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003 経験値の仕様
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「どうかしたか?」
俺は振り返り、店主に用件を伺った。
「あんた冒険者だろ?」
店主に云われて、自分が冒険者であることを思い出した。
冒険者組合に行って、ゴブリンの討伐クエストを受けないとな。
うっかり忘れていて、昨日はただただゴブリンを狩っていた。
「そうだが、それがどうした?」
「ならお金はそれなりに持ってるよなぁ」
「まぁな」
本当は全く持っていない。
ゴブリンをしばいて得られる金など端金だ。
「この店、買わないかい?」
「店って、この宿屋をか?」
「そうさ。もういい歳だから経営するのも大変でなぁ」
こんな展開、RLOには存在しなかった。
NPCから店を買い取るなんてありえないことだった。
もしも可能なら、NPCの店は駆逐されていただろう。
「価格次第だがいくらだい?」
「立地が微妙だからねぇ……100万ゴールドでどうじゃ?」
当然ながら払える額ではない。
今の俺は1万ゴールドすら持っていないのだ。
RLO時代なら9500億はあったのだが……。
「少し持ち合わせが足りないようだ。また今度に――いや」
話している最中に気づく。
おそらくこれは〈交渉術〉の効果に違いない、と。
だから、試しに〈交渉術〉をオフにしてみた。
「すまん、もう一度金額を教えてくれないか?」
「100万のつもりだったが、気が変わったから今の話はナシじゃ」
店主の反応は想定していたものだった。
「そうかい。じゃあな」
俺は宿屋を出た後、〈交渉術〉をオンにした。
予定変更だ。もう少し〈交渉術〉の効果を調べよう。
◇
〈交渉術〉について詳しく知る為、俺は街を駆け回った。
時間の限りを尽くして、道行く人と話したり建物に入ったりするなどした。
「なるほど、理解した」
〈交渉術〉の発動パターンは2つあると分かった。
1つは、相手が話を持ちかけてくるパターン。
宿屋を買わないかと云ってきた店主がコレだ。
もう1つは、こちらから話を持ちかけるパターン。
酒場のマスターに「レシピを教えて」と言って把握した。
通常なら断られるところを、「金を払うならいいよ」と言われたのだ。
また、〈交渉術〉による取引交渉は、必ずモノ対カネになる
相手はモノを、こちらはカネを提供するという形しかないのだ。
宿屋の買収、酒場のレシピ、その他……どれも同じだった。
「はぁーすっきりした!」
仕様を把握出来たことで清々しい気持ちになった。
◇
次の日、ステータスを確認して驚いた。
【名前】アレン
【レベル】5
【スキル】
交渉術/テイミング/
狩りをしていないのに、レベルが3から5になっていたのだ。
落ち着いて理由を考えると、思い当たる節があった。
それは――〈交渉術〉に他ならない。
スキルを発動しまくったことで経験値が貯まり、レベルが上がったのだ。
RLOでは、経験値を得る方法がいくつか用意されていた。
戦闘系の定番は、モンスターを討伐した際に得られるパターン。
古今東西のあらゆるゲームでお馴染みの王道だ。
生産系の定番は、自分の作った物が使用された時に得られるパターン。
自作の武器で他人が敵を倒すと、自分にも経験値の一部が入るわけだ。
あと、スキルを発動した際に得られるオマケパターン。
パッシブスキルは効果の発動時、アクティブスキルは使用時に発生する。
得られる経験値は少ないが、一桁レベルの頃ならコレで十分だ。
俺のレベルが上がったのも、このパターンによるものだろう。
「経験値の仕様がRLOと同じなら……“あの手”が使えそうだ」
良い計画を閃いた。
ゲームの頃は、ライバルが多くてあまり使えなかった手法だ。
RLOでも俺が先駆けで行った手法だし、成功する公算は極めて高い。
「上手くいけば一気にレベルが上がるぞ」
