破棄された婚約の行方は

たまゆら

文字の大きさ
上 下
2 / 2

第2話:秘密の夜と新たな仲間

しおりを挟む
夜になり、私はリチャードの言葉を思い出して、秘密のパーティーに足を運んだ。

目的地は城の地下にある隠れた部屋で、その入り口は一見ただの壁にしか見えなかった。

リチャードに導かれ、私は隠し扉をくぐり、秘密のパーティーの会場に入った。

目の前には、豪華な装飾が施された広間が広がっていた。大きなシャンデリアが天井からぶら下がり、煌びやかな光で部屋を照らしていた。

そこには、城の中で働くさまざまな人々が集まっており、和気藹々と楽しんでいた。

リチャードは私に手を振り、ニッコリ笑った。

「エリーゼ様、いらっしゃいませ。どうぞお楽しみください。公爵家の令嬢であるあなたが、ここで自由に楽しめるよう、私たちはこのパーティーを企画しました」

彼の言葉に、私は少し緊張しながらも、会場の中へ足を踏み入れた。

そこで、私はまた新たな出会いを果たした。

彼の名はトーマス。褐色の肌と黒い髪、そして瞳は深い琥珀色で、端正な顔立ちをしていた。

「はじめまして、エリーゼ様。私はトーマスと申します。こちらで書物を担当しております」

彼は丁寧に一礼し、自己紹介をした。

「トーマスさん、はじめまして。私も書物が大好きなんですよ」

私は彼に興味を持ち、自分の趣味を明かした。

「それは素晴らしいですね。この城にはたくさんの珍しい書物がありますので、ぜひ一緒に読みましょう」

彼は誠実な表情で提案してくれた。

私はトーマスの瞳に、彼が私に抱く淡い恋心を感じることができた。それと同時に、リチャードの視線も私に向けられているのが分かった。



その後、私はリチャードとトーマスと親しくなり、城での生活が一気に楽しくなった。

ある日、リチャードは私を城内で開催される舞踏会に誘った。

「エリーゼ様、今晩の舞踏会に私と一緒に参加しませんか?」

私は彼の誘いに喜んで応じた。

「もちろん、リチャード様。喜んでお付き合いします」

舞踏会では、リチャードと共に踊り、楽しいひと時を過ごした。

「エリーゼ様、お手をお借りしてもよろしいですか?」

「ええ、もちろんです」

彼の笑顔はいつも私を癒し、何か悩みがある時には親身になって相談にのってくれた。

「エリーゼ様、どうかお悩みごとがあれば、私にお話ししてください。力になれることがあれば、喜んでお手伝いします」

一方、トーマスとは書物を通じてさまざまな話題で意気投合した。

ある日、彼と一緒に図書室で読書をしていると、彼が興味深げに私に話しかけてきた。

「エリーゼ様、この本はとても興味深いです。こんなにも奥深い世界があるなんて、知りませんでした」

私も彼の言葉に共感し、熱心に会話を楽しんだ。

「そうですね、トーマス様。私もこの本には夢中になってしまいます」

時には城の庭で一緒にお茶を楽しんだり、夕暮れ時には城壁の上で世間話をすることもあった。

「エリーゼ様、こんなに美しい夕陽を見るのは久しぶりですね。そして、こんな素晴らしい景色を共有できるのは光栄です」

「私も同じ気持ちです、トーマス様」

そんな中、私はリチャードとトーマスの心の中に、私への恋心が芽生えていることに気付いた。



ある日、城の中庭でリチャードと会ったとき、彼が私に告げた言葉で、私の心は揺れ動くことになった。

「エリーゼ様、実は私、あなたに伝えたい気持ちがあるのです」

彼の言葉に、私は驚いた。彼は緊張している様子で、少し顔を赤らめていた。

リチャードは深呼吸をして、改めて私に話しかけた。

「エリーゼ様、私はあなたのことが大好きです。どうか、私の気持ちを受け入れていただけませんか?」

私は彼の告白に心が動かされると同時に、トーマスのことも頭によぎった。

その時、中庭の隅でトーマスがこちらを見ているのに気付いた。彼の表情はどこか寂しげで、私は彼の気持ちを察した。

私はリチャードに微笑んで答えた。

「リチャード様、私もあなたと過ごす時間がとても楽しいです。しかしこの気持ちをどう受け止めるべか、今はまだ分からないのです。もう少し時間をください」

リチャードは少し残念そうにしながらも、私の気持ちを尊重してくれた。

「もちろんです、エリーゼ様。お時間をいただくことに同意します。どんな結果であっても、私はあなたを支え続けます」

彼の言葉に感謝し、私はリチャードに礼を言った。

