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身の上ばなしとのうりょく検査
しおりを挟む「お前、自分がどこにいるのか分からないのにそんな落ち着いてたのか...肝が座ってるのか馬鹿なのか...」
ナル様が呆れたようにこちらを見るがその言葉にはどうとも返答し難い。こちらにも一応は事情があるのですから
きっと私はあのまま死んでしまったのだと思う。見知らぬ土地に見知らぬ言語、何より以前とは似ても似つかぬこの不思議な色をした容姿...顔も前は俯いてばかりだったせいか半目で、まつ毛と触れ合うくらい前髪を長くしているのが常で 両親との別れの時、前髪を撫でるように目の上から退かされ 病室のライトがひどく目に沁みたのは記憶に新しい。
「まぁ、わたしに みより は、ありませんから。」
「そんなに頭の回る孤児がいてたまるか」
「あぅっ」
シド様に軽く頭を小突かれ少しびっくりしたものの最初よりも壁のない触れ合いが嬉しくて 心がぽかぽかとして気持ちがいい
こんな感じの関わり合いもいいものです。
しかし私の反応があまりにも弱そうだったのか、シド様が少し慌てて自分の判断を思い悩む
「あ、ごめん、痛かったか?
...やっぱり、丁寧に接した方が正解なんじゃ...」
「今のほうがかっこいい、です!」
「...こっちの方がいいのか?」
「えと、やせいみがあって、ですよ!!」
「「野性味...」」
どうやら戸惑わせてしまったようです。
新しく"ワイルド"だ、なんて言葉を作る訳にもいきません。難しいです。
「やっぱり今からでも元に...」
「や!いや、です!
『うそつく』、『かくす』はくるしい、きゅうくつになる、です!そんなのさせる、きばりあうのは、やです!!」
前の私は周りの人達を心配させたくなくて、泣き虫な癖に泣くことを隠してばかりだったから、その苦しさがよく分かる。
だから そんな事をするのもさせるのも もうゴメンだ。
必死さが表面に滲み出てしまったのか、それとも覚えがあるのかシド様はハッとした顔をすると苦笑してポンポンと私の頭を撫でながら喋りだす
「そ、う...そうだよな。ありがとう。
でも、それだったら メリアだって秘密、言わないとな?」
「うっ...」
ば、バレていたようです...
「...わたし、前はこんなじゃなかったですよ。
ずっとびょういんの白いへやの中から出られないくらい からだはよわくて、あるくのも ベッドからおきるのもつらいくらい とても、とてもよわかったです。
でも今は若くなったですけど、じょうぶなからだに うたうみたいなキレイなコトバおぼえるできて、とっても しあわせ、です」
心からの笑みが自然と表情に浮かぶ
ふたりは意味がよく分からなかったのか、少しずつ質問を重ねられる。こっちのが早かったでしょうか...?
「今は その...ちゃんと元気なんだよな?鹿に乗ってたくらいだし。」
「はい。まえは大きなこえを出すことはおろか、歩くのにもつえがいる、でしたから」
「前のってことは、体が違うのか。前のは?」
「たぶん もう灰になってつちのなかにいるです。かそうずみだと思うですよ」
「土葬じゃなくてか?」
「はい、かそうです。」
どうやらこの国に限らずこの大陸全土では火葬はあまり好まれるものではないらしい。死んだ者の灰を撒くのは無念や未練を撒くのと同義だからだそうだ。
思想の違いでしょうか?
「じゃあ話を変えよう。
魔眼についてだが...あ、魔眼っていうのは 力の宿った目の事で、その能力は千差万別、十人十色。似たような能力はあったとしても何一つとして『同じ』というものは無いんだ。
メリアの能力が何なのかを調べなきゃならない。調べても大丈夫か?」
「もちろんですよ、シドさまのおーせのままに~」
「...その、『シド様』っていうの、やめてもらってもいいか?なかなか慣れなくてな、鳥肌が...」
「あっ!ついでに俺も!『様』はナシで!」
「はい、です~」
シドさ...シドは口を動かしながらも手も動かして、調べる為の器具らしきものを取り出す。それは針とガラス製スポイトに透明な液体の入った小瓶と空の小皿。それと...小さく切られた厚紙??