計画が成功した時のことを妄想しながら、本日の行動を開始した。
俺は振り返り、店主に用件を伺った。
「あんた冒険者だろ?」
店主に云われて、自分が冒険者であることを思い出した。
冒険者組合に行って、ゴブリンの討伐クエストを受けないとな。
うっかり忘れていて、昨日はただただゴブリンを狩っていた。
「そうだが、それがどうした?」
「ならお金はそれなりに持ってるよなぁ」
「まぁな」
本当は全く持っていない。
ゴブリンをしばいて得られる金など端金だ。
「この店、買わないかい?」
「店って、この宿屋をか?」
「そうさ。もういい歳だから経営するのも大変でなぁ」
こんな展開、RLOには存在しなかった。
NPCから店を買い取るなんてありえないことだった。
もしも可能なら、NPCの店は駆逐されていただろう。
「価格次第だがいくらだい?」
「立地が微妙だからねぇ……100万ゴールドでどうじゃ?」
当然ながら払える額ではない。
今の俺は1万ゴールドすら持っていないのだ。
RLO時代なら9500億はあったのだが……。
「少し持ち合わせが足りないようだ。また今度に――いや」
話している最中に気づく。
おそらくこれは〈交渉術〉の効果に違いない、と。
だから、試しに〈交渉術〉をオフにしてみた。
「すまん、もう一度金額を教えてくれないか?」
「100万のつもりだったが、気が変わったから今の話はナシじゃ」
店主の反応は想定していたものだった。
「そうかい。じゃあな」
俺は宿屋を出た後、〈交渉術〉をオンにした。
予定変更だ。もう少し〈交渉術〉の効果を調べよう。
◇
〈交渉術〉について詳しく知る為、俺は街を駆け回った。
時間の限りを尽くして、道行く人と話したり建物に入ったりするなどした。
「なるほど、理解した」
〈交渉術〉の発動パターンは2つあると分かった。
1つは、相手が話を持ちかけてくるパターン。
宿屋を買わないかと云ってきた店主がコレだ。
もう1つは、こちらから話を持ちかけるパターン。
酒場のマスターに「レシピを教えて」と言って把握した。
通常なら断られるところを、「金を払うならいいよ」と言われたのだ。
また、〈交渉術〉による取引交渉は、必ずモノ対カネになる
相手はモノを、こちらはカネを提供するという形しかないのだ。
宿屋の買収、酒場のレシピ、その他……どれも同じだった。
「はぁーすっきりした!」
仕様を把握出来たことで清々しい気持ちになった。
◇
次の日、ステータスを確認して驚いた。
【名前】アレン
【レベル】5
【スキル】
交渉術/テイミング/
狩りをしていないのに、レベルが3から5になっていたのだ。
落ち着いて理由を考えると、思い当たる節があった。
それは――〈交渉術〉に他ならない。
スキルを発動しまくったことで経験値が貯まり、レベルが上がったのだ。
RLOでは、経験値を得る方法がいくつか用意されていた。
戦闘系の定番は、モンスターを討伐した際に得られるパターン。
古今東西のあらゆるゲームでお馴染みの王道だ。
生産系の定番は、自分の作った物が使用された時に得られるパターン。
自作の武器で他人が敵を倒すと、自分にも経験値の一部が入るわけだ。
あと、スキルを発動した際に得られるオマケパターン。
パッシブスキルは効果の発動時、アクティブスキルは使用時に発生する。
得られる経験値は少ないが、一桁レベルの頃ならコレで十分だ。
俺のレベルが上がったのも、このパターンによるものだろう。
「経験値の仕様がRLOと同じなら……“あの手”が使えそうだ」
良い計画を閃いた。
ゲームの頃は、ライバルが多くてあまり使えなかった手法だ。
RLOでも俺が先駆けで行った手法だし、成功する公算は極めて高い。
「上手くいけば一気にレベルが上がるぞ」
計画が成功した時のことを妄想しながら、本日の行動を開始した。
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