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3章
勇者 その7
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暫らくすると一番奥の席で話していた三人が話終わったのか、席を立って握手をしていた。
ケヴィンさんが俺達の席に歩いてきてドイルさんに話す。
「定期連絡の時間なので僕は一度ロンセグラーに戻るよ。こちらは任せたよ」
「わかった。病魔の発生時間は過ぎたんだろ?さっさと終わらせてゆっくり休みたいぜ」
ケヴィンさんは「そうだね」と一言言ってから目の前から消えた。この人もテレポートとか出来るんだ、流石勇者様だね。そんな事を感心していると若様が話しかけてきた。
「ヒデ君、本当は国からお願いしたい所なんだけど、そうなると後が面倒になるしヒデ君が嫌だろうから、僕個人としてお願いする。疫病が広まるのを何とか止めてくれ。そして、ヒデ君も絶対に無事で帰って来てくれよ」
流石は若様だ。国の要請なんか受けたら褒美だのなんだのと周りが騒がしくなるだろうしね。それに、若様に頼まれたら断れないよ。
「ハハ、国なんかに頼まれるより若様に頼まれた方がやる気が出ますよ。そして必ずここに戻ってきます」
「フフフ、嬉しい事を言ってくれる。戻ってきたら色々話を聞かせてくれ」
そう言って若様と固い握手をする。
若様が離れるとギルマスがやって来て真面目な顔で話し出す。
「ヒデ、ギルドからの緊急要請だ。勇者に手をかしてやってくれ」
「え?うん。もちろんそのつもりだよ?要請なんか無くても」
「わかっている。こういうのは形式が大事なんだよ。なんせ報酬が違うからな。それと誰かヒデの護衛を着けたいのだが‥‥‥」
ギルマスがそう言って視線をギルドの待合スペースに向けようとした時横から、大慌てのゲン達の声が聞こえた。
「ギルマス、その護衛は俺達がやる」
ゲンの後ろにトランとハルナもやって来る。
「僕もそのつもりだよ」
「私だって」
俺は即答で答える。
「ダメだ。今回はモンスターの討伐が主じゃないし、俺は町や村に向かう事になるからそんなに危険な事は無い。お前達が病気にでもなったら院長先生に顔向けができない」
「でも‥‥‥」
ゲンがさらに食いつこうとした時ギルマスが止めに入る。
「そこまでだ、ゲン、トラン、ハルナ。わかっているだろ?ランクEは護衛のクエを受けられない。ヒデの護衛はギルドからクエストを要請する」
ギルマスの言葉に悔しそうに下を向いているゲンの頭に手を置き、膝をついて目線を合わせて話す。
「ゲン、トラン、ハルナ。お前達には他にやってもらいたい事があるんだ。ミラ」
そう言って心配そうな顔をして近くにいるミラを呼ぶ。
「わ、私は連れて行ってくれるよね?だって私はヒデ兄師匠の一番弟子なんだから」
早口にそれだけ言うとミラも下を向く。
俺はもう片方の手をミラの頭に置くとゆっくりと話し出す。
「ミラも連れて行けないよ。理由はみんなと一緒だ。それにね、一番弟子のミラにはやってほしい事があるんだ」
連れて行けないといった時一瞬だけ顔を上げて悔しそうな顔をして、また下を向いたミラが顔を上げて俺の言葉を繰り返す。
「やってほしい事?」
「ああ、これはゲン達にもお願いする事だ」
「俺達にも?」
ゲン達も顔を上げる。
「ああ、俺にとってはこっちの方が優先度が高い事なんだ。この診療所を守ってほしい、ここは俺の大事な戻る家だからな。他の人になんか頼めない。お前達だから頼むんだ」
少しの静寂の後ゲンがいつもの様に元気な声で答える。
「わかったぜ。ヒデ兄がいない間この診療所を守り抜くぜ。だから、早く帰って来てね」
その後にトラン、ハルナも続く。
「僕もヒデ兄の頼みならやるよ。でも早く帰って来てよ」
「私も、守る。だから絶対帰って来てね」
一拍おいてからミラが小さな声で話し出す。
「わかった。私はヒデ兄師匠の一番弟子だもん。ヒデ兄が戻るまで必ず守って見せる。ここは私にとっても大事な場所だもん」
俺はみんなの言葉を聴いてからいつもの様に、いや、いつも以上にみんなの頭を髪の毛がクシャクシャになるくらい撫でる。
