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1章
アオちゃん日記 その2
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あれから数日が経った頃キイちゃんから念話が届いた。
≪これから若様とシオン様がそっちに飛ぶけど部屋の中はヒデ様以外にいない?≫
≪キイちゃん、平気だよ今は誰もいないよ。ヒデ様もいないけど、ギルドにはいるから≫
≪了解、それとシオン様の格好みても絶対動揺したり笑ったりなんかしないでね≫
≪ん?どういう事?≫
≪とにかく、笑っちゃダメよ。ヴァネッサさんが笑ったら廊下の端から端までふっとばされて気を失ってしばらく立てなかったんだから≫
≪え?あの頑丈なヴァネッサさんが?シオン様のどんな攻撃にも次の瞬間直ぐに立ち上がる人が気絶?≫
≪うん、攻撃をいつしたのか、何をしたのかもわかんなかったよ≫
≪……とにかく分かった≫
念話が切れたと同時に若様と白いドレスをきたシオン様?が現れた。
腹筋に力を入れほっぺたを思いっきり引っ張り耐えた。ダ、ダメ声が漏れると思った時診療所のドアが開いてヒデ様が入って来た。シオン様の気がヒデ様に向いた瞬間その場を脱出して本拠地の枕に顔をうずめて笑い声を抑えて笑った。
アカちゃんが目の涙を拭きながら話してくる。
「シオン様思い切ったな」
「やっぱり、ヒデ様の事好きになったってたんだね」
「そうでしょね。でもこのまま上手くいけば、シオン様と結婚とかしたらシオン様の性格も女性らしく変わったりして」
楽し気に話すアカちゃんに眉をひそめて返す。
「だと良いけどね。その考えだと逆に上手くいかなかった時は恐ろしくない?」
「そ、そこはほら、私達が上手く情報を訊きだしてシオン様に報告すれば上手くいくって」
「いや、自分達ですらお付き合いした事無いのにそんな簡単に上手くいくかな?」
「とにかく、今はどうしようか?シオン様がいるし護衛は平気だろうし覗くのもなんだしね」
「そうだ、シオン様の為にヒデ様の情報を集めておいてあげるのは?」
「それ良いねそうしよう」
ヒデ様の事に詳しい人と言えばこの人だろう。
「じゃあ私ママさんのところに行って訊いてくるね」
「ママさんって誰?」
「酒場のマスター」
「ん?マスターってあのモヒカンの大男?」
「そそ、ママさんって呼んでって言われたよ」
「ふーん、まあいいや、いってらっしゃい。さて、私はどうしようかな?」
拠点から出てヒデ様の気を探ると近くには居ないようなのでシオン様とどこかに出かけたのだろう。
「フフ、またグレプのジュースが飲める」
ついつい、頬が緩む。
「おはようございます。ママさん」
「あら?今日はヒデちゃんの護衛はいいの?」
「他の者が付いてます。と言うか今日は付ける必要はないと思いますが」
「やっぱり、遠目でしか見なかったけどあの白いドレスの子?凄かったわね。まあ、ヒデちゃん何も気づいて無かったけどね」
「そうそう、ヒデ様ですよ。今日はヒデ様の事色々聞きたくて来たんですよ。ヒデ様の事を聞くならママさんが一番だって思って」
「あらあらまあまあ、そうね、ヒデちゃんの事は色々見てきたわよ」
「そもそも、ヒデ様っていつ頃こっちに来たんですか?」
「うーん、ゴブリンの襲撃の時だからそんな前じゃないのよね。あ、外から来た人には神に祝福されし土地の話の方がわかりやすいかしら?」
「ああ、知ってますよ。見に行ってはいないですがここから近くでしたね」
「そうなのよ、でねその発端がゴブリンの襲撃騒ぎなのよ。その時にヒデちゃんが後方支援みたいな形でいつも一緒にいる孤児の子達とかで現場に行ったのよ。その時より少し前にこの街に着いたのよねー」
「ふーん、でもヒデ様戦闘能力ないですよね?」
「まあね、ギルマスが言うには後方で、怪我人や村の人のケアをお願いしたんですって」
「なるほど、それならぴったりですね」
「そうね、でもその時のゴブリンの襲撃にオークの集団も加わってきて結構、危なかったんですって。でもねその時の死者はおろか、大きな怪我を負った人も居なかったんだから」
