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第002話 冒険者
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街に向かう道すがら、ゴブリンを5体ほど蹴散らした。
それにより、エリオの能力がグングンと成長していく。
===============
【名 前】エリオ
【種 族】ミナミコアリクイ
【H P】134
【攻撃力】22
【防御力】24
【敏 捷】13
===============
倒せば倒すほど強くなるのだから気分がいい。
努力が必ずしも報われるので、頑張り甲斐があるものだ。
「さて着いたぞ」
「グァァー」
1時間近く歩いて街に到着した。
遠目に見えているから近いと思ったがとんでもない。
思っていた以上に距離があったので焦ったよ。
「城郭都市<アーガマ>へようこそ、冒険者様」
門番が話しかけてくる。
「(そういえば俺は冒険者なんだったな)」
女神の説明を思い出した。
この世界における俺ことヨウスケは冒険者である。
モンスターの討伐を生業とする自由人……それが冒険者だ。
「どうも。お仕事お疲れ様」
「いえいえ! とんでもございません!」
門番が敬礼してくる。
冒険者というのは敬われる存在らしい。
モンスター退治が平和維持の要になっているのだろう。
「(ところで俺が冒険者だってどうやって分かったんだ……?)」
些末な疑問を浮かべながら、俺は<アーガマ>に入った。
◇
城郭都市<アーガマ>。
ここの街並みは、俺とエリオにそこが日本ではないことを雄弁と物語っていた。草原に佇む城郭都市という時点で、日本的な現実からは大きく逸脱しているが、街の人々もまた日本とは異なっている。人々の大半が日本だとコスプレと言わそうな格好をしており、髪の毛も黒一辺倒ではなくて様々な色をしていた。
「面白れぇなー、この街」
「グァァー♪」
高くても3階までしかない石造りの建物を眺めながら大通りを歩く。
すれ違う人からは「冒険者様、いつもありがとうございます」などと声を掛けられることもちらほら。それが3回ほど続いたところで、いよいよ俺は耐えられなくなり、抱いていた疑問を適当な住民にぶつけてみた。
「なぁ、どうして俺が冒険者だって分かるんだ?」
俺に問われたのは同年代の少年だ。
彼は「んー」と悩んでから「どうしてだろ?」と首を傾げた。
「どうしてかは僕にも分からないけど、貴方が冒険者様だと分かります。おそらく皆そうだと思いますよ。それも皆、女神の思し召しなのかと」
何が女神の思し召しだ。
それでは全く答えになっていないではないか。
理解出来ない回答に「はぁ」と俺は生返事をするのであった。
「(要するに外見的な差異はないわけだ)」
歩きながら自分なりに答えを考える。
住民からは直感的に俺が冒険者だと分かるという。
なんだか変な感じだな、と思いきや――。
「(あ、あいつは冒険者だ)」
俺にも分かった。
前方の露店で武器を見ている人物。
袴を纏い、腰に長い刀を差す無精髭の男だ。
あの男は間違いなく冒険者である。
「(なんで分かったんだろう……たしかに謎だ)」
冒険者かそうでないかは直感的に分かる。
それは本当のことであり、俺にも当てはまった。
「もしかしたら!」
俺は一つの仮説を組み立てた。
地球から転移してきた人間が冒険者なのでは、と。
俺だけが異世界に転移するというのもおかしな話だ。
他の人間も同様に転移していても不思議ではない。
確かめてみることにした。
「なぁ、あんた、冒険者だよな?」
俺は無精髭の男に話しかける。
男は妙な質問に驚くも「そうだぜ」と答えた。
「あんたって、元々は地球に住んでいたのか?」
「はぁ? 何を言っているんだ?」
どうやら地球を知らないようだ。
俺は「悪い、気にしないでくれ」と謝った。
それから、転移自体をしていないのか確かめてみる。
「先に断っておくが、俺には同性愛の気があるわけではない。その上で言うが、あんたには他とは違う妙なオーラを感じたんだ。だから、元々はこの星の人間ではなくて、どこかから転移してきたのかと思ったんだよ」
俺の発言に男は気を良くした。
