生産系チートが生き残るのは大変すぎる。

まさちち

文字の大きさ
上 下
12 / 16
第一章

始動 その7

しおりを挟む
    

 笑い転げているポーを放っておいてロープの生産に入る。
まあ、素人考えだがこれを湧き水の所に結んで洞窟の入り口まで引っ張ってくれば、距離がわかり水道管もどれくらい作ればいいかわかるだろう。

 没頭していたので気がつかなかったのだが、いつの間にかポーが木の板の上に寝転んで大き目の葉っぱを掛布団代わりにして寝ていた。

ありゃ、どれくらい経ったんだ?そう思って洞窟の入り口から外を見ると夕方近くだろうか?随分と日が傾いていた。

 ロープの素材である草が無くなりそうなので、まだ日があるうちに近くで収集しようと思い外に出た。

まあ、疲れていたのもあると思うのだが、首や背筋を伸ばしながら不用意に表に出てしまった俺は息飲んで固まった。

 居たのだあの犬デスハウンドがしかも四匹も先程の奴らだろうか?いや、そんな事より逃げなくちゃ、いや、また餌でも投げるか?

そこで一瞬の判断の遅れが生じた。

「ワン」

 デスハウンドの一匹が俺に向かって吠えた。その鳴き声を聞いた瞬間、俺の身体は洞窟の入り口に転がる様に逃げ込んだ。

「ポ、ポー、た、大変だ。さっきの奴らが外に来てる。追いかけてきたんだ」
俺の慌てた声に驚いてポーが目を覚まし、寝ぼけながら答える。
≪えー?え、なに?‥‥‥もしかして外のデスハウンドの事?≫
「そうだよ、外で出待ちしてやがった」
≪出待ち?って面白い言葉だね。でも外のデスハウンドは敵対してないよ?オイラが寝る前にハルに言ったじゃないか≫

ポーは最後の方は少し眉を顰めて言う。

えー?そんなこと聞いたっけか?

俺が首をかしげているとポーがさらに顔をしかめて抗議してくる。
≪あー、もしかしてオイラの話聞いてなかったの?≫
「え?いや、聞いていたような、いないような?いや、それよりどうしよう外のデスハウンド」
≪はあー、まあいいや。でも本当に外にいるデスハウンドはなんかおかしいんだよねー≫

 その言葉に外を見てみるとさっきの四匹のデスハウンドが入り口でお座りをして尻尾をブンブン振っている。
んん?尻尾振ってる?犬って嬉しい時に尻尾振るんだよね?俺は首をかしげながら外のデスハウンドに鑑定をする。

デスハウンド(使い魔)

LV 89

主  ハル

あれ?ストレンジとか出ないのか?ってえ?え?何これ?使い魔?ええ?俺が主?え?え?何これ?どういう事?
俺が混乱しているとポーが話し出す。

≪ん?あれってハルがテイムした事になってるの?ハルってモンスターテイマーだったの?≫
「え?いや、そんなのとった覚えないんだけど?」
≪ふーん、まあ、外のデスハウンドは別に襲って来ないから大丈夫だよ≫
ポーはそう言うと俺の肩に乗っかって来た。

 おれは少し引き腰になりながら何かあってもいいようにボックスからウサギ肉を出してゆっくり外に出る。
外に出るとデスハウンド達はみんな俺の顔を見つめて嬉しそうにしている。

 俺は手に持っているウサギ肉をデスハンド達の前に置き「待て」と言う。すると動き出そうとしていたデスハウンドはピタッと止まって次の指示がないか俺の顔に注目している。
「よ、よし食べて良いぞ」

 俺がそう言うと四匹とも凄い勢いで食べ始める。足りなそうなのでもう一つ出して置いておくが一つ目を食べ終わった四匹はまたも待ち状態になる。

 う、なんてお利巧さんなんだ。思わず頭をなでると嬉しそうに目を細める。
隣にいたヘルハウンドが俺の前に歩み出て頭を突き出す。その後他の二匹も同じ様に頭をなでろと催促する様に寄って来た。

 全員の頭をなでてからウサギ肉を食べる様に言うと一斉に食べ始めた。


その光景を少し眺めてから目に入いった場所の草を集める。

やはりロープの素材で一番いいのはツタなのだ、よく見ると木なのどに引っ付いてるものがあったのでそこを重点的に採取していると、食事をしていたデスハウンド達が俺の周りに来て辺りを警戒している。
「え?なに?なんかいるの?」
そう言って周りに目を凝らすがよくわからなかった。

その時肩に乗っていたポーが小さな声で話す。
≪あ、なんかこっちに向かってくる。急いで洞窟まで戻って≫

ポーの声に驚き急いで戻ろうとした時俺に向かって何か飛んできた。

 近くにいたデスハウンドが素早く叩き落とす。叩かれたそれは暗闇の中に引き戻されていった。取りあえず森の中から出て道に出ると再び何かが飛んできたが同じ様にデスハウンドが叩き落す。

いや、叩き落したのではなく今度は噛みついた様だ。デスハウンドが着地すると同時に引っ張ると草むらからウサギのような大きなカエルがバランスを崩して転がって来た。そこをつかさず他のデスハウンドが牙で仕留める。
カエルはグエエエーーと嫌な声を出して消えていった。

それを合図に他の二匹のデスハウンドが草むらに飛び込みカエルを仕留める。

俺は引き腰になりながら四匹のデスハウンド達の戦いを見ていた。
敵の気配が無くなったのがわかった。

俺は急いでデスハウンドに駆け寄るが特に怪我らしいものが無く一安心した。カエルがいたと思われる場所に魔石となんか粘膜?なんだろ?ネバネバした物がビンに入っていた。

「これがドロップ品かな?」

そう言いながら顔を上げるとカエルを仕留めたデスハウンドが草むらで待ての状態でお座りをしている。
どうやらドロップ品の場所を教えてくれているらしい。

急いで回収しに行くがどちらもネバネバの入ったビンと魔石だった。

しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅

あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり? 異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました! 完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

処理中です...