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3章
勇者 その10
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『解決方法はあります』
スキルの答えと同時に肩を掴まれた。
診断スキルとの話に集中していたので驚いて掴まれた肩を見るとザルドさんが心配そうな顔でこちらを見ていた。
「ヒデ落ち着け。治療の事はよくわからないがこういう時慌てたり焦ってはダメだ」
ザルドさんがゆっくりと俺に言い聞かす。
そう言えばこんな事が前にもあったな。
そうだ、診療所で初めてカルナさんの治療をした時だ。あの時はギルマスに同じ事を言われたんだっけ。
まったく全然成長してないじゃないか。治療の事になるとすぐ頭に血が上ってテンパる。
俺はザルドさんの一言に頷いてから大きく息を吸って肺の中が空になるまでゆっくり息を吐く。
その後自分の頬を両手で気合入れのために叩いた。
バチっといい音が聞こえる。
そしてザルドさんにお礼を言った。
「ありがとうございます。落ち着きましたのでもう大丈夫です」
そう言ってから患者さんに向き直って診断スキルに話しかける。
《ゴメン、待たせたね。少し取り乱したけどもう大丈夫だよ。どうすればいい?》
『はい、先ほど言った魔力を大量に使っての治療は悪手です』
《うん、俺もそう思う。きっとこの村だけでは無いと思うし出来るだけ魔力は残しておきたい》
『それで先ほど言った解決方法なのですが単純です。この呪いをかけた魔物を消滅させることです』
《呪いって術者を倒すと強くなるとか聞いた事あるけど、この呪いは違うの?》
『はい、このタイプの呪いは術者が消滅すると弱体します』
なるほど、ケヴィンさん達が倒してくれるのを待っていればいいのか。
でも、この病魔って魔物はそこまで強くないから探すのが大変だと言っていたよな?
このまま待っているだけでいいのか?
《何とかこの術者であるモンスターの居場所を特定できないかな?》
別にスキルに話しかけるつもりでなく頭に思い浮かべただけだったが返答が返って来た。
『出来ますよ。先ほどマスターが呪いの糸に魔力を流し込んだ時に特定できました』
《ええっ!ど、どこにいるの?》
『はい、ここより西の森の中で動かず留まっています』
《えっと、地図みたいのに出せない?』
『そういった機能はありません。ただ方向と距離はわかりますので地図があれば位置はわかりますが』
むむ、そうか。そううまくはいかないな。地図か、地図って結構高価なもんなんだよな。
そう思いながら猟師の奥さんに地図はないかと聞いてみたがやはり無いそうだ。
地図、地図、なんかないかな。うーん、その時俺の周りをフワフワ飛んでいるフウジンが目に入った。そう言えば少し前にフウジンに地図を見せてもらった事を思い出した。
「フウジン、ここら辺の地図を出せるかい?ずーっと前に街の近くの森に行った時みたいの」
フワフワと暇そうにしていたフウジンが俺の声に応えて目の前にやって来た。
「もちろんできますよ。はい」
そう言うと前の時と同じように目の前に診断のスキルを使った時と同じようなコンソールが開いて、ここら辺のであろう地図が現れた。その地図の上で赤、緑、青のたまが無数に表れて点滅していた。
俺はその地図を見ながら診断スキルに話しかける。
《この点のどれが病魔だかわかるか?》
『はい、これがその病魔です』
そう言ってフウジンの出した地図の一つの赤い点に矢印が現れて指している。
ん?これどうなってるんだ?俺はその矢印が気になったので触ろうとしたのだがコンソールと一緒で触れなかった。
何もない空中をなんか一生懸命つまもうとしている俺を見てザルドさんが、さっきと違い心配そうというより呆れている様な顔をで聞いてきた。
「ヒデ?何しているんだ?虫でもいたのか?」
「へ?あ、いや、そうじゃないですよ。えっと、治療法がわかりました」