「え?小規模だったんですか?」
「ゴブリンは百まではいなかったそうだけどね。加えてオークメイジまで混じっていて戦況はかなり危なかったらしいわ」
「それで、死傷者なしですか?」
「まあ、正しくはヒデちゃんが治したからなんだけどね。死にそうな人を治したり、MP切れの魔法使い達のMPを復活させたり、大活躍だったそうよ」
「それは凄いですね。シオン様に教えてあげようっと」
「まあ、でもヒデちゃんは何と言っても優しいから大好きなのよ」
「え?ヒデ様って結構ママさんへの言い方きつくないですか?」
「ホホホ、そうね、でも初めて会った時にねヒデちゃん驚きはしたけど嫌な顔をしなかったのよ。”この世界でもやっぱりいるんだ”って言ってたかしら?きっとヒデちゃんがいつも言う故郷にも私みたいなのがいたのかしらね?男の人でそういう反応の人は少ないのよねー。好みの人になるともっとね」
「なるほど、なかなかの好感度ですね。後、好きな食べ物とかは無いですか?」
「そうねー、あ、お肉が好きみたいよビックホーンのお肉とか美味しそうに食べてたし」
「フムフム、後何かないですか?」
「うーん、あ、こないだ一緒にお料理したんだけどレシピだけは知ってるみたいでお料理は出来ないみたいなのよね」
「え?お料理ってどんなのですか?」
「ブラックイールのかば焼きよ、ヒデちゃんが名前付けたのよ。食べてみる?」
「え、ブラックイールって骨ばっていてチョット苦手なんですよね」
「ホホ、まあみんなブラックイールって聞くとそう言うけどね。まあ、今作ってあげるわ」
そう言うとこちらの返事も待たずに作り始めた。鼻歌交じりにお料理をしていく。暫らくするとブラックイールのかば焼きが出来上がった。
「ハイ出来上がり。なかなかの出来だわ。食べてみて」
「確かに香りはブラックイールのものですね。でもこの形見た事無いです」
「ホホ、そのお料理のやり方をヒデちゃんが教えてくれたのよ」
「それは、なかなか博識ですね。では、いただきます」
添えられているフォークで切れるくらい柔らかくふっくらしている。一口食べてみる。
「モグモグ、柔らかいですね。それに骨が無いんですね」
「そうなのよ、ヒデちゃんが言うには開くっていうらしいんだけどね。こうやってやると骨が取りやすいのよ」
「フム、美味しいですね、あ、グレプのジュースおかわりください。後このブラックイールのかば焼きおみやげに一つ包んでください」
「あらあら、気にいってくれて嬉しいわ。待っててね」
ニコニコと機嫌よく厨房に入っていった。
何気なしに玄関の方に目を向けるとシオン様とヒデ様が入って来た。
「チョ、チョット早いもう帰って来たの?」
「はい、アオちゃん出来たわよ」
「あ、ありがとうございます。用事を思い出したので戻りますね」
「あらそうなの?また来てね」
「はい、それでは失礼します」
かば焼きをを持って玄関から出て拠点に戻る。
「まさかサボってたとか思われてないよね?」
独り言を言いながら拠点のドアを開けた。
「あら、サボっていたのかしら?」
真後ろから声が聞こえた。殺気がこもっていないのに背筋が寒くなった。
「シオン様、急に気配消して近づかないでくださいよ」
「気配を消すのは癖よ。それよりヒデ様の事何かわかったかしら?」
「その話は中で話しますので中に入ってください」
シオン様に中に入ってもらった。アカちゃんも居なかったのでお湯を沸かしてお茶を出そうとしたら。
「お茶もお茶菓子もいらないから早く話しなさい」
「は、はい、今日仕入れてきたばかりの話しですが……」
ママさんから聞いた話を大げさに伝えると、シオン様の目がキラキラに輝いていた。
「流石はヒデ様ですわ。それで、ヒデ様がお伝えになったブラックイールのかば焼きというのはどんな物なのかしら?」
「それでしたら、少し待っていてくださいね。ちょうどおみやげが」
そう言うとキッチンに入ってテーブルを見ると置いておいたはずのおみやげが無くなっていた。
「あれ?たしかここにおいたはずなーーー」
キッチンの入り口近くでモグモグしているアカちゃんを発見した。
「あ、アオちゃんそこのお魚みたいなの貰ったよご馳走様」
