上 下
37 / 37

037 モンスターショー

しおりを挟む
 俺は直ちに魔牛モーを10頭テイムした。

 商品の運搬問題を解決する術を閃いたからだ。

 その為に、低位の馬型モンスター“シーホース”をテイムした。

 それも5頭。

【名前】シーホース
【種族】海馬
【等級】D
【備考】
・水が好き

 シーホースは全身が青い馬で、脚には赤い炎のような模様が入っている。

 通常の馬よりはパワーがあるものの、脚は決して速くない。

 しかし、馬車を引くのに必要なのは力なので、その点は問題なかった。

 ――翌日。

「さぁ、いくぞ」

「ヒヒィン!」

 ルッチに騎乗して、いつものように荷を積める俺。

 その後ろには、馬車の装備を付けたシーホースが1頭。

 そいつの荷台にも牛乳缶が詰まっている。

「隊列を組んで進むわけですか!」

「おにーちゃん、かしこいなのー♪」

「うっはー! これは盲点!」

 これが俺の閃いた解決策、二台運搬だ。

 法律上、ペットだけで街を徘徊させてはいけない。

 必ず命令を聞かせられる人間が必要だ。

 そこで、1台の馬車には御者を搭乗させることにした。

 今回でいえば俺だ。

 その後ろに、御者不在のシーホースを同行させる。

 先頭に続くよう命令すれば、手綱を操ってやる必要もない。

 これなら、少ない人手で大量に運搬することが出来た。

 ◇

 そうして運搬の問題が解決したところで、次の段階に突入だ。

 競売用ペットの調達である。

 その為に、〈レジェンドマウンテン〉にやってきた。

 巨大な山で、山頂にはS級モンスターのレジェンドドラゴンが棲息している。

「グォォオオ!」

 直ちに山頂へ向かい、レジェンドドラゴンと対面。

 全身が真っ白で、ダイヤモンドのような輝きを放つ巨大なドラゴンだ。

「うおおおお!」

 12時間に及ぶ死闘の末、レジェンドドラゴンをテイムした。

 しかし、このままでは連れて帰ることは出来ない。

 あまりにも大きすぎるからだ。

 法律の問題により、街に連れて入れるモンスターの大きさは決まっている。

 が、それを抜きにしても大きすぎて、同行させるには不適格だ。

 そこで【合体配合】を活用する。

 これは2体のペットを合体させて、新たなペットを生み出すものだ。

 【吸収配合】と違い、合体後のペットは姿形が全く異なる。

 レジェンドドラゴンと合体させるのはミニピクシーだ。

 ただでさえ小さな妖精ピクシーの中でも、更に小さなピクシーである。

 見た目は羽を生やした幼女だ。とても人懐こい。

 それとレジェンドドラゴンを【合体配合】にかけた。

「ぎゃおー♪」

 その結果、手のひらサイズにデフォルメされたレジェンドドラゴンが完成。

【名前】ミニ・レジェンドドラゴン
【種族】レジェンドドラゴン
【等級】B
【備考】
・人懐こい

 さながらピクシーの性質を継いだレジェンドドラゴンといったところ。

 ただし、小さくなって、強さも半減してしまった。

 強さを目的とした配合ではない為、なんの問題もない。

 名前はミニリューに決めた。

 ◇

 いよいよモンスターショーの当日がやってきた。

 ショーは王都〈バルフレア〉で開催される。

 当然ながら、俺達も王都へきていた。

 ケルルは初めて来たとのことで、アリサと観光に回る。

 ローラはジョストの練習場に向かう。

 その間に、俺とルナはショーの受付を済ませた。

 俺は競売、ルナは一芸大会だ。

 ◇

 数時間が経過して、ショーの時間になった。

 まずはルナの一芸大会から。

「なんと5匹のケットシー全てが絶品料理を作れるのです!」

 MCがルナのケットシーを紹介する。

 しかし、審査員や客の反応は冷めていた。

 顔に「なんだ料理かよ」と書いている。

 だが、その数分後には全員の表情が変わっていた。

「うまぁあああああああああああ!」

「これはすごすぎぃいいいいいい!」

「なんだこの味はぁああああああ!」

 あまりの絶品ぶりに、審査員が満場一致でルナを推す。

 料理は観客にも振る舞われた。

 観客も大興奮だ。

 最初の期待が低かったことからのギャップも影響したのだろう。

 ルナとケットシーは、なんの危なげもなく優勝した。

 ◇

 続いては俺の競売だ。

「あのレジェンドドラゴンをテイムした……?」

「しかもミニピクシーと配合させることで扱いやすくしたとは……脱帽」

「これなら法律に違反せず、レジェンドドラゴンを飼えるぞ!」

「レジェンドドラゴンをペットに出来る機会なんて二度とねえぞ!」

 こちらは一芸大会以上の圧倒的さだった。

 他の商品はまるで盛り上がらず、我がミニリューに注目が集まる。

「1億!」

「20億!」

「50億!」

 どんどん値がつり上がっていく。

 3桁億を突破するも、勢いは止まらない。

 いよいよ俺から見ても“端金”とは呼べない額になってきた。

 名だたる貴族や富豪、上位の冒険者がこぞって競り合う。

 そして最後には――。

「このドラゴンは余のものじゃ」

 国王が強引に掻っ攫っていった。

 普通なら不満の1つも出るところだが、誰も文句を云わない。

 収拾が付かないくらいに競りが過熱していたからだ。

「〈ロージカ〉に凄い牧場があったとは……」

「ノーマークだったな」

「タケル……何者なんだ、あの牧場主は……」

 そんなこんなで、モンスターショーが終わる。

 一芸大会と競売によって、我が牧場は一躍有名になった。

「やっぱり凄いな、タケルは。
 牧場主としても短期間でここまで大成するとは」

 ショーの後、ある人物が俺に話しかけてきた。

 それは、かつて所属していたPTのリーダーだ。