俺のその言葉に猟師の奥さんと俺達を案内してくれた若い兵士さんが喜びの声を上げる。
「え?本当ですか?お願いします。主人と息子を治してください」
「回復師様、お願いします。こいつとは幼馴染なんです」
「はい、もちろんです。ですがそれにはまずこの呪いをかけた術者を倒さないといけないのです」
「え?呪い?病気じゃないのですか?」
俺の話に少し戸惑っている奥さんとついでにみんなにこの病気の事を説明した。
俺の説明が終わって直ぐにザルドさんが話す。
「なるほど、それで?ヒデはその守護獣のおかげもあってその病魔ってモンスターの居場所は掴んでいるんだな?」
「はい、これを何とかケヴィンさん達に届けたいのですが」
後ろで黙って聞いていた若い兵士さんが一歩前に出て大きな声で言う。
「私が行ってきます。この森に少しは慣れていますし大体の場所がわかれば」
腕を組んで考えていたザルドさんがその若い兵士を止める。
「うーん、落ち合う場所を決めているわけでは無いし、向こうもモンスターを探しながら移動をしているんだ会えるかどうかすらわからない。それに、そんな事しなくてもその守護獣に直接行ってもらえばいいじゃねえか?見た感じモノスゲー強そうだし。キャロラインさんといつも一緒にいるなら気を探れば直ぐに見つかるだろ?」
俺はその言葉に暫し思考が止まった。
そういえば見た目がこんな可愛らしいから忘れてたが、この子達一人でもあの大きな街を壊せるくらいの力があるんだった。
そうじゃんその手があったよな?
「フウジン、呪いの話と病魔の居場所を今すぐキャリーさんに伝えてくれるかい?」
「承知」
なんか嬉しそうにそれだけ言うと目の前から消えていった。
俺の周りには羨ましそうにフウジンが消えていった方向を見ているライジンとミズチがいた。
「俺もなんか命令してほしい」
「私も私も」
そう言いながらライジンとミズチは暫らく俺の頭の上でジタバタしていた。
++++++++++++++++++++
いつもお読みくださりありがとうございます。
さてそろそろ、この世界の平均寿命を頑張って伸ばします。の2巻目が発売されます。
今回もとらのあな様に特典用SSを書かせてもらいました。
チョットだけネタばらししますと。キャリーさんの必殺技が出ます。
楽しんでいただければ嬉しいです。
_(_^_)_
スキルの答えと同時に肩を掴まれた。
診断スキルとの話に集中していたので驚いて掴まれた肩を見るとザルドさんが心配そうな顔でこちらを見ていた。
「ヒデ落ち着け。治療の事はよくわからないがこういう時慌てたり焦ってはダメだ」
ザルドさんがゆっくりと俺に言い聞かす。
そう言えばこんな事が前にもあったな。
そうだ、診療所で初めてカルナさんの治療をした時だ。あの時はギルマスに同じ事を言われたんだっけ。
まったく全然成長してないじゃないか。治療の事になるとすぐ頭に血が上ってテンパる。
俺はザルドさんの一言に頷いてから大きく息を吸って肺の中が空になるまでゆっくり息を吐く。
その後自分の頬を両手で気合入れのために叩いた。
バチっといい音が聞こえる。
そしてザルドさんにお礼を言った。
「ありがとうございます。落ち着きましたのでもう大丈夫です」
そう言ってから患者さんに向き直って診断スキルに話しかける。
《ゴメン、待たせたね。少し取り乱したけどもう大丈夫だよ。どうすればいい?》
『はい、先ほど言った魔力を大量に使っての治療は悪手です』
《うん、俺もそう思う。きっとこの村だけでは無いと思うし出来るだけ魔力は残しておきたい》
『それで先ほど言った解決方法なのですが単純です。この呪いをかけた魔物を消滅させることです』
《呪いって術者を倒すと強くなるとか聞いた事あるけど、この呪いは違うの?》
『はい、このタイプの呪いは術者が消滅すると弱体します』
なるほど、ケヴィンさん達が倒してくれるのを待っていればいいのか。
でも、この病魔って魔物はそこまで強くないから探すのが大変だと言っていたよな?
このまま待っているだけでいいのか?