「た、食べちゃった?全部?」
「うん、あ、今日の夕飯だった?なら私の分は無しでいいよ?」
「あれは、確かにアカちゃんにあげるつもりだったけど今は……まあ、仕方ない」
「シオン様、ヒデ様のお伝えになったブラックイールのかば焼きは冷めちゃうとアレでしてね。あ、それで今度来た時にヒデ様に頼んで一緒に食べに行ったらどうです?ここで食べちゃったらヒデ様の前で新鮮なリアクションがとれないですしね?」
「なるほど、確かに一理ありますね。ヒデ様におねだり……ムフフ、これはなかなかいいかもしれないですね」
私の知っているシオン様じゃない。
「ハハ、ですよね」
「よし、残念ですがその、ブラックイールのかば焼きは貴方達でお食べなさい」
「はい、かしこまりました」
「あ、でも今聞いたヒデ様がお肉が好きって話だったので、この次はお肉料理のお弁当を手作りで持ってこようと思ったのですが……」
「え?シオン様お料理出来るんですか?」
「いえ、やった事無いですが。まあ、そんなに難しい物ではないでしょう?」
「あの、差し出がましいですが、次回はおねだりの方向でいってみてはどうですか?」
「お、おねだり……なかなか良い響きですね。しかし、わがままな娘とか思われないでしょうか?」
「娘??あ、いえ、そんなことないですよ。きっと大丈夫ですよ。シオン様なら」
娘って、舌を嚙みそうになった。
「そ、そうですね。ではそうしましょう。ではそろそろ戻る事にしましょう。キイに連絡をしてください」
ハイと返事をして直ぐに連絡をする。向こうも待っていた様で連絡をしたら直ぐに若様が来た。
「シオンゆっくり出来たかい?」
「はい、若様のおかげでヒデ様とお話できました」
「フフフ、シオンとヒデ君が上手くいけば僕も嬉しいからね。がんばってね」
「そんな、若様上手くいくだなんて、嫌ですわ。でも子供は三人ぐらいは欲しいですわ」
「あー、そうなんだ、うん、頑張ってね。じゃあ戻るね」
「お疲れさまでした」
主に若様に頭を下げて見送った。
「この任務普通の任務より疲れるんだけど」
そう遠くない次回の為に腹筋とポーカーフェイスの鍛錬をつまなければ。
≪これから若様とシオン様がそっちに飛ぶけど部屋の中はヒデ様以外にいない?≫
≪キイちゃん、平気だよ今は誰もいないよ。ヒデ様もいないけど、ギルドにはいるから≫
≪了解、それとシオン様の格好みても絶対動揺したり笑ったりなんかしないでね≫
≪ん?どういう事?≫
≪とにかく、笑っちゃダメよ。ヴァネッサさんが笑ったら廊下の端から端までふっとばされて気を失ってしばらく立てなかったんだから≫
≪え?あの頑丈なヴァネッサさんが?シオン様のどんな攻撃にも次の瞬間直ぐに立ち上がる人が気絶?≫
≪うん、攻撃をいつしたのか、何をしたのかもわかんなかったよ≫
≪……とにかく分かった≫
念話が切れたと同時に若様と白いドレスをきたシオン様?が現れた。
腹筋に力を入れほっぺたを思いっきり引っ張り耐えた。ダ、ダメ声が漏れると思った時診療所のドアが開いてヒデ様が入って来た。シオン様の気がヒデ様に向いた瞬間その場を脱出して本拠地の枕に顔をうずめて笑い声を抑えて笑った。
アカちゃんが目の涙を拭きながら話してくる。
「シオン様思い切ったな」
「やっぱり、ヒデ様の事好きになったってたんだね」
「そうでしょね。でもこのまま上手くいけば、シオン様と結婚とかしたらシオン様の性格も女性らしく変わったりして」
楽し気に話すアカちゃんに眉をひそめて返す。
「だと良いけどね。その考えだと逆に上手くいかなかった時は恐ろしくない?」
「そ、そこはほら、私達が上手く情報を訊きだしてシオン様に報告すれば上手くいくって」
「いや、自分達ですらお付き合いした事無いのにそんな簡単に上手くいくかな?」
「とにかく、今はどうしようか?シオン様がいるし護衛は平気だろうし覗くのもなんだしね」
「そうだ、シオン様の為にヒデ様の情報を集めておいてあげるのは?」
「それ良いねそうしよう」
ヒデ様の事に詳しい人と言えばこの人だろう。
「じゃあ私ママさんのところに行って訊いてくるね」
「ママさんって誰?」
