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第015話 変わり者の大賢者
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近づいてくる白衣の女。
背はそれほど高くなく、髪はロングの黒色。
見た目はお姉さんといった感じで、ポケットに手を突っ込んでいる。
女は目の前までくると、俺達を見て言った。
「奴隷商をボコボコにして解放した奴隷に、大量のゴブリンまでいる。いやはや、実に面白い場所だなぁ、ここは」
よく分からない反応だ。
分かっているのは敵意がないことくらい。
皆を代表して俺が尋ねた。
「あんたは何者だ? ここに何か用かい?」
女が「よくぞ聞いてくれた!」と声を大にする。
まさかの質問待ちだったとは。気づきもしなかった。
「私の名はユナハ。何を隠そう大賢者だ!」
「「「…………」」」
沈黙する俺達。
ユナハは「驚かないの!?」と驚いた。
「大賢者と言われてもピンッと来ないんだよなぁ……」
「なるほど、よかろう。ならば力を見せてしんぜよう!」
ユナハが右手を挙げる。
「雷よ! 私に力を!」
すると――ユナハの手から炎の玉が現れた。
「雷じゃないんかい!」
思わず突っ込む俺。
ユナハは「失敬、間違った」とすました顔で言う。
本当に間違ったらしく、炎の玉を消して雷の玉を召喚した。
「これが大賢者の能力さ! どうだね!」
俺達は素直に「おお」と感心し、拍手する。
ゴブリン達もゴブゴブ言いながら拍手していた。
「で、その大賢者がどうしてここに?」
いよいよ本題に入る。
大賢者様が俺達に何の用なのか。
「見ての通り私は凄腕の大賢者。で、その力で世界を眺めていたところ、君たちが面白いことをしているのを発見したのだ! 無から有を生み出す君の能力は実に興味深い。それに底知れぬ強さを持ったお姉さんも」
ユナハが一人一人褒めていく。
その後、「だからだね」と用件を言った。
「私も仲間に加えてほしいのだ!」
どうやら仲間になりたいらしい。
回りくどい人だ。それならそうと言えばいいのに。
「分かっている。ダメだよな。こんな得たいのしれない大賢者なんてさ。仲間にしたくないって気持ちは分かるよ。人を簡単に信じるなっていうのは親から教わることだもんね。でもね、私は――」
「いいよ、仲間で。これからよろしくね、ユナハ」
「っていいんかい!」
今度はユナハが突っ込んだ。
「別にいいよ。来る者拒まず去る者追わずさ。仲間が増えるのはこちらにしたってありがたいからね。それにユナハはなかなか強そうだ。何かあった際にはアリシアと並んで戦力となるんじゃないか」
「なるほど、用心棒を兼ねて受け入れてくれるわけだね!」
「そんなところだ。まだまだ発展途上だし、色々と働いてもらうよ」
「もちろん! それが私の望みだからね!」
そんなわけで、ユナハが仲間になった。
大賢者とのことだが、その実力は定かではない。
しかし、炎や雷の玉を自在に操れるのだから相当だ。
「私の自己紹介は以上として、皆のことを教えてくれたまえ!」
「あぁ、そうだったな」
俺は順に紹介していった。
リア、ワンちゃんズ、ゴブリンズ、アリシア、最後に俺。
「よく分かった! ありがとう! ではリュート君とアリシア君のことについて詳しく教えてくれないかい? 君たちは異次元の能力を持っているだろう!?」
アリシアの強さと俺の【クラフト】について知りたいようだ。
「なら俺のスキル【クラフト】から説明するよ。それがアリシアの強さに対する答えにもなるからね」
「ほほう! 楽しみだ! この歳になっても新たな知識を得られるとは!」
「この歳って、あんたまだ20代後半だろ」
「ふふ、私は大賢者だぞ! 見た目で判断するのは早計だ!」
「ならババアかよ」
「ババアじゃないやい! これでも28歳だよ!」
「見たまんまじゃねーかよ!」
やれやれ、大賢者とやらは変な性格をしていやがる。
俺は「それでだな」と話を戻し、ユナハの質問に答えた。
「――とまぁ、そんなわけだ」
「なるほど! アリシア君も【クラフト】で生み出したと!」
ユナハがアリシアの周りをちょこちょこ動く。
360度あらゆる確度からアリシアを眺めている。
「すごいものだ、【クラフト】とは」
「まぁな。俺も自分でそう思うよ」
「はっはっは! 素直でよろしい!」
話が終わった。
と、思いきやまだ続く。
「ではお礼に私の凄さをもう少し見せよう!」
「ほう?」
ユナハが海に近づいていく。
波が足にかする手前で止まった。
「一度しかしないから、海をよく見ているのだぞ!」
海に向けて何かをするらしい。
俺達も海に近づき、固唾を飲んで見守る。
「大賢者がその気になれば――」
ユナハが右手を挙げる。
「こんなことも出来る!」
そう言うと、ユナハは右手を下ろした。
その瞬間、信じられないことが起きる。
「「「おおおお!」」」
海が割れたのだ。
パックリと、半分に。
「すげぇ……」
割れた海が大慌てで戻っていく。
空白箇所に向かって、我先にと海水が突っ込む。
「今後ともよろしく! 皆!」
28歳の大賢者ユナハ。
変人だが、その実力は紛れもなく本物だ。