「さって、調べるぞ。ちょっとチクってするけど、我慢しろな~」
「てんてきよりいたいは ないですよ~」
「『テンテキ』が何かは分からんが、そりゃ良かった。暴れられたら面倒だしな」
「同感。」
「...私はそんなに落ちつきないように見る されるですか...?」
「「無いな」」
この二人は何度か声を揃えることが多くていつまで一緒にいて飽きないな、と呑気に考えつつ シドの手元を眺める。
親指の根元、皮膚が平らになっているところにプツ、と針を刺され鮮やかな赤が出てくるとあの厚紙を押し当てられ、離して「また血が出る」、と思ったら血は止まっており、厚紙を見やると全体が仄かにピンクがかっている。
シドがまたゴソゴソとし始めたので見てみると、小瓶を開け、スポイトで中の液体を吸い取り私に渡される。はて、何をすればいいのだろうか
「涙を出すための目薬だ。しみるだろうが...
?、大丈夫か?」
「へいき、です...タブン...」
何気に目薬は体が変わる前から考えても初挑戦だ。手がプルプルするが、上手くできるだろうか...
「「...」」
「だ、だいじょうぶですってば!!」
「私がやろうk...」
「いや、お前不器用だろ。オレ器用だしオレやるよ。
ほら、それ貸して?」
「ぅ...はい。」
ナルが手を差し出したので万感の思いを込めてスポイトを託す。果たして私は失明とかしないのだろうか...
「メリア、上向いてろ」
「あ、はい」
シドに言われ反射的に体は行動をする
ハッ、しまった!
「わあっ...うぅ...」
「ほら、小皿。涙は多い方が結果も確定しやすいから、できるだけ集めろよ」
「...大丈夫か?」
「すーすーする。いたくないけどつめたくてきもちいような、目があつくなってふしぎな感じ...」
「その熱いのが魔力だぞ。そのうち魔力量とか質とかも調べないとか...やること多いな...」
「世の子育てするやつの気持ちが知れたな。やったじゃないか、ナル?」
「こんな面倒は一回だけで十分だ!」
「貴婦人方が聞いたら残念がりそうだ」
「どうせ見た目と地位だけだろ。そーゆーのはもう腹いっぱい!」
「それには同意する」
これ、知ってますよ!『美味しい展開』と言うのでしょう?マリ先生というお医者様が「こういう時は眺めるに徹するのよ!」って教えてくれたですけど、キリがよさそうなのでこっちに意識を向けてもらいましょう~
「もう涙 出てこないですよ~」
「おっと、悪いな。これ預かるぞ」
「はーい」
私からナル、ナルからシド、と小皿が渡り、ピンクになった厚紙が小皿へと落とされる
すると...
「おぉー!」
薄ピンクだった厚紙が紫色の炎が出て燃え出し、小皿の中身が炎へ吸い込まれたかと思うと紫から色がどんどん暗くなり、果てには真っ黒な火になってその火が消えて残った所には私の小指くらいの長さの菱形の黒いクリスタルが鎮座していた
(まさか...な)
(いや、そのまさかだろう)
(えぇー...護衛の手配どうすんの、数足りるか?)
(最悪の場合、ナルの家は武官育成の名家だからその伝で...)
(しょうがないか...)
仲良し二人組は何かしら目で意見を交わしあっていたようでこちらを向くとシドが黒い石を示しながら話を切り出す
「メリア、お前の能力はどんなものよりも特別質が良く効果も高いらしいことは確かだが、害が有るか無いかはこれの中にある小粒の石を見ないと分からない。そして中を見るには魔力を通して溶かすか石が示した能力者に割ってもらうしか方法が無いんだが...頼めるか?」
「わ、割るですか...こんなかたそうなモノを?」
「石が示した本人が触ると粘土みたいに柔らかくなるから問題は無いし、勿体ないと思っているなら手を離すと石が自分で合流して元の形に戻るから心配はないぞ。やってみろ」
「うん...」
半信半疑で石へと手を伸ばし、指に力を込める
すると、粘土と言うよりグミのような柔らかさで石がぐにゃりと歪み、中から出てきたのは私の爪の一回り小さいくらいの小粒の石。色は...薄黄色と黄緑の煙が石の中でゆっくりと動いていて、一色に断定はできない
これはどんな能力を示しているのだろうか
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