上 下
5 / 12

第005話 スキルの習得

しおりを挟む
 最弱武器の『木の剣』といえど、物理攻撃力を素の5倍に押し上げるだけの力はある。それがどれだけ強力なのかは、狩場についてすぐに実感できた。

「おりゃっ!」
「せいでござる!」
「ゴブブーン……」

 前回と違い、今回はあっさりとゴブリンを倒せたのだ。
 たこ殴りではなく、俺と眼鏡岡が互いに一発ずつ繰り出しただけ。

『レベルが2になりました』

 ゴブリンを倒した瞬間、俺達のレベルが上がった。
 視界の上部に薄らとログが流れたのだ。
 これもまたゲームチックである。

「うおっしゃー!」
「ついにきたでござるな!」

 俺達はまたまた大興奮。
 すかさずステータスを確認した。

===============
ステータスポイント:5
===============

 ステータスを強化するポイントが追加されている。
 1レベル上がるごとに5ポイント付与されるみたいだ。
 同様に、スキルポイントが2ポイント付与されていた。

「装備に要求能力がないので、拙者は健康に特化するでござるよ!」
「タンクだからな。それが一番だろう」

 眼鏡岡が悩まず健康に5ポイント全てをぶっ込む。

===============
1.ヤスヒコ
【レベル】2
【状 態】普通
【H P】300/300
【M P】100/100
===============

 PT情報が即座に反映された。
 各種防御力も10から20に跳ね上がっている。

「俺は魔力だな」
「やはり魔法攻撃でいくでござるか」
「スキルを見た限り、それがベストだろう」

 この世界には剣士やウィザードといった職の概念がない。
 剣技から回復、それに攻撃魔法まで、好きなスキルを習得出来る。

 アタッカーをする俺の場合、選択肢は2つだ。
 物理攻撃に特化するか、それとも魔法攻撃に特化するか。
 その中で、俺は悩むことなく魔法攻撃の特化型に決めた。

 理由は、魔法攻撃が広範囲かつ高威力だからだ。
 数の少ない俺達には、各個撃破という手段は向いていない。
 得意とするのは雑魚の乱獲であり、タフなボス級を苦手とする。

「スキルは悩ましいでござるな」
「眼鏡岡は回復とヘイト稼ぎがメインかな?」
「そうなりそうでござる」

 ヘイトとはモンスターの攻撃優先順位を指す。
 強力な攻撃をする者や回復する者が上位になりやすい。
 スキルを使うことで、攻撃対象を自分に移すことが可能だ。
 タンクである眼鏡岡には必須のスキルといえる。

「カス当たりでも被弾する可能性があるから、俺は健康1と魔力4で振っていくことにするよ」
「拙者も次からは魔力を1だけ振るほうが良いかもしれぬでござるな。スキルを見たところ、拙者が予定しているスキルも、効力が魔法攻撃力に依存するみたいでござる」

 スキルを選択すると細かい情報が表示される。
 試しに適当なスキルを確認してみようか。

===============
【名 前】ファイアーボール
【レベル】1
【対 象】単体
【属 性】火
【攻撃力】5
【消 費】MP:5
【C T】5秒
【成長性】攻撃力↑ CT↓ 消費↑
【説 明】対象に向けて火の玉を飛ばす
===============

 これは低位の魔法攻撃スキル『ファイアーボール』だ。
 狙った単体に対して火の玉を飛ばすスキル。
 属性が物理ではないので、魔法攻撃力が適用される。
 CTとはクールタイム……つまり再使用時間のことだ。

 成長性はスキルレベルを上げた時の変化具合を示している。
 そう、スキルにもレベルがあって、強化することが出来るのだ。
 同じスキルにスキルポイントを多く注ぎ込めば、それだけ強力になる。
 このスキルだと、威力と消費MPが上がる反面、CTは減るようだ。
 要するに、強化すればするほど素早く発動出来るわけである。

「只野氏はどの属性を選ぶでござるか?」
「難しいところだよな」

 スキルには様々な属性がある。
 火、水、雷、風、土、光、闇、そして物理。
 属性には得手不得手がある。
 例えば雷属性は水に強い反面、土に弱い。
 土属性の敵に雷属性の攻撃をお見舞いするのはナンセンスだ。

「俺は無属性で行くかな」
「無属性でござるか?」
「数字は微妙だけど、どんな相手にも一定の強さだからな」

 第三の属性『無』。
 得意な属性がない代わりに、苦手な属性もない。
 それだけ見ると良く思えるが、残念な面もあった。
 同じ燃費の他属性スキルと比較すると、火力が見劣りするのだ。

「うーん、拙者は賛同しかねるでござるな」
「ほう、どうしてだ?」
「それならば、2つ属性をあげるほうが良いではござらぬか?」
「そういう考え方もある」

 例えば火属性と光属性に特化するわけだ。
 そうすれば、無属性と同等の汎用性で戦える。
 火を得意とする水属性の敵が出たら、光属性で戦うわけだ。

「でも、2つをあげるなら無属性1本に絞る方がいいだろう」
「どうしてでござる?」
「1個に絞ればそれだけスキルレベルが上げやすいからだよ」
「あぁ……そういうことでござるか」