そこに守護獣達がやって来た。
ライジンが先陣を切って話しをする。
「大丈夫だよ。主殿は俺が守るから」
その後にフウジン、ミズチが続く。
「もちろん僕も行くよ」
「ハルナ達の代わりに私がしっかり守るから」
その隣のベンテンは何か言いたげにこっちを見ていたので俺から声をかけた。
「ベンテンはここに残ってミラ達に付いていてあげてくれ」
その言葉に嬉しそうに頷く。
「うん、私はミラ達と一緒にここを守るね」
そう言ってミラの肩に戻っていく。
その時護衛の人選をしていたギルマスが戻ってきて話す。
「話しはついたか?こっちも丁度いいのがつかまったぞ」
そう言ってザルドさんがギルマスの後ろから現れた。
ザルドさんはこの世界に来て二人目の患者さんだ。その他にも色々と頼みごとをきいてくれる人の良いおじさんだ。
「おう、話は聞いたぜヒデ。俺はここ何年も病気一つしてないからな。頑丈なのが取り柄だ。それにお前には借りがあるからな。喜んで受けるぜ」
「ザルドなら気も知れてるし丁度いいだろ?」
ギルマスの言葉に頷いてからザルドさんに話す。
「ザルドさん今回のクエの詳細は聞きましたか?正体不明の疫病が流行るかもしれないとても危険なクエです」
「ああ、聞いてるぞ。危険なクエなら若い奴が行くよりは、オッサンの俺が行った方が良いだろ。それに、ヒデがいるんだ、ケガや病気は心配ないぜ」
ガハハと豪快に笑って俺の背中を叩く。
その勢いで、二、三歩前に出ると目の前に顔を真っ赤にさせたキャリーさんと、シオンさんが立っていた。
「あ、あの、お師匠様?あまり殿方とのいかがわしい行為はイケナイと思うんですの」
「わ、私も生産性が無いというか、と、とにかくいけないと思いますわ。それならわたくしが‥‥‥」
目線を逸らせて真っ赤になって二人がなにか言っている。
まあ、大体予想がつくが。そう思いマローマさんを睨むと、視線を逸らせて口笛を吹いている。
まったく、なんて事を吹き込むんだよこの人。
俺はキャリーさんとシオンさんにそういった趣味趣向は持っていませんとコンコンと説明した。わかってくれたか怪しいのですが‥‥‥
ケヴィンさんが俺達の席に歩いてきてドイルさんに話す。
「定期連絡の時間なので僕は一度ロンセグラーに戻るよ。こちらは任せたよ」
「わかった。病魔の発生時間は過ぎたんだろ?さっさと終わらせてゆっくり休みたいぜ」
ケヴィンさんは「そうだね」と一言言ってから目の前から消えた。この人もテレポートとか出来るんだ、流石勇者様だね。そんな事を感心していると若様が話しかけてきた。
「ヒデ君、本当は国からお願いしたい所なんだけど、そうなると後が面倒になるしヒデ君が嫌だろうから、僕個人としてお願いする。疫病が広まるのを何とか止めてくれ。そして、ヒデ君も絶対に無事で帰って来てくれよ」
流石は若様だ。国の要請なんか受けたら褒美だのなんだのと周りが騒がしくなるだろうしね。それに、若様に頼まれたら断れないよ。
「ハハ、国なんかに頼まれるより若様に頼まれた方がやる気が出ますよ。そして必ずここに戻ってきます」
「フフフ、嬉しい事を言ってくれる。戻ってきたら色々話を聞かせてくれ」
そう言って若様と固い握手をする。
若様が離れるとギルマスがやって来て真面目な顔で話し出す。
「ヒデ、ギルドからの緊急要請だ。勇者に手をかしてやってくれ」
「え?うん。もちろんそのつもりだよ?要請なんか無くても」
「わかっている。こういうのは形式が大事なんだよ。なんせ報酬が違うからな。それと誰かヒデの護衛を着けたいのだが‥‥‥」
ギルマスがそう言って視線をギルドの待合スペースに向けようとした時横から、大慌てのゲン達の声が聞こえた。
「ギルマス、その護衛は俺達がやる」
ゲンの後ろにトランとハルナもやって来る。
「僕もそのつもりだよ」
「私だって」
俺は即答で答える。
「ダメだ。今回はモンスターの討伐が主じゃないし、俺は町や村に向かう事になるからそんなに危険な事は無い。お前達が病気にでもなったら院長先生に顔向けができない」
「でも‥‥‥」
