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030 第2防衛戦②

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 ゴブ助の号令と同時に、空から10人近い人間が降ってきた。
 〈ステルス〉で俺達に近づこうとした結果、グリフォンにやられたのだ。

「うおおおおおおおおおおおおお!」
「10億ゲットすんぞぉおおおおお!」
「いけぇえええええええええええ!」

 空からの死体が、相手にとっての合図となった。
 冒険者連中が我先にと突っ込んでくる。
 一方、コチラは――。

「ゴブゥウウウウウ!」

 ゴブ助の単騎だ。
 その他のメンバーは後ろで見守っている。

「本当に大丈夫かな? ゴブ助」

 心配そうに訊いてくるミゼル。

「大丈夫さ。奴の強さは知っているだろ?」
「そうだけど……あの数だからねぇ」
「いざとなれば〈不動硬化〉がある。それにパッシブスキル〈自然治癒力向上・極〉を覚えているから、多少の怪我なら瞬時に回復する。〈皮膚強化・極〉と〈魔法耐性・極〉があることも考えると、大半の攻撃は実質無効化しているようなものだ。問題ないさ」

 それになにより――ゴブ助に戦いを教えたのは俺だ。
 ゴブ助が軽くやられるような相手なら、こちらに勝ち目はない。
 そんな状況になったら、用意してあるポータルを使って即撤退だ。

「ゴブゥウウウウ!」
「な、なんだこのゴブリン、速――ぎゃあぁああああ」
「うわあああああああああああああ!」
「ひぃいいいいいいいいいいいいい!」
「ゴブリンの皮を被った化け物だぁああああ!」

 案の定、ゴブ助の無双が始まった。

「な? 問題なかったろ?」
「そうね。す……凄い……凄すぎる……」
「アイツは世界最強のゴブリンであり、俺の相棒だからな」

 凄まじい勢いで数を減らしていく王国の冒険者。
 ゴブ助に挑んで散る者、発狂して逃げていく者、様々だ。

 圧倒的な強さで暴れ狂うゴブ助。
 その強さはエンペラーゴブリンキングすら凌駕していた。

「ゴブリンには賞金がかかってねぇ! 無視するぞ!」
「おう! そいつは他の奴等に押しつけてやれ!」

 ゴブ助を無視して突っ込んでくる奴等が現れた。
 当然ながらゴブ助は気づいていたが、止めようとはしない。
 こちらに抜けてきた奴等を倒すのは俺達の仕事だ。

「スケルトン軍団、矢を放て」

 まずは前回の王国軍戦と同じ戦法でいく。
 〈爆発弓〉を装備させたスケルトンに矢の雨を放たせた。

「矢が飛んでくるぞ」
「この程度、盾で防ぐまでもねぇ」
「躱すぞ――うわぁぁぁぁあ!」
「ば、爆発属性の矢だぞ! これ!」

 爆発する矢により、抜けてきた冒険者が壊滅。
 〈マジックシェル〉を使っていない辺り、ただの雑魚だ。

「爆発属性の矢か」
「最初に人柱を立てたのは正解だったな」
「タネが分かれば怖くない」
「10億が2人で合わせて20億、俺達が貰うぜ」

 新手が突っ込んでくる。
 数は100名弱といったところか。

「ケット・シー、援護してやれ」

 スケルトンの攻撃に、ケット・シーが加勢する。

「爆発属性の矢など、〈マジックシェル〉と盾で防げば」
「なっ!? 〈ディスペル〉だと!?」
「〈マジックシェル〉のクールタイムがまだ――ぎゃあああああ!」
「か、身体が……!」
「〈グラビティダウン〉まであるのかよ……ああああああッ!」

 100名弱の雑魚共も軽やかに殲滅した。

「先の戦いをまるで活かしていないな、こいつら」

 王国軍は敗戦の詳細について教えているはず。
 そして、「相手は少人数だが油断は禁物」と釘を刺したに違いない。
 なのに同じ轍を踏むのは、俺達を見て油断したからだろう。
 ガキ2人に雑魚モンスターだけなら楽勝だな……とでも思ったか。

「や、やべぇぞ! 突っ込んでもやられるし、ゴブリンもイカれてやがる!」
「こんなのやってられるか!」
「逃げるぞ!」
「撤退だ!」

 諦める冒険者が増え始めた。
 瞬く間に、残っている冒険者の数が1000名程度になる。

「残りの連中は腕が立つな」
「かなり警戒して戦っているね」

 残っているのは手練れのみ。
 ここからが本番だ。

「ただのゴブリンとは思うな」
「連携して確実に仕留めていくぞ」
「おそらくこいつが相手の主力だ」
「だろうな。前に出てこないのがその証拠」
「こいつさえ倒せば、あとは雑魚だ」
「スケルトンとケット・シーのコンボは怖くない」
「抜け駆けは禁止だぞ。この場の全ギルドで10億を分けよう」

 複数のギルドが協力体制を敷く。
 ゴブ助を包囲し、この上なく慎重に攻める。
 熟練の冒険者共が1体のゴブリンを囲む姿……滑稽だ。

「アレン、ゴブ助を助けなくていいの?」
「問題ない。万が一勝てなくとも、あの様子なら負けはない」

 ゴブ助の戦闘で重要なのは死なないことだ。
 その危険がない以上、俺が加勢する必要はない。
 それに、加勢が必要ならグリフォンに頼めばいい。
 地上戦に必死で、相手はグリフォンのことを忘れているみたいだし。

「均衡が崩れなくて退屈になったら終わらそう」
「分かった。それにしてもゴブ助、凄く楽しそう。羨ましいなぁ」
「ミゼルも参加してくる?」
「ううん。今の私だと足手まといになっちゃうからやめとく」
「正しい判断だ」

 勝利を確信し、俺達の気が緩みかける。
 その時だった。

「新手か」
「まだ居たのね」

 王都の上空から大量のプテラノドンが迫ってきた。
 その数は200に及び、全てに冒険者が騎乗している。

「ん? あれは……」

 突っ込んでくる奴等に見覚えがあった。
 たしかどこかでばったりと遭って、話しかけられた気がする。

「殆どの冒険者が逃げたか死んだようだな」
「まじすかー! うひゃー、やべぇ!」
「クラウゼ、貴方の云ったとおりね。只者じゃないよ、あの子」

 ――思い出した!
 〈奈落の庭園〉を攻略しようとしていた奴等だ。
 名前はたしか……。

「〈黎明騎士団〉とかいったか」
「え!? 〈黎明騎士団〉なの!?」
「知っているのか?」
「名前だけはね。この大陸で最強と名高いギルドよ」
「そうだったのか」

 大陸最強ギルドとの戦いか。
 グリフォンの攻撃を凌げたらの話になるが――。

「もしかすると、ミゼルの出番もあるかもな」

 退屈しかけていた俺の心に火が点いた。
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