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第一章
到着 その2
しおりを挟むライターが無い事に気が付いて目の前の小枝をクソーと文句を言いながら折った時頭の中に文字が浮かんだ。
”木工が0.1上がりました。”
「はい?」
思わず口から間抜けな返事が出てしまった。
今のってやっぱりLVアップ?
いや、0.1って言ってたよな?いくつになればLVあがるんだ?
というかこれって木工のスキルアップに計算されてるのか?
そんな事より何とか火をつけないと‥‥‥
辺りを見渡すが周りには石ころばかりで何もない。
今日何度目かの悪態をついて大木に腰かける。
「クソー、せめて俺の鞄さえあればタバコをやめる時にお守り代わりに持っていたたばこ一本とライターが入ってるのになー」
摩擦熱で火を起こすか?ぼんやりとやり方はわかるけど木を平らに切ったり細木削ったりする道具すらねえよ。
堂々巡りで同じ事を何度も考えていると人の声?というか頭に直接聞こえてくるような感じだった。
≪あれ?なんかすごく清らかなオーラを感じてきてみたら人族がいる珍しー?≫
顔を上げてみると目の前に小さな光りの球が浮いていた。
え?これが話してるの?とか思ったが周りを見渡してみたがこれ以外変わったモノはなかった。
するとまた頭の中に声が聞こえてきた。今度は少し怒っているように感じられる。
≪これとか言うな。人族≫
目の前の光をよく見ると人の形の背中に羽根を持ったいわゆる妖精のような姿だった。
「え?えっと妖精さん?」
自分で言っていてなんだが地球で言っていたら変な奴扱いなセリフだ。
≪え?なんで?聞こえてるんだ?妖精の言葉がわかるなんてさらに珍しい≫
「あ、そうなの?普通に聞こえてるけど?あ、それより君はここら辺に詳しいのか?」
≪‥‥‥ん?そんなこと?そんな事で済ましちゃうの?まあいいけど。まあ、今はここいらがお気に入りだからね≫
お気に入り?まあ、いいや言葉がわかるのなら情報収集しておかないとな。手のひらサイズの妖精さんが頼もしく見える。
「ふむ、妖精さん水のむかい?」
≪わーい≫
喜んでくれた。
さっきの飲みかけでは無くて新しいペットボトルを出すとキャップの中に水を入れ渡す。
妖精さんはそのキャップを両手で持つとチビリチビリ飲み始める。
その姿にこの世界に来て初めてほんわかした。
俺も自分のペットボトルの蓋を開けて水を飲みつつ話をする。
「それでさっき人族が珍しいとか言ってたけどここら辺りに人族はいないのか?」
≪あー?人族なんかそこら中にいるぞ≫
「ん?さっき人族が珍しいとか言ってたとおもうんだけど?」
≪んー、さっき?‥‥‥ああ、そのことか生きている人族が珍しいから言ったんだ≫
俺は飲んでいた水を吹き出してしまった。
「ブウファーー、ゲホゲホ。え?い、今、ゲホ、生きているって言ったか?じゃ、じゃあ、もしかして死んでいるって事か?」
妖精はアホの子を見るような残念な目で俺を見ながら話す。
≪まあ、そうなるな。人族はすぐ死ぬ。みんなこのダンジョンに挑んで死んでいく≫
え?今何って言った?ダンジョン?
「ここってダンジョンの中なのか?」
さっきの残念な目が濃くなって妖精がため息をついた。が、その後何か気が付いたように顔を上げて俺の顔をマジマジと観る。
≪お前、渡りか?≫
「ん?ワタリ?んん?ワタリってなんの事だ?」
≪あー、別の世界からこっちに来た奴の事そう呼ぶんだよ≫
「なるほど、そうういう意味ならそうだな俺は渡りだ」
≪ああー、納得した。だからこんなに人族が多いのかそう言えばみんな変わった格好してたな≫
妖精の言葉が気になるがとりあえず情報を集めよう。
「えっと、訊きたい事はいっぱいあるんだけど。先ず、ここってダンジョンの中の?出口は近くにある?」
妖精さんの話し方がさっきの様にめんどくさそうな話し方ではなくいたわる様な話し方になった。
≪ここはね、S級ダンジョン深き森っていう名前のダンジョンだよ≫
S級?S級って物凄く難しいって事なのか?
「あのー、S級ってスゴイ難しいダンジョンなの?」
≪うん、このダンジョンは神が作った最も難しいダンジョンの一つって言われてる。あと、出口は知らないよ≫
詰んだ―、ハイ詰みました。あのシーバとかいう奴やっぱり俺達をペテンにかけたのか?
いや、ペテンは言い過ぎか。奴が言ったように好きなスキルを貰ってここに飛ばされたんだから‥‥‥
そんな事よりS級ってどうするんだよ。生産系のしかもLV1の村人同然なのがこんなとこに迷い込んで、どーーしろってーーの??
武器や防具を作ってどうにかなるか?
ならねーよ。アホか?素人同然の俺が作った防具着けてS級ダンジョンとか自殺志願者かよーーーーーーー。
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