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第007話 不慮の事故

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 ルナとS級ダンジョン<アストラル大空洞>にやってきた。
 大空洞と呼ばれるだけあり、迷宮のように広大な空洞である。

「グギャーオ!」

 当然ながら敵も出現する。
 S級の禍々しい強敵ばかりだ。
 しかし問題ない。

「はあっ!」
「アギャー……」

 サクッ。

「ムオオオ!」
「えいやーっ!」
「アギャー……」

 グサッ。

「キィィィック!」
「やあーっ!」
「アギャー……」

 バタリ。
 どんな敵もルナの前では赤子も同然だ。
 彼女の強さはSSS級の<魔王城>に単独で挑むレベル。
 いかにS級といえど、ルナにとっては雑魚と同義であった。

「本当に凄まじい強さだな……。ルナって、レベルいくつくらいなんだ?」
「そ、それほど高くありませんよ」

 ルナが顔を赤くしてもじもじする。
 レベルを言うことが恥ずかしいようだ。

「じゃあ先に言うけど、俺は12レベルだぞ」
「へっ?」カキィン。

 ルナが驚愕のあまりに剣を落とした。

「ほ、ほほ、本当ですか!?」
「うん。3年間ずっとゴブリンとスライムばかりしばいてたからね」

 俺だって出来れば他のダンジョンに行きたかったさ。
 でも行けなかったんだ。仕方がない。勝てないんだもん。
 だから来る日も来る日も雑魚狩りに明け暮れていた。

「12レベルで魔王城に来ていたなんて……。やはりユウタさんは流石です! 他の人には絶対に真似できない芸当ですよ! レベルが全てではないのだと、改めて実感いたしました! 感服です!」

 ルナから俺に拍手が送られる。
 俺はなんだか複雑な気持ちになった。

「それで、ルナのレベルはいくつなんだ?」
「わ、私は……」

 ルナはまたしても顔をポッと赤くする。
 それから、「笑わないでくださいよ?」と念押ししてきた。
 だから俺はキッパリと言ってやる。

「俺なんてレベル12だぜ? 他人のレベルを笑えるかい! だから、ルナも恥ずかしがらずに言ってみな!」

 上品に「あはは」と笑った後、ルナが言った。

「私のレベルは451です」

 今度は俺が「へっ」と固まるのであった。

 ◇

 問題なくダンジョンを進み続ける俺達。
 ルナのおかげで敵は楽勝だし、トラップはどれも発動済み。
 多くの冒険者が死体と化して転がっているが問題ない。

「ユウタさん、この先にはボスがいます!」
「そうなのか。でもルナが居れば楽勝だろう」
「いえ、私でもこのクラスのボスをソロで倒すのは辛いです」
「まじか……。じゃあ、戦わずに引き返す?」
「いえ、それだとここに来た意味がありませんので」
「それもそうか」

 俺達がこのダンジョンに来たのは宝箱を漁る為だ。
 しかし、最奥部手前の現時点までに宝箱は見つかっていない。
 つまり、このダンジョンの宝箱は最奥部にあるということだ。
 B級以上のダンジョンには、最低でも1個は宝箱があるからな。

「ユウタさん、覚悟はいいですか?」

 ルナが尋ねてくる。
 俺は唾をゴクリと飲み込んだ。

「いいぜ」
「では行きましょう。私が危なくなったらまた助けてくださいね」
「レベル451がレベル12に頼むことじゃないだろそれー!」
「あはは、では!」

 ルナがいくつもの支援スキルを発動する。
 彼女の身体を金色の光が纏い、剣はピンクに光っている。
 更に背中からは光の翼が生えた。

「な、なんぞこれー!」
「短時間ですが、これで普段以上の力が出せます!」
「普段以上……つまり本気か」

 ルナは「はい!」と言い、羽ばたいた。
 身体を少し浮かせて、超高速で駆けていく。

「よし、俺も行くぞ!」

 遅れて俺も続く。
 曲がり角を突破し、最奥部に到着。

「おお……!」

 目の前に広がる光景を見て感嘆の声が漏れた。

 まず、一番奥に大きな宝箱が見えたこと。
 数は1個だが、箱はかつてない高級感を漂わせていた。
 そして、その手前で戦うルナとボスの姿。
 ボスはヴァンパイア系の敵で数は5体居る。
 分身しているのか、全てが本体なのかは分からない。
 しかし、その内の1体は既に斬り殺されていた。

「浄化の光! ホーリークロス! アースクエイク!」

 ルナが惜しみなくスキルを連発する。
 自身に近づく敵を光の障壁で弾いたり、光の十字架を飛ばしたり、はたまた、地面を切り裂いて足場を悪くする。

「ヌオアアア……」

 怒濤の攻撃により、ボスの1体が死亡。
 これで残りは3体だ。
 しかし、ここで予想外の事態が起きる。

「ヌォオオオオオオオ!」

 1体が決死の猛攻に出たのだ。
 がむしゃらに両手と両足を振り回す。
 さらにそれを別の1体が遠距離から支援する。
 魔力の弾丸を飛ばし、ルナの動きを妨害するのだ。

「クッ……!」

 ルナが劣勢に陥ってきた。
 そこに――。

「きゃっ!」

 最後の1体が飛びかかった。
 一瞬の隙を突いてルナを羽交い締めにする。
 このままではルナがやられてしまう!

「ルナ!」

 俺は大慌てで駆けだした。
 何か出来るわけではないと分かっている。
 それでも動く身体を止められなかった。
 その結果――。

「そこはダメです! ユウタさん!」
「えっ」

 プツンッと音がした。
 俺の足に何かが引っかかる。

「こ、これは……!」

 地面に張り巡らされていたトラップの起動スイッチだった。
 俺は下手を打って罠を発動させてしまったのだ。
 全ての罠が発動済みだと思い込み、油断していた。

 ゴゴゴォ……!

 エリアが揺れ出す。
 何かしらの罠が発動したのだ。
 しかし、どんな罠か分からない。

「こ、こんな時に鼻が」

 鼻がむずむずする。
 トラップの発動時に待った砂塵が鼻に入ったみたいだ。
 罠とはまるで関係なく、俺は盛大に――。

「ハクショォイ! コノヤロバカヤロー!」

 クシャミをかましてしまった。
 凄まじいクシャミにより、俺の身体が前に傾く。
 その瞬間――。

「えっ」

 身体のすぐ上を巨大な矢……というか槍が通過した。
 どこにあったのか、背後から飛んできたのだ。
 通過したのは、先ほどまで俺の身体があった場所だ。
 クシャミのおかげで、俺は奇跡的にも槍を回避できた。
 そうでなければ、今頃は首か胸を貫かれている。

「自分の幸運に感謝!」

 クシャミも運のおかげに違いない。
 そう思っていたところ――。

「ヌ、ヌォ……!」

 トラップの槍がボスを貫いてしまった。
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