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第015話 サラ
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俺達を笑っていたのは謎のお姉さんだった。
髪はミディアムショートの赤色で、年齢は一回り上。
二〇代の半ばから後半といったところか。
「人の話を盗み聞きするとは感心しないですよ」
「まーまー少年よ、そう怒らないでちょうだいな」
お姉さんはニヤニヤ笑いながら、アリサの隣に座った。
チラリとアリサを見る限り、彼女もこの女を知らないようだ。
「少年のことはね、投資ギルドで見て目を付けていたのよ」
「ほう? どうしてですか?」
まずは話を聞いてみる。
アリサは訝しめな表情で女を見ていた。
これが『女の敵は女』ってやつなのだろうか。
「あなたがぶっ飛んでいたからよ。最初は投資ギルドで投資の説明をウケるなんて、カモがネギと鍋を背負って調理してくれとやってきたようなものだと思ってさ、上手く口車に乗せてお金を稼がせてもらおうかと企んでいたのよ」
俺が「ひでー人だな」と呟く。
女は「白状したから酷くないでしょ?」と笑った。
そういう問題かよ、と思って苦笑い。
「それで、どうして企みを実行しなかったのですか? それに、俺がぶっ飛んでいるとは一体……? そんなにおかしな言動はしていなかったはずだけど」
「口調は丁寧だし、見た目も悪くないわね。防具は良質なものを重視して、武器は格安の使い捨てで済ませるって発想も賢いよ。でも、やっぱりあなたはぶっとんでいるわ。だって――」
女がアリサの肩に腕を回す。
そして、手をアリサの胸の上にポンッと置いた。
俺なら勢い余ってそこから揉み揉みとしてしまいそうだ。
「初めての投資で、しかも投資のことを何も知らない状態で、この子を買収したんだもの。この時点で相当なものだけど、なんといってもこの子のことを何も知らない状態で買収したことが凄いのよ。出来ないよそんなこと、普通はね」
投資ギルドの受付嬢にも止められたからな……。
女の言い分が嘘っぱちでないことは理解できる。
「それで、これは凄いルーキーが投資家デビューしたなと思って興味を持っていたのよ。貴方の投資が成功するか失敗するかは別として、投資に大事なのって、直感に身を委ねられる気持ちの強さだと私は思っているからね」
「えらく良い評価をしてもらっているところアレなんですが、買収したのは物珍しさからだったんですよね……」
「それでも大したものよ。とまぁ、あなたについて私が知っている情報はそんな所。よかったら、これを機に仲良くしようよ。私の名前はサラ。よかったら二人の名前も教えてよ。トウヤ君とアリサさん♪」
サラはニッコリと微笑んだ。
「既に知っているくせして聞くんですか」
「どうせなら二人から直接聞きたいでしょ?」
「いいですよ。俺はトウヤ。で、そっちは――」
「アリサでっす!」
「改めてよろしくね」
サラがテーブル越しに握手を促してくる。
それに応えて、俺も手を伸ばして握手した。
なぜかアリサが目を細めてジーッと見てくる。
「ねぇ、トウヤ君」
「はい」
握手をした状態で、サラが言ってきた。
「私と深い関係にならない?」
大声で「なんですと!?」と叫んだのはアリサだ。
俺は「えっ、えっ、ええぇぇ?」と混乱していた。
「だから、ただの友達ではなく、もっと深い関係に」
サラは「深い」の部分を妙に強調する。
そのことが、俺の鼓動を暴力的に刺激するのであった。
髪はミディアムショートの赤色で、年齢は一回り上。
二〇代の半ばから後半といったところか。
「人の話を盗み聞きするとは感心しないですよ」
「まーまー少年よ、そう怒らないでちょうだいな」
お姉さんはニヤニヤ笑いながら、アリサの隣に座った。
チラリとアリサを見る限り、彼女もこの女を知らないようだ。
「少年のことはね、投資ギルドで見て目を付けていたのよ」
「ほう? どうしてですか?」
まずは話を聞いてみる。
アリサは訝しめな表情で女を見ていた。
これが『女の敵は女』ってやつなのだろうか。
「あなたがぶっ飛んでいたからよ。最初は投資ギルドで投資の説明をウケるなんて、カモがネギと鍋を背負って調理してくれとやってきたようなものだと思ってさ、上手く口車に乗せてお金を稼がせてもらおうかと企んでいたのよ」
俺が「ひでー人だな」と呟く。
女は「白状したから酷くないでしょ?」と笑った。
そういう問題かよ、と思って苦笑い。
「それで、どうして企みを実行しなかったのですか? それに、俺がぶっ飛んでいるとは一体……? そんなにおかしな言動はしていなかったはずだけど」
「口調は丁寧だし、見た目も悪くないわね。防具は良質なものを重視して、武器は格安の使い捨てで済ませるって発想も賢いよ。でも、やっぱりあなたはぶっとんでいるわ。だって――」
女がアリサの肩に腕を回す。
そして、手をアリサの胸の上にポンッと置いた。
俺なら勢い余ってそこから揉み揉みとしてしまいそうだ。
「初めての投資で、しかも投資のことを何も知らない状態で、この子を買収したんだもの。この時点で相当なものだけど、なんといってもこの子のことを何も知らない状態で買収したことが凄いのよ。出来ないよそんなこと、普通はね」
投資ギルドの受付嬢にも止められたからな……。
女の言い分が嘘っぱちでないことは理解できる。
「それで、これは凄いルーキーが投資家デビューしたなと思って興味を持っていたのよ。貴方の投資が成功するか失敗するかは別として、投資に大事なのって、直感に身を委ねられる気持ちの強さだと私は思っているからね」
「えらく良い評価をしてもらっているところアレなんですが、買収したのは物珍しさからだったんですよね……」
「それでも大したものよ。とまぁ、あなたについて私が知っている情報はそんな所。よかったら、これを機に仲良くしようよ。私の名前はサラ。よかったら二人の名前も教えてよ。トウヤ君とアリサさん♪」
サラはニッコリと微笑んだ。
「既に知っているくせして聞くんですか」
「どうせなら二人から直接聞きたいでしょ?」
「いいですよ。俺はトウヤ。で、そっちは――」
「アリサでっす!」
「改めてよろしくね」
サラがテーブル越しに握手を促してくる。
それに応えて、俺も手を伸ばして握手した。
なぜかアリサが目を細めてジーッと見てくる。
「ねぇ、トウヤ君」
「はい」
握手をした状態で、サラが言ってきた。
「私と深い関係にならない?」
大声で「なんですと!?」と叫んだのはアリサだ。
俺は「えっ、えっ、ええぇぇ?」と混乱していた。
「だから、ただの友達ではなく、もっと深い関係に」
サラは「深い」の部分を妙に強調する。
そのことが、俺の鼓動を暴力的に刺激するのであった。
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