ゲンがさらに食いつこうとした時ギルマスが止めに入る。
「そこまでだ、ゲン、トラン、ハルナ。わかっているだろ?ランクEは護衛のクエを受けられない。ヒデの護衛はギルドからクエストを要請する」
ギルマスの言葉に悔しそうに下を向いているゲンの頭に手を置き、膝をついて目線を合わせて話す。
「ゲン、トラン、ハルナ。お前達には他にやってもらいたい事があるんだ。ミラ」
そう言って心配そうな顔をして近くにいるミラを呼ぶ。
「わ、私は連れて行ってくれるよね?だって私はヒデ兄師匠の一番弟子なんだから」
早口にそれだけ言うとミラも下を向く。
俺はもう片方の手をミラの頭に置くとゆっくりと話し出す。
「ミラも連れて行けないよ。理由はみんなと一緒だ。それにね、一番弟子のミラにはやってほしい事があるんだ」
連れて行けないといった時一瞬だけ顔を上げて悔しそうな顔をして、また下を向いたミラが顔を上げて俺の言葉を繰り返す。
「やってほしい事?」
「ああ、これはゲン達にもお願いする事だ」
「俺達にも?」
ゲン達も顔を上げる。
「ああ、俺にとってはこっちの方が優先度が高い事なんだ。この診療所を守ってほしい、ここは俺の大事な戻る家だからな。他の人になんか頼めない。お前達だから頼むんだ」
少しの静寂の後ゲンがいつもの様に元気な声で答える。
「わかったぜ。ヒデ兄がいない間この診療所を守り抜くぜ。だから、早く帰って来てね」
その後にトラン、ハルナも続く。
「僕もヒデ兄の頼みならやるよ。でも早く帰って来てよ」
「私も、守る。だから絶対帰って来てね」
一拍おいてからミラが小さな声で話し出す。
「わかった。私はヒデ兄師匠の一番弟子だもん。ヒデ兄が戻るまで必ず守って見せる。ここは私にとっても大事な場所だもん」
俺はみんなの言葉を聴いてからいつもの様に、いや、いつも以上にみんなの頭を髪の毛がクシャクシャになるくらい撫でる。
そこに守護獣達がやって来た。
ライジンが先陣を切って話しをする。
「大丈夫だよ。主殿は俺が守るから」
その後にフウジン、ミズチが続く。
「もちろん僕も行くよ」
「ハルナ達の代わりに私がしっかり守るから」
その隣のベンテンは何か言いたげにこっちを見ていたので俺から声をかけた。
「ベンテンはここに残ってミラ達に付いていてあげてくれ」
その言葉に嬉しそうに頷く。
「うん、私はミラ達と一緒にここを守るね」
そう言ってミラの肩に戻っていく。
その時護衛の人選をしていたギルマスが戻ってきて話す。
「話しはついたか?こっちも丁度いいのがつかまったぞ」
そう言ってザルドさんがギルマスの後ろから現れた。
ザルドさんはこの世界に来て二人目の患者さんだ。その他にも色々と頼みごとをきいてくれる人の良いおじさんだ。
「おう、話は聞いたぜヒデ。俺はここ何年も病気一つしてないからな。頑丈なのが取り柄だ。それにお前には借りがあるからな。喜んで受けるぜ」
「ザルドなら気も知れてるし丁度いいだろ?」
ギルマスの言葉に頷いてからザルドさんに話す。
「ザルドさん今回のクエの詳細は聞きましたか?正体不明の疫病が流行るかもしれないとても危険なクエです」
「ああ、聞いてるぞ。危険なクエなら若い奴が行くよりは、オッサンの俺が行った方が良いだろ。それに、ヒデがいるんだ、ケガや病気は心配ないぜ」
ガハハと豪快に笑って俺の背中を叩く。
その勢いで、二、三歩前に出ると目の前に顔を真っ赤にさせたキャリーさんと、シオンさんが立っていた。
「あ、あの、お師匠様?あまり殿方とのいかがわしい行為はイケナイと思うんですの」
「わ、私も生産性が無いというか、と、とにかくいけないと思いますわ。それならわたくしが‥‥‥」
目線を逸らせて真っ赤になって二人がなにか言っている。
まあ、大体予想がつくが。そう思いマローマさんを睨むと、視線を逸らせて口笛を吹いている。
まったく、なんて事を吹き込むんだよこの人。
俺はキャリーさんとシオンさんにそういった趣味趣向は持っていませんとコンコンと説明した。わかってくれたか怪しいのですが‥‥‥
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