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002 スキルの習得

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 正確な環境を把握する為、街の中を探索した。
 街の形状、店の商品、相場、等々。
 殆どのことがRLOと同じだと分かった。

「そうなると、まずは……」

 生活資金の調達だ。
 現状では1日分の金しかない。
 宿屋で1泊して酒場で1食とれば、それだけで空になる。

「今の状況だと……」

 金を稼ぐ方法は色々ある。
 しかし、今の俺に出来ることは1つしかない。

「狩りにいくか」

 モンスターを倒すことだ。
 ゲームの頃と変わらない強さなら大丈夫だろう。

 リズミカルな足取りで、近くの狩場に向かった。

 ◇

 モンスターの強さは、ゲームの頃と同じだった。
 しかし、戦闘の快適さは比較にならなかった。

「自由に動けるって最高だな、おい!」

 想像以上に快適なのだ。
 好き放題に動けることが大きかった。
 ゲームの頃と違い、操作する必要がない。

 一方で、煩わしいこともあった。
 この世界では、激しい運動を行うと汗をかくのだ。
 また、寒さや暑さといった感覚もある。
 灼熱や極寒のエリアだと、ゲームの頃より困りそうだ。

「アチョー!」
「セイヤァ!」

 〈木の棒〉を振り回し、ゴブリンを撲殺していく。
 倒す度にチャリンチャリンとお金が増えていった。

「この辺にしておいてやるか」

 ゴブリンを20体程殴り殺した後、意気揚々と街に戻った。

 ◇

 酒場でメシを食い、宿屋で部屋を借りた。
 ふかふかのベッドにダイブしたところで思い出す。

「RLOと同じってことは、この世界にもないんじゃないか? 風呂」

 RLOには風呂がなかった。
 だから、ユーザーは生産スキルで風呂を作っていた。

 確認してみよう。
 俺は部屋を出て、宿屋の受付に向かった。

「なぁ、風呂って知ってるか?」

 宿屋の主人に尋ねる。

「風呂? なんだそりゃ」

 案の定、知らなかった。

「じゃあ温泉は?」
「温泉くらい知ってるさ」

 温泉は知っているようだ。

「温泉に入ることってあるかい?」
「温泉に入る? なんでそんなことするんだ?」
「いや、訊いてみただけさ」

 RLOでも入浴を嗜むNPCは居なかった。
 その辺の感覚は、この世界でも同じみたいだ。

「身体を洗いたいんだが、どうすればいい?」
「変なことを訊くねぇ。濡れたタオルで拭く以外にないだろう」
「そうか、そうだよな」

 前の世界・・・・だと、風呂は古くから存在していた。
 古代ローマの公衆浴場テルマエなどがその最たる例だ。
 やれやれ、この世界も良いことばかりではないな。

「今はこれで我慢するか」

 部屋に戻った俺は、濡れたタオルで身体を拭いた。
 前の世界では、毎日欠かさずに入浴していたというのに。
 嗚呼、風呂が恋しい。

「余裕が出来たら風呂を作ろう」

 そう心に誓って眠りに就いた。

 ◇

 翌日は部屋に引きこもって考え事に耽っていた。
 内容は――何のスキルを習得するかだ。

 レベルが上がると、SPスキルポイントが1ポイント付与される。
 それを使用することで、スキルポイントの習得が可能だ。

 俺は2ポイントのSPを余らせていた。
 ゴブリンを狩りまくったおかげで、レベルが3になっていたのだ。

「悩ましいな……」

 RLOで一番の特徴はスキルシステムだ。
 多くのゲームにあるような前提スキルが存在しない。
 だから、初っ端からド派手な攻撃魔法スキルも習得出来る。

 また、スキルの種類も膨大だ。
 戦闘系、生産系、エトセトラ……。
 中には単体だと役に立たない謎スキルもある。
 例を挙げると“蛇口を作るスキル”だ。
 それで作れるのは蛇口だけで、捻っても何も出ない。

「死ぬわけにもいかないし、うーむ……」

 RLOとこの世界における最大の違い。
 それは“死んだ際の扱い”についてだ。
 RLOでは、死ぬと街に帰還した。
 一方、この世界では死ぬとそこでおしまいだ。
 死者を復活させることは出来ない。

「ネタ要素も含ませつつ、戦闘も快適にしておくか」

 ということで、〈テイミング〉と〈交渉術〉を習得した。

 〈テイミング〉は、モンスターをペット化するスキルだ。
 戦闘系に位置するスキルで、RLOでは非常に人気があった。

 〈交渉術〉は、通常では不可能な交渉が可能になるスキルだ。
 などといえば聞こえが良いけれど、実際にはネタスキルである。
 RLOだと、NPCに話しかけた時に選択肢が増えるくらいだった。
 しかも、増えた選択肢に特別な意味がないという。

「この世界の人間はNPCじゃないからなぁ。どうなるやら」

 〈交渉術〉を習得した一番の理由は好奇心だ。
 NPCに使う為のスキルは、NPCの存在しない世界でどうなるのか。

「とりあえず効果をオンにしておくか」

 〈交渉術〉はパッシブスキルだ。
 スキルの効果をオンにしている限り、常に効果が発動する。
 ちなみに、〈テイミング〉は任意で発動するアクティブスキルだ。

「今日はゴブリンをペットにしてやるぜ」

 スキルの習得が終わったので、部屋を出た。
 宿屋の店主と適当に会話を行う。
 その結果――。

「(特に変化ないな……)」

 〈交渉術〉の効果は感じられなかった。
 やはり存在価値のないゴミスキルだったか。
 そう思って、宿屋を出ようとした瞬間――。

「ちょいと待っておくれ」

 店主が俺を呼び止めた。
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