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第006話 水道トラブル②

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「リュート様……大丈夫ですか?」
「大丈夫だ。しばし待たれよ」

 ドヤ顔で解説していた手前、恥ずかしくて仕方ない。
 真っ赤な顔を冷ましながら、俺は落ち着いて対応策を考えた。

 トイレの仕様が地球と違うことはたしかだ。
 その理由は、タンクの中の構造にある。
 地球のタンクには、色々とパーツが付いていた。
 ところが目の前の空タンクの中には何もない。
 地球仕様と違うのならば――。

「俺のイメージによる産物だ。単細胞な仕様でいてくれよ……!」

 少ないCPで水を大量に作り、タンクに水を溜める。
 タンクの8割を水で埋めたところで、ハンドルを回してみた。

 ジャー!
 聞き慣れた水洗の音を伴いながら、便器を激しい水流が襲い掛かる。
 よかった、この世界のトイレは俺の脳みそと同レベルの仕様だ。

「とまぁ! こんな感じで! 水が流れるわけさ!」

 俺は再びドヤ顔を浮かべた。
 リアが「おおー!」と感動する。

「そして、ここに設置してあるトイレットペーパー。こいつで尻を拭けば清潔感はひときわに保たれる。どうだ、驚きすぎて恐れおののいたかな?」
「はい! これほど便利なトイレは見たことがありません! まさにトイレの革命です! 流石です、リュート様!」

 どうにか難を逃れた。
 俺はもう一度タンクを開けて中を確認する。
 消費量が想像よりも多い。この減り方だと、後15回程度で空になる。

「あっ、トイレがこのザマということは!」

 俺は慌てて浴室に駆け込んだ。
 風呂に備わっている蛇口を捻るが、お湯どころか水すら出ない。
 お湯用と冷水用の蛇口を用意したというのに、どちらも無反応である。

「この様子だとキッチンも……」

 案の定であった。
 キッチンの蛇口からも水が出てこない。

「ぐぬぬ……! こんなはずでは……!」

 これではモデルルームもいいところだ。
 俺がこの先も住む家としては、不便極まりない。
 トイレの水を逐一補充するというのも面倒だ。

「いや、待てよ……」

 はたと閃く。名案を。
 きょとんとするリアとアリシア。
 そんな二人を放置して思考を巡らす俺。
 考えた結果、試す価値があると判断した。

「悪いが一度外に出よう」
「かしこまりました」
「はい! リュート様!」

 家の外に出て、側面に回り込む。
 そこで【クラフト】に取りかかった。
 家の壁に取り付いた貯水タンクを想像する。
 効果は、家にある全ての水道に行き渡らせるというもの。
 地球の常識だと、面倒な工事を伴わなければ不可能な代物。
 しかし、この世界であれば――。

===============
石材:10個
===============

 可能であった。
 流石は女神から付与されたスキル。
 平時から神なのに、緊急時は尚更に神スキルだ。
 ご都合主義もいいところの調整力を発揮してくれるぜ。

「すまないが手分けしてその辺の小石を集めてくれ。50個程度あれば事足りると思うから、目安はその程度で」
「かしこまりました、マスター」
「了解です! 任せて下さい、リュート様!」

 日が暮れていく中、二人が小石を集めてくれる。
 その間、俺は貯水タンクの効果を確かめていた。
 残り少ないCPを惜しみなく使って水を作り、タンクに注ぐ。
 タンクを満たしたところで、家の中に入って確かめてみた。

「キッチンよーし!」

 まずはキッチンの水が対応していることを確認。
 次はトイレに行って、様子を確認することにした。

「お、問題なさそうだな」

 入ってすぐに気づく。
 最初と違い、便器に水が張ってあったからだ。
 念のためにタンクの中を確認して、問題ないことを確信する。
 先ほどよりも水の量が増えていたのだ。
 残す山場は浴室だけである。

「水よーし! そして、お湯は……」

 緊張しながらお湯用の蛇口を捻る。
 水自体は通っているようで、こちらも反応した。
 あとは温度だが……。

「冷たッ! クソッ、しっぱ――おっ、暖かくなってきた」

 成功だ。
 驚いたことにお湯が出てくれた。
 水は面倒なくせに、ガスはなくても問題ないようだ。

 そういえば、キッチンにはガスコンロがあったな。
 試しておこう。ということで、もう一度キッチンへ移動。
 コンロの動かしてみると、何の問題もなく火が点いた。

「これで無事に完了だな」

 ウキウキしながらキッチンの蛇口を捻る。
 出てきた水を手にためて、顔を洗ってみた。
 なかなかに気持ちいい。

「――――!」

 ところが、問題はまだ残っていた。
 蛇口から水がでなくなったのだ。
 外の貯水タンクが空になった。

「くぅ!」

 水周りの苦戦はもうしばらく続きそうだ。
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