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023 快楽組の勧誘
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ゴブ助のレベルが順調に上がっていく。
ミゼルの加入時は30だったのに、程なくして50になった。
【名前】ゴブ助
【種族】ゴブリン
【レベル】50
【攻撃力】
├─┼─┼─★─┼─┼─┤
F E D C B A S
【アクティブスキル】
ファイヤーブレス/コールドブレス/スピードクロー/不動硬化/嘆きの歌/
サンダーブレス/ポイズンブレス/
【パッシブスキル】
脚力強化・極/腕力強化・極/視覚強化・極/聴覚強化・極/看破
皮膚強化・極/魔法耐性・極/状態異常無効化/窃盗阻止/犯人特定
自然治癒力向上・極
俺のレベルが210で、ゴブ助を除いても90体のゴブリンを飼っている。
〈テイミング〉の仕様を考えると、ゴブ助のレベル上げはもういいだろう。
攻撃力もDからCに上がってキリがいい。
仕様的にはあと70ほど上げられるが、そうするとペットを増やせなくなる。
いずれ追加でペットが欲しくなった時に困る……なんてことは避けたい。
俺のレベルも上がりづらくなってきたし。
「――と、そういうわけだから、ゴブ助のレベル上げはおしまいだ」
「いよいよアクティブスキルの習得ゴブー!」
「それも少し悩み所なんだよなぁ。ミゼルが足手まといだから……」
「傷つくなー。でも、事実なんだよね。今はまだ。悔しいけど」
アクティブスキルの強化は、雑魚モンスターだと不可能だ。
強力なスキルを覚えているのが、往々にして強敵だからである。
今のミゼルを連れていくのは危険だ。
「それでアレン、どうしてここに移ったの?」
「ラプーンに飽きたから、環境を変えようかと思ってね」
俺達は拠点を王都ノースペキアに移した。
ルーム大陸最大の都市であり、レッドアイ王国の首都だ。
目立つことを避ける為、今回も街外れに家をこしらえた。
昨日まで住んでいたラプーンの家は、既に更地と化している。
土地も売り払った。
「素材の仕入れをしたいから、観光がてら街をぶらつこう」
「賛成ー。この街に来るの初めてだし、色々観ておこっと」
「楽しみゴブー!」
満場一致で、本日は観光を楽しむことに決まった。
◇
王都の品揃いは及第点で、思わず買い過ぎてしまった。
「アレン……あなた何者なの?」
「ただの一般人さ」
「ただの一般人が素材の購入に10億も使うわけないでしょ!」
ミゼルは俺のレベルを知っている。
しかし、俺が何者かということは知らなかった。
よく分からないが只者ではない……といった認識だろう。
「興味があればヤマト王国に行くといいさ」
「ヤマト王国ならこの国へ来る前に滞在していたよ?」
「それなのに風呂を知らなかったのか」
「ずっと剣の腕ばかり磨いていたからね」
「じゃあ、“温泉王”って言葉は?」
「知らない。アレンと関係あるの?」
「まぁな」
ヤマト王国に居て俺を知らないとはな。
全ての街で“温泉王アレン”の名が広まっていたのに。
ミゼルの人となりがよく分かる。
「お願いします! 娘を選んでください!」
「いえいえウチの娘こそ! 是非“快楽組”に!」
通りを歩いていると、人だかりに遭遇した。
「なんだ?」
「さぁ……?」
「何ゴブー?」
集まる人々をかきわけて、見える位置に移動する。
騒ぎの中心に居るのは――たくさんの若い女だった。
女達はずらりと横に並んで立っている。
その周辺には、そいつらの保護者と思しき人達。
そして、保護者共が懇願している相手の男は、国に仕える官吏だ。
「申し訳ないが、貴方達の娘さんでは国王陛下を満足させられない」
官吏がピシャリと言い放つ。
保護者連中は一様に絶叫した。
一方、娘連中の反応はまちまちだ。
安堵している者も居れば、残念がる者も居た。
