上 下
12 / 15

012 ランク補正の真骨頂

しおりを挟む
 ゴブリンはネネイを押し倒し、馬乗りになった。

「ゴブゥ!」

 更に、右の拳をネネイに向かって振り下ろす。

 ネネイは咄嗟に腕を上げて、籠手でガードした。

 先日、リーネに教わったダメージ仕様で考えてみる。

 たしかゴブリンは攻撃力と防御力の両方が高くても5前後。

 一方、ネネイの攻撃力と防御力はどちらも15。

 ネネイは攻撃と防御の両面において、ランクが1段階上がる。

 デフォルトの防御ランクがFだから、Eになるわけだ。

 そして、ゴブリンに攻撃ランクはF。

 つまり――。

「あうー……って、痛くないなの!?」

 大したダメージにはならない。

 ランク差によって、ダメージが大きく軽減された。

 籠手で防いでいるから、同ランクでも大差ないダメージだったはず。

 それがランク補正込みだと、ノーダメージと言えるだろう。

「ネネイ! 反撃だ!」

「はいなの!」

 俺に声に反応して、ネネイが反撃する。

 マウントを取られている状態では、流石に剣を振れない。

 ネネイは右手に剣を持ったまま、左手でゴブリンの脇腹を殴った。

 可愛らしいネネイの左フックが炸裂する。

「ゴヴォ!!!!!!!」

 ゴブリンが凄まじい勢いで横に吹っ飛んだ。

 まるで助走を付けて蹴られたサッカーボールのよう。

「ゴヴォッッッ!」

 背中から木に激突して、胃液と血の混ざったものを吐くゴブリン。

 前回の死闘とは違い、可愛いワンパンでこの始末。

 ランク差補正、やばすぎだろ。

「ネネイ、トドメを!」

「任せてなの!」

 ネネイは起き上がり、ゴブリンに突っ込む。

 今度はこけることなく、木の剣を振り抜いた。

 剣はとても木製とは思えない切れ味で、ゴブリンをスパッと斬る。

 ゴブリンは絶命し、光となって、朕ランスに吸収された。

 ◇

 今日はネネイと共に狩りをした。

 ネネイが敵を倒した場合、敵レベルの1割に相当するCPが入る。

 下限が1ポイントなので、ゴブリンやスライムのレベルは10すらないが、ネネイがそれらの敵を倒す度に1ポイントが加算された。

 流石に、ネネイに任せきりだと、1日ではCPを貯めきれない。

 だから、時折自分でも倒しつつ、ネネイの戦いを見守った。

「これなら1人でも問題なさそうだな」

「ふふーんなの! ネネイ、強いなの!」

「おう、ネネイは強いぞ」

「えへへなの」

 10回程度の戦いを見た結果、余裕だと判断した。

 馬乗りになられるなど、窮地に見える場面はあるが、ランク差補正が大きい。

 多少の劣勢は、ランク差補正の前では無力で、ケロッとひっくり返せる。

 だから、ネネイを1人で戦わせても問題ない。

「子供をもっと増やすのもアリかもなぁ」

 ネネイの戦いを見ていて、そう思った。

 たくさんの子供を作って狩りに行かせれば、自分でCPを稼がなくて済む。

 獲得CPの下限が1だから、敵をゴブリンやスライムのような雑魚に絞り、最低限の強さで乱獲すれば効率的だ。

 そして、俺はコクーンに引きこもり、外見と内面の両方に秀でた嫁達を侍らせ、ハーレムを満喫する。

 想像すると、めちゃくちゃ良いように思えてくる。

 最初は軽く思っただけだが、気がつくと真面目に計算していた。

 ネネイレベルの子供を1人こしらえるのに必要なCPは、生殖で100、育成で1000、装備で100の合計1200だ。

 コクーンでイチャコラする方が大事だから最低限の働きしかしていないが、その気になれば日に600は貯められる。

 そう考えた場合、2日に1回はネネイと同じ強さの子供が誕生するわけだ。

 ここまで考えた時、今度は面倒くさくなってきた。

 我ながら思う。流石は元ニートだな、と。忍耐力が皆無だ。

「おとーさんが壊れちゃったなの! ぶつぶつ呪文を唱えているなの!」

 いつの間にやら、ネネイが俺の回りをクルクル走り回っていた。

 大変なの、大変なの、と連呼している。

 お前の方が大変だろ、と思いクスクスと笑った。

「帰るか」