性格も含めて、俺達の仲間にピッタリな逸材である。
こうして、また少し賑やかになるのであった。
背はそれほど高くなく、髪はロングの黒色。
見た目はお姉さんといった感じで、ポケットに手を突っ込んでいる。
女は目の前までくると、俺達を見て言った。
「奴隷商をボコボコにして解放した奴隷に、大量のゴブリンまでいる。いやはや、実に面白い場所だなぁ、ここは」
よく分からない反応だ。
分かっているのは敵意がないことくらい。
皆を代表して俺が尋ねた。
「あんたは何者だ? ここに何か用かい?」
女が「よくぞ聞いてくれた!」と声を大にする。
まさかの質問待ちだったとは。気づきもしなかった。
「私の名はユナハ。何を隠そう大賢者だ!」
「「「…………」」」
沈黙する俺達。
ユナハは「驚かないの!?」と驚いた。
「大賢者と言われてもピンッと来ないんだよなぁ……」
「なるほど、よかろう。ならば力を見せてしんぜよう!」
ユナハが右手を挙げる。
「雷よ! 私に力を!」
すると――ユナハの手から炎の玉が現れた。
「雷じゃないんかい!」
思わず突っ込む俺。
ユナハは「失敬、間違った」とすました顔で言う。
本当に間違ったらしく、炎の玉を消して雷の玉を召喚した。
「これが大賢者の能力さ! どうだね!」
俺達は素直に「おお」と感心し、拍手する。
ゴブリン達もゴブゴブ言いながら拍手していた。
「で、その大賢者がどうしてここに?」
いよいよ本題に入る。
大賢者様が俺達に何の用なのか。
「見ての通り私は凄腕の大賢者。で、その力で世界を眺めていたところ、君たちが面白いことをしているのを発見したのだ! 無から有を生み出す君の能力は実に興味深い。それに底知れぬ強さを持ったお姉さんも」
ユナハが一人一人褒めていく。
その後、「だからだね」と用件を言った。
「私も仲間に加えてほしいのだ!」
どうやら仲間になりたいらしい。
回りくどい人だ。それならそうと言えばいいのに。
「分かっている。ダメだよな。こんな得たいのしれない大賢者なんてさ。仲間にしたくないって気持ちは分かるよ。人を簡単に信じるなっていうのは親から教わることだもんね。でもね、私は――」
「いいよ、仲間で。これからよろしくね、ユナハ」
「っていいんかい!」
今度はユナハが突っ込んだ。
「別にいいよ。来る者拒まず去る者追わずさ。仲間が増えるのはこちらにしたってありがたいからね。それにユナハはなかなか強そうだ。何かあった際にはアリシアと並んで戦力となるんじゃないか」
「なるほど、用心棒を兼ねて受け入れてくれるわけだね!」
「そんなところだ。まだまだ発展途上だし、色々と働いてもらうよ」
「もちろん! それが私の望みだからね!」
そんなわけで、ユナハが仲間になった。
大賢者とのことだが、その実力は定かではない。
しかし、炎や雷の玉を自在に操れるのだから相当だ。
「私の自己紹介は以上として、皆のことを教えてくれたまえ!」
「あぁ、そうだったな」
俺は順に紹介していった。
リア、ワンちゃんズ、ゴブリンズ、アリシア、最後に俺。
「よく分かった! ありがとう! ではリュート君とアリシア君のことについて詳しく教えてくれないかい? 君たちは異次元の能力を持っているだろう!?」
アリシアの強さと俺の【クラフト】について知りたいようだ。
「なら俺のスキル【クラフト】から説明するよ。それがアリシアの強さに対する答えにもなるからね」
「ほほう! 楽しみだ! この歳になっても新たな知識を得られるとは!」
「この歳って、あんたまだ20代後半だろ」
「ふふ、私は大賢者だぞ! 見た目で判断するのは早計だ!」
「ならババアかよ」
「ババアじゃないやい! これでも28歳だよ!」
「見たまんまじゃねーかよ!」
やれやれ、大賢者とやらは変な性格をしていやがる。
俺は「それでだな」と話を戻し、ユナハの質問に答えた。
「――とまぁ、そんなわけだ」
「なるほど! アリシア君も【クラフト】で生み出したと!」
ユナハがアリシアの周りをちょこちょこ動く。
360度あらゆる確度からアリシアを眺めている。
「すごいものだ、【クラフト】とは」
「まぁな。俺も自分でそう思うよ」
「はっはっは! 素直でよろしい!」
話が終わった。
と、思いきやまだ続く。
「ではお礼に私の凄さをもう少し見せよう!」
「ほう?」
ユナハが海に近づいていく。
波が足にかする手前で止まった。
「一度しかしないから、海をよく見ているのだぞ!」
海に向けて何かをするらしい。
俺達も海に近づき、固唾を飲んで見守る。
「大賢者がその気になれば――」
ユナハが右手を挙げる。
「こんなことも出来る!」
そう言うと、ユナハは右手を下ろした。
その瞬間、信じられないことが起きる。
「「「おおおお!」」」
海が割れたのだ。
パックリと、半分に。
「すげぇ……」
割れた海が大慌てで戻っていく。
空白箇所に向かって、我先にと海水が突っ込む。
「今後ともよろしく! 皆!」
28歳の大賢者ユナハ。
変人だが、その実力は紛れもなく本物だ。
性格も含めて、俺達の仲間にピッタリな逸材である。
こうして、また少し賑やかになるのであった。
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