その様を見ていて、俺は事情を把握する。
「あれが快楽組の勧誘ってやつか」
「快楽組? アレン、分かるの?」
「前にラプーンで聞いたことがある」
快楽組とは、国王専用のご奉仕部隊だ。
この場合におけるご奉仕とは、性的なご奉仕である。
早い話が性奴隷ということだ。
快楽組に指定された女に拒否権はない。
否応なく王城へ連れて行かれ、国王の最終ジャッジを受ける。
そこでお眼鏡に適えば、快楽組としての生活が始まるのだ。
一見すると酷い話だが、悪いことばかりではない。
快楽組に入った本人及び親族には、莫大な謝礼が支払われるからだ。
慎ましい暮らしであれば、働くことなく一生を過ごせる。
だから、親は娘を快楽組に入れようと必死なのだ。
「――というのが、快楽組ってやつさ」
「えぇー、よく知らない人にご奉仕するとか嫌だなぁ」
「でも俺には毎晩ご奉仕してくれるじゃん。よく知らないのに」
「そ、それは、アレンだからいいの……って、何言わせるのよ」
ミゼルと話していると、ふいに官吏がこちらを向いた。
そして、表情をパッとさせて近づいてくる。
嫌な予感がした。
「君、君だよ、そこの女性!」
官吏の目は一直線にミゼルを見ている。
「え、私?」
驚くミゼル。
官吏は「うんうん」と頷いた。
「若くて整った顔立ち……素晴らしい! 君に決めたよ!」
官吏がミゼルの手首を掴む。
「さっ、王城に行くよ」
有無を言わさずに連行しようとする。
「ちょっと、やめてよ!」
ミゼルは官吏の手を払いのけた。
驚く官吏。周囲の野次馬達も驚いている。
「何をするか!」
官吏の護衛を務める2人の衛兵が剣を抜く。
剣先をミゼルに向ける。
「まぁまぁ」
官吏がそれをなだめて、改めてミゼルに云った。
「君は他所の国の人なのかな?」
「そうだよ。だから快楽組ってのもお断り」
「それは駄目だよ。この国に居る以上、この国の法律に従わないと」
改めてミゼルを掴もうとする官吏。
それに対して、ミゼルは――。
「だから嫌だって言ってるでしょ」
剣を抜いて徹底抗戦の構えをみせるのだった。
ミゼルの加入時は30だったのに、程なくして50になった。
【名前】ゴブ助
【種族】ゴブリン
【レベル】50
【攻撃力】
├─┼─┼─★─┼─┼─┤
F E D C B A S
【アクティブスキル】
ファイヤーブレス/コールドブレス/スピードクロー/不動硬化/嘆きの歌/
サンダーブレス/ポイズンブレス/
【パッシブスキル】
脚力強化・極/腕力強化・極/視覚強化・極/聴覚強化・極/看破
皮膚強化・極/魔法耐性・極/状態異常無効化/窃盗阻止/犯人特定
自然治癒力向上・極
俺のレベルが210で、ゴブ助を除いても90体のゴブリンを飼っている。
〈テイミング〉の仕様を考えると、ゴブ助のレベル上げはもういいだろう。
攻撃力もDからCに上がってキリがいい。
仕様的にはあと70ほど上げられるが、そうするとペットを増やせなくなる。
いずれ追加でペットが欲しくなった時に困る……なんてことは避けたい。
俺のレベルも上がりづらくなってきたし。
「――と、そういうわけだから、ゴブ助のレベル上げはおしまいだ」
「いよいよアクティブスキルの習得ゴブー!」
「それも少し悩み所なんだよなぁ。ミゼルが足手まといだから……」
「傷つくなー。でも、事実なんだよね。今はまだ。悔しいけど」
アクティブスキルの強化は、雑魚モンスターだと不可能だ。
強力なスキルを覚えているのが、往々にして強敵だからである。
今のミゼルを連れていくのは危険だ。
「それでアレン、どうしてここに移ったの?」
「ラプーンに飽きたから、環境を変えようかと思ってね」
俺達は拠点を王都ノースペキアに移した。
ルーム大陸最大の都市であり、レッドアイ王国の首都だ。
目立つことを避ける為、今回も街外れに家をこしらえた。
昨日まで住んでいたラプーンの家は、既に更地と化している。
土地も売り払った。
「素材の仕入れをしたいから、観光がてら街をぶらつこう」