「酒場のマスター」
「ん?マスターってあのモヒカンの大男?」
「そそ、ママさんって呼んでって言われたよ」
「ふーん、まあいいや、いってらっしゃい。さて、私はどうしようかな?」
拠点から出てヒデ様の気を探ると近くには居ないようなのでシオン様とどこかに出かけたのだろう。
「フフ、またグレプのジュースが飲める」
ついつい、頬が緩む。
「おはようございます。ママさん」
「あら?今日はヒデちゃんの護衛はいいの?」
「他の者が付いてます。と言うか今日は付ける必要はないと思いますが」
「やっぱり、遠目でしか見なかったけどあの白いドレスの子?凄かったわね。まあ、ヒデちゃん何も気づいて無かったけどね」
「そうそう、ヒデ様ですよ。今日はヒデ様の事色々聞きたくて来たんですよ。ヒデ様の事を聞くならママさんが一番だって思って」
「あらあらまあまあ、そうね、ヒデちゃんの事は色々見てきたわよ」
「そもそも、ヒデ様っていつ頃こっちに来たんですか?」
「うーん、ゴブリンの襲撃の時だからそんな前じゃないのよね。あ、外から来た人には神に祝福されし土地の話の方がわかりやすいかしら?」
「ああ、知ってますよ。見に行ってはいないですがここから近くでしたね」
「そうなのよ、でねその発端がゴブリンの襲撃騒ぎなのよ。その時にヒデちゃんが後方支援みたいな形でいつも一緒にいる孤児の子達とかで現場に行ったのよ。その時より少し前にこの街に着いたのよねー」
「ふーん、でもヒデ様戦闘能力ないですよね?」
「まあね、ギルマスが言うには後方で、怪我人や村の人のケアをお願いしたんですって」
「なるほど、それならぴったりですね」
「そうね、でもその時のゴブリンの襲撃にオークの集団も加わってきて結構、危なかったんですって。でもねその時の死者はおろか、大きな怪我を負った人も居なかったんだから」
「え?小規模だったんですか?」
「ゴブリンは百まではいなかったそうだけどね。加えてオークメイジまで混じっていて戦況はかなり危なかったらしいわ」
「それで、死傷者なしですか?」
「まあ、正しくはヒデちゃんが治したからなんだけどね。死にそうな人を治したり、MP切れの魔法使い達のMPを復活させたり、大活躍だったそうよ」
「それは凄いですね。シオン様に教えてあげようっと」
「まあ、でもヒデちゃんは何と言っても優しいから大好きなのよ」
「え?ヒデ様って結構ママさんへの言い方きつくないですか?」
「ホホホ、そうね、でも初めて会った時にねヒデちゃん驚きはしたけど嫌な顔をしなかったのよ。”この世界でもやっぱりいるんだ”って言ってたかしら?きっとヒデちゃんがいつも言う故郷にも私みたいなのがいたのかしらね?男の人でそういう反応の人は少ないのよねー。好みの人になるともっとね」
「なるほど、なかなかの好感度ですね。後、好きな食べ物とかは無いですか?」
「そうねー、あ、お肉が好きみたいよビックホーンのお肉とか美味しそうに食べてたし」
「フムフム、後何かないですか?」
「うーん、あ、こないだ一緒にお料理したんだけどレシピだけは知ってるみたいでお料理は出来ないみたいなのよね」
「え?お料理ってどんなのですか?」
「ブラックイールのかば焼きよ、ヒデちゃんが名前付けたのよ。食べてみる?」
「え、ブラックイールって骨ばっていてチョット苦手なんですよね」
「ホホ、まあみんなブラックイールって聞くとそう言うけどね。まあ、今作ってあげるわ」
そう言うとこちらの返事も待たずに作り始めた。鼻歌交じりにお料理をしていく。暫らくするとブラックイールのかば焼きが出来上がった。
「ハイ出来上がり。なかなかの出来だわ。食べてみて」
「確かに香りはブラックイールのものですね。でもこの形見た事無いです」
「ホホ、そのお料理のやり方をヒデちゃんが教えてくれたのよ」
「それは、なかなか博識ですね。では、いただきます」
添えられているフォークで切れるくらい柔らかくふっくらしている。一口食べてみる。
「モグモグ、柔らかいですね。それに骨が無いんですね」
「そうなのよ、ヒデちゃんが言うには開くっていうらしいんだけどね。こうやってやると骨が取りやすいのよ」