 多くのスキルは、スキルレベルを上げることで利便性が増す。
 2つを使い分けるより、1つを特化した方がスキルレベルは高い。
 適応力は同じでも、使い勝手の良さには大きな差が生まれるだろう。

「流石は只野氏、考え込んでいるでござるな」
「最初の方向性が今後の成否を決めるからな」
「この世界では勝ち組になるでござるよ」
「その通り。だから慎重にいかないとな」

 スキル画面にはプレビュー機能がついている。
 短いムービーでどのようなスキルか教えてくれるのだ。
 それを見れば、実際の様子がよく分かる。

「うーむ、どうすっかなぁ」
「悩ましいでござるなぁ……」

 俺達は狩場のど真ん中で悩んでいた。
 方向性は決まっていても、覚えるスキルは決まらない。
 別に優柔不断というわけではない。

 異様に多いのだ、スキルの数が。
 ありとあらゆるスキルがずらりと並んでいる。
 その上、最初から好きなスキルを覚えられるときた。
 多くのゲームにある『前提スキル』といった概念はない。
 数が多い上に自由度も半端ないから悩んでしまう。

「よし! 決めた! 俺は【ラカリフサの裁き】を特化するぞ」

 悩んだ結果、俺は答えを出した。
 それが【ラカリフサの裁き】である。

===============
【名 前】ラカリフサの裁き
【レベル】1
【対 象】範囲
【属 性】無
【攻撃力】85
【消 費】MP:55
【C T】30秒
【成長性】攻撃力↑ CT↓ 消費↑ 範囲↑
【説 明】指定範囲に裁きの鉄槌を下す。
     敵の数が少ない程ダメージが上がる。
===============

 このスキルの特徴は、敵の数で威力が変わる点だ。
 敵が少なければ少ない程に威力が強化されていく。
 俺達が苦手とするタフな敵との戦闘に強いのだ。
 その反面、雑魚の乱獲に関しては見劣りしてしまう。

「予想外のチョイスをしたでござるな」
「汎用性をとことん追求したまでさ。雑魚は火力特化でどうにかなるだろ?」
「たしかにそうでござるな」

 俺達が苦戦するとしたらそれはボス戦だ。
 雑魚がどれだけ群れようが、まとめて始末すればいい。
 だから、俺は【ラカリフサの裁き】に決めた。

「只野氏が攻めた選択をしたので、拙者は無難に【ヘイトアップ】と【ヒーリング】を覚えておくでござる」

 【ヘイトアップ】はヘイトを稼ぐ為のスキルだ。
 【ヒーリング】はゲームの定番である回復スキル。

「これでステータスとスキルの両方を上げ終えたな。無理のない範囲でガンガン狩っていくぞ。レベルが上がって戦闘にも慣れたら強敵をしばきにいこう」
「了解でござる!」

 どこかの世界の片隅で、俺達は順調に成長していくのであった。




――――――――――――――――――
現時点のステータス

===============
【名 前】マサト
【年 齢】17
【種 族】人間
【レベル】2

【筋 力】5
【敏 捷】5
【健 康】6
【魔 力】9

【H P】180
【M P】180

【攻撃力】
├物理攻撃力:25
└魔法攻撃力:18

【防御力】
├物理防御力:12
└魔法防御力:12

【装備】
 ├武器:木の剣
 └防具:布の服

【スキル】
 └ラカリフサの裁き:2
===============
【名 前】ヤスヒコ
【年 齢】17
【種 族】人間
【レベル】2

【筋 力】5
【敏 捷】5
【健 康】10
【魔 力】5

【H P】300
【M P】100

【攻撃力】
├物理攻撃力:25
└魔法攻撃力:10

【防御力】
├物理防御力:20
└魔法防御力:20

【装備】
 ├武器:木の剣
 └防具:布の服

【スキル】
 ├ヘイトアップ:1
 └ヒーリング:1
===============
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

落ちこぼれの烙印を押された少年、唯一無二のスキルを開花させ世界に裁きの鉄槌を!

酒井 曳野
ファンタジー
この世界ニードにはスキルと呼ばれる物がある。 スキルは、生まれた時に全員が神から授けられ 個人差はあるが5〜8歳で開花する。 そのスキルによって今後の人生が決まる。 しかし、極めて稀にスキルが開花しない者がいる。 世界はその者たちを、ドロップアウト(落ちこぼれ)と呼んで差別し、見下した。 カイアスもスキルは開花しなかった。 しかし、それは気付いていないだけだった。 遅咲きで開花したスキルは唯一無二の特異であり最強のもの!! それを使い、自分を蔑んだ世界に裁きを降す!

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界に転生した俺は元の世界に帰りたい……て思ってたけど気が付いたら世界最強になってました

ゆーき@書籍発売中
ファンタジー
ゲームが好きな俺、荒木優斗はある日、元クラスメイトの桜井幸太によって殺されてしまう。しかし、神のおかげで世界最高の力を持って別世界に転生することになる。ただ、神の未来視でも逮捕されないとでている桜井を逮捕させてあげるために元の世界に戻ることを決意する。元の世界に戻るため、〈転移〉の魔法を求めて異世界を無双する。ただ案外異世界ライフが楽しくてちょくちょくそのことを忘れてしまうが…… なろう、カクヨムでも投稿しています。

処理中です...