メリアの転生

Re:my@執筆無期停止

文字の大きさ
上 下
6 / 12

たすけてくれたひと

しおりを挟む


 「っはぁ、うっ ゲホゲホッ、ゴホッ」

 流石に叫びすぎたのか、息切れの途中で喉が詰まり咳が出てその痛みと 凄いスピードで流れる景色への恐怖で目に涙がにじむ。ジェットコースターどころか観覧車にも乗ったことないのに!
 それに 疲れて、ねむ...い...



 「ぅわっ!?」

 急な浮遊感にかすみがかっていた意識を引き戻される
 えっ、ここどこ、ってデジャブ!まだ鹿の上でした...!ここで寝ようとするって私 案外神経図太いのね!?

 新しい発見に悲しむべきか変わらぬ状況に嘆くべきか考えつつ、「低い所に枝かツタがあればそれに捕まって慣性の法則で降りられるのでは」と思いつき辺りを見回していると、左前方に何かキラキラと反射する光が見えた
 何だろうと注視していると鎧を着て馬に乗った集団だと気付くが、その非現実さに今度こそ意識を手放したくなった

 何でしょう、あの鎧を着た集団..."イタイ人"と言うのでしたっけ...でも森の中にそんな仮装する人たちがいる理由がありませんし、よく見ると剣持ってませんか?!何で!!?原住民の方!?でもよく見ると二人くらい色の派手なスーツを着てる??

 もしかすると鹿を狩るために私ごと切られてしまうかもしれない、という恐怖と状況を受け入れられない混乱で再び涙が滲んでくる


 鎧の集団に一番近付いた時 ええいままよ!と ぎゅっと目を閉じようとした寸前、鎧を着てない二人のうち、金色の頭の人と一瞬目が合った気がして、もう一度目を開く
 今の人、目をまん丸くして驚いてた?もしかして後ろに私が乗ってるのに気付いてなかったのかしら...?

 後ろが気になりちら、と目をやると金色の人が追いかけて来ていて、それにもう1人の鎧を着ていない赤い服の人が続き、そのまた後ろからガチャガチャと鎧の集団が追いかけてきている


 そのあまりの迫力に ひっ、と声が漏れる

 もう後ろは見ない、怖い人が沢山...!と、自分に言い聞かせるも、しかし現状に助けが欲しいのも確かなので「敵だ」と断定はしないでおいて今は観察に徹しようと決める


 すると私が乗っている鹿の左側に金色の人が乗っている馬を併走させてきた
 どうしよう...

 ひとず助けを求めてみる


 「ぇ...へぇ、ぷ...むぃ...」

 しかし、口から漏れたのは言葉ともうめきとも取れない何とも頼りない声だった。舌足らずなのがまた哀れな様子を引き立てている。が、意味はちゃんと分かるはず。世界万国大体の人はわかるフレーズ、のはずです。余程森の中にこもっていたり孤島に住む少数民族でなければ意味は分かる...多分ですが


 だが帰ってきたのは舌打ちと、私が覚えている言語のどれでもない詩を詠むような言葉

 美しい言葉、と感動する間もなく金色の人が再び言葉を紡ぎ、右手を私から自分のふところへと跳ねるようなジェスチャーをする
 ...もしかして"跳べ"という事でしょうか、きっとそうなのでしょうね。分かってます、この状況から脱する為にはそれくらいしか方法がありませんものね...


 金色の人に軽く頷きを返し、うずくまるようにして膝を曲げ跳躍の準備をする。うぅ、怖い...
 幸いな事にうたた寝をしていたお陰で気持ちは落ち着き、スタミナもジャンプくらいなら回復している。よくやった、わたし

 そして鹿が前後の脚を地面から浮かせて 着地の振動が来る前に、  跳ぶ!


 しかしこの幼い身体に脚力を望んだのが早かったのか、あまり高さが出なかった。首にしがみつくくらいにしたかったのに金色の人の胸にタックルする形になってしまった。大丈夫かな...?!

