第1章 そして冒険者へ
12話「ガントレットの性能開花」
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『ぐびぐびぐび……ぷっはぁ~! やっぱりミルクは最高でふね』
先日、神様ショップで買わされたフー二用の小さいコップ。それを片手に、腰に手を当てながら牛乳を一気飲みするフー二。
いつからか好きになった小魚の佃煮を、フー二の為に作っている時だった。ため息を吐きながらフー二から液晶に目を移す。
すると――
「ちょ、ちょっとフー二! 見て!」
私は菜箸を乱暴に置き、テーブルの上に仁王立ちしているフー二の手を掴んで、液晶の前に駆け寄る。
『ふにぃ~! なんでふか!? そんなに引っ張ったら手がもげるでふよ。まったく! ポクのミルクタイムを邪魔するなんて、よほどの事じゃないと……』
そこまで言うと、フー二は牛乳を飲みながら液晶に目を移す。
「大変よ! 亮太が……亮太が……」
『……ふに――!』
フー二は液晶を見るなり、目玉を大きく見開き口に含んだ牛乳を吹き出す。
『おかしいでふね……今は何も感じないでふ』
「ねぇ、どうしたらいいの? 亮太がウルフに食べられちゃうわ! なんとかしてよフー二」
『無理でふ! ポクは、"不思議な道具"をいっぱい持ってる青いタヌキじゃないんでふよ!』
フー二は聞いた事があるような言葉を並べる。
「神様ショップだって似たようなものじゃない」
『全っっっ然、ちがーう! でふ。神様ショップはお腹のポケットから何も出さないでふ!』
「あら、詳しいのね……じゃなくて! どうにかして!」
神様ってアニメを見るのかな? そんな疑問に答えるようにフー二は満面の笑みで言った。
『ポクは意外と、人間のアニメは好きなんでふ。一日三十分だけなら見てもいいんでふ。それに……』
「三十分って結構厳しいのね……って、もうその話はどうでもいいの!」
私の、"どうでもいい"に反応するように、フー二は怒り顔を近付けて言う。
『ポクの話よりリョウが大事なんでふか!』
「当たり前でしょ! 今回も何とか救う方法があるんでしょ!?」
なぜかフー二は黙る。
『……』
不安になった私は、フー二の顔を覗き込むように口を開く。
「ねぇ……フー二?」
するとフー二は、珍しく真剣な表情で言う。
『残念でふ。今回は……ないでふよ』
「――はぁぁぁ!?」
私は人生で出した事がないくらいの声量で叫んだ。
フー二は目玉を大きくし、一瞬止まると体を揺らしながら地面に落下していった。
落ちたフー二の体を掴み持ち上げると、体をピクピクさせながら口を開く。
『耳……ミミが……痛い、でふ』
「ご、ごめんねフー二大丈夫? なんで今回は助ける事が出来ないの?」
私は冷静になりそう尋ねる。
『ポクの角は反応してないでふ。だから何もしてあげられないんでふ……』
悲しい表情で言うフー二を見て、私は冗談ではないのだと悟り、他の方法がないか考える。
「何か……出来ないの? 神様ショップで何か役に立つ物は……」
私はフー二に無理矢理神様ショップを開かせ、上から下まで目を通した。
しかし、全てロックがかかっていて購入出来ない状態になっていた。更に役に立つアイテムを探したが、最初にほとんど有用な物は送ってしまっていて、今役に立つ物は見当たらなかった。
『いくらこっちで嘆いたって無駄でふよ……何もしてあげられないでふ』
「じゃあ、亮太が食べられるのを黙って見てろって言うの!?」
『……そうでふ。ここはリョウが自力で突破するしか助かる道はないでふよ』
「そんな……」
私は大きく肩を落とし、胸がざわめく思いで亮太を見つめる。
「亮太……」
۞
一瞬だった。
ガントレットが光ったような気がした。
すると次の瞬間。
――シャッ!
