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4章

王都へ その9

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 全員が立ち上がり頭を下げて、王様と奥方様が退室していく。

「フウッ」
俺の向かいの席から安堵のような気の抜けた感じのため息が聞こえた。ため息の主は続けて話す。

「ヒデ殿、今度は本当に気を抜いて楽にしていいですよ。ここには歳の近い者しかいないですし、それに本当なら妻のお師匠様であるヒデ殿に私が跪いて話さなければいけないところですが」

第一王子がにこやかに話す。

俺は大慌てで返答をした。
「いやいや、勘弁してください。そんな事されたら私土下座しながら話さないといけなくなっちゃいますよ」
最後の方は少し泣きが入ってしまった。

「ハハハ、面白い方だ。それではこのままお話しましょうか」
そう言って切りだしてきた話は前に聖女様に教えた生活魔法の清浄の事だった。

話しは魔法理論だの自然への語りかけの言霊その論理に云々ともの凄く聞かれたのだが全然答えられなかった。

だって、なんかやったら出来ちゃった。って感じだったからなー。

 チラチラと若様の方を見ながら助けを求めたのだが、その度に笑いを堪えながら顔をそむけている。

そんな困っている俺の様子を感じ取ってくれたのか、聖女様が第一王子を連れて退室してくれた。

 俺が疲れ切って前のめりに頭を下げているとアーレさんが新しいお茶を入れてくれた。

部屋に残った若様もお茶を入れ直してもらい美味しそうに一口飲んでから話す。
「ハハ、お疲れ様。兄は魔法理論を専攻していてね、前からこの魔法の事を色々聞きたいと言っていたんだ」
俺も新しく入れてくれたお茶を一口飲むとミントっぽい味がして少し元気が戻ってきた感じがした。
「うう、それならそうと言っておいてくれれば良かったのに、突然、魔法理論とか言われてもわかんないですよ」
「いや、魔法理論なしで魔法を作り上げる方がおかしいのだけどねえ」

若様は全然悪びれず美味しそうにお茶お飲んでいる。

そんな様子を見ていたアーレさんが嬉しそうに話し出す。
「フフ、あ、失礼いたしました。でもこんなにリラックスして人と接している王子‥‥‥いえ、若様を見るのは久しぶりですので少し嬉しくなってしまいまして」
その言葉に若様が少し考えるそぶりをして話す。
「ん?そうだっけ?んん?そうだな学園にいた時は信頼できるともがいたけど城の中だとやっぱりね。気は抜けない時の方が多いね」
「おお、コワいコワい。城の中は陰謀が渦巻いてるんだ」
「ハハ、今はそれほどでもないけどね。まあ、気は抜けないけど」
俺のおどけた問いに笑いながら答える若様。

そしてお茶を飲み干すと若様が立ち上がって元気よく話す。
「さて、ヒデ君。ここに来てもらった一番の用事を済まそうか」
「ええー、まだ何かありましたっけ?俺、王様やら王子様でもうお腹いっぱいなんですけど」
また前のめりにうな垂れながら話すと若様が苦笑交じりに話し出す。

「次で最後だからもう少しだけがんばってくれよ」
「はいはい、わかりました。でもお茶をもう一杯飲むまで待っていてください」

若様も笑いながらもう一杯お茶に付き合ってくれた。

次に連れてこられた部屋まではかなり遠かった。というか階段を随分と降りた気がする。
また、アーレさんが先頭に立ち案内をしてくれている。

ここに来る途中若様が話しかけてきた。
「この前の病魔騒動の話を記録し保存するのを今から行く部屋でするんだ」
「ん?その部屋じゃないといけないんですか?」
「うん、その部屋はそれをする為の部屋だからね」

ん?記録をする為の部屋?なんだろ?やっぱり何かしら魔法が使われたりしてるのかな?少し興味が出てきた。

 ここだよと言われた部屋は他の扉より少し大きかった。そして若様はノックをする事もなくその大きな扉を押し開ける。
扉をくぐると地球にいた時に嗅ぎなれた匂いがしてきた。そこには所狭しと本が並んでいた。俺の背の二倍くらいあるだろう巨大な本棚にギッシリ本が詰まっていて、その巨大本棚が無数に並んでいる。壁に至っては柱以外は本で埋まっていた。

俺が呆然としてその風景を見ているとしばらくして若様が少し自慢げに話しかけてきた。
「凄いだろ?ここには建国以来の記録、それに魔法書や歴史書、哲学、文学、神話、モンスター学、魔法理論それらにかかわる資料、そして禁書と呼ばれる物もあるんだよ」
「禁書?禁書ってどういうものなんですか?」
「禁書は読んだだけで不可思議な魔法が発動してしまったり。読んだものを虜にして人間の生命を吸い取ったりとかまあ、呪われていたり、古代魔法なんかがかかっているものもあるらしいよ。何処にあるかも教えてもらった事ないけどね」
こわっ、こえーよ。聞かなきゃよかった。

そんな話をしながら巨大な本棚で出来た道を進んで行くと、数台のテーブルと椅子が並べられている広いスペースにに出た。まあ普通の図書館ならここで読んでください。みたいなスペースなのだが、このテーブルの上にも本が山積みになっている。

その山積みの本の中心に丸メガネをかけたローブ姿の老人が、胸に手を置いて跪き頭を下げた姿勢で若様の到着を待っていた。
最初微動だにしないから人形なのかと疑ってしまったくらいだった。
「やあ、ブロック卿少し遅れたかな?」
「いえ、時間通りでございます。王子」

若様は少し苦笑いをして俺の方に向いて話す。
「彼が記録係のブロック卿だ。彼はこの図書の全てがわかるらしいよ。どの本がどこにあるのかも」
最後の方は俺だけに聞こえる様に小声で話していた。

へ?この本を全部把握してるの?何千、いや万はあるかもしれないよこれ?

俺の思った事がわかったのかブロック卿が笑いながら話す。
「フォフォ、流石に全部は無理ですな。禁書の類は近寄る事も出来ませんから」
それって禁書以外はわかるのかよ。やっぱすげーな。

でもこのじいちゃんさっき微動だりしなかったから勝手に無表情とか思ってたけど何か話しやすそうで良かった。

「あ、名乗り遅れました。私はヒデと言います」
そう言って頭を下げる。

「聞いていますよ。今日はこの時間になってしまったので本格的な聞き取りは明日からにしましょう。楽しみにしていますね。きっと楽しい冒険談が聴けることでしょう」

いや、俺はあんまり冒険してないけど。まあ、ケヴィンさん達の話なら冒険ぽいかな??

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