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026 開戦
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最初の夜襲は挨拶代わりの優しいものだ。
ド派手に暴れることも出来るが、そうはしない。
罪のない街の人間を巻き込みたくないからだ。
「ミゼルとゴブ助はここで待機していてくれ」
「任せて!」「分かったゴブ!」
俺は〈飛行〉を使い、単身で王都に近づいた。
念のために〈ステルス〉を使っている。
相手の〈看破〉も想定していたが、それはなかった。
「思った通り、防空網もガバガバだな」
昼に〈飛行〉を使ってみせたのに、空が警戒されていない。
空でさえこの有様なら、地上も特別な対策をとっていないだろう。
「ここまで敵影なしか。ザル過ぎて萎えるな」
王都の中央にそびえる王城。
この大陸の統治者である国王が住む場所。
俺が浮いているのは、その王城に繋がる門の真上だ。
「まぁ、この攻撃で少しはやる気を出すだろう」
俺は〈弓矢製作〉で作っておいた武器を召喚する。
弓が現れると同時に、〈ステルス〉の効果が切れた。
【名前】爆発弓
【属性】爆発
【攻撃力】
├─┼─★─┼─┼─┼─┤
F E D C B A S
爆発属性に特化した武器〈爆発弓〉だ。
こいつによって放たれた矢は、着弾と同時に爆発する。
「狙って狙ってー……せいっ!」
王城にめがけて矢を放つ。
弓を使うのは久しぶりだが問題なかった。
矢は弧を描くように飛んで、王城の中央に着弾。
ドカンッ!
大きな爆発音がなる。
城の一部が崩壊した。
真下で突っ立っている衛兵が慌てだす。
「ここだ! バカタレ共!」
追撃の矢をお見舞いする。
今度は衛兵達の近くに着弾した。
「俺達はあそこの丘に居る。いつでもかかってこい。格の差を思い知らせてやる。国王のユライアス・キム・チゲンにもそう伝えておけ」
大声で宣言し、豪快な笑い声を発しながら拠点に戻った。
◇
夜襲によって俺達の居場所は明るみとなった。
ここからの展開については、既に想定している。
数度の防衛を終えた後、反転攻勢を以て大勝利だ。
「頑張れよ、警備隊長くん」
「任せるゴブ! ゴブ達がアレンとミゼルを守るゴブ!」
「ゴブ助がいれば頼もしいわね。それにこの……なんだっけ?」
「マネーモンスターな」
「そう! それ! それも強そうだから頼もしい」
夜間の防衛体制は、トラップとペットの2種類。
トラップは落とし穴で、穴の中にはトゲを仕込んでいる。
あと、掛かると音の鳴るピアノ線。
ペットはゴブ助と30体のスケルトン、それにマネーモンスターだ。
マネーモンスターに投じた金額は1000万。
姿はレイドの時と同じ竜人だが、強さには雲泥の差がある。
指揮はゴブ助に一任した。今の奴なら問題ない。
「あとはよろしく」
俺とミゼルは家の中に入った。
「さーて、風呂だ風呂ー!」
「こんな時でも余裕だね、アレンは」
「ミゼルは不安か?」
「そりゃそうでしょ。相手は国家なんだもん」
並んで湯船に浸かった。
ミゼルの肩に右腕を回し、俺の方に寄せる。
「安心しろって。俺は負けないよ。誰にもな」
「普通なら安心できないけど、アレンが言うと安心できる」
俺の右肩に、ミゼルが頭を預けてくる。
俺は右手で彼女の頭を撫でてやった。
それから――。
「これはオマケだ」
右手を下にずらし、胸を揉んでやった。
「ひゃうんっ! ――ちょっと! 台無しだよ」
「はっはっは、ますます安心できただろ?」
「そうだけど……。もう! アレンの馬鹿」
その日の夜も、いつもと変わらず楽しく過ごした。
◇
結局、敵の夜襲がないまま日が明けた。
咄嗟のことで準備が間に合わなかったのだろう。
夜襲があるとすれば今日か明日が本命だ。
しかし、それよりも前に――。
「敵が攻めてきたゴブー!」
――通常の防衛戦が待っていた。
「ついにきたか。ミゼル、行くぞ」
「うん! 準備は出来ているわ!」
ミゼルと共に家を出る。
「おーおー、結構ガチなやつじゃねぇか」
「完全に包囲されているね……」
丘の周辺は王国の兵士によって包囲されていた。
全員が同じ鎧で統一されている辺り、冒険者はいない。
「アレン殿ー!」
指示した通りに、トロイが戻ってきた。
敵が動いたら戻ってくるように言っていたのだ。
「冒険者の動向はどうだ?」
「今の所は動いていないでござる」
「話題にはなっているのか?」
「アレン殿の夜襲については少し」
「賞金の方は端金から変動なしか?」
「ないでござる」
指名手配中の俺達には賞金が掛かっている。
しかし、その額は冒険者にとって魅力を感じないレベルだ。
つまり、庶民に対して「見かけたら教えてね」と頼む程度。
冒険者に対して「殺してこい」と命じるレベルではない。
「国の威信がかかっているから、冒険者には頼りたくないのだろう」
想定通りだった。
あとは相手がなりふり構わぬようになるまで叩くのみ。
「竜人、今回もありがとうな」
「謝礼に見合う働きをしたまで」
マネーモンスターを解除する。
あとは俺達の領分だ。
「全力で防衛するぞ!」
「おー!」
王国軍との戦争が始まった。
ド派手に暴れることも出来るが、そうはしない。
罪のない街の人間を巻き込みたくないからだ。
「ミゼルとゴブ助はここで待機していてくれ」
「任せて!」「分かったゴブ!」
俺は〈飛行〉を使い、単身で王都に近づいた。
念のために〈ステルス〉を使っている。
相手の〈看破〉も想定していたが、それはなかった。
「思った通り、防空網もガバガバだな」
昼に〈飛行〉を使ってみせたのに、空が警戒されていない。
空でさえこの有様なら、地上も特別な対策をとっていないだろう。
「ここまで敵影なしか。ザル過ぎて萎えるな」
王都の中央にそびえる王城。
この大陸の統治者である国王が住む場所。
俺が浮いているのは、その王城に繋がる門の真上だ。
「まぁ、この攻撃で少しはやる気を出すだろう」
俺は〈弓矢製作〉で作っておいた武器を召喚する。
弓が現れると同時に、〈ステルス〉の効果が切れた。
【名前】爆発弓
【属性】爆発
【攻撃力】
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F E D C B A S
爆発属性に特化した武器〈爆発弓〉だ。
こいつによって放たれた矢は、着弾と同時に爆発する。
「狙って狙ってー……せいっ!」
王城にめがけて矢を放つ。
弓を使うのは久しぶりだが問題なかった。
矢は弧を描くように飛んで、王城の中央に着弾。
ドカンッ!
