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まさちち

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4章

王都 その11

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老騎士はソファーに腰かけると私の願い事を話す前にと言って話しだした。
「ヒデ殿はここより北にあるノーザンという領をご存知ですかな?」
「いえ、この土地に来てそれほど経っていないので地理には疎くて」
俺がそう答えて申し訳なさそうにしていると急いで答えが返って来た。

「ああ、いや、それは仕方のない事です気にしないで聞いてほしい。その領は隣の領であるサーザウ領との間に大森林があるのです。そこの利権をかけて十年に一回代表者を出して一騎打ちで決めるのです」

一騎打ちという言葉に眉をひそめて若様を見ると肩を竦める仕草をしてから答えてくれた。
「これでも平和になった方なんだよ。何代か前までは実際に戦争してたしね。とは言っても今やそこまで大森林の重要度が高いわけじゃないんだけど。昔みたいに狩猟がメインではなくなったし農作物も昔より稔が良くなったしね」

若様がそこまで言うと老騎士が続きを話す。
「まあ今は昔の様に動けなくなるまでから、降参するまでに変わりましたしな。前回は不覚を取ってしまいましたが、次こそはと思っていたのです。今思い出してもあの時のサーザウの奴のドヤ顔ときたら、ヌヌヌ‥‥‥はっ、ワシとしたことが」

そこまで話すと自分の亡くなった右腕を見ながら悔しそうに話を続ける。
「不意打ちとは言え害獣ごときに右腕、左目をやられてしまうとはそろそろ引退の時なのだろうかのう」
最後の方はため息交じりの一言だった。落ち込んでいる老騎士を何とか元気づけようとした時若様が小さな声で話す。

「いや、害獣とか言ってるけど十メトルを越すドラゴンなんだけどね。それを新人騎士を連れて森での研修の時だったから他の騎士を庇いながら戦っていたって報告を聞いてるんだけどね」
え?ドラゴンって害獣枠なの?と若様に聞いたら無言で首を振っていた。

そうなるとこの老騎士にとってドラゴンも害獣扱いになるくらい強いって事?

そんな事を考えて呆然としていたら老騎士が少し大きな声で頭を下げて話しかけてきた。
「何卒ヒデ殿のお力をわが主を救っていただいたその慈悲を私にもかけて頂けないでしょうか。今回の戦いが終わった後再び右腕、左目を失っても構いませぬ。この戦いだけは、この年寄りの願いを叶えてもらえないでしょうか」
「わ、わわ、落ち着いて下さい。先ずは貴方の身体を診断させてください。話はそれからにしましょう」
俺がそう言い終わると同時にチョロイ‥‥‥ゲフンゲフン、女神様から貰ったスキル”診断”をかける。

スキル診断を発動させると俺の目の前に半透明のコンソール画面が現れて老騎士のデータが映し出される。
そして頭の中でスキルに話しかける。
≪どう?右腕と左目の再生は出来そう?≫
『はい、問題なく出来ます』
即答かよ。流石は診断先輩だぜ。
『私は先輩ではないです』
≪いや、そこは独り言だから‥‥‥まあいいや、ありがと少し待っていて≫

目の前の老騎士に向かって優しく話しかける。
「お待たせしました。右腕、左目の再生は問題なく可能です」
俺の言葉に目を見開いて驚いていた老騎士が話し出す。
「ど、どんな代償でも必ずお支払いいたします。先ほども言ったようにこの戦いが終わった後ならどんな報いも受けます」
「え、えっと、若様から聞いてないですか?私への報酬は銀貨一枚ですよ」
老騎士は俺の言葉に頷いてから落ち着いた声で話す。
「もちろん聞いています。しかし、王が秘匿にせよと言われた事を曲げて貴方に会い治療をしてもらうのです。貴方の迷惑になるやもしれない。それを何とか避けたいのです」

あ、ああ、そういうことか。あーこの人もしかしたらその一騎打ちが終わったら自ら命を絶とうとか考えてないだろうな?
チラッと若様を見ると苦しそうな悲しそうな顔をしていた。
若様も俺と同じことを考えてるのかな?
うーむ、治すより後処理の方が大変そうだなこりゃどうしよ?

まあいいや、先に治しちゃうかな。
「俺への迷惑とかは考えなくていいですよ?その事は治した後で話しましょう。丁度そこにベッドがありますから腕の装備だけ外して横になって下さい」

 俺が淡々と一気にそこまで言うと呆気にとられた老騎士が言われたように装備を外してベッドに横になる。

右腕は当然怪我をした時にヒールをかけたのか傷口は綺麗にふさがっていた。
「そのまま、気を楽にしていてくださいね」
老騎士にそう言ってからスキル診断に声をかける。
≪お待たせ。先ずは腕からいくよいいかい?≫
『はい、データの整理も終わっていますのでいつでもいけます』
≪わかった、じゃあ、先ずは麻痺を全身にかけて少しの間眠ってもらおうか、その方が左目もすぐに治せるでしょ?≫
『了解しました』
俺は老騎士に向けて話す。
「少しの間眠ってもらいます。治りましたら起こしますので目をつぶって落ち着いて待っていてください」
そう言うと老騎士の目の辺りに手をかざす。

≪それじゃあ、始めようか≫

++++++++++++++++++

更新に時間がかかってしまい申し訳ありません。

色々と忙しくなってしまって。_(_^_)_



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