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003 ついに銃火器を作ったぞ!

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 狂ったようにゴブリンを狩り続けること数日。

「しゃー!」

 レベルが10になった。

「ゴブー!」
「ゴブゴブ!」

 ゴブリンズが祝ってくれる。
 戦闘直後ということもあり、二人は大人しかった。
 俺の後ろに立ち、素直に拍手している。

「ま、桁数が増えただけでレベルはどうでも良かったりするけどね。それより金だよ金。これだけあればいよいよ生産に乗り出せそうだぜ」

 所持金が2万ゴールドに達した。
 一日の生活費を1500ゴールドに抑えてきた賜物だ。

「まだ早いけど一度戻るぞー」
「「ゴブッ!」」

 昼過ぎだが、ゴブリン退治を早々に切り上げた。
 ゴブちゃんと手を繋ぎ、ロックハートへ歩いていく。
 ゴブおは俺の前をうろちょろしていた。
 いつもなら、もうすぐ何かしらの悪戯をしてくる。

「ゴブお、今はやめておけ。大人しくしていたら、今日は腹いっぱいにたらふくメシが食えるかもしれないぞ」
「ゴブ!? ゴッブゴブ!?」
「ああ、本当だ」

 ゴブおの言葉を訳すと「本当か!?」というもの。
 いつからか、ある程度は理解できるようになっていた。
 数日を共にしているだけのことはある。

「ゴブーッ!」

 ゴブおがこの上なくはしゃぐ。
 この日は何の悪戯もしてこなかった。
 ゴブおも楽しみなのだ、腹いっぱいのメシが。

「いらっしゃいませ、冒険者様!」

 <ギルド>でクエスト完了の報告を済ませた後、<雑貨屋>にやってきた。

「商品の一覧を」
「かしこまりました!」

 視界に購入可能な商品が表示される。
 品数が多い為、ジャンル別にタブ分けされていた。
 その中から<魔法石>の項目を選択する。

 <魔法石>とは、他職のスキルを使えるアイテムだ。
 一律3000ゴールドと、今の俺には割高の消耗品。

 俺は滅多に使わないが、中々便利な代物だ。
 たとえば剣を持った状態で剣士スキル<サザンスラッシュ>に対応した魔法石を使えば、俺でも<サザンスラッシュ>を発動できる。といっても、スキルレベルは1相当なので、価格に見合ったダメージは期待できないが。
 俺の場合、<魔法石>は生産の材料として使用する。

「あったぞ、<ファイアーボールの魔法石>」

 目当ての品が売っていることを確認すると、店主に声をかけて売買画面を閉じることにした。念のため、もう一度素材をチェックしておくことにしようと思ったからだ。

 鍛冶屋スキル<その他の作成クリエイトアザーウェポン>を発動する。
 視界に選択肢が表示された。

『1.レシピを開く 2.新規作成』

 今回は新規作成を選択。

『名前を決めてください』

 最初は武器の名前を入力する。
 視界に表示されたキーボードをカタカタ。

『デザインをイメージしてください』

 次は外見の作成だ。
 目を瞑って、作りたい武器の外見を想像するだけでいい。

『使用風景をイメージしてください』

 外見の後は使い方の決定だ。
 たとえば剣なら、斬っている姿を想像する。
 俺は銃を作るので、射撃模様をイメージした。

『ステータスを決定してください』

 視界に“攻撃力”と“耐久力”の項目が表示される。
 その下には、“使用可能ポイント:9”と書いていた。

 ここでは、武器のスペックを決定する。
 それぞれの項目にポイントを割り振り、好みの武器に仕上げていく。
 銃の場合、耐久力はマガジン数と思えば分かりやすい。
 耐久力0だと、1マガジンを撃ち切ると壊れるわけだ。

 ポイント量はスキルレベルに直結している。
 俺の場合、スキルレベルが9だからポイントも9。
 このスキルを強化するのは、ポイントの増量が理由だ。

 ただ、とにかく全ポイント使用すればいいというわけではない。
 武器が強力になればなるほど、生産に必要な素材が増えるからだ。
 それは生産コストの増加を意味する。
 一番いいのは、敵の強さに見合ったレベルに抑えるということ。

 そうは云っても、今回は遠慮なく全振りする。
 てなわけで、攻撃力5に耐久度4という配分にした。

『ポジティブオプションを決定してください』

 ポジティブオプションとは、攻撃力とは別の強化項目だ。
 もちろん、ここで強烈な条件を付けると、生産コストが増加する。
 コストを考えなければならないわけだ。
 今回は雑魚狩り用なので、それに見合った内容を設定。

『ネガティブオプションを決定してください』

 最後は武器の性能を落とす為の項目だ。
 性能を落とすことにより、生産コストを抑えられるのだ。
 ここで割り切ってガツンと設定できるかが肝になる。
 この項目が強烈だと、強力な武器も安く作成可能になるのだ。

「これでよし」

 全ての項目を終え、プレビューに移る。

====================
【名前】
<AR>アサルトライフル

【説明】
高い連射速度が特徴の遠距離武器

【必要素材】
1.ファイアーボールの魔法石:1個
2.鉄材:10個

【攻撃力】
15×100発

【属性】


【耐久度】


【ポジティブオプション】
一般モンスター:ダメージ+35%

【ネガティブオプション】
修理不可
ボスモンスター:ダメージ-50%
====================

 上から順に眺めていき、問題ないことを確認する。

 その名の通り、今回作るのはアサルトライフルだ。
 トリガーを引き続ける限り連射する全自動フルオート小銃である。
 弾数が多いこともあり、単発の攻撃力は低い。比較対象の例を挙げると、<木の棍棒>の攻撃力は50だ。
 ただ、<木の棍棒>を一度振りきる頃には10発以上の弾丸を発射しているだろうから、ダメージ効率は<AR>の方が遥かに高い。

