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130 光生side
しおりを挟むお昼休みが終わるころに涼は教室に戻ってきた。バスケをしていたからか制服が少し乱れていてその姿を星くんが見たんだと思うだけで嫉妬してしまう。チャイムが鳴り何も話せないまま放課後になってしまいすぐに星くんがやってきて楽しそうに何か話をしている。
席を立てば名前も知らない女の子達に話しかけられ流れで教室を出てしまった。話しかけられても頭に入ってくるわけもなく適当に返事をしながら帰っているともう全てがどうでもよくなってくる。
「ちょっと!!椎名!!」
大きな声に振り向けば夢がいてカバンで俺の背中を叩き不機嫌そうな顔をしている。周りの女の子達のことなんか一切気にせず腕をグイグイ引っ張りながらどこかに連れて行かれる。
「相変わらず気の強い女。」
叩かれた背中は痛いし強引だしコソッと小さな声で文句を言えばそれが聞こえたのか急に立ち止まる。
「うわっ!あぶなっ。」
「うわっ!じゃないでしょ!あんたなんで女の子と一緒に帰ってんの?さくらちゃんは?」
俺だって帰りたくて帰ってたわけじゃないしできることなら涼と帰りたいし謝りたいしいっぱい触りたい。
「星くんの家に行った。」
「はぁ?なんで?星くんさくらちゃんのこと好きなんだよ?」
夢は星くんのことに気づいていたらしく怖い顔をして詰め寄ってくる。ていうかそんな大きな声で言われると心にグサッとくるからやめてほしい。
「知ってる。でも涼は星くんの気持ち気づいてないし一緒にゲームできるってすごい喜んでたから止められないでしょ。」
「はぁ~、そっか、そうだよね、、」
大きなため息をつく夢は俺と同じような表情をしている。
「ふっ、なんで夢まで落ち込んでんの。もしかして俺の味方?」
「何言ってんの?私はさくらちゃんの味方!!だって大事な友達だもん!」
キッと俺のことを睨む夢はやっぱり気が強くて強引でわがままで誰よりも友達思いだ。絶対に言わないけどこういうところが羨ましいななんて思っているとバシッと背中をまた勢いよく叩かれる。
「なに笑ってんの?あんたそんな余裕ぶっこいてる場合じゃないでしょ?」
「は?今の俺どこからどうみても余裕ないんだけど?」
今だけじゃなくいつだって涼のことになると余裕なんかなくて必死だ。
「ねぇ、今ごろ星くんに無意識にピッタリくっついてゲームなんかしてあのかわいい上目遣いで褒めてたりして!」
「……そんな恐ろしいこと言わないでくれる?」
夢は「わははっ」と豪快に笑っているけどなんだかすごい心配になってきた。いやずっと心配だったけど言葉にされると余計に考えてしまう。もう全部夢のせいだ。
「やばい本当にそんなことになってたらどうしよ。俺まじで明日が来るの怖い。」
「どうする?今日の夜さくらちゃんから電話きて星くんのこと好きになったって言われたら!」
「そんなこと冗談でも言わないでよね。今の俺まじでメンタル保つのに必死だから。」
もう何度目かの大きなため息をつきその場に座り込むと夢は楽しそうにスキップをしながら振り返る。
「話聞いてあげるからファミレス行こうよ!椎名のおごりで!」
二ッと笑う夢はきっと俺の話なんか興味もなくてただおいしいご飯を食べたいだけだろう。それでも傷心中の俺は話して少しでも心が軽くなるならと、重い腰を上げファミレスへと向かう。
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