「フム、美味しいですね、あ、グレプのジュースおかわりください。後このブラックイールのかば焼きおみやげに一つ包んでください」
「あらあら、気にいってくれて嬉しいわ。待っててね」
ニコニコと機嫌よく厨房に入っていった。
何気なしに玄関の方に目を向けるとシオン様とヒデ様が入って来た。
「チョ、チョット早いもう帰って来たの?」
「はい、アオちゃん出来たわよ」
「あ、ありがとうございます。用事を思い出したので戻りますね」
「あらそうなの?また来てね」
「はい、それでは失礼します」
かば焼きをを持って玄関から出て拠点に戻る。
「まさかサボってたとか思われてないよね?」
独り言を言いながら拠点のドアを開けた。
「あら、サボっていたのかしら?」
真後ろから声が聞こえた。殺気がこもっていないのに背筋が寒くなった。
「シオン様、急に気配消して近づかないでくださいよ」
「気配を消すのは癖よ。それよりヒデ様の事何かわかったかしら?」
「その話は中で話しますので中に入ってください」
シオン様に中に入ってもらった。アカちゃんも居なかったのでお湯を沸かしてお茶を出そうとしたら。
「お茶もお茶菓子もいらないから早く話しなさい」
「は、はい、今日仕入れてきたばかりの話しですが……」
ママさんから聞いた話を大げさに伝えると、シオン様の目がキラキラに輝いていた。
「流石はヒデ様ですわ。それで、ヒデ様がお伝えになったブラックイールのかば焼きというのはどんな物なのかしら?」
「それでしたら、少し待っていてくださいね。ちょうどおみやげが」
そう言うとキッチンに入ってテーブルを見ると置いておいたはずのおみやげが無くなっていた。
「あれ?たしかここにおいたはずなーーー」
キッチンの入り口近くでモグモグしているアカちゃんを発見した。
「あ、アオちゃんそこのお魚みたいなの貰ったよご馳走様」
「た、食べちゃった?全部?」
「うん、あ、今日の夕飯だった?なら私の分は無しでいいよ?」
「あれは、確かにアカちゃんにあげるつもりだったけど今は……まあ、仕方ない」
「シオン様、ヒデ様のお伝えになったブラックイールのかば焼きは冷めちゃうとアレでしてね。あ、それで今度来た時にヒデ様に頼んで一緒に食べに行ったらどうです?ここで食べちゃったらヒデ様の前で新鮮なリアクションがとれないですしね?」
「なるほど、確かに一理ありますね。ヒデ様におねだり……ムフフ、これはなかなかいいかもしれないですね」
私の知っているシオン様じゃない。
「ハハ、ですよね」
「よし、残念ですがその、ブラックイールのかば焼きは貴方達でお食べなさい」
「はい、かしこまりました」
「あ、でも今聞いたヒデ様がお肉が好きって話だったので、この次はお肉料理のお弁当を手作りで持ってこようと思ったのですが……」
「え?シオン様お料理出来るんですか?」
「いえ、やった事無いですが。まあ、そんなに難しい物ではないでしょう?」
「あの、差し出がましいですが、次回はおねだりの方向でいってみてはどうですか?」
「お、おねだり……なかなか良い響きですね。しかし、わがままな娘とか思われないでしょうか?」
「娘??あ、いえ、そんなことないですよ。きっと大丈夫ですよ。シオン様なら」
娘って、舌を嚙みそうになった。
「そ、そうですね。ではそうしましょう。ではそろそろ戻る事にしましょう。キイに連絡をしてください」
ハイと返事をして直ぐに連絡をする。向こうも待っていた様で連絡をしたら直ぐに若様が来た。
「シオンゆっくり出来たかい?」
「はい、若様のおかげでヒデ様とお話できました」
「フフフ、シオンとヒデ君が上手くいけば僕も嬉しいからね。がんばってね」
「そんな、若様上手くいくだなんて、嫌ですわ。でも子供は三人ぐらいは欲しいですわ」
「あー、そうなんだ、うん、頑張ってね。じゃあ戻るね」
「お疲れさまでした」
主に若様に頭を下げて見送った。
「この任務普通の任務より疲れるんだけど」
そう遠くない次回の為に腹筋とポーカーフェイスの鍛錬をつまなければ。
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