「情けない頼みなんだが、戻ってこないか?」

 リーダーはPTに復帰するよう頼んできた。

「今の俺達はA級PTなんだ。
 お前がいないと、1ヶ月すらS級でいられなかった。
 やっぱり俺達には、お前が必要なんだ。
 どうか俺達を引っ張ってくれ。
 もちろん、PTリーダーはお前がやってくれ」

 リーダーの切実な頼み。

 俺は首を横に振った。

「すみません、俺はもう別の人生を歩んでしまったので」

 後ろに振り返る。

 そこには、かけがえのない仲間達の姿があった。

 ルナ、ケルル、アリサ、ローラ。そして、多くの魔物達。

「今の俺にはこいつらがいるんで」

 リーダーに背を向け、仲間達と共に歩き出す。

 今はまだ規模の小さな牧場だ。

 だが、これから、もっともっと大きくなる。

 そしていつの日か、規模も実力も最高の牧場に――。
しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

令和の俺と昭和の私

廣瀬純一
ファンタジー
令和の男子と昭和の女子の体が入れ替わる話

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

ゼロテイマーのワケありモンスター牧場スローライフ!

草乃葉オウル
ファンタジー
強大なモンスターを強制的に従わせる術を持つ最強の職業『モンスターテイマー』になるべく日々学校に通っていた少年ルイは、まるで結果が出ず田舎に帰って爺ちゃんの遺したモンスター牧場を継ぐことになる。 しかし、さびれた牧場はすでに覚えのない借金を取り立てる悪徳テイマーによって差し押さえられていた。 そんな中でルイは隠れていた牧場最後のモンスターと出会い、自分に中に眠る『テイマーとモンスターの契約を無《ゼロ》に戻す能力』を開花させる。 これはテイムできないテイマーが不当な扱いを受けるモンスターを解き放ち、頼れる仲間として共に牧場を発展させ、のんびり気ままな生活を送る物語。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

貧乏冒険者で底辺配信者の生きる希望もないおっさんバズる~庭のFランク(実際はSSSランク)ダンジョンで活動すること15年、最強になりました~

喰寝丸太
ファンタジー
おっさんは経済的に、そして冒険者としても底辺だった。 庭にダンジョンができたが最初のザコがスライムということでFランクダンジョン認定された。 そして18年。 おっさんの実力が白日の下に。 FランクダンジョンはSSSランクだった。 最初のザコ敵はアイアンスライム。 特徴は大量の経験値を持っていて硬い、そして逃げる。 追い詰められると不壊と言われるダンジョンの壁すら溶かす酸を出す。 そんなダンジョンでの15年の月日はおっさんを最強にさせた。 世間から隠されていた最強の化け物がいま世に出る。

ド田舎からやってきた少年、初めての大都会で無双する~今まで遊び場にしていたダンジョンは、攻略不可能の規格外ダンジョンだったみたい〜

むらくも航
ファンタジー
ド田舎の村で育った『エアル』は、この日旅立つ。 幼少の頃、おじいちゃんから聞いた話に憧れ、大都会で立派な『探索者』になりたいと思ったからだ。 そんなエアルがこれまでにしてきたことは、たった一つ。 故郷にあるダンジョンで体を動かしてきたことだ。 自然と共に生き、魔物たちとも触れ合ってきた。 だが、エアルは知らない。 ただの“遊び場”と化していたダンジョンは、攻略不可能のSSSランクであることを。 遊び相手たちは、全て最低でもAランクオーバーの凶暴な魔物たちであることを。 これは、故郷のダンジョンで力をつけすぎた少年エアルが、大都会で無自覚に無双し、羽ばたいていく物語──。

ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話

天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。 その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。 ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。 10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。 *本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています *配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします *主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。 *主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません

かつて最弱だった魔獣4匹は、最強の頂きまで上り詰めたので同窓会をするようです。

カモミール
ファンタジー
「最強になったらまた会おう」 かつて親友だったスライム、蜘蛛、鳥、ドラゴン、 4匹は最弱ランクのモンスターは、 強さを求めて別々に旅に出る。 そして13年後、 最強になり、魔獣四王と恐れられるようになった彼女ら は再び集う。 しかし、それは世界中の人々にとって脅威だった。 世間は4匹が好き勝手楽しむ度に 世界の危機と勘違いをしてしまうようで・・・? *不定期更新です。 *スピンオフ(完結済み) ヴァイロン家の少女が探す夢の続き~名家から追放された天才女騎士が最強の冒険者を目指すまでの物語~ 掲載中です。

処理中です...