上 下
16 / 51

016 レイドダンジョンと竜人

しおりを挟む
 レッドアイ王国があるルーム大陸に戻ってきた。

「使えるパッシブは一通り極めた」
「次はいよいよ本命ゴブね?」
「そうだ。次が何かわかるのか?」
「アクティブスキルの習得ゴブー!」
「馬鹿野郎、レベル上げに決まってるだろ」
「本当は分かっていたゴブ」
「はいはい」

 ゴブ助め、いよいよ嘘を吐くようになったか。
 ドヤ顔で親指をグイッと立てちゃってさ。

「そんなわけだから、今日はここで狩りをしようと思う」

 やってきたのは〈奈落の庭園〉。
 レベル50前後のモンスターが蔓延る大規模レイドダンジョンだ。
 RLO時代における適性レベルは65で、人数は30人以上。
 この世界では気軽に死ねないので、推奨環境はそれより上だ。
 頭数の少なさが心許なかった。

 このダンジョンは、螺旋状の巨大な下り坂で形成されていた。
 最奥部である地底にはボスが棲息している。

 一本道なので道に迷うことはない。
 その代わり、ひしめく敵を無視して進むことも出来ない。

 ゴブ助みたいに肌が強靱なら話は別だ。
 コースアウトして最下層に飛び降りても問題ないだろう。
 人間が同じようなことをすれば、全身の骨がバキバキに折れて死ぬ。

「レイドダンジョンだから手堅くいこう」

 レイドは他と違う点が1つある。
 転移系のスキルと〈飛行〉が使えないことだ。
 瞬間移動をしたり空を飛んだりすることが出来ない。
 ポータルを使ったヒット・アンド・アウェイ戦術は不可能だ。

「ゴブ助は死んでもかまわないが――」
「なんですとゴブ!?」
「――俺は死ぬわけにいかないからな」

 新たにスキル〈マネーモンスター召喚〉を習得。
 発動すると、目の前に開いた状態の宝箱が浮かび上がった。
 その箱に任意の金額を入れて閉じると、モンスターに姿を変える。
 生まれてくるモンスターの戦闘力は、投じる金額に比例する仕組みだ。
 容姿はランダムで決まる。

「安全志向ってことで……」

 挨拶代わりに30億ゴールドを投入。
 箱を閉じると、箱がモンスターに変わった。

 ドラゴンとヒトを合体させたような魔物――竜人だ。
 全身が金色で、見るからに強そう。
 というか絶対に強い。30億だからね。

「短い期間だがよろしく頼む、我が主よ」

 竜人が頭を下げる。
 マネーモンスターの効果時間は最長で半日だ。

「お前の任務は敵を死ぬ寸前の状態にすることだ」
「承知した」

 竜人が俺に背を向け、前方の敵に目を向ける。
 モンスターの数は近くにいる奴だけでも約100体。
 それも大型で強力なタイプばかり。

「いざ参る」

 竜人がその場から消えた。
 あまりにも速すぎて目で追えない。

「ギョエエエエエエエエエ」
「グオオオオオオオオオオ」
「ギィヤアアアアアアアア」

 魔物の悲鳴が聞こえる。
 よく見ると、前方の敵陣が崩壊し始めていた。

「流石は30億の男だ」
「ゴブの出番がないゴブ」
「もとよりそのつもりさ」

 俺とゴブ助は少し遅れて敵に近づく。
 瀕死の重傷を負った敵に〈テイミング〉を発動。
 ペット化が完了するなり〈吸収合体〉でゴブ助を強化。
 この作業はこれまでと変わりない。

「ゴ、ゴゴ、ゴゴゴ……」

 ゴブ助がその場でプルプル震え出す。

「ゴブゥー!」

 そして、思いっきり跳ねた。
 成長の喜びを表現しているのだ。

「さすがはレイドだ。素晴らしい」

 あっという間に、ゴブ助のレベルが24から30になるのだった。

 ◇

 マネーモンスターの竜人を盾に、レイドをサクサク進んでいく。
 30億ゴールドの化け物にとって、レベル50の敵など赤子も同然だ。
 数十・数百……なんなら数千体が束になろうと問題ない。
 神速の一撃をもって、全ての敵を瀕死に追い込む。
 あとはそれを〈テイミング〉し、ゴブ助に吸収させていくだけ。

「強くなっていくゴブー!」
「レイドの敵はスキルを得られない代わりに経験値が多いからな」
「それでたくさん吸収してもスキルが増えないわけゴブか!」
「そういうことだ」

 螺旋状の緩やかな下り坂を一定のペースで進む。
 そして、いよいよ終着点に到着した。
 下り坂の先にある、東京ドーム並みの広大な円形フィールド。
 そこに待ち構えているのは……〈奈落の庭園〉の支配者。

「ヨク キタナ ニンゲン」
「相変わらずのカタコトだな、デーモンキング」

 ボスモンスター“デーモンキング”だ。
 全長10メートルにも及ぶ巨大な人型モンスター。
 背中には威圧的な翼が生えており、全身は深い紫色で、筋肉質。
 悪魔の象徴とばかりに手足の爪が伸びており、口には鋭くて大きな牙。
 行く手を阻んできた雑魚共とは一線を画すヤバイ奴だ。

「レイドボスはペットに出来ないし……やるか」

 ゴブ助のエサにならないのであれば、遠慮無く倒せるというものだ。

「竜人、刈り取ってこい」
「承知」
「ナッ……!?」
「遅い」グサッ。

 一瞬で終わった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

望まれて王様の王妃になったのに他に妾がいたなんて。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:21pt お気に入り:34

婚約破棄令嬢は健気だった

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:38

憧れの陛下との新婚初夜に、王弟がやってきた!?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:1,850

魔王を倒して故郷に帰ったら、ハーレム生活が始まった

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:363

〖完結〗妹が妊娠しました。相手は私の婚約者のようです。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:305pt お気に入り:4,657

婚約破棄された日

恋愛 / 完結 24h.ポイント:42pt お気に入り:9

便利すぎるスキルを手に入れた少年

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:57

俺様御曹司は無垢な彼女を愛し尽くしたい

恋愛 / 完結 24h.ポイント:35pt お気に入り:59

婚約者の密会現場を家族と訪ねたら修羅場になりました

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,334pt お気に入り:70

処理中です...