「帰るなの!」

 ネネイが「はいなの!」と手を差し出してくる。

 手を繋ぎたいのだろう。

 俺は「おう」と言い、ネネイの要望に応えた。

「ぐふふなのー」

 嬉しさから変な笑い方をしているネネイと共に、コクーンに帰還した。

 ◇

 コクーンに戻ると、今日はエリスを侍らせた。

 ネネイの前でも気にせず誘ってきた。よほど飢えているようだ。

 わずか1日リーネと過ごしただけでこの飢えようは……調教の賜物だな。

「カイト、リーネにも、こんなことをさせているの?」

 いつもの如く、エリスは、ベッドサイドで座る俺に尽くしていた。

 俺の前で跪き、色々と頑張っている。

 俺はそれを、汚い笑みをこびりつかせて眺めていた。

「いいや、リーネには違うご奉仕をしてもらっているよ」

「そう」

「どうした? 気にくわないのか?」

「逆。他の女と違うと知って、安心した」

「適材適所ってやつさ」

 手招きするようなジェスチャーをエリスに見せる。

 それだけで、エリスは俺の望む動きを行った。

 服を脱ぎ、俺の太ももの上に腰を下ろし、四肢を絡めてくる。

 両脚で腰をガッチリとロックし、両腕は頭の後ろでクロスさせてきた。

 そして、淫らな音を立てながら、何度も何度も舌を絡めてくる。

 クチュクチュとかチュパチュパと言った音が、俺の感度を高めた。

 ◇

 エリスと楽しんだ後は、CPの使用に取りかかる。

 今回は久しぶりに〈解放モード〉で嫁を増やすつもりだ。

 新しい嫁が欲しくなってきたし、何より、もっとハーレム感を味わいたい。

 2人以上の嫁と同時にイチャイチャしたいのだ。

「今後は嫉妬の頻度が増えるぜ?」

「私ばっかり選びたくなるよう、もっと頑張る」

 地下へ行く前、エリスとそんな会話を行った。

「人間にエルフときたら、次はいよいよ獣人でもいっちゃうかぁ」

 独り言を呟きながら、地下を徘徊する。

 侍らす嫁を選ぶことほど楽しいものはない。

 特にこの世界の嫁は、バリエーションに富んでいて悩ましい。

 ひとえに獣人といっても、犬、猫、狐、狼、その他、実に様々だ。

 どの嫁も甲乙付け難いから、あみだくじでも作って決めようかな。

「とりあえず先にスキルの発動だけ行っておくか」

 ……と、スキルを発動しようとして、問題が起きた。

「あれ? 発動しないぞ?」

 CPが100あるのに、ユニークスキル〈解放モード〉が発動しないぞ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

迷い人 ~異世界で成り上がる。大器晩成型とは知らずに無難な商人になっちゃった。~

飛燕 つばさ
ファンタジー
孤独な中年、坂本零。ある日、彼は目を覚ますと、まったく知らない異世界に立っていた。彼は現地の兵士たちに捕まり、不審人物とされて牢獄に投獄されてしまう。 彼は異世界から迷い込んだ『迷い人』と呼ばれる存在だと告げられる。その『迷い人』には、世界を救う勇者としての可能性も、世界を滅ぼす魔王としての可能性も秘められているそうだ。しかし、零は自分がそんな使命を担う存在だと受け入れることができなかった。 独房から零を救ったのは、昔この世界を救った勇者の末裔である老婆だった。老婆は零の力を探るが、彼は戦闘や魔法に関する特別な力を持っていなかった。零はそのことに絶望するが、自身の日本での知識を駆使し、『商人』として新たな一歩を踏み出す決意をする…。 この物語は、異世界に迷い込んだ日本のサラリーマンが主人公です。彼は潜在的に秘められた能力に気づかずに、無難な商人を選びます。次々に目覚める力でこの世界に起こる問題を解決していく姿を描いていきます。 ※当作品は、過去に私が創作した作品『異世界で商人になっちゃった。』を一から徹底的に文章校正し、新たな作品として再構築したものです。文章表現だけでなく、ストーリー展開の修正や、新ストーリーの追加、新キャラクターの登場など、変更点が多くございます。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双

たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。 ゲームの知識を活かして成り上がります。 圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。

チート幼女とSSSランク冒険者

紅 蓮也
ファンタジー
【更新休止中】 三十歳の誕生日に通り魔に刺され人生を終えた小鳥遊葵が 過去にも失敗しまくりの神様から異世界転生を頼まれる。 神様は自分が長々と語っていたからなのに、ある程度は魔法が使える体にしとく、無限収納もあげるといい、時間があまり無いからさっさと転生しちゃおっかと言いだし、転生のため光に包まれ意識が無くなる直前、神様から不安を感じさせる言葉が聞こえたが、どうする事もできない私はそのまま転生された。 目を開けると日本人の男女の顔があった。 転生から四年がたったある日、神様が現れ、異世界じゃなくて地球に転生させちゃったと・・・ 他の人を新たに異世界に転生させるのは無理だからと本来行くはずだった異世界に転移することに・・・ 転移するとそこは森の中でした。見たこともない魔獣に襲われているところを冒険者に助けられる。 そして転移により家族がいない葵は、冒険者になり助けてくれた冒険者たちと冒険したり、しなかったりする物語 ※この作品は小説家になろう様、カクヨム様、ノベルバ様、エブリスタ様でも掲載しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います

霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。 得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。 しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。 傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。 基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。 が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。

異世界転移で無双したいっ!

朝食ダンゴ
ファンタジー
交通事故で命を落とした高校生・伊勢海人は、気が付くと一面が灰色の世界に立っていた。 目の前には絶世の美少女の女神。 異世界転生のテンプレ展開を喜ぶカイトであったが、転生時の特典・チートについて尋ねるカイトに対して、女神は「そんなものはない」と冷たく言い放つのだった。 気が付くと、人間と兵士と魔獣が入り乱れ、矢と魔法が飛び交う戦場のど真ん中にいた。 呆然と立ち尽くすカイトだったが、ひどい息苦しさを覚えてその場に倒れこんでしまう。 チート能力が無いのみならず、異世界の魔力の根源である「マナ」への耐性が全く持たないことから、空気すらカイトにとっては猛毒だったのだ。 かろうじて人間軍に助けられ、「マナ」を中和してくれる「耐魔のタリスマン」を渡されるカイトであったが、その素性の怪しさから投獄されてしまう。 当初は楽観的なカイトであったが、現実を知るにつれて徐々に絶望に染まっていくのだった。 果たしてカイトはこの世界を生き延び、そして何かを成し遂げることができるのだろうか。 異世界チート無双へのアンチテーゼ。 異世界に甘えるな。 自己を変革せよ。 チートなし。テンプレなし。 異世界転移の常識を覆す問題作。 ――この世界で生きる意味を、手に入れることができるか。 ※この作品は「ノベルアップ+」で先行配信しています。 ※あらすじは「かぴばーれ!」さまのレビューから拝借いたしました。

異世界で神様になってたらしい私のズボラライフ

トール
恋愛
会社帰り、駅までの道程を歩いていたはずの北野 雅(36)は、いつの間にか森の中に佇んでいた。困惑して家に帰りたいと願った雅の前に現れたのはなんと実家を模した家で!? 自身が願った事が現実になる能力を手に入れた雅が望んだのは冒険ではなく、“森に引きこもって生きる! ”だった。 果たして雅は独りで生きていけるのか!? 実は神様になっていたズボラ女と、それに巻き込まれる人々(神々)とのドタバタラブ? コメディ。 ※この作品は「小説家になろう」でも掲載しています

処理中です...