俺の腕に何が起こったのか、理解するまでに時間がかかった。
気が付くとウルフは地面に横たわっていた。口元には針が数本刺さり、その周りにベッタリと血が付いている。周りの地面には、抜け落ちた牙と針が数本転がっていた。
どうやら、このガントレットから無数の針のようなものが飛散し、噛み付いていたウルフの口内や外側に突き刺さったようだ。
ガントレットに呆気に取られている俺を横目に、ウルフは体を小刻みに震わせながら、気合いで立とうとしていた。
口内からは大量の血が溢れている。それなのにまだ立ち上がり、三匹の子ウルフを守ろうとしていた。
俺は尻を引きずりながらゆっくりと後ずさる。
逃げるなら今しかない! ガントレットの事も気になるが、今は逃げるのが得策だ。
俺は振り返ると、傍に落とした龍晶石の剣が目に入る。剣を乱暴に拾うと同時に立ち上がり、そのまま逃げるように滝をくぐり全速力で走った。
先日、神様ショップで買わされたフー二用の小さいコップ。それを片手に、腰に手を当てながら牛乳を一気飲みするフー二。
いつからか好きになった小魚の佃煮を、フー二の為に作っている時だった。ため息を吐きながらフー二から液晶に目を移す。
すると――
「ちょ、ちょっとフー二! 見て!」
私は菜箸を乱暴に置き、テーブルの上に仁王立ちしているフー二の手を掴んで、液晶の前に駆け寄る。
『ふにぃ~! なんでふか!? そんなに引っ張ったら手がもげるでふよ。まったく! ポクのミルクタイムを邪魔するなんて、よほどの事じゃないと……』
そこまで言うと、フー二は牛乳を飲みながら液晶に目を移す。
「大変よ! 亮太が……亮太が……」
『……ふに――!』
フー二は液晶を見るなり、目玉を大きく見開き口に含んだ牛乳を吹き出す。
『おかしいでふね……今は何も感じないでふ』
「ねぇ、どうしたらいいの? 亮太がウルフに食べられちゃうわ! なんとかしてよフー二」
『無理でふ! ポクは、"不思議な道具"をいっぱい持ってる青いタヌキじゃないんでふよ!』
フー二は聞いた事があるような言葉を並べる。
「神様ショップだって似たようなものじゃない」
『全っっっ然、ちがーう! でふ。神様ショップはお腹のポケットから何も出さないでふ!』
「あら、詳しいのね……じゃなくて! どうにかして!」
神様ってアニメを見るのかな? そんな疑問に答えるようにフー二は満面の笑みで言った。
『ポクは意外と、人間のアニメは好きなんでふ。一日三十分だけなら見てもいいんでふ。それに……』
「三十分って結構厳しいのね……って、もうその話はどうでもいいの!」
私の、"どうでもいい"に反応するように、フー二は怒り顔を近付けて言う。
『ポクの話よりリョウが大事なんでふか!』
「当たり前でしょ! 今回も何とか救う方法があるんでしょ!?」
なぜかフー二は黙る。
『……』
不安になった私は、フー二の顔を覗き込むように口を開く。
「ねぇ……フー二?」
するとフー二は、珍しく真剣な表情で言う。
『残念でふ。今回は……ないでふよ』
「――はぁぁぁ!?」
私は人生で出した事がないくらいの声量で叫んだ。
フー二は目玉を大きくし、一瞬止まると体を揺らしながら地面に落下していった。
落ちたフー二の体を掴み持ち上げると、体をピクピクさせながら口を開く。
『耳……ミミが……痛い、でふ』
「ご、ごめんねフー二大丈夫? なんで今回は助ける事が出来ないの?」
私は冷静になりそう尋ねる。
『ポクの角は反応してないでふ。だから何もしてあげられないんでふ……』
悲しい表情で言うフー二を見て、私は冗談ではないのだと悟り、他の方法がないか考える。
「何か……出来ないの? 神様ショップで何か役に立つ物は……」
私はフー二に無理矢理神様ショップを開かせ、上から下まで目を通した。
しかし、全てロックがかかっていて購入出来ない状態になっていた。更に役に立つアイテムを探したが、最初にほとんど有用な物は送ってしまっていて、今役に立つ物は見当たらなかった。
『いくらこっちで嘆いたって無駄でふよ……何もしてあげられないでふ』
「じゃあ、亮太が食べられるのを黙って見てろって言うの!?」
『……そうでふ。ここはリョウが自力で突破するしか助かる道はないでふよ』
「そんな……」
私は大きく肩を落とし、胸がざわめく思いで亮太を見つめる。
「亮太……」
۞
一瞬だった。
ガントレットが光ったような気がした。
すると次の瞬間。
――シャッ!
俺の腕に何が起こったのか、理解するまでに時間がかかった。
気が付くとウルフは地面に横たわっていた。口元には針が数本刺さり、その周りにベッタリと血が付いている。周りの地面には、抜け落ちた牙と針が数本転がっていた。
どうやら、このガントレットから無数の針のようなものが飛散し、噛み付いていたウルフの口内や外側に突き刺さったようだ。
ガントレットに呆気に取られている俺を横目に、ウルフは体を小刻みに震わせながら、気合いで立とうとしていた。
口内からは大量の血が溢れている。それなのにまだ立ち上がり、三匹の子ウルフを守ろうとしていた。
俺は尻を引きずりながらゆっくりと後ずさる。
逃げるなら今しかない! ガントレットの事も気になるが、今は逃げるのが得策だ。
俺は振り返ると、傍に落とした龍晶石の剣が目に入る。剣を乱暴に拾うと同時に立ち上がり、そのまま逃げるように滝をくぐり全速力で走った。
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