「賛成ー。この街に来るの初めてだし、色々観ておこっと」
「楽しみゴブー!」
満場一致で、本日は観光を楽しむことに決まった。
◇
王都の品揃いは及第点で、思わず買い過ぎてしまった。
「アレン……あなた何者なの?」
「ただの一般人さ」
「ただの一般人が素材の購入に10億も使うわけないでしょ!」
ミゼルは俺のレベルを知っている。
しかし、俺が何者かということは知らなかった。
よく分からないが只者ではない……といった認識だろう。
「興味があればヤマト王国に行くといいさ」
「ヤマト王国ならこの国へ来る前に滞在していたよ?」
「それなのに風呂を知らなかったのか」
「ずっと剣の腕ばかり磨いていたからね」
「じゃあ、“温泉王”って言葉は?」
「知らない。アレンと関係あるの?」
「まぁな」
ヤマト王国に居て俺を知らないとはな。
全ての街で“温泉王アレン”の名が広まっていたのに。
ミゼルの人となりがよく分かる。
「お願いします! 娘を選んでください!」
「いえいえウチの娘こそ! 是非“快楽組”に!」
通りを歩いていると、人だかりに遭遇した。
「なんだ?」
「さぁ……?」
「何ゴブー?」
集まる人々をかきわけて、見える位置に移動する。
騒ぎの中心に居るのは――たくさんの若い女だった。
女達はずらりと横に並んで立っている。
その周辺には、そいつらの保護者と思しき人達。
そして、保護者共が懇願している相手の男は、国に仕える官吏だ。
「申し訳ないが、貴方達の娘さんでは国王陛下を満足させられない」
官吏がピシャリと言い放つ。
保護者連中は一様に絶叫した。
一方、娘連中の反応はまちまちだ。
安堵している者も居れば、残念がる者も居た。
その様を見ていて、俺は事情を把握する。
「あれが快楽組の勧誘ってやつか」
「快楽組? アレン、分かるの?」
「前にラプーンで聞いたことがある」
快楽組とは、国王専用のご奉仕部隊だ。
この場合におけるご奉仕とは、性的なご奉仕である。
早い話が性奴隷ということだ。
快楽組に指定された女に拒否権はない。
否応なく王城へ連れて行かれ、国王の最終ジャッジを受ける。
そこでお眼鏡に適えば、快楽組としての生活が始まるのだ。
一見すると酷い話だが、悪いことばかりではない。
快楽組に入った本人及び親族には、莫大な謝礼が支払われるからだ。
慎ましい暮らしであれば、働くことなく一生を過ごせる。
だから、親は娘を快楽組に入れようと必死なのだ。
「――というのが、快楽組ってやつさ」
「えぇー、よく知らない人にご奉仕するとか嫌だなぁ」
「でも俺には毎晩ご奉仕してくれるじゃん。よく知らないのに」
「そ、それは、アレンだからいいの……って、何言わせるのよ」
ミゼルと話していると、ふいに官吏がこちらを向いた。
そして、表情をパッとさせて近づいてくる。
嫌な予感がした。
「君、君だよ、そこの女性!」
官吏の目は一直線にミゼルを見ている。
「え、私?」
驚くミゼル。
官吏は「うんうん」と頷いた。
「若くて整った顔立ち……素晴らしい! 君に決めたよ!」
官吏がミゼルの手首を掴む。
「さっ、王城に行くよ」
有無を言わさずに連行しようとする。
「ちょっと、やめてよ!」
ミゼルは官吏の手を払いのけた。
驚く官吏。周囲の野次馬達も驚いている。
「何をするか!」
官吏の護衛を務める2人の衛兵が剣を抜く。
剣先をミゼルに向ける。
「まぁまぁ」
官吏がそれをなだめて、改めてミゼルに云った。
「君は他所の国の人なのかな?」
「そうだよ。だから快楽組ってのもお断り」
「それは駄目だよ。この国に居る以上、この国の法律に従わないと」
改めてミゼルを掴もうとする官吏。
それに対して、ミゼルは――。
「だから嫌だって言ってるでしょ」
剣を抜いて徹底抗戦の構えをみせるのだった。
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