嬉しそうに「それで地球って変な星から俺が来たと?」と言う。
俺は「本で地球には凄い奴が多いって書いてたからな」と嘘を吐いた。
ますます機嫌を良くした男は「カッカッカ」と大声で笑う。
「そう言ってもらえるのは嬉しいけどよ、俺は生まれも育ちもこの国だぜ。坊主、よかったら今度一緒に酒でも飲もうや。お前もその歳で冒険者をやるなんて立派なもんだ。俺に一杯奢らせてくれよ」
俺は適当に笑って流す。
「悪いがまだ16歳で未成年なんだ。だからお酒は飲めねぇさ」
「なに言ってやがるんだ。15を超えているなら成人だし、酒だって飲めるだろうよ。16で未成年って、変わったこと言いやがるな。坊主こそ地球とかいう星から来たんじゃないか?」
どうやらこの国では15歳以上で成人扱いらしい。
飲酒もその年齢から可能ということだから驚いた。
「俺も地球人なら有りがたかったんだけどな。あいにくすごい力なんざありゃしないさ。さっきだって外のゴブリンと戦うのでいっぱいいっぱいだったよ」
「ハッハッハ! その歳でゴブリンを倒せるだけ大したもんさ! 俺はバトウって言うんだ。C級程度ならソロでクリア出来る腕前だからよ、何かあったらいつでも頼ってきな。世辞で担いでくれたお礼に助けてやるぜ?」
バトウは「じゃあな」と大きな手をこちらに振りながら歩き去っていった。
「C級……。ハッ! 冒険者ランクのことだな。すっかり忘れていた」
新鮮な異世界の空気を味わうのに夢中で忘れていた。
この世界の衣食住や冒険者の過ごし方についてのことを。
俺は「インベントリ」と念じ、所持物の情報を出す。
インベントリは冒険者だけが使える特殊な能力だ。
別の次元にアイテムやお金を保管することが出来るもの。
取り出し自由で、この能力があれば物を持ち放題だ。
「所持金は1,500ゴールドか。問題ないな」
俺はまだお金しか持っていない。
お金は数日分の生活費になりそうな額を保有していた。
「冒険者か……悪くないな」
目的もなくただ高校に通っていた日本時代。
日々に退屈するも、何かを成し遂げるだけの力は無かった。
「この世界ではいっちょ成り上がるか」
気合いを入れる俺。
隣でエリオが「グァァー」と同意するように鳴いた。
それにより、エリオの能力がグングンと成長していく。
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【名 前】エリオ
【種 族】ミナミコアリクイ
【H P】134
【攻撃力】22
【防御力】24
【敏 捷】13
===============
倒せば倒すほど強くなるのだから気分がいい。
努力が必ずしも報われるので、頑張り甲斐があるものだ。
「さて着いたぞ」
「グァァー」
1時間近く歩いて街に到着した。
遠目に見えているから近いと思ったがとんでもない。
思っていた以上に距離があったので焦ったよ。
「城郭都市<アーガマ>へようこそ、冒険者様」
門番が話しかけてくる。
「(そういえば俺は冒険者なんだったな)」
女神の説明を思い出した。
この世界における俺ことヨウスケは冒険者である。
モンスターの討伐を生業とする自由人……それが冒険者だ。
「どうも。お仕事お疲れ様」
「いえいえ! とんでもございません!」
門番が敬礼してくる。
冒険者というのは敬われる存在らしい。
モンスター退治が平和維持の要になっているのだろう。
「(ところで俺が冒険者だってどうやって分かったんだ……?)」
些末な疑問を浮かべながら、俺は<アーガマ>に入った。
◇
城郭都市<アーガマ>。
ここの街並みは、俺とエリオにそこが日本ではないことを雄弁と物語っていた。草原に佇む城郭都市という時点で、日本的な現実からは大きく逸脱しているが、街の人々もまた日本とは異なっている。人々の大半が日本だとコスプレと言わそうな格好をしており、髪の毛も黒一辺倒ではなくて様々な色をしていた。
「面白れぇなー、この街」
「グァァー♪」
高くても3階までしかない石造りの建物を眺めながら大通りを歩く。
すれ違う人からは「冒険者様、いつもありがとうございます」などと声を掛けられることもちらほら。それが3回ほど続いたところで、いよいよ俺は耐えられなくなり、抱いていた疑問を適当な住民にぶつけてみた。
