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034 第2防衛戦⑥
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クラウゼ隊の壊滅は、フィオナとルークに衝撃を与えた。
「ウソ……クラウゼ……嗚呼……クラウゼが……」
「団長……それに他の皆も……まじすか……」
一時的に停戦状態となるミゼル達。
「どうする? まだ戦うの?」
ミゼルは逃がしてもいいと思っていた。
彼女は甘い。命乞いをする相手を殺せないのだ。
だから、敗北を認めたらそこで終わるつもりでいた。
「戦うわよ」
「同じくっす」
フィオナ達は命乞いをしなかった。
「せめて貴方だけでも討ち取ってみせるわ」
「あの世で待つ仲間達へのお土産にするっすよ!」
決死の覚悟だ。
ミゼルは尚更の罪悪感を抱いた。
それでも、彼女の気持ちは揺るがない。
「良い覚悟だけど、フィオナさんも死んだ団長さんと同じだね」
「どういうことよ?」
剣を構えて睨み合う2人。
「足下を見ていなかったでしょ? スキルを仕掛けたのよ、私」
「冗談にしても笑えないわ。貴方はそういうタイプじゃないでしょ」
「本当にそう思う? 貴方の団長さんがどうやって殺されたか見たでしょ?」
「なら、どこに罠を仕掛けたっていうのよ? 早く発動しなさいよ」
「……命乞いをしなくていいのね?」
「死は元より覚悟の上よ。さっさとかかってきなさい」
「そっか、そうだよね」
ミゼルが視線を右下に向ける。
「貫きなさい――〈ロックスパイク〉」
そして、スキルを発動する。
地面に岩の棘を生やして対象を貫く〈ロックスパイク〉だ。
「やっぱり素直ね。魔法の発動地点を見ちゃうなんて」
フィオナが右下に向かって構える。
「出場所が分かっていれば分かっていれば!」
「違う! 姉さん! 反対です! 反対!」
「えっ――ガハッ!」
左下から生えた岩の棘が、フィオナの脇腹から斜め上の肩にかけてを貫く。
「ミゼル…………あんた…………!」
「卑怯な手でごめんね。でも、これが戦いだから」
〈ロックスパイク〉と視線誘導を駆使した攻撃はアレンの入れ知恵だ。
この為だけに、ミゼルはわざわざ〈ロックスパイク〉を習得した。
彼女にとって、〈ロックスパイク〉はこれが初めての使用だった。
「出来ればこの手は使いたくなかったのよ」
岩の棘が消える。
「ガッ……」
フィオナが崩れ落ちた。
地面に血だまりを作り、口からも血を流す。
「ミゼ……ル……トドメ…………さし……て……」
「分かってるよ、フィオナさん。今、楽にしてあげるから」
ミゼルが剣を逆手に持ち、剣先をフィオナの胸に向ける。
「来世があるなら、今とは違う形で出会えますように」
「姉ぁああああああああああああああああん!」
ミゼルがトドメを刺した。
「ルーク君、1人になっても戦うの?」
残すはルークのみ。
もはや万に一つも勝ち目のない状況。
そんな中、ルークは――。
「やってやるさ……! 俺は2番隊の副長なんすから!」
「そうか。でも何も出来ないぜ。残念だけどお前はもうおしまいだ」
「えっ」
――やる気十分な返事をした直後に死んだ。
アレンによって、背後から心臓を貫かれて。即死だった。
◇
「アレン……」
「勝敗は決していたから、介入させてもらったよ」
「うん。ありがとう。実は結構きつくて、今……」
ミゼルがその場にへたり込む。
慣れない実戦が心身を疲弊させたようだ。
「お前の戦争は終わった。武器をインベントリに戻せ」
ミゼルが俺の言葉に従う。
「お姫様抱っことおんぶ、どっちがいい?」
「…………」
「家まで俺が運んでやるって言ってんだ。どっちがいい?」
「…………お姫様抱っこで」
「じゃあおんぶだな」
「意地悪」
ミゼルを背負う。
「トロイ、問題があるようならゴブ助の戦闘に介入しろ」
「分かったでござる!」
「もっとも――」
チラリとゴブ助の様子を見る
「あの様子なら問題はなさそうだがな」
勝利を確信した俺は、家に向かって歩き出した。
「Zzz……Zzz……」
いつの間にかミゼルは眠っていた。
戦場で寝るとは、よほど疲れていたのだろう。