大きな爆発音がなる。
城の一部が崩壊した。
真下で突っ立っている衛兵が慌てだす。
「ここだ! バカタレ共!」
追撃の矢をお見舞いする。
今度は衛兵達の近くに着弾した。
「俺達はあそこの丘に居る。いつでもかかってこい。格の差を思い知らせてやる。国王のユライアス・キム・チゲンにもそう伝えておけ」
大声で宣言し、豪快な笑い声を発しながら拠点に戻った。
◇
夜襲によって俺達の居場所は明るみとなった。
ここからの展開については、既に想定している。
数度の防衛を終えた後、反転攻勢を以て大勝利だ。
「頑張れよ、警備隊長くん」
「任せるゴブ! ゴブ達がアレンとミゼルを守るゴブ!」
「ゴブ助がいれば頼もしいわね。それにこの……なんだっけ?」
「マネーモンスターな」
「そう! それ! それも強そうだから頼もしい」
夜間の防衛体制は、トラップとペットの2種類。
トラップは落とし穴で、穴の中にはトゲを仕込んでいる。
あと、掛かると音の鳴るピアノ線。
ペットはゴブ助と30体のスケルトン、それにマネーモンスターだ。
マネーモンスターに投じた金額は1000万。
姿はレイドの時と同じ竜人だが、強さには雲泥の差がある。
指揮はゴブ助に一任した。今の奴なら問題ない。
「あとはよろしく」
俺とミゼルは家の中に入った。
「さーて、風呂だ風呂ー!」
「こんな時でも余裕だね、アレンは」
「ミゼルは不安か?」
「そりゃそうでしょ。相手は国家なんだもん」
並んで湯船に浸かった。
ミゼルの肩に右腕を回し、俺の方に寄せる。
「安心しろって。俺は負けないよ。誰にもな」
「普通なら安心できないけど、アレンが言うと安心できる」
俺の右肩に、ミゼルが頭を預けてくる。
俺は右手で彼女の頭を撫でてやった。
それから――。
「これはオマケだ」
右手を下にずらし、胸を揉んでやった。
「ひゃうんっ! ――ちょっと! 台無しだよ」
「はっはっは、ますます安心できただろ?」
「そうだけど……。もう! アレンの馬鹿」
その日の夜も、いつもと変わらず楽しく過ごした。
◇
結局、敵の夜襲がないまま日が明けた。
咄嗟のことで準備が間に合わなかったのだろう。
夜襲があるとすれば今日か明日が本命だ。
しかし、それよりも前に――。
「敵が攻めてきたゴブー!」
――通常の防衛戦が待っていた。
「ついにきたか。ミゼル、行くぞ」
「うん! 準備は出来ているわ!」
ミゼルと共に家を出る。
「おーおー、結構ガチなやつじゃねぇか」
「完全に包囲されているね……」
丘の周辺は王国の兵士によって包囲されていた。
全員が同じ鎧で統一されている辺り、冒険者はいない。
「アレン殿ー!」
指示した通りに、トロイが戻ってきた。
敵が動いたら戻ってくるように言っていたのだ。
「冒険者の動向はどうだ?」
「今の所は動いていないでござる」
「話題にはなっているのか?」
「アレン殿の夜襲については少し」
「賞金の方は端金から変動なしか?」
「ないでござる」
指名手配中の俺達には賞金が掛かっている。
しかし、その額は冒険者にとって魅力を感じないレベルだ。
つまり、庶民に対して「見かけたら教えてね」と頼む程度。
冒険者に対して「殺してこい」と命じるレベルではない。
「国の威信がかかっているから、冒険者には頼りたくないのだろう」
想定通りだった。
あとは相手がなりふり構わぬようになるまで叩くのみ。
「竜人、今回もありがとうな」
「謝礼に見合う働きをしたまで」
マネーモンスターを解除する。
あとは俺達の領分だ。
「全力で防衛するぞ!」
「おー!」
王国軍との戦争が始まった。
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