《何とかこの術者であるモンスターの居場所を特定できないかな?》
別にスキルに話しかけるつもりでなく頭に思い浮かべただけだったが返答が返って来た。
『出来ますよ。先ほどマスターが呪いの糸に魔力を流し込んだ時に特定できました』
《ええっ!ど、どこにいるの?》
『はい、ここより西の森の中で動かず留まっています』
《えっと、地図みたいのに出せない?』
『そういった機能はありません。ただ方向と距離はわかりますので地図があれば位置はわかりますが』
むむ、そうか。そううまくはいかないな。地図か、地図って結構高価なもんなんだよな。
そう思いながら猟師の奥さんに地図はないかと聞いてみたがやはり無いそうだ。
地図、地図、なんかないかな。うーん、その時俺の周りをフワフワ飛んでいるフウジンが目に入った。そう言えば少し前にフウジンに地図を見せてもらった事を思い出した。
「フウジン、ここら辺の地図を出せるかい?ずーっと前に街の近くの森に行った時みたいの」
フワフワと暇そうにしていたフウジンが俺の声に応えて目の前にやって来た。
「もちろんできますよ。はい」
そう言うと前の時と同じように目の前に診断のスキルを使った時と同じようなコンソールが開いて、ここら辺のであろう地図が現れた。その地図の上で赤、緑、青のたまが無数に表れて点滅していた。
俺はその地図を見ながら診断スキルに話しかける。
《この点のどれが病魔だかわかるか?》
『はい、これがその病魔です』
そう言ってフウジンの出した地図の一つの赤い点に矢印が現れて指している。
ん?これどうなってるんだ?俺はその矢印が気になったので触ろうとしたのだがコンソールと一緒で触れなかった。
何もない空中をなんか一生懸命つまもうとしている俺を見てザルドさんが、さっきと違い心配そうというより呆れている様な顔をで聞いてきた。
「ヒデ?何しているんだ?虫でもいたのか?」
「へ?あ、いや、そうじゃないですよ。えっと、治療法がわかりました」
俺のその言葉に猟師の奥さんと俺達を案内してくれた若い兵士さんが喜びの声を上げる。
「え?本当ですか?お願いします。主人と息子を治してください」
「回復師様、お願いします。こいつとは幼馴染なんです」
「はい、もちろんです。ですがそれにはまずこの呪いをかけた術者を倒さないといけないのです」
「え?呪い?病気じゃないのですか?」
俺の話に少し戸惑っている奥さんとついでにみんなにこの病気の事を説明した。
俺の説明が終わって直ぐにザルドさんが話す。
「なるほど、それで?ヒデはその守護獣のおかげもあってその病魔ってモンスターの居場所は掴んでいるんだな?」
「はい、これを何とかケヴィンさん達に届けたいのですが」
後ろで黙って聞いていた若い兵士さんが一歩前に出て大きな声で言う。
「私が行ってきます。この森に少しは慣れていますし大体の場所がわかれば」
腕を組んで考えていたザルドさんがその若い兵士を止める。
「うーん、落ち合う場所を決めているわけでは無いし、向こうもモンスターを探しながら移動をしているんだ会えるかどうかすらわからない。それに、そんな事しなくてもその守護獣に直接行ってもらえばいいじゃねえか?見た感じモノスゲー強そうだし。キャロラインさんといつも一緒にいるなら気を探れば直ぐに見つかるだろ?」
俺はその言葉に暫し思考が止まった。
そういえば見た目がこんな可愛らしいから忘れてたが、この子達一人でもあの大きな街を壊せるくらいの力があるんだった。
そうじゃんその手があったよな?
「フウジン、呪いの話と病魔の居場所を今すぐキャリーさんに伝えてくれるかい?」
「承知」
なんか嬉しそうにそれだけ言うと目の前から消えていった。
俺の周りには羨ましそうにフウジンが消えていった方向を見ているライジンとミズチがいた。
「俺もなんか命令してほしい」
「私も私も」
そう言いながらライジンとミズチは暫らく俺の頭の上でジタバタしていた。
++++++++++++++++++++
いつもお読みくださりありがとうございます。
さてそろそろ、この世界の平均寿命を頑張って伸ばします。の2巻目が発売されます。
今回もとらのあな様に特典用SSを書かせてもらいました。
チョットだけネタばらししますと。キャリーさんの必殺技が出ます。
楽しんでいただければ嬉しいです。
_(_^_)_
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