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4章

王都へ その6

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 少しだけ急ぎ足で冒険者ギルドに戻り入り口をくぐると、何となくギルドの様子が違っている。その原因は直ぐに分かった。酒場に場違いな貴族がいるのだ。

 まあ、言葉は悪いが冒険者など見た目はそこいらのゴロツキと変わらない。そんな中、白いロングドレスの貴族様が酒場にいるのだから、違和感がもの凄いことになっている。

 しかもその貴族様はいつもの俺達が座る入り口に近い席にいた。いや、別に俺達専用と言う訳じゃないけど、空いている時は必ずそこに座っているぐらいなのだが。

まあ、仕方ないあまりかかわらない様に奥の席に行こうと思い、貴族様をジロジロ見ない様に気を付けながら真っ直ぐ前を見て酒場に入る。

入った途端ミラが俺を追い抜き貴族様の座っている席に入って行ことしていた。
ちょっ、ちょっ、驚いてミラを引き止めようと手を伸ばしかけた時ミラの声が聞こえた。
「うわー、キャリーちゃんキレイーお姫様みたい」

え?ええ?何言ってるのミラさん?ミラが何を言っているのか分からず固まっているとハルナも話し出す。
「うわー、本当だキャリー姉ちゃんお化粧してるー。あ、何だろう?お花の香りがするいい匂いー」

 そう話しているハルナの方を向くと、ハルナの後ろにいたゲンとトランが目を見開いて驚きの表情をしている。きっと俺も同じ様な顔をしているのだろう。

驚きのあまり、動きのない俺に聞きなれたキャリーさんの声が聞こえた。
「あ、あの、お師匠様そんな所にお立ちになってないでお掛けくださいな」

 聞きなれたキャリーさんの声を聞いて若干立ち直っていつもの席に座りキャリーさんを観察する様に見る。

 ハルナの言う通り目元や眉を見ると薄っすらとお化粧をしている。なんか髪なんかもいつもよりキラキラしていて縦ロールがいつもよりきまっている気がする。

それに頬がほんのり赤くてなんかカワイイな。

「ちょ、ちょっとヒデ兄そんなにジロジロ見たら失礼だよ」
ハルナはそう言いながら、なんかボーっとして見惚れていた俺の視界に割り込んできた。

「あ、ああ、ゴメン、キャリーさんがいつも以上に綺麗になってたからビックリして見惚れてた」
その俺の言葉に更に頬が赤くなった。

「いえ、その、ありがとうございますわ。お師匠様」

そう言いながらどこからか取り出した黒い扇子でパタパタと仰ぎながら、目線を逸らし話すキャリーさん。

その時横からいつもの野太い声が聞こえた。
「あーら、ヒデちゃんたらいつもお化粧してる私にはそんなこと言ってくれもしないのにねー。やけちゃうわー」
声の主はもちろんここ酒場のママさんだ。そして最後の方は白々しい声で話している。

ママさんは大きなトレイにお茶を乗せて持って来ている。そのお茶を配りながら話す。
「でもキャリーちゃん本当に気合入っているわね」
「ホホホ、折角のお城に招待ですもの少しは着飾らないと。絶対あの人は着飾ってくるはずですわ」

 キャリーさんの最後の方の言葉は小声になっていたので俺にはよく聞こえなかったが、ママさんには聞こえたのか納得したように頷いていた。

「あらあら、なるほどね。相手の有利な場所に向かうんですものね、確かに気合が入るのも頷けるわ」
キャリーさんとママさんは小さな声で話しているので所々聞こえない。

まあ、女の子同士の会話に聞き耳を立てるのも無粋だと思うし。あ、一人は、漢女おとめだった。

 その後、キャリーさん、ミラ、ハルナ、ママさんでワイワイと賑やかに話している。化粧品が如何とか流行の色とかよくわからない様な話をしている。

 俺とゲン、トランは蚊帳の外で静かにお茶を飲んでいるとゲンが話し出した。

「キャリー姉ちゃんのいつものドレスって普通の布じゃなくて魔法がかかっている魔法の鎧なんだよ。だから、見た目より物凄く頑丈な作りなんだけど、あのドレスって見た感じなんの魔法効果も掛かってない気がするんだけど?」

そんなことを言いながら首をかしげている。
「そりゃー、これからクエストに出るわけじゃないからだろ?」
横にいるトランが考えながら話す。
「ええ?でもなんかキャリー姉ちゃんとママさんの会話に真剣勝負だの決戦だのって話しているみたいだけど?」
「なんだろうね?お城に強いモンスターでもいるのかな?」
「いや、だとしたら何でいつものドレス鎧じゃないんだ?」

二人が首をかしげながら話している。

「まあ、あれだよ。お城って言うと貴族とか王族だっているし、そんな人達に会うから着飾ったドレスじゃなきゃいけないからじゃないか?あれ?そうすると俺もこんな服じゃマズいのかな?」

俺の話にゲンが驚いた声を出す。
「ええ?そう言ってもオイラこの服以外持って無いよ?」
「いや、俺達はヒデ兄の護衛だからいいんじゃない?」
トランも少し自信なさげに答える。

 そんなこんなでヤイノヤイノと話しているとギルドの入り口からヒューイさんが息を切らせて現れ、キョロキョロと辺りを見回している。

そして俺達を見つけると急ぎ足でこちらに向かって来た。
「あ、良かったヒデさんまだいてくれて。間に合った」
「大丈夫だよ。ヒューイさんが来るまでは待っているつもりだったし」
「ありがとう、これがエル商会に持っていってもらう書類と手紙、それと‥‥‥」

俺に書類の束とか封筒だのを渡しながら今回どこまで話を進めて良いかなど細かな仕事の話をする。
俺の方もポールさんから貰った資料とかの話をしている。

そんな話していると、いつの間にか若様が酒場の入り口まで来ていた。


おっと、ソロソロ王都に出発だな。





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