その後、私はトーマスに近づき、彼がどうして中庭でひとりでいるのか尋ねた。

「トーマス様、何かお悩みがありますか?」

彼は驚いたように私を見つめ、しばらく言葉を失っていた。やがて、彼は口を開いた。

「エリーゼ様、実は…私もあなたに告白したいことがあったんです。でも、リチャード様に先に告白されるとは思いませんでした」

私は彼の言葉に心が揺れ、どう返事をすべきか分からなかった。

「トーマス様、あなたの気持ち、嬉しいです。でも、今はリチャード様にもお答えできない状況です。どうか、私にもう少し時間をください」

トーマスは深くうなずいて、私に微笑んだ。

「もちろんです、エリーゼ様。あなたの決断を待っています」

私は彼ら二人と過ごす日々が続き、彼らの優しさと愛情に包まれていた。しかし、自分の気持ちがどこに向いているのか、未だに分からずにいた。そして、選びきれない私の心が、やがて予期せぬ事態を引き起こすことになる。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

婚約破棄が成立したので遠慮はやめます

カレイ
恋愛
 婚約破棄を喰らった侯爵令嬢が、それを逆手に遠慮をやめ、思ったことをそのまま口に出していく話。

やり直すなら、貴方とは結婚しません

わらびもち
恋愛
「君となんて結婚しなければよかったよ」 「は…………?」  夫からの辛辣な言葉に、私は一瞬息をするのも忘れてしまった。

【完結】君の世界に僕はいない…

春野オカリナ
恋愛
 アウトゥーラは、「永遠の楽園」と呼ばれる修道院で、ある薬を飲んだ。  それを飲むと心の苦しみから解き放たれると言われる秘薬──。  薬の名は……。  『忘却の滴』  一週間後、目覚めたアウトゥーラにはある変化が現れた。  それは、自分を苦しめた人物の存在を全て消し去っていたのだ。  父親、継母、異母妹そして婚約者の存在さえも……。  彼女の目には彼らが映らない。声も聞こえない。存在さえもきれいさっぱりと忘れられていた。

〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。

藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった…… 結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。 ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。 愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。 *設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。 *全16話で完結になります。 *番外編、追加しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

婚約者とその幼なじみの距離感の近さに慣れてしまっていましたが、婚約解消することになって本当に良かったです

珠宮さくら
恋愛
アナスターシャは婚約者とその幼なじみの距離感に何か言う気も失せてしまっていた。そんな二人によってアナスターシャの婚約が解消されることになったのだが……。 ※全4話。

「地味でブサイクな女は嫌いだ」と婚約破棄されたので、地味になるためのメイクを取りたいと思います。

水垣するめ
恋愛
ナタリー・フェネルは伯爵家のノーラン・パーカーと婚約していた。 ナタリーは十歳のある頃、ノーランから「男の僕より目立つな」と地味メイクを強制される。 それからナタリーはずっと地味に生きてきた。 全てはノーランの為だった。 しかし、ある日それは突然裏切られた。 ノーランが急に子爵家のサンドラ・ワトソンと婚約すると言い始めた。 理由は、「君のような地味で無口な面白味のない女性は僕に相応しくない」からだ。 ノーランはナタリーのことを馬鹿にし、ナタリーはそれを黙って聞いている。 しかし、ナタリーは心の中では違うことを考えていた。 (婚約破棄ってことは、もう地味メイクはしなくていいってこと!?) そして本来のポテンシャルが発揮できるようになったナタリーは、学園の人気者になっていく……。

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

処理中です...