「起きたら労ってやらないとな」
これで残っているのはゴブ助の戦いだけだ。
「ウソ……クラウゼ……嗚呼……クラウゼが……」
「団長……それに他の皆も……まじすか……」
一時的に停戦状態となるミゼル達。
「どうする? まだ戦うの?」
ミゼルは逃がしてもいいと思っていた。
彼女は甘い。命乞いをする相手を殺せないのだ。
だから、敗北を認めたらそこで終わるつもりでいた。
「戦うわよ」
「同じくっす」
フィオナ達は命乞いをしなかった。
「せめて貴方だけでも討ち取ってみせるわ」
「あの世で待つ仲間達へのお土産にするっすよ!」
決死の覚悟だ。
ミゼルは尚更の罪悪感を抱いた。
それでも、彼女の気持ちは揺るがない。
「良い覚悟だけど、フィオナさんも死んだ団長さんと同じだね」
「どういうことよ?」
剣を構えて睨み合う2人。
「足下を見ていなかったでしょ? スキルを仕掛けたのよ、私」
「冗談にしても笑えないわ。貴方はそういうタイプじゃないでしょ」
「本当にそう思う? 貴方の団長さんがどうやって殺されたか見たでしょ?」
「なら、どこに罠を仕掛けたっていうのよ? 早く発動しなさいよ」
「……命乞いをしなくていいのね?」
「死は元より覚悟の上よ。さっさとかかってきなさい」
「そっか、そうだよね」
ミゼルが視線を右下に向ける。
「貫きなさい――〈ロックスパイク〉」
そして、スキルを発動する。
地面に岩の棘を生やして対象を貫く〈ロックスパイク〉だ。
「やっぱり素直ね。魔法の発動地点を見ちゃうなんて」
フィオナが右下に向かって構える。
「出場所が分かっていれば分かっていれば!」
「違う! 姉さん! 反対です! 反対!」
「えっ――ガハッ!」
左下から生えた岩の棘が、フィオナの脇腹から斜め上の肩にかけてを貫く。
「ミゼル…………あんた…………!」
「卑怯な手でごめんね。でも、これが戦いだから」
〈ロックスパイク〉と視線誘導を駆使した攻撃はアレンの入れ知恵だ。
この為だけに、ミゼルはわざわざ〈ロックスパイク〉を習得した。
彼女にとって、〈ロックスパイク〉はこれが初めての使用だった。
「出来ればこの手は使いたくなかったのよ」
岩の棘が消える。
「ガッ……」
フィオナが崩れ落ちた。
地面に血だまりを作り、口からも血を流す。
「ミゼ……ル……トドメ…………さし……て……」
「分かってるよ、フィオナさん。今、楽にしてあげるから」
ミゼルが剣を逆手に持ち、剣先をフィオナの胸に向ける。
「来世があるなら、今とは違う形で出会えますように」
「姉ぁああああああああああああああああん!」
ミゼルがトドメを刺した。
「ルーク君、1人になっても戦うの?」
残すはルークのみ。
もはや万に一つも勝ち目のない状況。
そんな中、ルークは――。
「やってやるさ……! 俺は2番隊の副長なんすから!」
「そうか。でも何も出来ないぜ。残念だけどお前はもうおしまいだ」
「えっ」
――やる気十分な返事をした直後に死んだ。
アレンによって、背後から心臓を貫かれて。即死だった。
◇
「アレン……」
「勝敗は決していたから、介入させてもらったよ」
「うん。ありがとう。実は結構きつくて、今……」
ミゼルがその場にへたり込む。
慣れない実戦が心身を疲弊させたようだ。
「お前の戦争は終わった。武器をインベントリに戻せ」
ミゼルが俺の言葉に従う。
「お姫様抱っことおんぶ、どっちがいい?」
「…………」
「家まで俺が運んでやるって言ってんだ。どっちがいい?」
「…………お姫様抱っこで」
「じゃあおんぶだな」
「意地悪」
ミゼルを背負う。
「トロイ、問題があるようならゴブ助の戦闘に介入しろ」
「分かったでござる!」
「もっとも――」
チラリとゴブ助の様子を見る
「あの様子なら問題はなさそうだがな」
勝利を確信した俺は、家に向かって歩き出した。
「Zzz……Zzz……」
いつの間にかミゼルは眠っていた。
戦場で寝るとは、よほど疲れていたのだろう。
「起きたら労ってやらないとな」
これで残っているのはゴブ助の戦いだけだ。
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