「なぁ、どうして俺が冒険者だって分かるんだ?」
俺に問われたのは同年代の少年だ。
彼は「んー」と悩んでから「どうしてだろ?」と首を傾げた。
「どうしてかは僕にも分からないけど、貴方が冒険者様だと分かります。おそらく皆そうだと思いますよ。それも皆、女神の思し召しなのかと」
何が女神の思し召しだ。
それでは全く答えになっていないではないか。
理解出来ない回答に「はぁ」と俺は生返事をするのであった。
「(要するに外見的な差異はないわけだ)」
歩きながら自分なりに答えを考える。
住民からは直感的に俺が冒険者だと分かるという。
なんだか変な感じだな、と思いきや――。
「(あ、あいつは冒険者だ)」
俺にも分かった。
前方の露店で武器を見ている人物。
袴を纏い、腰に長い刀を差す無精髭の男だ。
あの男は間違いなく冒険者である。
「(なんで分かったんだろう……たしかに謎だ)」
冒険者かそうでないかは直感的に分かる。
それは本当のことであり、俺にも当てはまった。
「もしかしたら!」
俺は一つの仮説を組み立てた。
地球から転移してきた人間が冒険者なのでは、と。
俺だけが異世界に転移するというのもおかしな話だ。
他の人間も同様に転移していても不思議ではない。
確かめてみることにした。
「なぁ、あんた、冒険者だよな?」
俺は無精髭の男に話しかける。
男は妙な質問に驚くも「そうだぜ」と答えた。
「あんたって、元々は地球に住んでいたのか?」
「はぁ? 何を言っているんだ?」
どうやら地球を知らないようだ。
俺は「悪い、気にしないでくれ」と謝った。
それから、転移自体をしていないのか確かめてみる。
「先に断っておくが、俺には同性愛の気があるわけではない。その上で言うが、あんたには他とは違う妙なオーラを感じたんだ。だから、元々はこの星の人間ではなくて、どこかから転移してきたのかと思ったんだよ」
俺の発言に男は気を良くした。
嬉しそうに「それで地球って変な星から俺が来たと?」と言う。
俺は「本で地球には凄い奴が多いって書いてたからな」と嘘を吐いた。
ますます機嫌を良くした男は「カッカッカ」と大声で笑う。
「そう言ってもらえるのは嬉しいけどよ、俺は生まれも育ちもこの国だぜ。坊主、よかったら今度一緒に酒でも飲もうや。お前もその歳で冒険者をやるなんて立派なもんだ。俺に一杯奢らせてくれよ」
俺は適当に笑って流す。
「悪いがまだ16歳で未成年なんだ。だからお酒は飲めねぇさ」
「なに言ってやがるんだ。15を超えているなら成人だし、酒だって飲めるだろうよ。16で未成年って、変わったこと言いやがるな。坊主こそ地球とかいう星から来たんじゃないか?」
どうやらこの国では15歳以上で成人扱いらしい。
飲酒もその年齢から可能ということだから驚いた。
「俺も地球人なら有りがたかったんだけどな。あいにくすごい力なんざありゃしないさ。さっきだって外のゴブリンと戦うのでいっぱいいっぱいだったよ」
「ハッハッハ! その歳でゴブリンを倒せるだけ大したもんさ! 俺はバトウって言うんだ。C級程度ならソロでクリア出来る腕前だからよ、何かあったらいつでも頼ってきな。世辞で担いでくれたお礼に助けてやるぜ?」
バトウは「じゃあな」と大きな手をこちらに振りながら歩き去っていった。
「C級……。ハッ! 冒険者ランクのことだな。すっかり忘れていた」
新鮮な異世界の空気を味わうのに夢中で忘れていた。
この世界の衣食住や冒険者の過ごし方についてのことを。
俺は「インベントリ」と念じ、所持物の情報を出す。
インベントリは冒険者だけが使える特殊な能力だ。
別の次元にアイテムやお金を保管することが出来るもの。
取り出し自由で、この能力があれば物を持ち放題だ。
「所持金は1,500ゴールドか。問題ないな」
俺はまだお金しか持っていない。
お金は数日分の生活費になりそうな額を保有していた。
「冒険者か……悪くないな」
目的もなくただ高校に通っていた日本時代。
日々に退屈するも、何かを成し遂げるだけの力は無かった。
「この世界ではいっちょ成り上がるか」
気合いを入れる俺。
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