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2章

お祭り開催 その11

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「ヒデさん探しましたよー、やっと会えた」
聞き覚えのある声に振り返ると想像していた人が笑顔で立っていた。

「あ、領主様お祭りに来てくれたんですか?」
数日前にあった領主様のイアン様だ。後ろにはもちろん爺やさんもいる。

「ハハ、イアンと呼んでください。一応お忍びなので」
イアン様は柔和な笑みで話してくる。

 俺が話し出そうとした時ものすごい勢いで身なりの良い男が割り込んできた。
「領主様、私はとなり街で商売を営んでいるザランという者です。以後お見知りおきを」

そう言いながら頭を下げる。
「ああ、ヒデさんと何か話していたようだね。割り込んでしまってすまなかったよ、商談なら先にしてくれ待っているから」
 
 柔和な笑みを崩さずに話すイアン様。
その言葉を聞いて今度は俺が勢いよく話しをする番だった。
「いやいや、商談というほどの話ではないのです。こちらのザランさんが町の名前付けの会場に寄付したいと言ってくれまして、どうした物かと思っている所にイアン様が現れたのです」

 お祭りと言わず、名前付けの会場にと強調してわざとらしく話す。
イアン様は一瞬思案顔になっていつものかおにもどる。

「なるほど、町の一区画の名前を領民に決めさせるなどという娯楽を思いつくなんて、柔軟な考えだと私も思います。その考えに感心して寄付を申し込まれたのかな?領民の娯楽を取り上げようとする輩がいる中、ザランさんはご立派ですね」

 イアン様の説明っぽい話し方に吹き出しそうになったが、何とか堪えてザランの方を見る。滝のような汗を流しながら震え声で話す。
「ハ、ハハ、い、いやいや、それほどではないですよ。さっさっあヒデ殿少ないですがこれを受け取ってください」
そう言って懐から革袋を出して渡してくる。

受け取り中を覗くと金貨が一枚入っていた。
寄付と考えると多いいがこれで名前付けの権利を渡せとは欲張り過ぎなのでは?とか考えていると、ザランが話し出す。
「そ、それでは、まだ色々回りたいのでこれで失礼する」
そういってその場を離れようとしていた。流石にお金を巻き上げたみたいで可哀想になり声をかける。

「あ、ザランさん待って待って、ちょっとこっち来て」
手招きして広場の方に連れて行く。

「何をするつもりだ?もう行ってもいいだろ?」
ザランは少しでも早くこの場所から離れたがる。

その言葉を無視して大きな声を出す。
「みなさーーん、お祭り楽しんでますかーー」
突然の大声を上げる俺に視線が集まる。少し間をおいて再び大声で話す。

「こちらの旦那はとなり街で店を開いているザランさんと言います。なんとこの旦那から寄付を頂きました。それでこの寄付金でたる酒を買って皆さんに振舞います」

それを聞いた周りの人が歓声を上げる。

「うおー、本当かい?ありがたいねー」
「かーちゃんの買い物に飽きてきたとこだったんだよー」
「おいおい、剛毅な旦那だぜ。となり街に行ったら必ず旦那の店に顔を出すよ」
「俺もだ、近いうちにとなり街に行く仕事があるからよ、絶対に顔を出させてもらうよ」
周りの人が口々に俺の隣にいるザランに礼を言ってくる。

 それに段々気を良くしたのかザランはニッコニコで大声で続ける。
「ワハハ、せっかくの祭りだ。ジャンジャン飲んでくれ、ワハハ」

 周りの男たちは大喜びで声を上げているが、奥さんや子供達は困った顔をしている。

「まったくしょうがないねー。少しここで休むかね?」
「父ちゃんだけお酒飲むのずるーい」
大喜びの父親とは正反対に呆れだす母親に、むくれる子供、大体どこもそんな感じ時の人達ばかりだった。