 恐怖からの解放と緊張状態からの緩み、あと人の体温という安心感に包まれ、その暖かさに涙が出て止まらなくなる
 そんな痴態を命の恩人(仮)に晒してはいけないと思うのと、より多くの安心感を欲して顔を伏せるようにその胸に額を押し付ける。独りぼっちだった寂しさが埋められていく心地良さに荒波だっていた心も落ち着いてゆく。あ、ちょっと汗まじりだけどいい匂い
 人という存在を直に感じてまた涙が溢れそうだ

 しかしずっと目を合わせないというのも人としてダメな気がして、深呼吸をして今にも飛び出してきそうな嗚咽おえつを黙らせ、恩人の顔を見上げる


 金色の頭の人と呼称したように、その頭はキラキラと色の薄めなサラサラの金髪を後ろで束ねていますが、猫っ毛なのかちょっと癖がついていてそのお陰か愛嬌があるように見える
 目はピンクに近い深めの赤色というちょっと派手な色ですが、それが肌の白さをより引き立て、その顔を彩っている
 白人らしい白磁の色に少しピンクがかった肌はきめ細かくてそばかすもなく、肌から30cmもない距離だと言うのに毛穴ひとつ見えない女泣かせの肌であることが分かる

 石膏像なのではないか、と疑う程美しい顔立ちをした男性が眉尻を下げ腕に抱えた私を覗き込んでいました


 いや、そんな顔しないでくださいお兄さん。というかいつの間に姫抱っこに持ち替えたんですかイケメンポイント高いですね、そこら辺経験皆無な私は固まるしか方法がありません

 内心大混乱でお兄さんから目を離せないでいると、もう一人の赤い服の人が何事かを話しかけながら近付いて来ました


 恩人のお兄さんと同じくらいの年齢でしょうか、髪は恩人さんの髪に赤色絵の具を霧吹きしたらこうなるでしょうか、赤みがかった金髪をしています
 今はまさに色男というような垂れ目ですが、先程追ってきていた時の血鬼迫るような顔はキリッとしていて雰囲気がだいぶ違っている。切り替えの早い人なのでしょう、その分 末恐ろしい。さっきの顔は忘れません
 その目は深い蒼に薄くグレー灰色がかっていて冷たく見えますが色っぽい印象と相まってミステリアスさを演出している

 こちらもハリウッド男優顔負けの面立ちです


 しかし相手は帯剣していて、その骨格の良さから鍛錬をおこたらずきちんと剣の技術を、筋肉の付き方から柔術などの徒手格闘も習得しているのが伺える。
 私の首なんてちょっと力を入れるだけでぽきっといってしまうのでしょう

 そんな人が近付いてきたのですから、服を掴む手にも力が篭ってしまいます


 ...?  " 服を掴む手 " ...?

 私は何も持っていなかったはずだと思いながらも嫌な予感に 恩人さんの肩越しの景色を見るのを一旦やめて、戦々恐々としながら私の手元に視線を下ろします
 そのモミジのようにかわいらしい手は肌触りの良い、いかにも高級そうな服を握り締めていました

 慌てて服から手を離そうとしますが、手の力が抜けずふるふると震えるばかりでより焦ってしまい、収まり始めていた涙がぶり返してしまいます


 「うっ...ふぇ...っ」
 「!?」

 恩人さんは私の様子を見て慌てたのか、何事が話しかけたり頭を撫でたりしてくれますが、私の涙は中々止まらない
 でも 歌うように紡ぐ言語は少しずつ心を落ち着かせてくれる。震えも止まり、手を離すことが出来た

 申し訳ないな、弁償しなきゃでしょうか、と目まぐるしく流れる思考とは裏腹に、皺を伸ばそうと必死に服を撫でる手は止めない
 そこで私が何に泣いていたのか察してくれたのか、私の右手にその白い手袋に包まれた手を上から重ね、もう片方の手で頭から背中までをゆっくり撫でられる。意味はわからないけれど、「大丈夫だよ」、「気にしないで」と言うように言葉をいくつも重ねられ、私に安らぎを与える


 いつの間にか私はその温もりに身を任せ、微睡みへと意識を落としていた

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

【完結】君の世界に僕はいない…

春野オカリナ
恋愛
 アウトゥーラは、「永遠の楽園」と呼ばれる修道院で、ある薬を飲んだ。  それを飲むと心の苦しみから解き放たれると言われる秘薬──。  薬の名は……。  『忘却の滴』  一週間後、目覚めたアウトゥーラにはある変化が現れた。  それは、自分を苦しめた人物の存在を全て消し去っていたのだ。  父親、継母、異母妹そして婚約者の存在さえも……。  彼女の目には彼らが映らない。声も聞こえない。存在さえもきれいさっぱりと忘れられていた。

【取り下げ予定】愛されない妃ですので。

ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。 国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。 「僕はきみを愛していない」 はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。 『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。 (ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?) そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。 しかも、別の人間になっている? なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。 *年齢制限を18→15に変更しました。

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、マリアは片田舎で遠いため、会ったことはなかった。でもある時、マリアは、妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは、結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

処理中です...