「材料も問題なし!」

 <魔法石>と<鉄材>は、どちらも雑貨屋で購入可能だ。
 <魔法石>は一律で一個3000ゴールド。
 <鉄材>は一個1000ゴールドである。
 つまり、<AR>の生産コストは1万3000ゴールドだ。
 財布の金を7割近く消費するが、それ以上の価値がある。

『レシピを保存しますか?』

 武器を作るにはレシピが必要になる。
 素材とレシピが揃って、初めて生産できるのだ。
 言い換えると、それらが揃っていれば誰でも生産できる。

 また、レシピは生産時に消費されない。
 一度レシピを入手すれば、後は素材を揃えるだけで何回でも生産可能だ。
 その為、完成品よりもレシピの方が高値で売れることも多い。

 人気商品の場合、売り方はセンスが問われる。
 完成品だけを流してレシピは門外不出にするもよし、レシピをガンガン量産して高利益率を目指すもよし。状況次第で正解が変わるので、どちらが良いとは一概に言えない。

「これで準備は整ったぞ」

 レシピを保存した後、必要素材を購入した。
 インベントリを開き、早速レシピを使用する。

『以下の材料を消費して<AR>アサルトライフルを作成します』

 視界の中央に“はい”と“いいえ”の二択。
 迷うことなくイエス、イエス、イエス!

 こうして、最初の<AR>が誕生した。

 ◇

 武器が出来たらまずは試し撃ちだ!
 そんなわけで、<ギルド>で新たなクエストを受注した。
 ゴブリン退治は既にクリアしたので、明日までは受注できない。
 だから、今回は『オークの討伐』を受注した。
 報酬は5000ゴールドで、最大五体までカウントされる。

 オークとは、ゴブリンを2倍に巨大化したようなモンスターだ。
 ゴブリンとは違い、牙がセイウチみたく飛び出している。
 また、筋骨隆々で、ゴブリンより遥かに醜い顔面が特徴的。

「今回のクエストをクリアされますと、Eランクに昇格となります」
「おう、頑張るよ」
「健闘を祈っております」

 <ギルド>を出た足で目的地に向かう。
 今から向かうのは、ロックハートの北西にある森だ。
 しばらく街道を歩いて西に向かい、途中で北上する。

「この辺りは安全みたいだが、念のために気を抜くなよ」
「「ゴブッ!」」

 俺は作り立ての<AR>を構えながら言った。
 ゴブリンズはすぐ後ろを歩いている。
 <木の棒>はヤンチャなゴブおに持たせていた。

「ゴブお、お前はそれで自分とゴブちゃんを守るように」
「ゴッブゴブ!」
「偉いぞ。俺の試し撃ちが終わって余裕そうなら、ゴブおにもこの武器で敵を倒させてやるからな」
「ゴブー! ゴッブゴブゴブ! ゴブブー!」

 大喜びで<木の棒>を振り回すゴブお。
 その横に居るゴブちゃんが、上目遣いで俺を見てきた。

「ゴブゥ……?」

 ゴブちゃんは「自分も<AR>の試し撃ちをしたい」と訴えているのだ。
 右手の人差し指を咥え、えらく甘えた声を出してくる。

「分かってるよ、ゴブおの後はゴブちゃんにも使わせてやるから」
「ゴブー!」

 承諾されたことで、ゴブちゃんも大興奮。
 ウサギみたいにぴょんぴょんと飛び跳ねだした。

「そろそろ到着だ、大人しくしろよ」
「「ゴブッ!」」

 漆黒の銃身がギラリと輝く。
 なかなかに威圧的で頼もしい。

「オークはどこだ……って探すまでもなくいたな」

 オークの生息している森――通称<オークの森>に入ってすぐ、オークの姿を視認する。全長2メートルを超える巨体をしているだけのことはあり、薄暗い森の中でもハッキリと見えた。

「お前達は周囲を警戒しろ。別のオークが近づいてきたら知らせろよ」
「「ゴブッ」」
「作戦開始だ」

 俺は<AR>の銃口をオークに向けながら近づいていく。
 現在の距離は約150メートル。
 この距離から射撃してもまともなダメージは与えられない。

「死んだら終わりだと思うと、いつもより緊張するな」

 オークなんて、GOなら超が付く程楽勝な敵だった。
 攻撃は凄まじいものの、動きが鈍いので避けやすいのだ。
 さらに巨体なので、こちらの攻撃はバンバン当たる。
 そんな雑魚だが、今では手が震えるくらいには怖い。
 この辺りは慣れだろうな。

「いくぜ」

 オークとの距離が十分に近づく。
 静かに、かつ素早く駆け寄り、残り20メートル。

====================
【名前】オーク
【レベル】13
【HP】400
====================

 これだけ近ければ、万に一つも外すことはない。

「これが<AR>の初舞台だ。オラァ!」

 右の人差し指でトリガーを引く。
 その瞬間、ズドドドドドと<AR>が火を噴いた。
 文字通り、銃口から火の粒が飛んでいるのだ。
 武器の属性が火なので、弾丸が火になっている。

「GAAAAAAAAAAA!」

 弾丸がオークの背中に直撃する。
 こいつの弱点部位は背中、つまりダメージは2倍。
 さらにポジティブオプション補正も乗り、一発約35ダメージ。
 それが外れることなく、ガシガシぶつかっていく。
 オークが悲鳴を上げながら振り向こうとする。
 その間もHPは順調に減っていく。

「やったぜ!」

 結局、オークは振り向く前に灰と化した。

 <AR>を使った初めての戦闘。
 それは、僅か数秒で決着したのだった。
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