ああ、チョットまずいかもしれないと思った時、また後ろから声がかかった。
「よーし、それでは私から子供達や奥様方に果実水を提供しようじゃないか」

 また聞き覚えのある声に振り向くとケネスさんが立っていた。その後ろの坊主頭の人もなんか見た事ある気がするんだけど?誰だっけ?ってそんな事より先ずは挨拶をしないと。

「ケネスさん、ビックリした。いつこちらに来たんです?」
「ハハハ、少し前じゃよ。予定では今朝着くはずだったんだがな。少し遅れてしまってな」

 俺にそう話しながら後ろの坊主頭に酒屋で果実水を買ってくるように革袋を渡して指示している。後ろの坊主頭の人も革袋を渡されただけで何をするのかわかっているかのように動き出している。酒屋に向かって走って行く後ろ姿を見ていたらケネスさんが話しかけてきた。

「フフ、ジェフもなかなか使えるようになって来たもんだ」

ジェフ?ジェフ?えっとーー。あ、思い出した、マルーツさんの息子さんだ。
え?あれが?あのふてぶてしそうな顔をしていた彼が?あ、でも初めて会った時のジェフ君を少しやせさして坊主頭にすれば確かに今のジェフ君と一致するな。

そんな事を考えていたら酒屋から数人でエールの酒樽と果実水の樽を運んできた。設置をしている間に他のケネスさんの所の若い子達がコップやら何やらと用意をし出した。

「すいませんケネスさんこんな用意までしてもらって」
「ハハハ、いいよいいよ、言い出したのはこっちだからね。そんな事より用意が出来たようだよ。お客さん達を待たしちゃダメだぞ」

そう言って俺を前に押しやる。
周りにはもうエールや果実水が配られていた。

「えー、それではみなさんザランの旦那とケネスの旦那と今日の祭りに乾杯ーー」

「旦那方に乾杯だーー」
「おじちゃん達ありがとー」
「いただきますー」
「ごちそうさまー」
「祭りばんざーい」
「ワハハハ」
「ハーハハハ」
「美味しー」
「おう、おかわりだ」

その騒ぎを聞いてまた人が集まって広場は騒然としていた。
ザランが俺の肩をたたいて上機嫌で話しかけてくる。
「ヒデさん、さっきは悪かったよ。しかし、こんな簡単なことでここまで名声を得られるとは思いもしなかったよ。その、今日はありがとよ。じゃあな」

言うが早いかサッサと広場の方に走って行った。その間にもみんなに話しかけられているザラン。そんな人達に笑顔で対応している。

「ヒデさんにかかわるとみんな良い人になっちゃいますねー」
笑うのを我慢しながらイアン様が話す。

「はは、まさここまで効果があるとはビックリですよ。まあ、半分以上はケネスさんのおかげですけどね」
少し離れた所にいるケネスさんを見ながら話す。

「ケネスさんとも面識があるんだねー?」
イアン様が俺の耳元に小声で話しかけてくる。
「はい、そうですよ。ご存知と思いますがヒールファクトリーとエル商会は取引をしてますから」
そうイアン様に返答すると俺のすぐ後ろからケネスさんが声をかけてきた。

「それだけじゃないだろ?個人的にヒデ君とは付き合っているつもりだが?」
「うわー!ビックリした。いつの間に真後ろまで来たんですか?」
俺の質問はスルーしてイアン様に挨拶する。

「ご挨拶が遅れました領主様」
さっきのザランよりさらに洗礼された礼をするケネスさん。

「フフ、いつもの様にイアンと呼んでください」

どうやら二人は顔見知りのようだ。まあ、イアン様は若様の友人みたいだし、知っていて当たり前か。




++++++++++++++++++++++++++++++
いつもお読みいただきありがとうございます。

今日は皆様にお知らせがあります。
この世界の平均寿命を頑張って伸ばします。がなんと
3月下旬にアルファポリス様から本が発売されます。

ここまでこれたのも皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
連載が止まってしまった時に続けてほしいと励ましのお声を頂いたおかげです。
本当にありがとうございます。

本のイラストをかわすみ様が担当してくださいまして。
優し気なヒデさんに超かわいい孤児の4人組や私のつたない説明で凄いぴったりなチョロイン女神様やギルマス、カッコイイ若様、プロってスゲーっと目を丸くしっぱなしでした。

先ずはご報告といった感じです。
皆様、本当にありがとうございます。_(_^_)_
   
                ちちまさ






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